乗船
2000年 六月某日
時代は二十世紀から二十一世紀へと移り変わろうとしていた。
しかし、絵が存在する限り、人を魅了し、人に不幸と幸福を与え、絵は争いを望み、絶対的な存在として争いの中心に佇み続ける。
そして、絵を巡る争いの舞台として選ばれたのは―――――船上だった。
豪華客船、オーシャン・シップ。
莫大な製作費を投じ、何年もの歳月を掛けて完成されたオーシャン・シップ。
オーシャン・シップはその豪華な造りとは対照的に、一般人でも気軽に乗れるというものをテーマにしたもので、その料金は他の豪華客船と比べても安いものだった。
オーシャン・シップには一等客室と二等客室のみでそれより下はない。これもまた、豪華さを体感できるようにと、劣って見られる三等客室は作らなかった。
二等客室は一等客室と比べれば、確かに見劣りするものの、それでも値段の割には豪華だった。その為か、このオーシャン・シップには完成当時から沢山の人が詰めかけた。
オーシャン・シップは六階まであり、一階と二階にはレストランやカフェ、それにバーなどがあり、その下の第一甲板には娯楽施設やマッサージ施設、更には劇場や医務室などのサービスが完備されている。三階と四階は二等客室になっており、五階と六階は一等客室となっている。娯楽施設の更に下の第二甲板には、貨物室や機関室がある。
そんなオーシャン・シップはこの年で十周年を迎える。
船内での十周年パーティーが企画され、パーティーには各界の著名人が招待されることになった。
そして、その為の航海に選ばれた日時が今日という日だった。