第十話 1匹
森の中を駆ける兄弟の耳に、心地の悪い音が聞こえてきます。
それはオオカミの遠吠えでした。
彼らは群れを形成して生活する動物であり、
仲間同士で連絡を取り合っているのです。
『獲物を見つけた』と。
ヤギの兄弟はお母さんヤギの同伴無しに外へ出たことがないので、
安全な道というものを知らず、オオカミの縄張りに踏み込んでしまったのです。
急いで引き返そうとしましたが時既に遅し、
ヤギの兄弟の前に巨大なオオカミが現れました。
家を襲ったあのオオカミよりもずっと大きく、強そうでした。
次男ヤギは咄嗟に末っ子ヤギを巨大オオカミの前に突き飛ばし、
急いでその場から逃げ出しました。
仲間を犠牲にして逃げ切る。
それは繁殖力の高い草食動物ならではの生存戦略です。
末っ子ヤギはこの局面で裏切られて放心しましたが、
兄を責めるつもりはありませんでした。
自分自身が臆病な性格だからこそ、兄も怖かったのだと理解しているのです。
誰だって死ぬのは怖い。
そんな当たり前のことを思いながら、末っ子ヤギは死を覚悟しました。
しかし巨大オオカミは末っ子ヤギには目もくれず、
逃げ出した次男ヤギを追いかけ、あっという間に捕らえたのです。
そして集まってきた群れの仲間たちと、その肉を分け合いました。
次男ヤギからは血の匂いがプンプンと漂っており、
首を怪我しているので簡単に仕留められると見抜いたのです。
更には、群れで分け合うのなら大きい肉の方がいいという判断でした。
この隙に末っ子ヤギは駆け出しました。
群れの1匹が追いかけようとしますが、ボスがそれを止めました。
彼らは今ごちそうにありつけているし、追うのは危険なのです。
末っ子ヤギの向かった先には町があり、
そこには赤い頭巾を被った、腕の良い猟師たちが暮らしているのです。
どうも彼らはオオカミを目の敵にしており、見つかれば撃たれてしまいます。
オオカミたちは震え上がり、森の中へと帰っていきました。
こうして末っ子ヤギは生き延びることができました。
町で再会したお母さんヤギは事の顛末を聞いて悲しみましたが、
1匹だけでも息子が生き残ってくれた奇跡に感謝し、
親子はこの町に新しい家を建て、幸せに暮らしました。
強さランキング
最強:猟師
準最強:湖オオカミ>お母さんヤギ=巨大オオカミ
強い:ブタと手を組んだオオカミ>長男ヤギ=煉瓦ブタ
普通:次男ヤギ>三男ヤギ
弱い:木ブタ>藁ブタ
準最弱:四男ヤギ>五男ヤギ>六男ヤギ
最弱:末っ子ヤギ




