この空の先へ1
眩いくらいの青空だった。
そんな天気に誘われて、ついこんな時間に表に出たのが、そもそもすべての始まりだった。
空気は、ひんやり心地よく肌を撫でた。さわさわと優しい風が、髪を擽る。
目に映る世界。
昨日までの雨が全てを流したと思うくらいに、澄み切っていた。
だから、ここしばらくの気分なら、まずやらないような事をした。
そう。
空を見上げ、思い切り、深呼吸をしたのだ。
空気というのはこんなにも美味しいものだったのか。
「いたっ!」
まず見えたのは、きらっとした光。
次いで、感じたのは、大きな衝撃。
そして。
「いったーい……」
何かがぶつかった額を、思わずさする。
「あ?」
たんこぶだろうと思っていたそこには、ごつっとした小さな感触。
小石くらいの大きさだろうか。
「なんじゃこりゃ」
かさぶたでも剥がす様に、爪を立てたその時だった。
――何をする
響いた声は、確かに体の中から聞こえてきた。
自分のものではない。
そうして。
すうっと、暗くなる視界。
(そりゃそうだよな、あんな痛みと衝撃で、今までしっかりしてたのが不思議なくらいだよな)
なんて、奇妙に冷静に突っ込みつつ。
意識が遠のいていった。
――あ、おい!
全てが暗闇になる寸前。
そんな、焦ったような声が、した気がした。
(2013/3/15)