安全圏
ニコが地下シェルターを探し当てた、その日の夜。
夕方から雲行きが怪しくなって風も湿り気を帯びてきていたので、嫌な空気だと思っていたのですが。予感は的中して、豪雨となりました。
慌てて四人でシェルターへ非難。
ターシャとニーナは、はじめて中に入った次第です。
「明るい……!」
「すごっ! ……はぁーっ、火の灯りとは違う明るささーね」
私は工具用ヘルメットを頭に装着し、充電用のUSB端子の繋げられた電源コードのプラグを握っています。実用的にこれを使える機会があるなんて、夢みたいです!
「これ、動力源はなんなんですか?」
「ガスとか油の匂いもしないさー」
んー。電気とは何か! なんて、事細かに説明するのは中々難しいかもしれないなぁ。
「電力――。雷と同じだ」
ぶっきらぼうな物言いになっちゃったけど、これぐらいシンプルなほうが混乱を招かなくていいかも。
「まあ簡単に言えば、動力源はボクだ」
いや、それは簡単すぎないかな?
まあでも、この場における事実はそれだけですよね。
わかりやすくコンセントプラグの先端を握りながら、説明します。
「電気という雷のような力がこのケーブル……紐を通して、光に変わっている」
今はもうバッテリーに充電できているので、少し手を離した程度じゃ明かりは消えません。説明書によると満充電で最大六時間となっています。中々の性能です。
そして三個セットがお買い得だったので、もちろん三つ購入済み! 散財万歳!!
前世のちょっとアホな私、ありがとう。本当、どこで使う気だったんだろうか……?
「じゃあリタ様は……雷人間?」
「それは失礼さーっ」
ターシャのネーミングセンスゼロ発言に、ニーナが突っ込む。
うんうん。そうだよね。雷人間じゃデンキウナギと大差ないわけで、もうちょっと、ふわっと可愛いお名前が欲しいところです。ニーナはよくわかっています。
「雷は悪魔と一撃とか鉄槌とか呼ばれてるんだから、リタが悪魔みたいになってしまうさ」
あれ? いや、そういう意味……?
いや、でもまあ確かに、悪魔の一味になるのはちょっと嫌……かな。
討伐とかされたら洒落にならないし。魔女狩りとか……。抵抗したくても私、戦えないよ。
「そうですねぇ。――――あの、リタ様」
ターシャの問いかけに、「なんだ?」と応じる。
「雷の件については、この場だけの秘匿としたほうが良いんじゃないかな、と……。信心深いかたもいらっしゃるかもしれませんし、とりあえず状況が落ち着くまでは」
「……そうだな。無用な混乱を引き起こしている場合でもない」
仰るとおりで、私は首を縦に振って頷きました。
希望のあるお話をしていたつもりでしたが、雷の一件で、思ったよりも深刻な雰囲気になってしまっています。このサバイバル環境でとりあえずの安全地帯を手に入れた今、気分の落ち込みは大敵――。
「よしっ、じゃあ美味しいうちにココを飲もうか!」
努めて明るく振る舞うと、三人は笑顔で「「「はい」」」と声を揃えてくれました。
彼女たちも状況をしっかり理解してくれているわけで、特にターシャとニーナは腕の痛みが辛いはずだけど、あまり表情に出しません。
ターシャは落ち着いていて冷静な判断をしてくれますし、ニーナは敬称付けを外したりして、意図的に私との壁を取り払おうと頑張ってくれていることが伝わってきます。ニコは大人しいのに好奇心旺盛でとにかく可愛いです。
頼もしい先輩でもあり、友達でもある三人――。
みんなに囲まれて、私は幸せです。




