【三話】イオナと言う最強
遅れてすみません!
「お前さん、イオナって名前だろ」
「おや、知られていたか、間違いなく私がイオナだ」
なんてこったい、まさか俺達から仕掛ける相手が自ら来るとは…
「君達2人の噂は耳にしている」
もう、情報が出回っているのか…原因はケイを連れて来たことか…?
「ハク、どうする?」
ニイナが近くに寄って呟く。
「手間が省けた、やるしかないだろ」
ニイナは意見が合致したのか、軽く微笑んで頷いた。
「殺し合いをする前に敵同士少し話さないか?」
「おや、そんなことを言うとは余裕だね…?」
イオナは殺すと言いつつも警戒していない。
つまりイオナ自身もまだ戦うつもりはないようだった。
「生憎俺ら、最強なんでね」
「ハッハッハ!面白いことを言う奴らだ。まあいい、パンも美味かったし、少し話すとしよう」
◇
「お前さんはここに来てどのくらい経つんだ?」
「私か?私はまだ1週間だ」
「1週間でそんなに強くなったのか…!?」
ケイが驚くように言った。
「俺らはまだ来て1晩しか経っていない、出来る限りの情報の提供を要求したいんだが、いいか?」
「例えば悪魔の契約の話とか…」
ニイナが俺が1番知りたい事をストレートで問いかけてきて、正直ビビった。
ニイナが俺が考えていたものと同じことを言ったことに対してではなく異様なオーラを放っているイオナに直結に言い放ったことに対してだ。
「なるほど、いいだろう。話してやろうか」
「ありがたいな」
「そのかわりパンくれ」
「あ、はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【悪魔との契約】
それは限られた人物でしかできないと言われる禁断の行為。
一般人が契約を行えばすぐさま体は分裂し、粉々になってしまう。
私が契約したのはよく知られている悪魔、サタンと言ったところか、テンプレと言えばテンプレだが悪魔と契約をすれば今の力の数十万と言う力を発揮出来る。
ちなみに悪魔と契約できる場所は南部の森の中心部だ。ここから凄く近いところにある。
「なるほどな。限られた人物……ね……」
「おや、ハクと言ったか。察するのが速いなぁ」
ニイナも気にかかったであろう言葉。
それは《限られた人物》だ。
つまり……
「そろそろいいかな。体が疼き出した」
俺とニイナは頷き、外へ出た。
◇
小屋から離れたところに来た俺らはイオナとの決戦に向けて、準備をしていた。
「私からやる。異論は認めん」
「あ、はい…」
ニイナは本当の最強だ。それに対してイオナは死んだ人の中の最強だ。
最強同士の戦い、決着はもう見えている。
俺が加わるまでもない。
「さぁ、始めようか!」
イオナとニイナが位置につく。
「なぁ、ハク…これ大丈夫なのか…?相手ってイオナ…だぞ…?」
「なぁに、ビビりすぎだ」
「で、でもさ……」
とは言ったもののイオナの何処と無く感じる異様なオーラは気になって仕方が無い。
「そっちからどうぞ」
イオナが双剣を手にし、呼びかける。
「はぁ!」
その瞬間ニイナは最大限に溜めた矢を放つ。
その矢はイオナの顔に一直線で飛んでいくが、イオナは笑いながら、その矢を二つの剣で切り刻んだ。
「なっ…!」
ニイナは攻撃が通じていないのに気づき、体制を整える。
「さて、こっちからも行かせてもらおうか」
そう言うと、イオナは一瞬でニイナの目の前に現れ剣を振りかざした。ニイナは2つの剣を華麗に交わし、距離を取る。
ニイナは背中に付いている機械みたいなものを銃の形に変形させ、6丁の銃で一斉射撃をした。
だが、その一斉射撃も交わしたり剣で薙ぎ払ったりし、イオナは無傷だった。
「くっ…!」
全て防いだイオナはニイナの隙をついて距離を詰める。
そして、恐ろしい速さで2つの剣を縦へ横へ斜めへ、たまに突いたり振りかざす。
だが、ニイナはそれをすべて見極め背中の機械みたいなもので防いだり、持っている弓で防いだりしている。
「ほぇ…イオナと互角で戦ってるって…ニイナ、強いな…」
「でもあれ2人とも本気じゃない…」
「ぇえ!?まだ本気じゃないの!?あれで!?」
驚くのもおかしくない。俺もさすがにイオナの強さに驚いている。本気では無いとは言えニイナよりも強いとは…
一見互角に見える戦いだが、イオナの一方的な戦いになっている。ニイナの攻撃はすべて当たっていない。
だが、イオナは確実に防いでいなければすべて当たっているところピンポイントに剣を振ってくる。
「はぁ…はぁ…」
イオナが体制を立て直すのか、1度距離を取った。
ニイナはとても疲れているようだ。
それに対してイオナはまだ息切れもせずに笑っている。
「ニイナ交代だ」
「!?なんで…まだ私やれる…!」
「分かってるだろ、一方的すぎる」
「…くっ……分かった…」
「良いよな?選手交代だ」
俺はイオナに聞く。
「問題ない」
イオナは笑いながら答える。
双剣と片手剣単純に考えて俺の方が不利だ。
だが、無理ではない。
ニイナの弱点はステータスに囚われているからだ。
ニイナは昔からステータスが低いとダメみたいなことを言う。初めてニイナと考えが一致しなかった事だ。
「いくぞ」
そういい、俺はイオナに向かって真正面から突っ込む。
ぶつかりそうなところで俺は背後へと回った。
イオナは当然後ろを向く。
だが、それは俺の思い込みからなる幻像。
《俺はイオナの後ろに回り込んだ》
と自分自身を思い込ませることで脳からの発信はそれを優先する。
つまり、意識、気配などを体よりも先に指定した位置に飛ばし、良ければ体も後から来る。良くなければ意識は体がある場所へ戻ってくる。
これはステータスとかの問題ではない。単なる思い込みの容量の問題に過ぎない。
現実世界で【思い込み】と言う言葉を意識し、何度もゲームで特訓してきた俺はこの技を完全に習得している。その技がこの世界で通じるかどうか確認したのが田んぼ道で情報を貰った人物の決闘だ。
俺はあの時
《既に相手の目の前に居る》
と思い込みをし、それを実行した。
案の定思い込みと言う技は出来たので、イオナには充分勝てると思っていたが、イオナもかなり強い奴だったので俺はただ今苦戦中である。
意識を戻した俺は剣を振るが、対応が速いイオナは後ろのまま片方の剣を俺の剣を重なり合わせた。
「くそ…!」
「今のは驚いた。一体何が起きたのか分からなかったよ」
「そりゃどうも」
イオナは休むことなく俺に突進してくる。
《俺は既に避けている》
イオナは一瞬で俺の目の前に立ち、剣を刺したが、俺は既に避けている。
そして、俺は隙の出来たイオナに鞘で腹を殴る。
「ぐはっ……!!」
初めてイオナにダメージを与えた時だ。
イオナはよろけながらも少しずつ距離を取り、笑い始めた。
「ハッハッ!いいねぇ!面白いよ!私の猛攻撃を無傷で、その上私にダメージを与えた!こんな奴は初めてだ!!」
「お前さんもかなり強いけどな、俺だってかなり真剣にやってるぞ?」
「いいだろう!私も本気でやろう!!フハハハハ!!!」
これは悪魔さんのご登場の雰囲気が……
「ちょ…ちょちょちょちょいちょいちょい!!やばいんじゃないのか!?だって…悪魔て…!!」
ケイが流石に耐えられずに怯えている。
それをニイナはボロボロの体で慰めている。
「大丈夫、ハクは最強だから。私もだけど」
「ほ、本当か?死なないよな!?確かにハクは強いけれども!」
「多分…大丈夫…」
「聖書!!我は悪魔との契約を交わしたイオナ!悪魔サタンよ!お前の力全てを借りるぞ!!」
その途端イオナからは異様なオーラが消えた。
と思ったその瞬間また異様なオーラが出てきた。だが、それは見ているだけでさっきの数百倍ヤバイように感じた。
「ハハハ!これが私の本気だ。私の本気とお前の本気…どっちが強いかいざ勝負!!」
「あぁ…」
これは下手したら死ぬ。
俺とニイナはそう感じた。
イオナはさっきよりも速く俺との距離を詰める。
そして片方の剣を大きく振りかざす。
俺はそれを防ぐように剣で押さえ込んだ。
しかし、悪魔の力を手にしたイオナの力はとんでもない程のぶっ壊れ性能だった。
《俺はイオナの背後に居る》
イオナの背後に移動した俺はすぐさま距離を取るが、イオナはすぐに反応し距離を詰めてくる。
《俺は相手の攻撃が当たっていない》
イオナの攻撃をなんとか全て避け、また距離を取る。
「なんだ?逃げてばっかりじゃないか。それがお前の本気か?それとも力を借りすぎたか…?」
「まさにぶっ壊れ性能だな。しかも聖書って…悪魔との契約で聖書も何も無いだろ。なにがテスタメントじゃい」
「まあ仕方ないだろう?みんなこの力に怯え、私に戦いを挑んでくる奴なんて居なくなったから自分から動き出したんだ」
なるほど、こんなに強ければそうなるわ。
でも、俺独自の技はまだ効いている。上手く活用すればなんとか攻撃を与えることは出来るだろうが、何せ意識を飛ばすものなんで、体力消耗は激しいし、何回も出来るものでもない。
でも、イオナは一つ勘違いをしている。
「ニイナ!!俺に向かって矢をフルパワーで放て!!」
「分かった」
ニイナはそう言うと矢を取り出し、俺に向けて放つ準備をする。
「おい!ニイナ!ハクを殺すつもりじゃないだろうな!?」
「なわけないでしょ?ケイがそんなに怯えてるなんて風水佳みたいだよ?」
「うっ…だって、イオナ見たら誰だってこうなるさ」
ニイナはそう言っている間にも矢をハクに向けて放った。
俺はニイナの矢をまともに受けた。
「ぐっ……!」
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【思い込み】
これは俺が独自に編み出した技。
移動だけではなくこれは他にも使える。
例えば
《俺は本気を出せない》
と思い込むとすると、そう体の構造になる。
ケイと手合わせした時はその思い込みを使った。
ケイを傷つけない為にも。
こうなってくると何でも出来る。と言うイメージが出てくるが、そううまくも行かない。
例えば
《もう世界の核が壊れている》
これは思い込みは効かない。
俺が間接的に関わることは思い込みが出来ないのだ。
それなら言い方を変えて
《俺は世界の核の場所に居る》
ならいいかと言われてもこれも出来ない。
思い込みの最低条件は俺の見える範囲だけで出来る技。自分自身のステや能力をあげることは出来るが永遠に使えない。
そして使う内容をこと細かく考えなければいけない。
何も考えなしにただ移動したいからとか、こうなってみたいからという考えでは発動しない。
簡単に言うと確実で確信でなければならないという事だ。
つまり世界の核を壊したければ、世界の核を思い込みではなく物理的に壊さなければならない。
例えその場所に居てもそれが本当か分からない時点で思い込みは使えない。
話が戻るが、
俺は今
《ニイナの攻撃を5倍にして自分の力に変える》
と思い込んだ。
一時的に俺のステを上げる方法だ。
永遠にはつかえない。なぜなら体力の消耗が何よりも速いからである。
ニイナの渾身の一撃を吸収した俺は5倍にし力を手に入れた。
「ほぅ、限界を超えたか?それとも最後の切り札とやらか?」
イオナは勘違いしている、俺に対して。
「さてと、イオナ!お前、さっき俺の本気とお前の本気どっちが強いかと言ったな」
「あぁ、その結果が今の状況だ。お前は私の力に逃げることしかー」
「違うね」
「なんだと…?」
そう、俺はイオナに対して本気でやってるとは言っていない。
「俺は1度もお前に対して本気なんて言っていないし、なってもいない」
俺はイオナに指を指して少しばかり微笑む。
「それは嘘だ。お前は私がサタンの力を借りる前に言っているはずだ」
「いや、俺は《真剣にやっている》としか言っていない」
「なっ…私が勝手に相手は本気でやっていると思い込んでいたのか…?」
「その通り、俺はお前と会ってから、戦ってから一度も本気を出していない。そしてこれからも本気は出さない。そのためにニイナから力を貰ったんだ」
とは言え、イオナは知らぬ間に【思い込み】を習得している。
だから本気以上の力を出して戦うことが出来た。
イオナはまだ思い込みの技の存在を知らない…となればっ!
知らない間に片付けないとな!!
「なるほど…面白い!こんな相手は初めてだ!!」
「さて、そろそろ終わりにしよう」
「今の私に勝てると思っているのか?」
「ああ、勿論。生憎俺ら、最強なんでね」
ご覧頂きありがとうございます!
更新頻度を上げたいんですが、どうしても不定期になってしまいます…すみません…!
最初からクライマックス展開ですが、ここからどんどん物語が進んでいきますので宜しくお願いします!