私を弟子にしてください!!—5
ウルの町や、ここトーリの町は首都から見て北の方に位置している。
だからといって年中涼しい、もしくは寒いというわけではない。
夏になればうだるような暑さがやってくるし、周りを山に囲まれているためじめじめとした過ごしにくい季節になる。
しかしさらに北、山を越えた先にあるエッダの村まで行くとそれらから解放されるらしいのだ。
湿気を含んだ風は山に遮られ乾いた風が吹き、日照時間が少ないため気温もそこまで高くなく過ごしやすいのだとか。
そのため首都に暮らす人々や各地の諸侯が避暑のために訪れることもあるそうだ。
「その年の春に学校に入学して初めての夏休みだったんです。
エッダの村に行くぞ!!なんて言われて最初はびっくりしたんですけど」
馬車でむかってもウルの町からエッダの村まで最低で日はかかるはずだ。
村に着いてからの滞在含めて10日から2週間程度の旅行か…
それなりに裕福な家庭かもしくは以前から計画してやりくりしてきたか、どちらにせよいいご両親のようだ
「村に着くまでは大変だったんですけど着いてからは楽しかったです!
見たことないお土産とか見たことない食べ物とかいっぱいあって、なによりすっごい涼しくて!!
私夏が好きなんですけどね、あの涼しさは私の中の夏のイメージと全然違ってたけど最高でした!!
それでその時に食べたあの甘いお菓子!あれがまたおいしくて…それで…さらに…」
また暴走しかけているな…
と言うよりも自分の世界に入っているのだろうか。
ものすごくキラキラした目でこちらに話しかけてくるが一向に終わる気配が見えない。
本題に戻ってもらわなければ。
「えーっと、それで私に助けられたというのは?」
「あれも美味しかったなぁ…って、えっ?…あ!!そうでした!!
えーっと…その帰り道でのことなんですけど、トーリの町を少し過ぎたぐらいの場所だったと思うんですけどそこで馬車がぬかるみにはまって動けなくなっちゃって困ってたんです。
そこにししょーが通りかかって魔法で一気にババーっと解決してくれて!!
あれかっこよかったなぁ…」
あの年は雨が多くて道のいたるところがぬかるんでいたな…
ウルの町へ買い出しに行った帰りに馬車を引き上げたことがあったが、その時の家族だったとは…
「それで?」
「それでとは?」
「いや、もしかしてそれだけで私に弟子入りしようって決めたのか?」
「そうですけど?」
なんてこった…