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商店街アイドル、始めます

小説は初めて書きます!

アイドルが好きなので、こういう作品を書いてみることにしました(^ー^)

文章は下手ですが、大目に見てください(^^;

 「余裕だな」

 俺は掲示板の前でそう呟いた。


 風の強い初夏のある日、中間試験の順位が掲示板に貼り出された。

 また学年1位である。今回だけでなく、いつものことだ。

 掲示板を背にして、その場を立ち去った。

 「あ、御田園くんよ」「また学年トップだってね」「頭も良くてかっこいいなんて素敵」・・・

 女子生徒たちが俺を見ながらいろいろ立ち話をしている。なんだかんだ言って、注目の的になっているのは快感だ。


 俺は御田園優弥みたぞのゆうや鳩谷学園はとがやがくえん高等部2年。

 自分で言うのも何だが、俺は勉強ができて運動神経もよく、ルックスも良い方だ。

 女子生徒から告白されることも数多い。他人からしたら、何もかも満たされた学園生活に見えるだろう。


 だけど、自分では何か物足りなさを感じることが度々あるのだ。


 教室に戻るなり、「学年トップ様が帰って来た!」「御田園くん、またまたやるね〜」・・・

 クラスメイトに羨望の眼差しで見られているのがよく分かる。ただ、自分の教室にいるときくらいは落ち着きたいものだが・・・。

 「優弥く〜ん、またまた1位おめでとう♪♪」

 俺が席についた途端、同じクラスの佐藤茉祐さとうまひろはテンション高めで俺に話しかけてきた。

 「ありがとう」俺はそっけなくつぶやいたが、茉祐はめげずに「ね〜え、また数学で分からないところがあるんだけど教えてよ〜」と甘えた声ですりよってきた。

 「お前、俺が教えても次の日にはほとんど忘れてるだろ」

 「あ〜ん、優弥くんの顔に集中してて頭から抜けちゃうんだよ」

 「だったら俺が教えても意味ねーじゃん。先生にでも教えてもらえよ」

 「先生とマンツーマンなんて拷問だわ」

 「俺はお前とマンツーマンだと拷問だけどな」

 「ひっどーい、こんな可愛い子相手によくそんなこと言えるわね」

 「だってお前うるさいし、教え甲斐もないからな」

 「これでも口数少ない方なのに。優弥くんと話すときは緊張してるからさ」

 「どこがだよ。この間2時間くらい話してたじゃねーか。しかもほとんど勉強と関係ない話ばっか」

 こうしたやりとりをしてると「ま〜た夫婦漫才かよ」「お前ら結婚したら?」とクラスの男子が茶々を入れてきた。

 「あんたたちも私と優弥くんがカップルになるの応援してよね」と茉祐はにやにやしながら言い、俺から離れて男子たちとの談笑の輪に加わった。

 「冗談じゃねーよ」・・・俺には既に彼女がいる。


 "優ちゃん、いつもの所で待ってるね☆"

 1通のメールが来た。"了解" そう返信した。

 帰り道、萱ヶ瀬商店街かやがせしょうてんがいのアーケードをくぐってすぐ脇のゲームセンターの前で待っていると「優ちゃん!」と声がした。

 篠原美希しのはらみきが駆け寄ってきた。学校は違うが、俺の幼馴染でもあり彼女だ。

 「待った?」

 「いや、今来たところ」

 「今日はどうする?」

 「たまには俺の家に来ない?」

 「いいよ、ちょうどお腹が空いてたころだし」

 俺と美希は一緒に家に向かった。


 俺の家は萱ヶ瀬商店街の中にあるお好み焼き屋だ。

 家に入るなり鉄板からジューッと大きな音が響いた。誰か先客がいるのか?

 「ただいま」見渡したが店には客はいなかった。

 「おかえり。今日は彼女と一緒か?」鉄板のお好み焼きをひっくり返しながら親父、御田園信弥みたぞのしんやは言った。

 「こんにちは」美希はあいさつした。

 「こんにちは美希ちゃん、ゆっくりしてってね」

 「はい」

 「今日は誰か来るの?」俺が尋ねると「ああ、鎌倉さんがね」

 またか。店のカウンターでくつろごうとしたが、俺の部屋に変更だな。

 「美希、お前何がいい?」

 「いか玉にしようかな」

 「親父、いか玉と豚玉ね。出来たら俺の部屋に持ってきてくれる?」

 「あいよ」親父はお好み焼きを作りながら言った。


 俺たちは部屋に行き、カバンを置いて座布団に座った。

 「鎌倉ってこの商店街の振興組合の理事長なんだけど、たまにここに来るんだ。来る度に親父とつまらない話しててうんざりする」

 「どんな話するの?」

 「どうせまた商店街の人出が少なくなったとかじゃね?」

 「確かに、この商店街はあまり賑わってないよね」

 「そりゃあそうだろ、ここでなくても市内に商業施設はたくさんあるしな。こんなシャッターが閉まった店ばかりの寂れた所、寄り付かねーよ」

 「商店街で共通で使えるクーポンやイベントとかやってるみたいだけど、それでもお客さんは来ないの?」

 「一時的に客は来るけど、常連は増えないな。それに、商店街の近くでない限り、わざわざ足を運ぶ理由なんてないし。ただ、この店も年々売り上げが落ちていっているんだよな。生活が苦しくなるのが辛いぜ」

 「何とか新しい商店街の活性化を考えないとね」

 

 俺たちが商店街の話で盛り上がっていると、部屋のドアが開いた

 「いか玉と豚玉、出来たわよ」お袋、御田園美智子みたぞのみちこがお好み焼きとお茶とコップをお盆に載せて来た。

 「サンキュー」

 「こんにちは」

 「あら、美希ちゃん、こんにちは」

 「鎌倉さん来てる?」

 「来てるわよ。またいつもの話で父ちゃんと盛り上がってる」

 「じゃあしばらく帰らないな」俺はため息をついた。 

 「そういえば優ちゃん、中間試験でまた学年トップだったみたいね」お袋がそう聞いてきた。何で知ってるんだ?

 「そうそう、ずっと学年トップをキープできるなんてすごいですよね」美希が感心しながらお袋に同調した。

 「しがないお好み焼き屋の私たちからこんな出来のいい息子が生まれるなんて謎だわ」お袋が自慢してるのか本当に不思議がっているのか分からない口調でそう言った。

 「まあ、そのうち分かるよ」俺はぶっきらぼうに言った。

 俺はこの商店街を出て行きたくて必死に勉強をしている。勿論お好み焼き屋を継ぐなんてありえない。

 この街を出て一流大に入学し、ゆくゆくは官僚→事務次官のエリートコースを進んでこの国の根幹を動かすことが将来の夢だ。まあそんなことは親には言わないが。


 俺たちがお好み焼きを食べていると、美希が

 「そういえば来週、郊外に新しいショッピングモールが出来るって知ってる?」

 「ああ、この辺でチラシをよく見るから嫌でも知ってる」

 「それで、開店イベントでcute box(キュートボックス)のミニライブが行われるんだって」

 「cute boxって最近CMとかでよく見かけるようになったアイドルか?」

 「そうそう、ファンがものすごい勢いで増えてるから、ライブも朝早く並ばないと前の方で見れなくなっちゃうみたい」

 「俺はアイドルは興味ないからパス。まあ、行ったら感想教えてくれ」

 「えー!?一人で行くのはつまらないよ。ショッピングモールはたくさんお店があって1日いても飽きないよ」・・・美希の強引な誘いに圧倒されてショッピングモールデートを決行することになった。

 「じゃあ、日曜日に朝7時に現地で待ち合わせね」美希はそう言って部屋を出て行った。たかがアイドルごときにそこまで早起きするか?


 日曜日、始発の電車からバスに乗り継いで郊外のショッピングモールに着いた頃には6時55分だった。

 開業2日目のこのショッピングモール、朝早いから客は少ないが、俺が想像したのより広い。

 デパートくらいの施設2個分に加え、アウトレットモールがある。この広い土地のなか、美希を探した。

 野外の広場で朝早くから行列ができていた。ざっと200人くらいか。男性がほとんどだが、女子中高生と思われる子もちらほらいた。その中に美希を見かけた。

 「おっす。お前、よくこんな朝早くから並べるな」

 「あ、優ちゃん、おはよう。キューボ(cute boxの略称)は人気急上昇中だから、至近距離で見られるチャンスはこれが最後だと思うのよね」

 「お前は昔からアイドル好きだよな」

 「かわいい子が華やかに踊ったり歌ったりするのを見るのが楽しいんだよね」

 「じゃあ幼稚園のお遊戯会とかも好き?」ちょっと冷やかしのつもりで聞いてみた。

 「それはちょっと・・・。んー、何と言うか、私たちと同じくらいの年齢の子がひたむきに頑張ろうとしているのを見ると、自分も励まされる気分になるかな」

 「優ちゃんも生で見たら絶対ハマるよ!」そう言われてもピンとこないが、美希がしきりに勧めてくるので一応見てやるか。

 ただ、ライブが始まるのは13時からなのであと5時間以上待つのは辛い。俺は美希と別れてショッピングモールを探索することにした。


 それにしても広くていろんな種類の店や映画館、ゲームセンター、何でもある。このショッピングモールだけで買い物もお出かけもほぼ事足りるだろう。

 しかも店だけでなく、エステやフィットネス、医療施設まで併設されている。これは店の集合体でなく1つの「街」だな。広々としたスペースで空調や照明設備も整っており、所々に腰かける場所があったりして、居心地がいい。

 そんなことを考えながら、いろいろ回ってみた。

 

 ライブまで30分を切ったところで、また美希のところに戻ろうとした。

 アウトレットモールにある野外特設会場でライブが行われるのだが、席数500が既に埋まっていて立ち見客がぞろぞろと出てきた。

 美希の携帯に電話したところ、一番前の席にいるという。

 「お前一番前の席とれたんだな」俺が声をかけると、

 「あ、優ちゃんおかえり〜。本当、朝早くから頑張って並んで良かったよ」美希はにこにこしながら話した。

 「ハンバーガー買ってきたぞ」通りがかりのファーストフードの店で買ってきたハンバーガーとドリンクを1個ずつ美希に渡した。

 「優ちゃん、気が利くね。朝から何も食べてないからお腹すいてたの」

 「それにしてもすごい人だかりだな」

 「私もこんなに人が来るとは思わなかった。大手の事務所だから注目度も高いんだろうね」

 「大手?」

 「うん、ボックスエンターテイメントって男性アイドルグループをたくさん生み出している事務所あるでしょ?あそこが初めて女性アイドルを手掛けるから、宣伝にも力を入れているの」

 「そういやテレビであそこの男性タレントを見ない日はないもんな。しかもドームクラスの会場でライブするグループもたくさんいるし」県内有数の進学校である俺の学校でも、ボックスエンタのアイドルのファンはたくさんいて、女子生徒たちが出演番組の話題をするのをよく耳にする。ライブがあった次の日はライブの話題で持ちきりだ。

 「キューボのオーディションにも4人合格のところ、2万人以上女の子が集まったみたい」

 「そりゃあ、事務所の"先輩"の活躍を見たら売れるのは約束されているようなもんだしな。で、お前も受けたの?」アイドルオタクの美希なら受けているだろうと思って聞いてみたが、

 「いやいや、私は受けてないよ〜!ダンスも歌もルックスも自信ないし」突然そう聞かれて、驚いていた様子で答えた。受けていないのは意外だった。更に続けて、

 「でも私の知り合いの子が受けて結局最終審査で落ちたけど、ボックスエンタの養成所の特待生になるように誘われて、無料でレッスンを受けているって。他にも何人かいるみたい」

 「売れそうな子を囲い込んでレッスンを受けさせているわけか」

 「その中から更に選抜してグループを組むんだろうね」


 俺たちが話していると、突然、まわりから大きな歓声が巻き起こった。隣りにいた美希もさっきとは打って変わって「きゃーーーーーーーっ!!」と叫び声をあげた。

 俺たちと同じくらいの年代の女の子が4人が次々とステージにあがった。花をモチーフにした髪飾り、フリルがふんだんにあるワンピース、白のロングブーツといった衣装を身にまとっていた。髪飾り、ワンピースは全員色違いだ。

 間近で有名人を見るのは初めてだが、テレビで見るより可愛かった。俺のまわりの女子に比べても垢抜けた感じだ。

 ライブが始まると、会場は一気に盛り上がった。メンバーが歌っているときは、決まった掛け声みたいなのを一斉に叫んでいた。隣りの美希もまわりに合わせて叫んだ。俺にはよく分からない世界だ。

 ステージ上のメンバーを見るに、可愛い衣装のわりに、ダンスが激しい。しかも踊りながらしっかり歌いこなせている。最初はあまり興味がなかったが、次第にステージを食い入るように目で追っていた。

 最後の曲が終わると、メンバー全員「ありがとうございました、また会いましょう!」と言って、会場の客に手を振りながらステージを去った。

 メンバーがステージから去るとき、好きなメンバーの名前や「ありがとう!」「良かったよ!」「また会おうね〜」様々な声が飛び交った。

 美希に「お茶でもして帰るか?」と聞き、OKだったので、ショッピングモールの施設内にあるカフェに行くことにした。


 俺たちがカフェでお茶をして店の外を見ると、さっきの会場で見た客がたくさんいた。

 「ああいうイベントの集客効果も馬鹿にできないな」

 「ライブのついでにちょっと立ち寄ろうかな、って思うよね」

 「それにしてもキューボって歌もダンスもすごいな。テレビで見ても何とも思わなかったけど、生で見ると違うぜ」

 「優ちゃんもキューボに興味持ってくれたの?ライブに連れていった甲斐があったよ」美希は仲間が増えたような感触を得たように、頬をゆるませながら言った。

 「いや、まだ興味を持つまでじゃない。けど、アイドルを見る目は変わったな」

 「それでも、優ちゃんにもキューボの頑張っている姿が認められてファンとしては嬉しいな。私はデビューしたときから追っているけど、昔は歌もダンスもルックスも素人と変わらないくらいだったよ」

 「レッスンや練習を重ねたんだな」

 「ずっと追い続けてると、ちょっとずつメンバーが成長していっているのが分かるのが面白いんだよね」美希がうきうきしながらキューボの話を続けているところ、俺は少し考えた。

 美希の話や会場の人の入り具合から考えるに、女の子が頑張ったり成長したりするのを見たい層は一定数いるみたいだな。その層は好きなアイドルのライブやイベントに何度も足を運ぶ。リピーター客のほとんどいない萱ヶ瀬商店街に何とかその層を持ってくることはできないか・・・。

 「ねえ、優ちゃん、黙ってうつむいてどうしたの?」美希に声をかけられてはっとした。

 「なあ、商店街にキューボを何回も連れてくることはさすがに出来ないよな?」

 「え!?そんなこと出来るわけ・・・」美希が話すのを遮り、俺は言った。

 「それじゃあ、萱ヶ瀬商店街の目玉となる新しいアイドルを作ろうか」美希はぼう然としたまま沈黙した。


 「ただいま」

 「あ、優ちゃんお帰り〜」家に帰って来るなり、お袋が明るい声で返事した。俺は自分の部屋に戻り、ベットに横たわった。

 あの後、美希からは苦笑された。俺は初めて間近でアイドルを見たもんだから、あのとき気分が高揚してあんなこと口走ったんだろうな。

 言うんじゃなかったと後悔しているが、発言を取り消すのも俺のプライドが許さない。

 商店街の公認取得、メンバー集め、練習場所の確保、その他いろいろとやることがある。何から手をつけようか・・・。

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