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スライムに生きる権利を!

 町の崩壊から、三日目の朝。

 ――――私はシェルターの中で、身動きの一つも取れずにいました。


「すまない……。体中が……」


 申し訳なく言葉を口にすると、三人が苦笑いで答えてくれます。


「仕方ないさー」

「リタ様も女の子ですから」

「……私も、少しは、できるので……」


 そう。男の子みたいな筋力がある!! という『気がして』全力全開フルパワァーを発揮したのですが……。繰り返します。男の子『みたいな』です。体力は男の子のそれじゃありません。

 そりゃあ普通の女の子よりは、秀でているようですけれど。

 全身を襲う筋肉痛から開放されるまで、しばらくお休みです。


 ――ま、体が動かないなら頭を動かすまで、です! この状況で、本気でのほほーんと休むのは無理!

 昨日の夜に話し合った結果、私たちは内側からコンクリートハンマーで掘り進めて、進行方向の辺りを反対側からも、スコップやシャベルで掘り進めることにしました。

 反対側は岩盤層という感じではないそうなので、ある程度までは掘ることができると期待しています。

 時間をかければ、きっと、横に地面を抜くことができるでしょう。

 そうすればレコを作ることもできるはず。


 問題は、レコの使用方法です。

 スライムを木槌(きづち)で潰して()(ばち)でネバネバネヴァーになるまで擂り潰して――って、そんなこともう、できるわけがないです。だってこの子、エリカだよ?

 でも古代物語によれば、一匹のスライムから大量の建築物を作り上げた人がいた――。

 ちゃんと水と雷でスライムが産まれたわけですから、その話も信頼できるような気がします。


「ただ……。手がかりが少ないな」


 仰向けになって寝ながら、天井を見上げて(つぶや)くしか、できることがありません。

 エリカスライムも心配そうに頬を()り寄せてきます。

 すりすり、すりすり、すりすり――。


「……エリカ、ボクはスライムをどう()り潰さないでいいかで目下悩んでいる最中なのだが」


 すりすり、すりすり、すりすり……。


「おい、エリカ」


 ()()り、()()()()り――。

 あー、この子さては、役に立てるなら擂り潰されてもいいかも――とか考えちゃってるな!?

 そんなこと、するわけないでしょうに。

 私は(きし)む両腕でエリカスライムを抱きかかえます。


「絶対に、今度こそ一緒に生きるんだ」


 伝えると、エリカはもう、頬を擦り寄せなくなりました。そのかわりピタッとくっついて、ヒエピタみたいに冷却してくれます。


「……そういえばスライムの生態って、どうなってるんだ?」


 エリカに問う。


「日本ではスライムと言えば、モンスター……、まあ、悪魔の使いみたいな存在として有名だったんだ」


 その中で一番ザコいことは、このさい黙っておきましょう……。

 経験値2、でしたっけ? そのゲームは伝え聞いただけなので、よくわかりません。

 でもゲームに出てくるキャラクターって、凄く戦える人たちのはず。勇者とか。

 鍛えたら人外どころか魔王討伐すらできるような人たちが最初に倒す存在――って、よーく考えてみると、そんなに弱っちくもないのでは?

 それなら……。

 私の隣で、「よい――しょ」と言いながら、ニコがコンクリートハンマーを持ち上げました。女の子の中でもちっこくて細腕の彼女には荷が重いことは、明白です。

 ドゴゴゴゴゴ……と鳴る音も、三十秒ほどで止まってしまいました。


「ニコ――。試しにそれ、エリカに持たせてみてくれないか」

「え……っ?」


 ニコは「ど、どうぞ」と恐る恐るという感じで、エリカのプルプルボデーにコンクリートハンマーを載せました。

 するとコンクリートハンマーはエリカスライムの中へ、どぷりと沈むように吸収されて……。途中で固定されます。

 エリカはつぶらな瞳をギラリと光らせ、自信満々なことが伝わってくる様子で地面をズリズリ移動。ピョンピョン移動できるほど、軽くはないようですが――。


「レバーを引くんだ」


 使い方を伝えると、すぐにドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――と音が鳴り始めます。

 どうやってレバーを引いたのかはわかりませんが、それはきっとスライムに転生しないとわからないことなので、考えるのやめです。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……、ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……、ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


 それにしても、プロの工事現場にいる感覚なんですけれど……。

 途中途中で挟む細かな休息が、余計にプロっぽさを演出しています。機械に優しい、みたいな。もしかしてエリカ、解体のセンスあるの?


 頼もしい音に、私はどうにか体を起こして、エリカの姿を視界に収めようとしました。しかし最初に視界へ入ってきたのは、わたわたと狼狽(うろた)えるニコ――。

 嫌な予感がして今度こそエリカの姿を見ると、細かい水しぶきが顔にピチャピチャと飛んできます。


「エリカああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 振動で水がブルブル散って、小さくなったエリカがそこにいました。

 スライムさん、まずは防御力を上げましょう。振動で死にかけるなら、経験値は2で適正です。

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