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極の細道  作者: 江泉 敬
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高利貸しKの話(1)

 Kと言う高利貸しが居た。本名は伏せさせて頂く。

彼の後半生に於いて関わる人を、Kの本名を明かす事によって特定されたくないからである。

Kは生まれながらの高利貸しではなかった。

 元々はその日暮しで老いた母親をいたぶっては小遣い銭を奪ってふらふらしている若者だった。

ある日Kが煙草を吸いながらぼんやりしていると、目の前の杉林にカラスが何か光る物を埋めていたのが見えた。近付いて掘り起こすと昔の一朱金や豆金がボロボロ出て来たと言う。

それからはひがな1日杉林のカラスを見て過ごした。1羽や2羽ではない、そこはカラス山と言っていいほどカラスが群れていたらしい。金目の物を掘り起こしては貯め込むを繰り返す内にかなりの蓄えになった。

今の物が溢れている時代ではない、終戦後の物が無い頃に【光り輝くもの】など高価な物に限られている。

ともあれKはカラスの習性でひと財産を手に入れた。しかしそれを元手にして色んな商売をやったがどうも上手く行かない。

 そんな時、金回りの良いKを見て中小企業の社長が融資を願い出た。分割で返済する代わりに利息を20パーセント上乗せするという話にKは飛び乗った。またその社長のツテで資金繰りに困っている工場や会社にも融資を行った。これが大当たりして本格的に金貸しを始めたと言う。

 私などには分からないが、人は大金を稼ぐようになるともっともっととお金が欲しくなるものらしい。Kはいつしか高利貸しと呼ばれ、カネの亡者と言われ、終いには人でなし、人殺しと影で囁かれるようになった。

 人間カネが手に入ったら次は性欲である。Kは気に入った女なら無理矢理にでもモノにして多額の示談金で話をつけた。(払わない場合も多く泣き寝入りした女性も随分居たという)気に入ったのが結婚している女性なら、まず言葉巧みに男に博打や贅沢な遊びを教えて借金漬けにし、その後でカタとして女房を連れ出す。

裏の稼業だから当然ヤクザとの関わりも濃くなり、私の知り合いでもKの依頼で借金の取り立てをしていたと言う者が数人居た。Kからカネを借りて工場や家を手放した者、一家心中する者の話もよく耳に入ってきた。

 借金のカタに取り上げたベンツ(当時は超高級車でそもそも出回っていなかった)の後部座席にはいつも若い女の幽霊が座っているという噂も流れていた。

カネに明かせて豪邸も建てた。あまりにも自分好みに注文を出したら大工が無理だと言い出した。Kはそれに対して無理でもいいから建てろとカネを積んだと言う。

 かくして木造5階建ての大豪邸が出来上がった。出来上がったが建築許可など降りない、降りる訳が無い。こればっかりはKの財力と背景をもってしてもどうにもならなかった。 

Kは井戸を掘り発電機を購入してその家に住んだ。その代わり税金は頑として払わなかったという。許可の降りない建物に税をかけるなと税務署職員と揉めに揉めたらしい。

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