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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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広島周辺の探索者&ダンジョン事情その32



 B級の“幸運少年(ラッキーボーイ)”を(よう)する『チーム白狸』だが、幸いにもあの後も5人で活動を続けていた。チームが分解しなかったのも、囚われ中に犠牲者が出なかったお陰だろう。

 “浮遊大陸”で死霊軍団に監禁された出来事は、確かに辛かったけど全員が無事に地上に戻って来れた。彼らはそれを良い方に(とら)えて、改めての出直しを決意する事に。


「そんな訳で、三原市を新たな拠点に選んだけど構わないよな、爺ちゃんに(らい)君? ここは探索者不足って話だし、S級の甲斐谷チームが協会の復興に手助けしてるって話だし。

 つまりは、安全度はある程度保証されていて、仕事も選び放題って訳だよ」

「なるほど、確かに理には(かな)っちょるな……問題なんは、面倒を起こした旧勢力の連中が、周囲をうろついちょらんかっちゅう事じゃが。

 その辺はどうなんじゃ、(らい)の坊や?」

「俺に分かる訳無いだろ、爺ちゃん……ただまぁ、いつもの勘の(ささや)きを言葉にすると、火薬の種になる輩は意外と近くにいるかもなって感覚かなぁ?

 田沢の兄ちゃんって、たまに狙ったようにそんなカードを引き当てるじゃん?」


 俺のせいかよと、リーダーの田沢は途端に憤慨(ふんがい)の表情を浮かべる。ただし、同じく仲間の村上と白川は、確かにそうかもって引いた表情。とは言え田辺が、幸運持ちの雷少年を相殺する程のトラブル気質なのかは不明ではある。

 ただまぁ、チームがそんな体質なのは確かで、或いはそれが“太古のダンジョン”の失踪事件を招いたとも。口には出さないが、そんな(いじ)られキャラがリーダーの田沢って人物である。


 冗談はともかくとして、《直感》スキル持ちの(らい)は周囲をじっと見渡す素振り。今は『チーム白狸』全員が、新たに出来た協会のフロアで(くつろ)いでいる所。

 この新設された三原の協会本部だが、まるで小説の異世界の冒険者ギルドのような(しつら)えとなっていた。広いフロアに幾つもテーブルが並び、軽食も可能となっているのだ。


 その1つに陣取っていた面々だが、妙な緊張感が漂うのは否めない。チーム最年長の“白翁(はくおう)”爺さんも、同じく周囲を窺って抜け目のない素振り。

 そして、明らかに顔色が変わったのを目敏(めざと)く感付いた白川が、白翁の視線の先を確認した。そこには今まさに建物を出ようとした、3人の若者の集団が。


 探索者なのは確定だろう、癖のありそうな連中は独特の雰囲気を発していた。それを盗み見ていた“白翁(はくおう)”爺さんは、連中が去った後にホッと息を継いだ。

 それはまるで、見てはならない亡霊か何かに遭遇してしまったかのリアクション。仲間達も、思わず息を潜めて何を見たのと小声でお爺に問う。


「いや、レベルはともかく奴らの内の1人の称号がなぁ……【死に戻り】なんちゅうのは初めて見たわい、どう言う意味じゃ?

 言葉通りなら、1度死んで生き返ったっちゅう事か?」

「ええっ、そんな事が可能な筈は……ってか、ここは三原だよな? ソイツって、あの“三原の聖女”と何か関係がある人物って事かな?」

「もしくは全然関係なくって、ただ単に壮絶に死にそうな体験を生き延びたとか? それも微妙に、ニュアンス的に違うかもな。

 確かに、三原で【死に戻り】だとあれこれ深読みしちゃうな」


 『チーム白狸』の面々は、そんな感じで“白翁(はくおう)”爺さんの見た『見識』スキルの結果に喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を交わす。ちなみに、もう1人変わった称号で【竜神官】ってのが見えたそう。

 それは何だって、ますます意味不明の内容に騒然となる若者達である。爺さんも詳しい感触は得られなかったけど、ただきな臭い感触は得たそうだ。

 ひょっとしたら、またもや三原を舞台にひと悶着(もんちゃく)ある可能性が。


 ――それを聞いた田沢や村上は、何ともやるせない表情に。









 これは来栖家チームと異世界+土屋チームが、島根県へと遠征で家を留守にしていた時の話。岩国チームを『ワープ装置』で迎えに行って、敷地内は束の間の静寂に包まれる。

 間の悪い事に、凛香(りんか)チームも探索に出掛けていて敷地内はほぼもぬけの殻状態。何しろゼミ生は、基本がインドアでこの寒空の中を歩き回ったりはしない。


 そして田舎の風習で、来栖家の家の鍵はロックされていない箇所も多い。とは言え、田舎の家は大抵そうだし、怪しい(やから)が歩き回れば一発でバレてしまう。

 そんな来栖邸に訪問者が現れたのは、午後の遅い時間だった。怪しい気配を察知した家畜たちが、何事かと敷地内の異変に騒ぎ始める。


 その部屋は、誰も使っていない1階の物置部屋で、主に探索で貯め込んだ魔法アイテムが放り込まれていた。そんな危ない部屋には、簡易的な鍵が一応(ほどこ)されていた。

 その前に立つのは、大小の2つの影だった。人で無いのは一目で分かる、片方は鬼で体長2メートルを超える巨漢である。古い和服を着込んで、いかつい顔をしている。


 もう片方は小柄で、狐のお面をして年齢も性別も不肖である。そいつが指を鳴らすと、鍵が自然に開いて扉がひとりでにスッと開いて行った。

 それから「起きろ」と、幼い声で命令が下される。


 それに合わせて、貯め込まれたアイテムに異変が起きた。まずは宙に浮かぶ頭蓋骨、これは確か“比婆山ダンジョン”で回収したアイテムで、用途不明で放っておかれた呪いの品である。

 淡い光を発する頭蓋骨は、最初こそ意識が無いようにボーっとした表情をしていた。それが、追加で周囲に魔法アイテムが集まるにつれて、目の光が段々と強くなって行く。


 まず追加で寄って来たのは、『死霊王の杖』だった。それから同じく呪いのアイテムである『石化の鎧』が、丁度身体の位置にフィットして行く。

 これで人の形が取れて、頭蓋骨には完全に意思が宿った模様。最後に『呪いの魔装兜』が漂って来て、頭蓋骨は生えて来た手でそれをキャッチする。


「我が名はアジール、隣の大きいのは鬼族の(えん)じゃ。死霊王に連なる者として、お前を我が配下へと迎えに来た。

 我らの目的は、“封印石”で封じられた“アガメ”の開放じゃ。それを手伝うと言うのなら、お前を束縛する(かせ)を断ち切ってやろう」

 ――そんな名は知らん、お主は異界の者か? この地での配下が不足して足掻(あが)いておるようじゃが、私が簡単に(なび)くとは思わぬように。

「別に構わぬ、それならその(おり)に囚われたまま、意識を散らすまでその状態に甘んじるが良い。我はこの装置を貰い受けて、この地には2度と戻って来ぬだろう。

 何しろ、ここは手練れの者達の拠点で、近付くのも命懸けじゃからな」

 ――まっ、待て……分かった、そなたに忠誠を誓おう。このままこの地の者達に、浄化されたのでは我が情念も浮かばれぬでな。

 それより良いのか、この地の者達に肩入れする鬼が近付いて来ておるぞ?


 アジールと名乗った仮面の者は、心得た様に頷いて隣の(えん)に時間稼ぎを命じる。それから『死霊王の頭蓋骨』に()りついたレイスと、素早く主従契約の魔法を交わした。

 それから魔法アイテムの中から、手っ取り早く配下を造れる『泥ゴーレム製造機(魔)』やその他の品を拾い上げる。レイスの言うように、彼の目的には多くの配下が必要なのだろう。


 来栖邸の外では、鬼たちの戦う気配が家の中まで伝わって来た。仮面のアジールは、それに全く動じず新たな配下に他に目ぼしい物は無いかと訊ねる。

 しかし、ここまでよく貯め込んだ者だとアジールは呆れる思い。この地の者達の異界の通路の探索は、ほんの1年と少しだと記憶しているにも関わらず。


 余程運が良いのだろうが、この魔法アイテム管理のいい加減さはいただけない。お陰でアジールとしては大助かりで、目ぼしい品は貰って行く予定ではある。

 その言葉に導かれるように、もう1つの兜が宙に浮きあがった。それは香多奈のお気に入りで、何度か遊びに持ち出していた『首無し騎士の兜』だった。


 どうやら己の肉体を探し求める執念が、ここに来て意志を持った模様である。アジールにとっても、追加の従者は大歓迎で力を貸し与えてやる事に。

 その結果、首無し騎士は『漆黒の鎧』を身体のパーツに、それから『滅殺の魔剣』を新たな武器に選んだ模様。ついでに身体の隙間に、一緒に転がっていた奈落竜の(うろこ)や爪や皮を使い始める。


 ある意味とっても贅沢な進化だが、それも本人の意思と相性はとても大事に違いはない。その過程を満足そうに眺めていたアジールだが、表の戦況が(かんば)しくないのに気付き。

 そろそろ撤退するぞと、新たな配下に命令を下す。


 ――そうして来栖邸から盗まれた魔法の品々は、見知らぬ軍勢の手に渡る事に。









 異界で悪巧みを行なう“天使のぼったくり亭”だが、実はその動きはかなり上手く行っていた。職を失った荒くれ者集団が追加で来た事で、その集団は40人以上と膨らんで行ったのだ。

 それは素直に嬉しい“ハイエナ”のガレスだが、(かしら)としては手下を食わせないといけない。その為には、例の計画は是非(ぜひ)とも成功させなければ。


 つまりは、新拠点の隠れ里への侵攻である……これだけの人数が揃えば、まず失敗は有り得ないだろう。そうして隠れ家を得てから、近隣の村を襲って食糧や女を集めれば良い。

 これも国が滅びたせいだと、ガレスは自分の悪行を(かえり)みる気など全く無し。せっかくそれなりの地位を築いたのに、土台が崩れたのは本当に痛手だった。


 そんな極秘の計画だが、部下の一人が『異界渡り』の能力を持つ冒険者兼ガイドを捕らえて来た。それから手練手管を使用しての、噂の隠れ里についての情報を抜き取る。

 それは本当に存在するそうで、その情報に関してはかなり厳しく情報制限がなされているようだった。確かに知られなければ、ガレスのような(やから)に狙われる事もない。


 そうやって今まで安全を確保していたらしいが、それはその隠れ里の利便性があっての事らしい。そんな便利な拠点を、皆が守ろうとするのは当然の事か。

 ただまぁ、独り占めを目論(もくろ)む“ハイエナ”のガレスのような存在も過去にはいたようだ。それを跳ね返す防衛能力も、その隠れ里は所有しているらしい。


「それは厄介ですな、(かしら)……隠れ里の住人はほとんどが一般人みたいですが、戦える連中もいるようですぜ。

 正面から行けば、こっちにも被害が出る可能性が」

「ちったぁ頭使えや、隠れ里には掴まえやすいガキくらい幾らでもいるだろうよ。それを使えば、こっちが無駄に血を流す事はねぇのさ。

 それより掴まえた案内人は、丁重に扱って決して殺すんじゃねぇぞ。そいつにはまだ、隠れ里へ案内して貰う大事な役目が残っているからな。

 さあ、こっから先は忙しくなるぜ」


 部下の報告を聞いたガレスは、そう言って実働部隊の編成を行なう。流れ着いた部下の中には、手練(てだ)れの戦士も多く存在しており嬉しい限り。

 このメンツを見れば、或いは武力行使で制圧も可能かと思ってしまう。ただし、食事やらなんやらと集落の者に世話をさせるには、やはり人質を使うのが一番合理的には違いない。


 過去の経験は、こんな時には物凄く役に立つ……弱者を有効に活用するのは、強者に与えられたギフトである。世間はそうして動いているのだ、過去も現在もそしてこの先も。

 そして“ハイエナ”のガレスは、もちろん強者の側に属するのだ。





 ――過去も現在も、そしてこの先も永遠に。









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