友達
お団子は日本のものとは少し違いましたが十分にお団子感のあるもので、みたらしのような餡も甘くて美味。
ああ、炭水化物に糖質をかけて食べるものは、どうしてこうも美味しいのでしょうか。
……まあ炭水化物の中身は糖質と食物繊維なわけですが。要するに砂糖に砂糖をかけて食べているようなもので。
しばらく運動はできそうにないし、太らないようにしなくちゃ!
「美味しかったさぁ」
「甘塩っぱい菓子というのは珍しいものだな」
「……やはり食材だけではなく、加工品の特産物も必要ですね」
感じたことを素直に口にしたニーナ。
少し分析的に語るマリーさん。
いつも商売人の視点が抜けないニコ。
お団子一つにそれぞれの思考回路が透けて見えるようです。
「そうやって笑うリタの顔、久しぶりに見る気がするさーっ」
「クスクス笑うところは変わらないな」
「なんだかホッとします」
この状況に頬が緩まないほうがおかしいです。
日本で死んだとき、神様のような御方へ願ったこと。
友達と一緒に遊びたい。
崩壊とか色々なことが起こりすぎている気はしますけれど、友達という一点に関しては……恵まれすぎです。
「ちょっ、リタ!?」
痛く眩しい日差しの下で、生暖かい涙が頬を伝っていきました。
「あーあ。君たちが泣かせるようなことを言うから」
「マリーさんも変わらないと思う……。というか、どこで泣かせたのかがわからない……」
もうダメだと思っていたから。
あの『ボク』がメチャクチャにしてしまった上に、領土崩壊の犯人は人格こそ違えど私自身。
体は一つで、もしかしたらまた崩壊を引き起こすかもしれないのに。
……それでも三人はいつもと変わらず、私の友達で居続けてくれている。
脅える様子なんて僅かも見せずに。
「本当は、一人で死んじゃおうかなって思ってたんです」
だからもう、隠し事をする必要もなくて。
だってそんなことを実行する気が、無くなっちゃったから。
三人はいきなりの告白を黙って聞いてくれています。
「もし領土崩壊をまた引き起こしたら……。今度は王都を潰して、何十万人の人を殺してしまったら……。そんな風に考えたらもう、怖くて。死んだほうが、ずっとマシだって、何度も」
長くベッドの上に居すぎて、考えることが多すぎて、そんなことを。
「私とエリカは死んだ後のことを知っていますから。また違う世界で平和に生きられるのなら、それも『あり』なのかな……とか」
俯きながら細い声で紡いだ言葉に、ニーナが言葉を返してきます。
「でも、死んだ後もまた同じ世界で一緒に生きられるわけじゃないんだよね? それはちょっと、寂しいさ……」
「……はい。同時に死なないといけないとか、それでもダメとか、少なくとも生きている間に確定できることでは無いと思います」
「じゃあダメ!! じゃあ、っていうのもおかしいけど、とにかくダメだから!!」
「――――わかっています。それがわかったから、こうして話せるんです」
「……そっか。それなら…………うん」
完全に納得したわけではないのでしょう。けれど彼女は、言葉を飲み込むように頷いてくれました。
続いてマリーさんも一言、厳しい調子で言ってきます。
「助けた人が後で自殺するなんて、医療の人間としては最悪だ。それが友人とあれば……私は心が弱いからな。きっともう、二度と立ち上がれない」
心が弱いなんて、そんなことはないと思いました……けれど。喉が詰まって言葉にできません。
「リタ」
「……はい」
眉根を寄せて表情を歪めたニコが、軽くしゃがみ込んで目の高さを合わせてきます。
小柄なニコにこうやって接してもらうのは、初めてかもしれません。
「私たちが監視します」
「…………え?」
「リタは……まだリタの体がどういう仕組みで、どういう力を持っているのか、わかりません。その上いつまた『ボク』が出てくるのかも、わからないです」
「はい……」
「領土崩壊の計画は念入りに仕込まれていた。でもその記憶が、リタにはない。ならその時、リタの人格は無かったはず。――――安心してください。私は……私たちはリタと『ボク』の違いに必ず気付けますから」
そこまで言うと、ニコは目尻に涙を溜めて、でも力強く口を開き――。
「ずっと一緒に居て、ずっと監視していれば、絶対に大丈夫です!」
言い切ってくれました。
…………みんなの気持ちが凄く嬉しい。
「ありがとう、ニコ。――――でもね」
今日言わなければならなかったことを、みんな――、いえ、ニコとニーナへ伝えます。
マリーさんはすでに知っていますから。
「私はこの国の領土をいくつも崩壊させた、首謀者です。……周りを見てください。遠巻きに兵士が、何人も見張っているでしょう? ――近く裁かれることが決まっているんです」
私が首謀者であることは、先に刺された馭者のかたが聞いていたようで、一命を取り留めたあとに供述。王都へもとっくに伝わっていました。
ただ……。
このことはきっと想定の範囲内だったのでしょう。二人は嫌な予感が的中したように曇った顔で俯いてしまいました。
皆、わかっていて、明るく振舞っていた。
その空気を壊しちゃったのは、ちょっと辛いかな。
「で、でもほら! 私は危険人物過ぎて、下手に手出しできないようなので!」
今から取り繕っても、無理かな。
「あまりストレスを与えるのも危険だとか!」
みんな俯いてしまっています。
やっぱり、一度考えちゃうと、もう無理ですよね……。
「あははっ。だから、ね? ……それまでの間、すこ…………。少し、かもしれませんけれどっ。みんなと……、みんなと一緒に…………いさせて、ください」
死ぬのは嫌だ。皆とお別れになるのは辛すぎる。でも、どうしようもない。
そのあとニーナが頑張って明るく声を張ってくれて、私たちは王都一番の大きな土産物屋に立ち寄って、寒く厳しい峠を越えた先にある異国の文化に触れました。




