スライムに生きる権利を!!
エリカは飛び散ったネバネバ水分に一つ一つ触れて、ゆっくりと体内に吸収していきます。元のサイズに戻って、ようやくホッとしました。
だからまあ、飛び散っても回収は可能なわけで。
エリカスライムに掘削作業を進めてもらうということも、現実的には考慮しないといけないのかもしれません。
基本的には水分の塊のようなので、筋肉痛にもなりようがないでしょうし。
ただ――――。
「エリカ、ボクにはスライムにとってどの程度が辛いとかキツいとか、危ないとか、わからないんだ。それでもさっきのが危なかったことぐらいは、理解できる。手伝ってくれるのは嬉しいし今はエリカに頼るしかないのだけれど、もう少し、自分の身を気遣ってくれ」
厳しい調子で言うと、エリカはシュンと萎れてしまいました。
張り切っていたのに怒られちゃって、ちょっと可哀想です。
「もう君を失いたくないんだ。――信用してるからな。頼んだぞ」
でもこの一言で、ガバッと顔を上げて『エリカふっかーっつ!!』という感じで目をキリリとさせました。単純で良かった!
エリカスライムが再び、掘削作業に取り組みはじめます。
今度は定期的に休憩を挟んで、飛び散ったネバネバ分を回収し、その後作業再開――。その間に時々ニコが加勢する、という状況です。
「おーい。ちょっといいかなー?」
ニーナの朗らかな声が、地下シェルターに響きました。
「この紐で測った感じだと、そろそろ開通しそうさーっ」
紐とは電源延長コードのこと。
二から五メートルまでを一メートル刻み。あとは五メートル刻みで十、十五、二十――と言う感じで五十メートル巻まで全部買っておいたので、沢山あります!
五十メートル巻き一つあれば、大は小を兼ねるわけですけれど。こう――――スマホでポチッと、ね?
電源延長コードを紐として利用しながら室内の長さを計測すると、縦が六メートル、横が七メートルでした。二十畳強――といったところでしょうか。
更に地上で丘の斜面までの距離を測ると、掘削距離は凡そ十メートルほどという計算に。
「そんなに進んだのか?」
「途中、五メートルまではサクサク掘れたさー。でもだいぶ固くなってきたー」
ちなみに、この世界にメートル法は存在しません。
でも折角、電源延長コードがあったので。二メートルを半分に折った長さを、一メートルと定めました。
驚くことに、この長さはレコを精製するための型枠内寸と、ピッタリ同じサイズです。
メートル法を知っている誰かが、この型枠を作った……?
まあ、偶然でしょう。レコの大きさはこの世界、グリフィールドの理が決めていることのようですし。
ニコの知識によると、レコはこれより小さなサイズだと塊を維持する力が弱まって脆くなってしまうそうです。
建物の壁がずいぶんと分厚いなーとは思っていましたが、壁の厚みも一メートルが最低限と言うことなら、納得ができます。
「こっちはまだ、三メートルも行っていない。もう少し掘ってみよう」
「わかったさー!」
まだまだ体は軋むけれど、動けないこともない……かな?
「エリカ、ニコ、ボクも一緒に――」
言いかけたところで、エリカスライムがこちらを向いてキッと目に力を込めました。
「……すまない」
はい。もうちょっと養生しておきます。
それから一度、お昼寝をさせて頂きました。
完全に音が工事現場なのですが、二度の人生丸々お嬢様育ちの私でも、この環境で寝ることができるんですね……。ビックリです。人間って凄い。
そして目が覚めると、出入り口ではないところから一条の光が差し込んでいました。
開通――、成功です!!




