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壁と塔  作者: しゅー
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第一章二節

塔に入ったシーベルトは、リュックの中から先に銛の付いた2本のロープを取り出し、階段を登りながら編んでいく。


3階。廃れた壁画が印象的な大広間に出たシーベルトは、リュックから取り出した金属製の筒の下部に黒い粉を、上部に編んだロープを詰める。


転がっていた石で筒を固定し、筒の下部に繋がる縄に振動系魔法の摩擦で火をつけた。


火属性魔法が使えないわけではないが、魔力の消費が激しいため、少々時間がかかるものの、コストが少ない振動系魔法を使う。


縄の火が筒の下部に到達すると、筒が音を立ててロープを発射した。直後、バチンと上方から強く短い衝突音がする。


先程入れた黒い粉は通常の火薬だ。魔法で制御していないため、威力の増強や音の抑制はない。


塔は少し傾いているため、ロープと足を使って登っていく。

本来なら、浮遊魔法や、浮遊を可能にする魔道具を使用するところだが、シーベルトはどちらも持っていない。


12階。休む空間を見つけて朝食兼昼食を取る。

半分のフランスパンを水なしで平らげ、さらに上の階へと登る。

20階。目当ての場所に着いた。

鉱物探知を発動し、いつものの鉱石を探す。この塔は以前の文明が残したものであり、部屋の名前は、コンピュータルームと言うらしい。

これは、以前ここで知り合ったエルフの男性に聞いた話だった。


シーベルトはその話が本当だとは思っていない。いくらエルフが長寿だと言っても、以前の文明が滅びたのは記録がほぼないほど遠い昔であったし、人族が支配していたという点も信憑性が低いからだ。


だが今更問い質そうとしても、その後エルフはその後ここから落下死してしまった。


シーベルトの鉱物探知が目当ての鉱石を捉えた。

名前は銅。スラムで流通している貨幣にも使われている脆い金属だ。


スラムでは、銅板を4cm²に切ったものを貨幣として使用している。


しかし、今日は量が少ない。

銅をついに取り尽くしてしまったのだ。

採掘に限りがあるだろうと思ってはいたが、いざ現実に起こるとなると先が見えなくなる。


「参ったな…」


通常の半分ほどの量の胴を持ち帰ったシーベルトは、家の机に並べて思わず呟いた。


今まで貯めてあった銅数十枚と、偶然手に入れた金2枚があった。しかし、この程度の量であれば2ヶ月もしないうちに無くなってしまうだろう。


「新しい稼ぎを見つけないとな」


縋るように言ってみたものの、聞いている人すら居ないここでは無意味だった。

もっとも、人がいても同じようなものであるが。


次の日、パンを買うついでにブリエットに雇ってくれないか頼んでみたが、人を雇う余裕まで無いと断られてしまった。


「これからどうすればいいんだ…」


道で立ちつくしていると声が聞こえていたのか、声をかけられた。

初めは声の主さえ分からなかったものの、振り返ってみれば、良くお世話になる鍛冶屋の若い獣人、マヌエッボであった。


一週間に一度、採集した銅を溶かして銅板にするのに工場を使わせてもらっている。

鍛冶屋の獣人と聞くと、筋肉質な屈強な体つきを想像するが、マヌエッボは細身で、筋肉もさほど付いているとは言えなかった。だが、鋭く、冷徹な眼光は確かに獣人のものであった。


普段無口な彼が声をかけてきたのは、初めて工場を借りた時以来である。


そんな彼から告げられたのは、大きな仕事の以来だった。


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