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2章 黎明  13話 轟南小学校



ブロロロロロォォ。



護送車の独特のエンジン音が静かな学校の敷地に響く。


校門を開き、車を乗り入れ駐車場に停める。やはり、ここで待たせた方がいい。皆に待つように言い、今回はタマキを運転席に、穂香を助手席に座らせ、二人で警戒するように言いきかせる。タマキを信じるのは危険だ。

花と杏は友里の膝でスヤスヤと眠っている。たまに寝苦しそうに寝返りを打つ仕草がたまらなく可愛い。せめて怖い夢を見ずに朝を迎えさせてあげたいな、と切に思う。


夜の学校というのは不気味だ。怪談などの舞台にもよくなるし、俺はその手の話が大の苦手で、大人になった今でも夜の体育館横のトイレなどには一人で行きたくない。そんなところを一人で歩かないといけないなんて、最悪だ。さっさと子供たちを確認して、オサラバしよう。

校舎の職員室に当たる部分と体育館には電気がついている。体育館の扉は閉まっていた。外には子供たちの靴が20足近く散乱している。いる。子供たちは体育館の中に確実にいる。


体育館の入口の脇に回ると、奥からごそごそという物音とうめき声がいくつか聞こえる。

こちら側は体育館の側面で金網の向こうにはプールが目の前に広がっている。今は冬なので水は抜かれ、独特の侘しさを漂わせている。

迎えに来たママさんが二人、学校の先生らしき者達に乱暴されている。よく見ると周りには何人か男性の死体が転がっている。パパさん達なのか、それとも正気だった先生たちなのかはよく分からない。

ママさん達に被さっている赤目の頭を割り、ママさん達に応急処置を施す。ママさんたちの俺を見上げる目が神でも拝むような目なのは勘弁してほしい。駐車場までいけば、警察の車があるので安全だ、と伝えると安堵の涙を流していた。


「子供たちを助けに行きますので、少しだけ待っていてください。」


そう言うと、俺は体育館の壁の出っ張りに掴まりながら、ロッククライミングのようにスルスルと壁を上っていく。


2階の窓まで行き中を覗くと、体育館の中央に血まみれで倒れる男達の姿とその近くで倒れている大人の女性。その他には誰も見当たらない。窓の隙間から水を流し込み、流れを制御しながらピッキングの要領で、窓のカギを開ける。


中に入ると2階の通路から体育館フロアを見下ろせるようになっている。2階の観客席という程立派なものではなく、2階の窓を開閉するためにある回廊だ。サッと手すりを乗り越え、1階へ飛び降りる。


コートには誰もいない。


「おーい!誰かいないかー!はなパパだ!助けに来たぞー!」


するとステージの赤い天幕カーテンがふわりと揺れる。

袖から小さな顔がいくつか覗く。


「コーチ!!」

「はなパパぁぁ!!」


ステージからどっと子供たちが押し寄せてくる。

俺の周りに集まり、それぞれが思い思いに口にする安堵の言葉。

いいから、一旦落ち着け、お前ら。怖かったのはわかるから。


癒しの光の力も借りて、子供たちを落ち着かせる。


奥から出てきた大人は佐野京香さのきょうかただ一人。ママさんコーチの一人だ。サバサバしていて、友里とは気が合う。元ヤンキーらしいが、俺はこういうさっぱりした人は好きだな。


どうやら倒れている3人は、俺の代わりに練習を見てくれていたバスケ経験者のママさんと花たちの学年担当の部活のひょろひょろ顧問と部活主任で6年生担当のイケメン顧問。もうすぐ練習試合だから部活とミニバスの練習方針や作戦のすり合わせをしに来たようだ。俺がいなかったので、詳しい話ができずに帰るかと思ったら、いきなりママさんコーチに襲い掛かったらしい。


びっくりして、引き離そうとした子供たちを突き飛ばし、乱暴を始めたようだ。

小学校4年生の子供達は何が起こっているか分からなかったが、ママたちが苦しそうに助けを求めるので、無我夢中で先生たちにボールをぶつけたりモップで叩いたりしたが、乱暴を止めようとしなかった。皆でママさんから引きはがしたところで、京香ママが落ちていたモップの先端で自分に腰を振ってきたイケメン先生を何度も殴ると動かなくなったようだ。その時の京香ママはメチャクチャ恐かったらしい。


「テメェ!このクソチ〇〇×野郎が!誰に断って挿れてんだぁ!あぁぁん!?引き千切ってゴキブリの餌にすんぞ!この〇××〇が!!」


的な事を、仰りながらご撲殺になられていらっしゃったご様子で。。子供たちが縮みあがっていた。


もう一人のひょろひょろ顧問を殴っていると、ひょろひょろは発狂して自分が覆いかぶさっていたママさんの首を絞め出し、顧問が動かなくなったころには、ママさんも眠ったように死んでいたらしい。この人はチームで一番バスケの下手な優子ちゃんのママさんだ。名前は知らない。バスケ経験者と言ってたからすごい期待したら、ビックリするほど下手くそだったので見本はお願いしたことがない。とても優しいママさんでどちらかと言うと突き指や足を挫いた子供たちの応急処置の方が得意なタイプだ。優子ちゃんはずっと泣いている。この子は少し厳しいことを言うとすぐ泣き始め、練習中もずっと泣いているジメジメ子ちゃんだ。が、今は泣いていい時だ。思う存分、泣かせてあげよう。その気持ちはさっき俺たちも味わってきたばかりだから。


子供たちは先生に突き飛ばされたりして、軽い怪我を負っているが、命に別状はない。


ここにいる4年生は全部で15人。これに車で待っている花を入れれば、ミニバスに入ってくれている子供たちは全員いる。練習試合前なので全員集合していたんだろう。嬉しいことだ。京香ママの下の子供で、杏と同級生の小1の翔平しょうへいも見学に来てた。今はいびきをかいて寝ている。

4年生は、12人が女子で、男子は4人だ。日本の小学校では、男子のバスケットの公式試合は行われない。何故かバスケットは女子のスポーツなのだ。だから、男子には人気がない。結果、非常に数が少なく、5人に満たないので、非公式の練習試合もできない。それなのに、うちの男子は嫌な顔一つせず、女子が強くなるために俺たちが女子よりも強くあり続けて、練習相手になってやる、と頑張ってくれる。いい子達だ。


------------------------------------

NO4  はるか;フォワード、エース。

No5  はな;ポイントガード、俺の娘。

No6  しおり;センター、背が高くて力持ち。

No7  美羽みう;フォワード、短距離走は学年一番。

No8  あい;フォワード、負けん気強い。

No9  小町こまち;センター

No10 美奈子みなこ;フォワード

No11 理乃りの;ポイントガード

No12 桃花ももか;フォワード

No13 真奈美まなみ;センター

No14 美緒みお;フォワード

No15 優子ゆうこ;ポイントガード


No21 健太けんた;ポイントガード、運動神経抜群。

No22 優斗ゆうと;センター、努力家。

No23 大地だいち;センター

No24 亮平りょうへい;フォワード


No31 翔平しょうへい;優斗の弟、杏の同級生で小1


ママコーチ 佐野京香さのきょうか;優斗のママ。元ヤンキー。

お迎えママ 田上順子たがみじゅんこ;亮平のママ。

お迎えママ 山本恵子やまもとけいこ;栞のママ。

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一気に仲間が増えたな。10歳が15人か。しっかり育てて、数年後を夢見て光源氏を目指したいところだが、娘の同級生だ。流石にそんな気にはなれない。そうなったらやっぱり。。戦闘兵器に鍛え上げるんですよ!バスケで闘う集団心理を植え付けたのと同じ要領で、クソモンスター共を駆逐する少年少女兵団を作るんでゲスよ。心が痛むがこれからの世界を生き抜くためだ、仕方ない。俺はやりたくないが、創造主様が望むんだから仕方がないんだ。


遠くない将来、異世界を震え上がらせる少年少女魔法師団Kスクエアードが小さく産声を上げた瞬間だった。



◆ ◆ ◆


京香さんも綺麗に洗ってあげましたとも。時々「あん」とか何とか、京香さんらしくないかわいらしい声が聞こえたけど、子供たちと話している振りをしてスルーしましたよ。京香さんは火照った顔で「また洗ってもらおうかなぁ」的なことを仰っていたような気がしますが、聞こえませんでしたよ。


車に戻り全員を押し込み、ここは安全だから、みんなでくっ付いて寝ているように言いつける。


花は寝ぼけながらも、皆との再会を喜んでいた。起こったことを15人が口々に花に向けて喋り出すので、花もよく分からないようで、明日朝起きたらゆっくり話すことにして、みんなで寝て待つことにしたようだ。杏は要領がいい。ニコッっとだけしてすぐ夢の中に戻っていた。


俺は職員室を確認しに戻る。

目的は学級閉鎖一斉メールの発信だ。

校長か教頭のPCが開いていれば、送信できる。

家に閉じこもってくれていた方が、被害の拡散は防げる。


◆ ◆ ◆


職員室に入る。


案の定、女性職員が男性職員にあちらこちらで乱暴されている。

校長は椅子に座ったまま殺されている。PCは開いたままだ。イケそうだな。

学校教員というのは女性比率が高い。赤目にとっては中々の狩場なんじゃないか?

全部の3組のカップル?ができていたので、別れて頂き、女性職員たちを保護する。

一人だけ知っているな。梨花りんか先生だ。杏の担任で、バスケ部5年生の顧問。来年になったらクソひょろひょろ顧問ではなく、梨花先生に変わるので、子供たちも親御さん達も期待していた。優しいけど怒ると恐いと評判の先生だ。


先生たちには回復してもらっている間に、

校長のPCを覗き見る。

ちょうどメールボックスが開いているな、よし。


------------------------------------

<緊急送信>無期学級閉鎖ならびに自宅待機要請


轟南小学校 保護者の皆様


  ― 記 ―

昨日発生した世界同時多発型超常現象の余波は、ここ轟市にも広がっております。

現在中部地区で猛威を振るっている超常現象は、男性が正気を失い、

襲い掛かってくる『赤鬼病』と言われる非常に危険なものです。


つきましては、突然ではありますが、明日から無期限で学級閉鎖とさせて頂きます。

なお1週間を目処に、再度今後の見通しを連絡しますので、皆様におかれましては、

くれぐれも不要な外出を避け、安全が確認できるまではご自宅にて待機頂きますよう

お願いいたします。


なお、ご家族で発症された、もしくはその疑いがある場合、即刻、手足拘束の上

ご自宅にて隔離した上で、治療薬の開発を待ち頂きますようお願いいたします。


また本非常事態での危機管理徹底のためにも、

本メールを受け取られた方は、できる限り速やかに本メールを知人の方々に

転送いただきますようお願い申し上げます。


轟南小学校 校長 吉田一郎

保護者代表 寺沢 文也

(ご不明な点は寺沢さんccアドレスへ返信ください)

------------------------------------


まぁ、これくらいでいいだろう。

警察や政府からのアナウンスもすぐにあるだろうしな。

一番困るのは、どうしていいか分からなくてパニックになることだ。

大抵の人間は、こうしなさいと言われた方が楽に行動の決断ができる。今回のように自宅待機を指示すれば2,3日は言う通りにするだろう。進行が遅くなればなるほど、対処療法は効果が大きくなる。きっと日本政府が最後は何とかしてくれる。

俺達はDテックから近い主要拠点から順次解放し、安全拠点網を構築していく。

その過程で力をつける。

名古屋の女王への対処は自衛隊が当たってくれるはずだ。自衛隊でダメなら、今の俺ではダメだろう。まだ力をつける時だ。


それにしても俺のオトンと弟は神戸で生きているんだろうか?あいつら俺と一緒でメール見ないんだよな。。ったく。


梨花先生たちを保護し、学校を出ようとしたとき、俺は見てはいけないものを見てしまった。。

駐車場のすぐ脇の駐輪所に佇む黒い影。。

怪しくも光を放たない、どこまでも闇に落ちていきそうなドス黒い凶悪なフォルム。。





『パーリ―ディヴィッドソン ストリーボブ マットデニムブラック』最新モデル!!



ツインカム空冷エンジン1690ccのモンスター。






ドゥドゥドゥ・・・・

「ヒャッホー!!最高だ!!パーリータァーーーイム!!」


俺は浮かれていた。今からショッピングモールに買い出しなのだが、正直どうでもいい。

梨花先生を尋問し、持ち主を探し出し、職員室を漁り、カギを盗み、憧れのパーリ―に跨ると俺は完全に子供に戻っていた。くっ、これがこの世界の魅了の魔法か!?俺がレジストに失敗するとは。。


困り果てたタマキが友里を起こし、修羅様がご降臨するまで、私のはしゃぎは止まりませんでした。



はしゃいでいる間に、校内を巡回させていた部隊が残る赤目の残党を駆逐し終わったのだろう。


前回同様、少し派手なオーケストラ調のファンファーレが鳴った。


◆ ◆ ◆


いつもの書斎。


いやぁパーリーディヴィッドソン、あれもう俺貰っちゃっていいよねぇ。余韻に浸りながらキャラクターシートに目を移す。


今回のパーティでは友里と花と杏とタマキと花のファミリアのゲンちゃんがイベント報酬の対象だな。スゴイ発見なのだが、ファミリアにした魔法生物は経験値によるレベルアップが可能なのだ。これはかなりスゴイことだと思う。ただし新しいスキルを覚えられるわけではなく、基礎能力が上がるだけなのだが、これまた嬉しい誤算。俺たちも効率がいいとは言えないが基礎能力を上げることができることにゲンちゃんのお蔭で気づけたのだ。


能力を一つ上げるのに、目標の値と同じだけのスキルポイントを消費する。つまりゲンちゃんの【心6→7】にしようとするとスキルポイントを7ポイント消費するということだ。結構燃費が悪い。スキル取った方がよっぽど効率的だと思う。まぁカンストした後の処置かな、とも思う。


今回のイベントは参加人数が少なかったこともあり、順調にみんなレベルが上がったな。

 ・俺  レベル15→17 【生物5→6】 残0pt

 ・友里 レベル7→11 【日魔法3→4】 残0pt

 ・花  レベル7→11 【木魔法3→4】 残1pt

 ・杏  レベル7→11 残11pt温存

 ・タマキレベル0→7 【射撃3】 残1pt

 ・絵美ちゃんレベル0→7 【芸術3】【射撃1】 残0pt

 ・玄武 レベル1→8 【心6→7】 残1pt



タマキは初めてだったな。

------------------------------------

名   前:早田珠樹そうだたまき

種   族:人間

レ ベ ル:7

性   別:女性

職   業:警察官

基礎能力 :心4、技3、体2

アビリティ:

・貴方のハートにずっきゅん(C、パッシブ)

ス キ ル:

・射撃0→3

残ポイント1pt

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Cアビリティの【貴方のハートにずっきゅん】とかいう恥ずかしい名前のスキルは射撃時に技+2補正がかかる。まぁこれと言って特にチーム内でスキルの不足はないし、銃を唯一所持して法的にもぶっ放せるし、射撃極振りしてみた。



次は絵美ちゃん。

------------------------------------

名   前:深谷絵美ふかやえみ

種   族:人間

レ ベ ル:7

性   別:女性

職   業:未亡人

基礎能力 :心4、技3、体2

アビリティ:

・読者モデル(UC、パッシブ)

ス キ ル:

・芸術0→3 射撃0→1

残ポイント0pt

------------------------------------

UC【読者モデル】はゆかちんのレースクイーンの上位互換。芸術スキル発動の際に補正+3。これでもう一人外相タイプが出来たわけで、心強いな。




そして、俺。

【生物学】を5→6へ上げた。これにより、ついに哺乳類、小動物を創成可能になりました!念願のザ・ペットです。知能も爬虫類の何倍も高い子達です。より複雑な命令も熟せるだろう。夢が広がる。


早速可愛い小動物を創ろう。偵察型、後方支援型が欲しいな。

リスザルだ!この子にキュアを足し合わせて、敏捷性と治癒能力をマシマシにしてっと。


|(生物6x日魔法2)x2x2÷2=16

【日生物魔法16】:リスザルナース


ネーミングセンスは相変わらずだが、かわゆいからいいんだ。ピンクナースっぽくしたから、偵察には不向きかもしれないけどいいんだ。薄いピンクは都会では目立たないと言うしな。

素早い動きと高い回復能力で戦場を駆け回ってほしいもんだ。



さて、そして出ました!ガチャ券2枚目!

轟南小解放は、正直何の苦労もしなかっただけに、貰っていいんですか?という感じだが、貰えるもんは貰っておこう。


チケットを開くと

【ハズレ】心技体能力いずれか+1

と出る。ちっ、ハズレかよ。


ん?待てよ。俺の心23→24にできるとしたら、スキルポイント24ポイント分じゃねぇか。これはこれですごいな。ハズレじゃないよ、すでに。

------------------------------------

名   前:寺沢文也てらさわふみや

種   族:人間

レ ベ ル:17

性   別:男性

職   業:鬼殺し

基礎能力 :心23→24、技10、体6

アビリティ:

・スキルデザイン ランク2|(ユニーク、アクティブ)

・リセット|(SSR、パッシブ)

・マネージメント ランク4|(SR、パッシブ)

残チケット0枚

ス キ ル:

・棒術2、

・物理1、化学1、芸術1、生物5→6、

・水魔法5、土魔法3、日魔法2、金魔法1

・ユニーク10→11

残ポイント0pt、残ユニークスキル枠6

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俺は意気揚々と書斎の扉を出てゆく。次は買い出しだ!




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