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橋ができて、世界が変わった。

 人口密度が高い大都市のある大陸から少し離れたいわゆる離島で俺が生まれて両親に育てられ、自立してからは地元の職場で働いてる。

 俺の趣味は、ツーリングだ。俺が高校のときに原付で通学してからは、週末にはダチといっしょに海沿いに走ったり、釣り行ったりとかよくしたものだ。卒業してからはバイクに乗り換えて、島を一周したこともあった。

 まぁ、ツーリングには色々と思い出がある俺がこれからの行き先は、大都市のある大陸だ。

 俺が まだ幼い頃、隣の大陸と住んでいる島の大きさが同じだと思ったことがあった(まぁ、あんときはまだガキだったから、諺で言えば「井の中の蛙」だ)。だが、父さんが自室に置いてある自慢に誇っていたかの様な新品の地球儀を持って、ここが今いる島、ッんで隣がその大陸だよと、幼い俺でもわかりやすく説明した。正直そのときの俺は、まさかここまで大きさが違うのかと。それだけではなく、その大陸の隣には地球儀の半分を覆っている巨大陸が存在していることに、驚愕した。

 まあ、そんな事実を知ってからは、地図を見るようになり、どこに行きたいかを計画を立てて、ときどき大陸……ではなく本土に行くようになった。

 本土に渡る方法は、大型のトラックが何台でも乗れるフェリーしかなった。小型船もあるが、ヒトや自転車しか乗れないものが多い。けど両者に共通として言えるのは、自動車やヒトも同じように船が来るまでの間、長蛇の列が出来る。特にお盆や年末年始になると三、四時間なんて当たり前だった。

 それから船に乗れる合図が来ると、まるで小鳥が鳥かごに入る様に次々と入ってくる。

 俺は中でバイクを停めて、隅にある階段を登り、その先には客席がずらりと並んでいる広い部屋にたどり着いた。

 客席は飛行機や高速バスと違い非常に質素なデザインになっている。あとは仄かに薄暗い灯りを照らす蛍光灯、入り口付近にはどことなく年季のある自販機、そして前方の真ん中には大型のブラウン管テレビが備え付けられている。

 俺はそこにある客席には座らず、扉に向かい開けて外に出た。すると、さっきまでどこを見ても何もないだったの水平線の海を見ていたにも関わらず、このフェリーの上から見るとそれがどこまでも続いている様に思えた。初めてのときからもこの感覚は辞められない。

 そんなことを思っていたら、いつの間にかフェリーの中は、客や自動車でいっぱいになり就航した。ケータイのバイブの振動何かよりもなだらかに揺れながら目的地の本土の港に向かった。

 俺はこのときを待っていた。それはまるで、

「無限の可能性を秘めた未来に向けて歩み、前に進んでいる。」ッと、そんな躍動感が湧き上がる。

 フェリーの前方を見ながらそんなことを考えると、目の前には建設中の橋が架かっていた。


  十年後


 ひとり立ちしてから俺は、妻と幼い子供達を持つ家族になり、すっかり生活スタイルが変わった。夜遅く職場から自宅に帰ったら、子供達はすっかり就寝し、嫁は俺の為に夜食を用意した。互いにに愚痴を聞いたり(ときどき喧嘩することもあるが、最終的に仲直りする)、肩を揉んだりもした。

 どれもこれも俺自身にとって、新しいことで新鮮見がある。しかし、変わったのはそれだけではない。

 一年前に本土と島を結ぶ橋が加わり、本土の大都市に着く時間が大幅に短縮した。たった一本の橋により、島にはなかったコンビニや大型施設の建設ラッシュがはじまった。つまり物の物流が円滑になり、便利な世の中になった証となったときだ。

 しかしそれは、それまで活躍したフェリーの終わりでもあった。

 あのときの感覚が二度と体験出来なくなると、何処と無く寂しくなった。子供の頃からずっと慕われていたものが失い、思わず目がウルっとしてしまった。

 それでも、前に進まなければ何もはじまらないし、俺にはすでに大切な家族がいる。

 そして、俺はこれから家族サービスのため、俺の心の支えでもある嫁とこれからの未来を担う子供達を自家用車に乗せて大都市へと向かった。

デビュー作です。

よろしくお願いします。

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