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血の気の引いた操の姿を見るや、血相を変えた若い巫女たちが駆け寄ってくる。


(みさお)様!」


「お探し申し上げました」


「さあ、火桶の側へ。お身体が冷とうございます」


巫女たちは操を部屋へ通し、打ち掛けを羽織らせた。


「ありがとう」


巫女たちに礼を言う。


物忌(ものい)みの巫女の元へ行きます」


操は足早に(すのこ)を渡った。


社の奥にある間に、その巫女はいる。


その空間だけは空気が違う。


豪勢で厳かな造りになっている。


八尺瓊神社(やさかにじんじゃ)の由来とも言える、八尺瓊の勾玉が祀られる神聖な場所だ。


扉の前までつくと、自然と背筋が伸びる。


静かに扉を開けて中に入る。


部屋の奥に祀られた勾玉の前に跪き、祈りを捧げる一人の少女がいた。


年の頃は12歳程。


あかせと変わらない。


豪勢な装束に身を包み、豊かな黒髪を背に流している。


「物忌みの巫女」


操は呼びかける。


「強い穢れを感じます」


硬く冷たい声音。


「人の(なり)をした妖に会いましたね」


物忌みの巫女は立ち上がり、伏し目がちな目を操に向けた。


「ご存知ですか」


「あれらはこの森を縄張りとし、縄張りを統治しているのです」


あれら?この森を統治と言ったか?


「あれらと言うのは玫瑰神楽(まいかいかぐら)という名の大妖を筆頭とする一座のことです。八尺瓊神社は少なからず、あれらと調和を保つことによって共存しております」


共存とはどう言うことなのか。


神社は神々を祀り、穢れを忌み、悪しき妖や霊から人を守るためにあるのでは無いのか。


「お待ち下さい!」


「操殿」


水面のように澄んだ声が場を打った。


「人の形をしていようと所詮は妖。深入りせぬことです」


物忌みの巫女はそれっきり口を閉ざし、目を伏せ、勾玉を前に再び跪いた。









「だから早くお戻りくださいと申したのに!」


ぶっきら棒に言い放ったのは、この場の最年少あかせだ。


「容赦して下さいな」


早朝の朝餉の支度だ。


ちなみに操は刃物で菜の物を切る担当だ。


(ひえ)(あわ)、麦の入った米を洗うあかせは釜に水を適量入れて火にかける。


「そう言うわけには参りません!」


許してくれそうにない頑固者をどうしよう。


「あかせは心配性ですね」


良くも悪くも素直なこの娘は憎むに憎めない愛嬌がある。


ふとあかせの白い指先が視界に入る。


「また手にあかぎれになっていますね…」


操は、一回り小さな指をそっと攫って撫ぜた。


「み、操様!?」


あかせが頰を赤らめた丁度その時、


「まーたあかせ殿ばっかり!」


「そうですよ!私たちだって操様とお話ししたかったです!」


やきもちやきの姉巫女たちのことをすっかり忘れていた。


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