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三題噺もどき3

散髪

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくさんじゅういち。

 


 店内に入ると、最近流行りの曲が流れていた。


 二階建ての建物で、一階は書店になっている。

 今日用事があるのは二階なので、さっさと階段を上っていく。

 少し奥に行けばエスカレーターがあるのだけど、まぁ、ダイエットだと思って歩く。

 仕事を辞めてから、極端に動くことがなくなったせいで少々気になってきた。平均的に見れば大したことはない数字なのだが、まぁ、気にしないわけにもいくまい。

「……」

 階段を上りきったすぐそこにあるのは雑貨屋さんだ。

 あとで帰りに見て回ろう。

 とりあえず予約をしているので、こちらが先だ。

「……」

 更に奥の方にある店へと進む。

 そこには全国チェーンの美容室がある。

 少し前までは千円くらいでカットできるところに行っていたんだけど、あまりにも雑だなぁと感じるようになったので、ここに通うようになった。雰囲気もいいし、丁寧にカットをしてくれるので、とても気に入っている。ここ以外は今のところ行く予定はない。

「こんにちは~」

 レジに立っていたスタッフさんが、こちらに気づき、声を掛けてくれる。

「こんにちは……えーと、10時に予約してた――です」

「――様ですね、カードはおもちですか」

「はい―」

 鞄の中で財布を開き、ポイントカードを取り出す。

 もうそろそろで全部溜まりそうだったきがするが、さて……。

「お預かりしますね。こちらへどうぞ」

 案内されるままに、鞄をロッカーの中にいれ、鍵を閉める。

 スマホを忘れないようにしないと……写真ありきで美容師さんに説明するから。

 これといったこだわりがないものだから、イメージがいつも沸かないのだ。

 とりあえず短ければいい、みたいなところがあるもので。

「こちらにかけてお待ちください」

「ありがとうございます」

 スマホを開き、髪形のイメージ写真を探しておく。

 SNSで保存していたので、すぐに見つかりはするが……これよりはさらに短くてもいいかもしれない。そのあたりは聞いてみるとしよう。

「お待たせしました~本日担当する――です」

「お願いします」

「今日はどんな感じにしますか?」

「こんな感じで……」

 写真を見せながら、希望を伝えていく。

 別段これというこだわりもなく、髪は女の命なんてプライド染みたものはないので……ヒアリングは簡単に終わる。一時期伸ばしてもいいかなと思っていた時期もあったのだけど、一度短く切ってしまってその楽さに慣れると、伸ばすのは結構しんどかったりする。それでも伸ばす人は伸ばすから、すごいなぁなんて思う。

「じゃぁそんな感じで行きますね」

「はい。お願いします」

 そこからはもう。

 こちらからのモーションはなく、言われるがままになって、大人しくしている。

 楽しい会話とかもっとできたらいいんだけど……いかんせん会話が得意でないので続かない。口下手なのも拍車をかけて、会話のラリーは1,2回で終わってしまう。

 もう少し世間のことに興味があればいいんだけど、あまりにも自分の世界が狭いなぁと、こういう時に感じたりもする。

「……そういえば髪染めたりしないんですか?」

「んー染めてみたいとは思うんですけど」

 会話の流れで、そんな話になった。

 学生をやっていた頃も、結局髪を染めずにいて、そのまま働くようになったからそんな隙間もなかったのもあって、髪を染めたことがないのだ。

 別に黒髪じゃないと嫌。みたいなものは全くなくて、一度くらいは染めてみたいけれど。

「お手入れとか結構大変じゃないですか?」

 私の不安は割とそういう所にある。

 髪が痛むのは多分どうでもいいんだけど、手入れとかをしないと、結構大変らしいと言うのを何かで聞いたりするので、こう……乗り気になれない。

 あと、単純に高い。

「そうですね~でも、お手入れの方法とかはお伝えできるので、染めたい時はいってくださいね」

「あ、はい。インナーとか入れてみたいんですよね」

「あーいいですね」

 まぁ、どうするかはその時の気分によるし。

 結局、お金との相談にはなってくるんだけど。

 まぁ、一度くらいは染めてみたい……丁度今は仕事を辞めているし、今年いっぱいはその予定もないから来月あたりに考えてみようかな。

 あーでも、またヘルプで呼ばれるかもしれないのはある……。

 ……なんでそんなこと気にしないといけないんだ…?

「……」

 丁度年末に好きなアニメの映画を見に行くし。

 それに合わせて染めるのとかいいかもしれない。

 シャキシャキという鋏の音を耳元で聞きながら。

 そんなことを思ってみた。








 お題:楽しい・プライド・黒髪

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