【五話】風水佳
4話です。
という訳で、ケイと出会った東にある森、東の森とでも呼んでおこう。
東の森に着いた俺らだが…
「ケイ様!ご無事でしたか!連れ去られたと聞いて皆大慌てしてましたぞ!!」
「連れ去られてるわけあるか、それより風水佳の調子は?」
「あ、フウカ様ならようやく目を覚ました様です。ですが、まだ意識が朦朧としているため今はそっとして上げてください」
「了解」
フウカ…?
ケイがそう言うと見るからに弱そうな男が睨んできた。
「お前達がケイ様を連れ出したんだな!?」
腰に掛けてある短剣に手を伸ばし、構えてきた。
「連れ出したなんて人聞きの悪い、ただお話していただけだ」
「そっちこそ人聞きの悪い事を言うな!ケイ様、下がっていてください。コイツらはケイ様を殺そうと企んでいます!」
「は?」
ケイは呆れた顔で言った。
ケイは昔っから弱そうな奴を仲間にしちゃう癖があるのがめんどくさいところだ。
「殺すわけないだろ、もし殺そうとしてもイオナのご登場のせいでそれどころじゃねぇって」
「な……イ、イオナ…だとォ!?」
「俺はハクだ」
「私はニイナ」
「ま、まさか、イオナを倒したと言う……」
「まさかも何もイオナを倒したけど何か」
「ケイ様!やはり近づいてはなりません!コイツら強いやつを片っ端から倒す2人と噂になっています!ここはこの僕に任せてください!」
どうやらケイはこの言葉でキレたらしい。
俺らは少しだけ離れておこう。
「は?何言ってんだお前」
「で、ですから…」
「あのなぁ、あの2人は俺のお客様なんだよ…もとい俺のここに来る前の友人な?俺の事をあれこれ悪い噂をしたり陰口を叩くのは構わねぇ…だがあの2人を悪く言ったら俺が許さねぇ…」
ケイはキレると一人称が「俺」になり、ちょい吊り目の目が大きく開き、とてつもないオーラを放ちながら迫ってくる。
なので俺らは避難しているわけだ。
「で、ですが、あの2人はイオナを…」
「…………」
「ひ、ひえぇぇぇ!!」
ケイの威圧に負け、男は逃げて行った。
「あーケイが怒ってる時に逃げたら……」
ニイナが小声で言った。
この先を知っている者からすれば自殺行為だと身震いしてしまう。
ケイは怒ると謝らせるか何かさせるまで逃がさないのだ。
ケイは逃げた男の襟を掴み、目の前まで引きずり戻した。
「誰が逃げていいって言った……?ん?」
「いや、その……」
「私如きに威圧負けしてたら風水佳に会う権利なんてねぇよ」
ケイはこの後に低い声で静かに言う。
「お前、死んでこいよ」
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「良かったの?ケイ」
「何が?」
心配になったニイナがケイに聞く。
あの男は森の外に出て、怯えながらもすぐ右にある崖から落ちて行った。
「いいんだ、ここは私がいわゆるボス存在だし。死んだ方が成仏されてちゃんと死ねたし」
「それはそうだけど……」
「それに、ハクとニイナを悪扱いする奴は私には許せないんだよ」
「ケイ…」
俺は力がないニイナの声を聞いて咄嗟に反応する。
「泣いたっていいんだぜ!?」
「馬鹿なの?」
「すんません…」
森の中央に来ると広場があった。
広場にはざっと50ぐらいの人が居て、俺らが入ってくると睨むような視線や怯える視線が飛んでくる。
「この2人は私のお客さんだ!悪く言ったやつは私が許さねぇ!いいな!!」
ケイがみんなに呼びかけるように叫んだ。
そうすると広場に居た人は安心したような雰囲気を出して、さっきみたいにそれぞれ動き始めた。
俺達はその広場の2階へ行き、風水佳が寝ているという部屋の前までたどり着いた。
すると門番みたいな鎧の人が立っていた。
どんだけ厳重なんだって話よ……
「この先はフウカ様の部屋です。ケイ様以外許可無しに入場出来ません」
「私が許可する。だから開けろ」
「良いのですか!?」
「いいっつってんだろ」
「了解しました!」
ケイならではのゴリ押し口調、流石ケイって感じですわ。
扉が開くと、大きなベッドと机、窓がひとつの殺風景な部屋があった。
ベッドの上には風水佳が座って、窓の外をぼーっと眺めていた。
「やっと目覚めたか、風水佳」
「あ、ケイ……って……えぇ!?」
「よっ」
「はろー」
俺とニイナが風水佳に手軽な挨拶をする。
「なんでハクとニイナが!?まさかあの後死んだとかじゃないよね!?」
「死にました!」
「そんなドヤ顔しながら言うものじゃないでしょ!?なんで死んじゃうかなー」
「いやいや、なんでって言われても……」
俺とニイナは多少心配していたが、元気な風水佳で良かったと安心した。
「ところで、みんな風水佳のこと『フウカ』って呼んでたみたいだが…」
東の森の入口に居た弱そうな男も、部屋の前に居た鎧の男も、皆『フウカ様』って言っていたのを俺は聞き逃さなかった。
「あー、ちょっとねー…」
「これを見てくれ」
ケイがそう言うと、メニュー画面を開き、リスト画面に行き風水佳のリストともう一つのリストを俺らに見せた。
「なるほど…そういう事ね」
俺とニイナはそのリストを見ると全て理解した。
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【フウカ】
SSランク/拳闘士
殺した人数:20000
HP:5000/5000
MP:400/400
攻撃力:800(+99)
防御力:500(+99)
俊敏力:300(+99)
《契約成立済》
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風水佳、フウカのリストだった。
そしてもう一つのリスト…それは
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【フミカ】
Sランク/拳闘士
殺した人数:5000
悪魔に寄って存在を消された。
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死亡者リストだった。
「風水佳は悪魔との契約を失敗し、悪魔がフミカの体を乗っ取った。しかし、風水佳の粘り強さに降参し、二重人格になったってところか」
俺はリストから確認した事を簡単にまとめてみた。
「4/5当たり。私とフウカが和解して、協力してこの世界に生きようって決めたの」
「それが今終わったって感じか」
ケイが腕を組みながら言った。
「そゆこと」
「私達はこの世界に来た時ここの東の森を拠点にした。最初は私とフミカでSランクまでたどり着いた。そして徐々に仲間が増えて行って、悪魔と契約が出来ると聞き、ハク達が居た南の小屋の奥に行って悪魔との契約を試みたが失敗したんだ」
「そこからは私は記憶にないや、ただフウカと言い争ってた」
「眠っている時にこっそりリストを見た時に名前がフウカになっててビックリしたよ。だけど一瞬で理解出来た。それにSSランクになってたのも驚いた」
「それは私もビックリだよ!!」
「そんで、俺らは風水佳かフウカ、どっちで呼んだらいいんだ?」
「どっちでもいいよ!どっちでも反応するし」
「んじゃ風水佳でいいか、こっちの方が呼び慣れてるし」
しかし、初めて俺ら以外のステータスを見たけどイオナや俺らと比べたら違いすぎて俺らはそこに驚いた。
俺らはフウカのリストを見たとき死亡者リストからイオナのページを開き、ステータスを確認した。
死亡者リストからは実際に会い戦った人のステータスしか開けないと開く前に小さく書かれていたが、イオナと会ったこともあるし実際に倒したので問題は無かった。
ステ確認は実際に会った人か、殺した人のみ見れるらしい。
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【イオナ】
SSランク/双剣者
殺した人数:100000
HP:8000/8000
MP:400/400
攻撃力:1500(+99)
防御力:800(+99)
俊敏力:2400(+99)
《契約成立済》
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イオナとステータスはこうだった。
見る限り明らかに違いすぎる。
俺は目を疑い、ケイのステータスを確認してみた。
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【ケイ】
SSランク/銃剣者
殺した人数:60000
HP:6000/6000
MP:400/400
攻撃力:800(+99)
防御力:400(+99)
俊敏力:600(+99)
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見比べた時、SSランクならばMPは400だと分かった。
そしてトップ5に入っているケイがこのステータスだ。
つまり、3桁後半はかなり強いという事になる。
イオナはやっぱり最強と呼ばれるだけはあったようだ。
しかし、俺とニイナのステータスは全く同じだったが……
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【ハク】
ランク外/片手剣者
殺した人数:1
HP:20000/20000
MP:400/400
攻撃力:8000
防御力:5000
俊敏力:6000
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【ニイナ】
ランク外/弓者(弓使い)
殺した人数:1
HP:20000/20000
MP:400/400
攻撃力:8000
防御力:5000
俊敏力:6000
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チート級だった。
「でもイオナを倒したんでしょ?このステータスでよく勝てたね」
ーえ?
俺とニイナは同時に疑問を感じた。
「え…どういうこと…?」
ニイナが理解出来ずに風水佳に聞く。
「だって、2人のステータスこれだし」
風水佳が見ているステは俺らの所に書いてあるものと同じだ。
風水佳は俺らが理解していないことに気づき、「もぅ~」といいながら俺らのステータスを空中に書き出し、見せた。
まず空中に字をかける風水佳の能力(?)に驚いたが、それよりも書き出された俺らのステータスに驚きを隠せなかった。
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【ハク】
ランク外/片手剣者
殺した人数:1
HP:1000/1000
MP:100/100
攻撃力:200
防御力:400
俊敏力:200
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【ニイナ】
ランク外/弓者(弓使い)
殺した人数:1
HP:1000/1000
MP:100/100
攻撃力:200
防御力:400
俊敏力:200
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ステータスの何もかもが弱すぎている。
だが、俺らの見ているステータスはぶっ壊れ性能の方だ。
どういう事なのか、分からなくなってきてしまった。
これじゃあ最強と名乗るのもバカバカしいように見えてしまう。
いや、落ち着け。
「ニイナ、ちょっといいか?」
俺は少しケイ達と離れて俺ら達だけで話せる話をした。
「どう思ってるよ」
「恐らく、怪しまれないように相手にはこのステータスで見られないんだと思う」
「俺も同意見だ。もしあの天使もしくはその仲間か何かがこの世界を作り出したんだとしたら…」
「天使にコントロール権限があるから、私達のステータスを上手く隠している可能性がある」
「あぁ、じゃあ今はそんなに気にしなくても何とかしてくれるか…?」
「無理矢理天使は私達をここに連れ出した。私達を不利にすることはあっても約束に反する事の関連性のある事を自分からやるとは思えない」
「だよな。なら大丈夫だ」
なかなか難しい話をしてしまったが、今のところは天使がどうにかしてくれているのだろうと考察し、気にしないようにした。
「イオナに勝った秘策とかあったのー?」
俺らは何事も無かったように振り向き、
「いや何も」
と答えた。
「へー、気になるなー」
「ごめんね、生憎私達最強なんで」
「格好つけてぇぇー!」
風水佳がぶーっと頬を膨らますと、いつもと変わらない笑い声が飛び交った。
「あれ、気づけばもう暗くなってるな」
窓の外を見ると、夕日は沈んでいた。
俺とニイナは風水佳の部屋の壁際に横になると言うかお互い寄りかかりながら眠った。
「何だかんだでハクとニイナってお似合いだよね」
ベッドで寝ていた風水佳がそっと起き上がり、私に話しかけた。
ベッドの右横に布団で寝ていた私は
「昔からだろ」
と言いながら、起き上がった。
「何しても似てたもんねぇー」
「死ぬ時まで一緒とは、飛んだ人生だったな…」
「そう言えば、ハクとニイナに殺し合いって言うイメージ無いんだけど目的とかあるのかな??」
「この世界を壊すって言ってたぞ」
「ええぇぇ!?」
風水佳が大声を出すとニイナが目を覚ましたらしく、「どうしたの…?」と聞いてきた。
風水佳は「なんでもないなんでもない」と誤魔化す。
「なんでそんなことを目的に…?」
風水佳はさっきよりも小声で話す。
「私には分からん。でもそれが最終目標って言ってたな」
「へー…」
◇
俺とニイナは昨日、夢の中ならば何かしらすれば天使との会話が可能だと考えた。
そして、今日それが実現した。
俺とニイナはどうしても気になることがあったので、今日こそは夢の中で天使に会えないかと眠りにつく前に話していた。
案の定2人で寝たら天使との会話に成功した。
『なんのご要件で?』
「俺らのステータスに関してだ。この違いはお前達がコントロールしてくれているのか?」
俺は風水佳が書いたステータスと俺らが見ているステータスを同時に見せながら言った。
『そうですね。相手からは見えなくしている、カモフラージュの様なものです』
なるほど…なら…
「私達のカモフラージュされているステータスすらも見れなくすることは出来ない?」
俺が言おうとしたらニイナが言ってくれた。
『なぜ故に?』
「このステで最強って名乗るのが乗り気にならないって言うか、調子が出ないんだよ」
『なるほど、そういう事でしたら明日からそのような設定をしておきましょう』
これで他の人に弱ステを見られなくて済む。
ただ、まだまだ天使に聞きたいことは沢山あるが天使との会話は長く続かない。
きっと俺とニイナの集中力を一点に集中させ、一つの目的のために行うことによって天使との会話が可能。
そのため、体力を消耗する。
今日はここまでしか会話出来なかったが、ステ隠しが出来たので上出来と勝手に考えた。
そうしている時風水佳は俺らの事を見ながら、目の色を変えた……
ご覧頂きありがとうございます。
多少時間がかかりましたがなんとか書くことが出来ました。
なるべく更新頻度を高めに行きたいと思っていますがなかなか時間が取れずにいます_( 」∠)_