混濁
「お姉様! お姉様!!」
遠くで音が鳴ってる……。
でも……キィィィィィって、凄い……耳鳴り…………。
――お姉様?
そんな風に私を呼んでくれるのって……。
「目を開けてくださいっ!」
え……。目……?
「お姉様っ、私が誰だかわかりますか!?」
「…………」
異常なほど重い感覚を持ちながら、でも声が出ずに、私はどうにか顎先を下へ動かして返事をします。
「――よかった…………。アリナ、ニコさんとニーナさんに連絡を!」
「はいっ」
アリナって……マルシアちゃんのメイドさんの名前……。
それじゃあここ、ダリア領……?
寝ているのに……頭が…………重たい……。
「――――お姉様、よく頑張ってくれました。本当に尊敬致します」
マルシアちゃんの声……だけど、顔がよく見えない。
あ……そっか。目を開けてないから……。
「無理しないでください。もう大丈――いえ、油断はできません。もう少し、頑張ってくださいませ!」
あ……今、マルシアちゃん。
『大丈夫』って言いかけて……止めた。
それを言っちゃうと危ないぐらい……まだ……助かったわけではない……のか、な。
「……マル……シア……」
「お姉様! まだ喋っては……っ」
どうにか目を開いて……でも……だめ。
砂嵐みたいな中に……人の顔がぼんやり浮かんでる……。
「ボクの他に……刺された人がいる……はずだ……。どうな…………った」
――。
一人称がボク……。じゃあ、この痛みは……?
「――はぁ。ご自分の心配より国民の心配の方が先なのですか。ニコさんやニーナさんが別人のように冷たい性格になっていると仰っていましたが、なにも変わっていませんのね」
「…………マルシアも……小さいまま……」
「お黙りくださいませ」
「……はは」
「――――ありがとうございます。私の心配までしなくても大丈夫ですから、ちゃんとお休みになってください」
どうにか頷くと……また頭が重くなり…………。
もう一度、眠りにつきました――――。




