飲酒運転
法律の規制を強めても、いっこうに減らない「飲酒運転」に警察は頭を痛めていた。
そこで心理学の専門家や有識者が集められ、いかにしたら「飲酒運転」を減らすことができるのかが話し合われた。
ある者は「飲酒した場合に車が作動しない装置を導入すべきだ!」と言うと、「装置を外す者が現れるから効果は薄い。」と述べる者。
またある者は「もっと罰則を厳しくすべきだ! 凶器を走らせているのだから、いっそ国家反逆罪を適用してはどうか。」とそれぞれの意見を述べられた。
それまでみんなの意見を黙って聞いていた一人の男が口を開いた。
「どれも多少の効果はあるにせよ、それだけでは不十分ですな。」
「では、どのような方策が良いと言うのです。」
集まった者たちは、口々にその男を問いただした。
「過去に飲酒運転をした事で検挙された者を対象に、その者はもちろんですがその家族も含めて、本人たちが飲酒運転の事故に巻き込まれた場合、事故を起こした相手は飲酒運転で事故を起こした履歴は残りますが、罰せられない事にするのです。」
集まった者全てが静まり返った。その中で男は話を続けた。
「事故を起こした者は、みなさんの仰るくらいに厳しく罰するのは当然です。飲酒運転する者の大多数が自分は大丈夫だと思っている過信があるのです。しかし、他人も飲酒運転をして事故を起こさないと思える人がいますか?
ましてや、自分が飲酒運転した為に、本人はともかく家族が事故に巻き込まれた場合に、その相手は罪に問われないとなると……」
そこに集まった者たちは皆うなずき、その意見が急いで報告書にまとめられた。