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代償の絵  作者: 水芦 傑
25 years later
41/50

ウラ_裏切り

時刻 二二:四〇


四階 一等客室


 一室に佇む江澤を五つの死体が囲んでいる。それは全てつい先程まで藤堂の仲間であった組織の人間だった。

「ったく、ここで待ってないとダメなのかよ」

 感情を吐き捨てる江澤は不機嫌そうにソファで足を組みなおした。

 一等客室の扉が不意に開かれる。

 扉の奥に姿を現したのは藤堂だった。藤堂はゆっくりと歩を進めていくが、地に伏している死体には興味すら示さなかった。

「遅い」

「すみません。ですが、ようやく手に入れましたよ」

「本当か?代償の絵なのか?」

 疑い深くなっている江澤を無視し、藤堂は歩み寄り、右手を差し出した。それに呼応し、江澤も立ち上がる。

「本物かどうかは自分で確かめてください」

「で、どうすればいいんだ?」

「手を貸していただけますか?どちらでも構いません」

 江澤は藤堂に右手を差し出した。藤堂は江澤が差し出してきた手を握り、目を閉じた。数秒、そのままでいた藤堂がゆっくりと目を開いて、右手を離した。

「これでいいですよ。どうですか?」

「なるほど。この感じがそうなのか?あまり変わったような気はしないが」

「そういうものですよ。それを使うときにはきっとその力に驚嘆するでしょう」

「なるほど。折角だからよ、目的の前にこの力を裏社会最強と謳われるクルーエルで試してみてぇんだが、どうだ?」

 江澤の言葉には代償の絵のせいか、表情は自信が満ち満ちている。

「江澤、やめておいた方が身の為ですよ」

「おい、藤堂。俺には代償の絵があるんだぜ?なのに、俺が負けるって言うのかよ?」

「えぇ、そうです」

 藤堂の言い切ったことに江澤は眉をひそめることで僅かな苛立ちを見せた。

「いいですか?貴方はまだ代償の絵を手に入れたばかりです。つまり、その代償の絵の力を完璧に扱うことは不可能に近いでしょう。それに対して、彼女は代償の絵をもってしても倒せないという噂を聞きます。そうなると、貴方の運が良くて引き分け、悪ければ殺されてしまうかもしれません。それでも、相手にクルーエルさんを選びますか?」

 藤堂は正論を言い放ったことで江澤には返す言葉がなく、言葉に詰まっている。

「ちっ」

「言いたくありませんが、正直、今の貴方では勝算はありません。それなのに貴方に行動不能になられたら、後々厄介なことになるんですよ」

「くそっ!!」

 江澤は近くにあったソファーを蹴り飛ばし、怒りをぶつけた。

『おい!藤堂!!応答しろ!』

 不意に藤堂の腰に下げられている無線機に連絡が入った。その着ていたスーツに似つかわしくない無線機から怒号のような声が聞こえてくる。その声は藤堂を側近として抱える紫村のものだった。

 藤堂は無線機を手に取り、応答した。

「はい。なんですか?ボス」

『今すぐパーティー会場に戻って来い。あの女のことで聞きてぇことがあるんだ』

「今話してはもらえないですか?」

『とにかく戻って来い!ちゃんと会って話してぇことなんだ!』

「了解しました」

 藤堂は無線機を元の場所に戻し、溜め息を軽く吐いた。

「ふぅ。あの人は本当に自分勝手な人だ」

「どうするつもりだ?」

「仕方ありません。少し早いと思いますが、貴方の復讐の時が来たみたいです。ボスには、いえ、紫村にお世話になった恩義があるので最後に取っておきたかったんですがね」

 藤堂の言葉に感謝の感情は欠片も感じられない。江澤は先程まで苛立っていたことが嘘のように笑みを作った。

「そうか、そうかよ。ようやく三か月前の借りが返せるのか」

「えぇ、良かったですね。では、行きましょうか」

 藤堂が歩き出そうとした瞬間、藤堂の携帯が鳴った。

「ちょっとすみません。もしもし。……はい、はい。そうですか、終わりましたか……はい、はい。了解しました。では、失礼します」

 藤堂は携帯を切り、何事もなかったかのように歩きだした。が、江澤がそれを呼び止めた。

「今の電話、誰からだ?」

「貴方には関係のないことです。そして、今回の計画にも、ね」

「だったらいいが」

「では今度こそ参りましょうか」

 藤堂は部屋を後にし、江澤もそれに続いた。そして、エレベーターホールまで進んだのだが、そこで江澤は立ち止まった。

「どうかしましたか?まだ、何か…」

「なぁ、一つ思ったんだけどよ…」

「なんです?」

 江澤の口元が不気味に歪む。それは先程の笑みの延長なのか、それとも別の意味を持っているのか。

「代償の絵が手に入った今、お前は必要ねぇってことにだよ」

 ハンドガンの銃口を藤堂に向ける。

「いったい何を―――――」

 言葉の続きが遮られた。江澤は言葉の最中に手に持っていたハンドガンを藤堂の眉間を狙い、それを放った。

 何の躊躇いもなく。

「くっくっくっ…」

 藤堂の体がゆっくりと後方に倒れた。ついでにと言わんばかりに、江澤はさらに銃弾を胸へと撃ち込んだ。

「俺も裏切り者だからよお。よくわかるんだ。お前のような奴が一番信用ならねえってことがなあ!!!」

 江澤は喜びに満ちた表情で踵を返す。

「お前の役割は終わったんだ。お疲れ様」

 藤堂に皮肉を残し、江澤はその場を後にした。



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