1ー起因 1
新作の投稿です。主人公がなかなか登場しませんが、よろしくお願いいたします。
その日、国中がお祭りムードに溢れていた。
この日は建国記念日、年に一度の国を挙げての建国祭が丸3日間続く。
どの街の建物にも布で作られた色とりどりの布花が飾り付けられ、街を行く人々は布花で作った腕輪を付けている。どこからか華やいだ音楽も聞こえてくる。街中には果物や飲み物、串刺し肉を焼いたものなどの屋台が並んでいる。
この日は初代国王が、聖女に求婚をした日だと伝えられている。もちろん、その聖女が初代の王妃だ。
その幸せにあやかろうと、いつの頃からかこの日に求婚をすると、成就すると言われるようになった。
手に花束を抱え道を急ぐ若者は、これから婚姻の申し込みをするつもりなのだろう。
この国、ラフィーナ王国の建国祭を、誰もが慌ただしい日常を忘れ楽しんでいた。
国の中心である王城でもそれは変わらない。大広間では国王主催のパーティーが昼間から開催され、いつも以上に気合いを入れて着飾った貴族の子息子女が集まっている。
婚約者のいる者は、お互いの髪色や瞳の色の花を胸に飾っている。そうでない者は、手首に花の飾りをつけている。それが目印になっているらしい。
テーブルには料理やスイーツが所狭しと並べられ、淡いピンク色の飲み物が出されている。遠慮気味に奏でられる音楽は、婚姻式を連想させるような雰囲気だ。
その大広間の一番奥、両側にカーブを描いた階段の前にある数段高くなった場所に、一段と煌びやかな衣装の青年が立っていた。
真っ白な衣装には、この国伝統の模様を金糸をふんだんに使った細やかな刺繍が施されている。国章の刺繍入りのベリースを片方の肩に掛け、反対側の肩から掛けられたロイヤルブルーのサッシュを着けているのは、この国の第2王子であるシリス・ラフィーナだ。
黄色味の強いブロンドの髪をショートカットにしていて、ふんわりとした髪が一見穏やかそうな雰囲気を醸し出していた。だがクールなブルーシルバー色の瞳をした少しきつめの眼が、そうではないと打ち消している。
その第2王子が、辺りを見渡し声を張って呼び掛けた。
「ネーネルヴァ嬢はいるか!? ネーネルヴァ嬢、どこにいる!?」
王子の声に応えて、一人の令嬢が静かに歩み出た。
腰まである銀糸のような白銀の豊かな髪を、ハーフアップにして花飾りをつけている。宝石のように煌めくストロベリーレッド色の瞳を少し伏せて、王子の前で正式な礼をとる。
胸の下で切り替えがあり、床までストンと落ちているドレスは見るからに仕立てが良く、令嬢の髪色と同じ銀糸で細やかな花模様の刺繍がされている。
そんな豪華なドレスを見事に着こなしているのが、ネーネルヴァ・ホルハティ。ホルハティ公爵家のご令嬢だ。
何代か前の王族が降嫁している家系で、この国に四家しかない由緒正しい公爵家の一つとして知られている。
ネーネルヴァは、この第2王子の婚約者でもある。なのにエスコートもせず、大勢の貴族の前に突然呼び出された。
これは何事かと、両親も令嬢のすぐ後ろで心配そうに見守っている。
「このような場で申し伝えるのは、私も胸が痛む。だが、私はもう自分の気持ちを偽れない。ネーネルヴァとは私が望んで婚約をしたわけではない。私はここにいる聖女と婚姻すると決心した。ネーネルヴァとはこの場を以って婚約を破棄する!」
王子のこの言葉で、楽しい雰囲気だった大広間が一瞬のうちに凍りついた。周りにいた貴族たちもどんな顔をして良いのか分からず戸惑っている。呆れた表情をしている者までいる。
よりにもよって、建国祭のこの日にそれを言うのか? と、皆口には出さないが目がそう物語っていて、ネーネルヴァの両親の瞳の奥にも嫌悪感が滲み出ている。
それに気付いていないのは当の王子と、その腕にまるで丸いコアラが木に抱きついているかのようにしがみ付いている一人の令嬢だ。密かに歪んだ笑みを浮かべたその目には、優越感が滲み出ていた。
お読みいただきありがとうございます!
ご存じの方もおられるかと思いますが、カ◯ヨム様でコンテスト参加のために書いたもので連載中です。
こちらでも読んでいただければと、投稿いたしました。
いつもとは違う始まりなので不安なのですが、よろしければ感想をお聞かせくださいませ。
よろしくお願いいたします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゜




