お尻とか色々
ニコ、ニーナ、そしてマリーさんが代わる代わるに車椅子を押してくれて、私は綺麗な石畳の道をガタゴトと移動。
いつもより少し低くなった新鮮な視点で王都を巡らせてもらっています。
病院の中を歩くことはできますが、さすがに長距離となっては歩かせてもらえませんでした。王都は広いんです。
それに……このほうが非常事態に……ね。
「リタ、傷は痛くない?」
今はニコが後ろに立って、小さな体で頑張って押してくれています。
「うーん。傷はそんなに痛くないんだけど、ちょっとお尻が……」
綺麗な石畳と言っても石畳には違いないですからね。継ぎ目でガタゴトと揺れてしまうのは仕方がありません。
「ははっ。でもマリーだったらもっと痛かったさーっ」
「どういう意味だ?」
ニーナが快活な感じで笑いながら言うと、マリーさんは眉根を寄せてムッとします。
「面積的に!」
「……そうか。しかしニーナには言われたくないな。同類だろう?」
「あれ? 前に『医学的には尻がデカいのは良いことだ!』って、言ってなかったっけ?」
「それは出産の話だ!」
「そっかぁ。まあターシャがお嫁に行けたんだから私たちも大丈夫さぁ」
「え!? ターシャが嫁ぐ……もう嫁いだのか!?」
頭の後ろで繰り広げられる親しげな会話に、つい頬を緩めてしまいます。
狩猟仲間だった二人は仲が良いですから。あの頃を思い出している感じです。
……ところで男性はお尻の大きさで女性を判断するのでしょうか? 確かにターシャは安産体系ですが。
うーん。
お尻もお胸もない身としては気になります……っ!
「普通に考えたら、胸もお尻も身長もあったほうが良いですよね」
「ニコ?」
「いえ。なんだか大人の会話に聞こえてしまって。私、全然成長していませんから」
確かにまあ、ニコは全体が細いですから子供っぽいというか、ランドセルを背負ってもらえば小学生でも通用してしまうかもしれません。
「こんな私も、いつかはお嫁に行けるのでしょうか」
行けると思いますよ。
結局好みなんて十人十色でしょうし、ロリコンの気があればむしろ……いや、でもそれは大丈夫なのでしょうか。『ランドセルを背負えば小学生に見えるニコが好き!』という男性は本当に大丈夫なのでしょうか。
うーん。
なんだか不安になってきたなぁ……。
「あっ、じゃあ私たち結婚しちゃおうか!」
「は、――ぇえっ?」
「法律で同性婚を認めちゃえば堂々とできるし!」
「うぇっ、ふええええええええええ!?」
うん? 『しちゃおうか!』『しちゃいましょうか!』みたいな感じで二人であっはっはと笑ったら終しまいという、軽いノリのつもりだったのですが。
急に車椅子が止まって私が後ろを振り向くと、耳まで真っ赤にしたニコが斜め下へ顔を逸らしていました。
「に、ニコ、冗談だからね?」
どうも本気にされてしまったようだと気付いて、言ったのですが。
ニコの顔からは一気に赤らみが引いていき、むしろ青く暗い感じになり、瞼が半分閉じた目でこちらを見下ろしてきました。
ザ・ゴミを見る目……ッ!
「リタは自分の容姿とか今までの喋り方とか、男っぽい性格をちゃんと自覚しなさい」
幼い容姿からは想像も付かない、据わった声がドオオンと響きました。
「は、はい……すみません……」
本気で怒らせたら怖い人ナンバーワンは多分、ニコです。
「女房に怒られる旦那にしか見えないさ」
「本当に結婚してしまえば良いのにな」
後ろの二人がそんなことを言うと、今度は突き放すかのように車椅子のスピードが上がりました。
きっとまた顔が赤くなってるんだろうなぁ。
結論、ニコは可愛いです。




