シェルター
ロメール家に隠されていた地下空間。
私とニコは、ここをシェルターと呼ぶことに決めました。わかりやすさ重視です。守ってくれそうな感じもしますし。
崩壊の原因が爆発でしたから、地下シェルターの存在は私達を安心して眠らせてくれることでしょう。
そして布の下からは、予想通りというかなんというか……。
私がこの世界へ転生する前にコレクションしていた電動工具が、モッサリと山盛りになっていました。
「……楽しそう……」
ニコがぽそりと呟きます。
でも今の私はテンションマックスです!
「こっちはオービタルサンダーで、これが丸ノコ! そしてこれはディスクグラインダーだっ!」
「武器……?」
しっかり箱に入っていて、開けてみると説明書(日本語)付き!
あー。なるほど。ということは、同じ趣味を継続するというよりも、この説明書が読めるように記憶を引き継いだのかも……? これをこの世界の言葉に翻訳するのは一苦労どころではないでしょうし。
「これは色々と捗るなぁ。ふふふふふっ」
「……あの、ところでさっきの光は一体?」
それについても大方の予想が付きました。
神様的な御方は、この世界には電力設備が整っていないと仰っていましたが、同時に、どうにか解決できるようなことも口にしました。
ちなみにさっきのコンセントはタコ足配線を経由して工事用のLED電球付きヘッドライトに繋がっていたようです。私は何をする気でこれを買ったのだろうか……。まあ、いいや。むしろ買っていて良かった! 趣味への散財は正義ですよ!!
そして、私の右手がコンセントプラグに触れるとライトが点いた、ということは――!
「どうやら、ボクの手から電力が供給されるようだ。これは凄いぞ!」
今ここに、デンキウナギ人間の爆誕です!! 名前が可愛くない!! で、電力人間……。電気人間……。人間コンセント……。だめだ。どれも絶望的に可愛くない。
「デンリョク……?」
「電気、と言ったほうがいいかもしれないな」
「デンキ…………。あっ、古代物語に、そんな言葉があったような気が……」
古代物語は、この世界での聖書とか、古事記みたいな存在。人類が文字を発明した数千年前からのできごとが事細かに綴られている、とんでもなく貴重な本です。
一般的には、百分の一ぐらいに小さく薄くまとめた冊子が出回っています。私ももちろん読んでいますが、あくまで百分の一版です。
その中には電気の話なんて無かったと思いますけれど……。
「もしかしてニコは、古代物語の本物を読んだことがあるのか?」
「……レプリカ」
「レプリカでも、とんでもなく高価な代物だ。ボクは読んだことがない」
「――そこにデンキという言葉があった……です」
「どう記されていたんだ?」
「……二千年以上前に、レコとスライムの接着を発見した人物がいた――と。その人は、一匹のスライムから大量の建築物を作り上げた……」
「たった一匹で!?」
「はい。……でもその建築物が世界のどこにあるかが不明で、お伽噺なのかなぁ、……と」
なるほど。それなら、二千年前に電気を扱える人物がいた可能性があるわけだ。
例えば雷とか静電気の有効活用かもしれないし、私みたいな転生者かもしれない。
そしてその人は、スライム一匹で大量の建築物を作り上げた――。電気との関連性が気になります。
方法さえわかれば、私にもできる……のかな?
「……あと、スライム自体も、水ではなくて『雷の精』――という説もありました。水辺に雷が落ちて、跳ね散った水がスライムになる――とか」
日本では雷の語源は『神鳴り』とされていますし、雷のメカニズムというものはまだ解明されきってはいない――と聞いたことがあります。
稲光りや稲妻という言葉は、稲が雷によって豊かに実ると考えられていた頃の名残。とにかく神様の力として信仰されてきた歴史があるようです。
でも、この世界での雷は『悪魔の鉄槌』と呼ばれていて。大地の女神と水の女神はいても、雷の女神はいないのかもしれません。
「ありがとう。とにかく、ここを生活拠点にできることがわかったんだ。ターシャとニーナにも知らせてこよう!」
「――はいっ」
嬉しそうな顔。
電動工具を使いたいなんて、今にして思えば馬鹿なことをお願いしたかも……なんて、思い始めていたんだよね。でも、みんなの役に立てるなら、お願いしてよかったです!




