表裏一体_本当の依頼
公園で楽しく遊ぶ子供たち。
手を繋ぎ、散歩する老夫婦。
ピクニックを楽しむ家族たち。
そんな光景を眺めながら、藤堂は一人ベンチに座り、物思いに耽っていた。
「あら、あなたでもこういうところが似合うのね」
「そうですかね?どうでもいいことですが」
「そんなこともないわよ。風景に溶け込めるって素敵じゃない?」
伴場は藤堂に並び、隣に腰掛ける。
「で、なぜ公園なんですか?」
「意外と落ち着くのよね。それに生臭い話をするのに薄暗いところにいたら、気が滅入ってきちゃうわ」
伴場は長い髪をかきあげた。
「で、どんな依頼なのかしら」
「そうですね。早速、話に入りましょう。今回の依頼はシージャックの支援といったところですかね」
「シージャック?」
「えぇ、うちのボスが今度はシージャックをすると言い出してましてね、まったく手が焼けますよ」
「まったくなんて顔には見えないけど?」
確かに藤堂は実に楽しそうな顔をしていた。
「でも、支援ってまた珍しい依頼ね。対象はなし?」
「ええ。何人殺さなければならないかは、その時しだいってことで」
「そう」
藤堂が少しの間を持って、更に話を進める。
「と、いうのは表向きだけです」
「…………つまり?」
伴場は話の先に見当がつかなかった。
「今回の本当の依頼は、私の組織の全滅です」
実に楽しそうに藤堂の口元が歪む。
「あら、そんな依頼していいのかしらね?組織の頭脳さんが」
「構いませんよ。私はもともとあそこの人間ではないのでね。貴方ほどの方であれば、それくらい簡単ですよね?」
「軍隊相手にするわけではないし、そんなに時間はかからないと思うわ」
「それを聞いて安心しました。さすが、クルーエルさんですね」
「私の仕事はそれだけ?」
「ええ。ただ、最初から殺しまわってもらっては困ります。その時が来たら、私の方からお伝えしますので、それまではうちのボスに従っていてください」
「そんなことお安い御用だわ」
「そして、私の行動には一切関知も詮索しないでください。それ相応の報酬はもちろんお支払いいたしますので」
「そもそも、貴方が何をしようとも私には興味ないわ。で、いくら積んでくれるのかしら?」
「それは、言い値で構いません。私がお支払するわけでもないので」
「そう。じゃあまたあとで伝えるわ。それとわかっているとは思うけど―――――」
「すべて、前金ですね?」
「ええ。そうしていただけると助かるわ」
「承知いたしていますよ」
「そう。じゃあ、また今度詳細を教えてね」
伴場は席を立つ。
「せっかくだから、ここの空気でも味わっていくといいわ。都会の割にいい気分になれるわよ」
「そうですね。たまにはいいかもしれませんね」
「じゃあ、また宜しくね」
伴場はその場を後にした。




