最後の波乱を乗り越えて新人ズの探索が終了する件
7層の見どころだが、これまた広い庭を遼が発見した事から事態は動き出した。バーベキュー窯まである庭に、凄いなと侵入を果たした一行は感心する素振り。
その庭の隅っこに置かれていた窯の中から、突然の襲撃を受けてしまった前衛の久遠。ソイツは丸まった煤みたいな生き物で、遼は真っ黒クロスケだと騒ぎ出す。
要するに煤の妖怪らしく、タゲられた久遠の顔は真っ黒け。視界も遮られたらしく、慌てている所に彫像ガーゴイルが襲い掛かって来た。
ソイツはシーサーの焼き物で、成犬程度の大きさで割と獰猛そう。双子が2匹いるそいつ等をブロックして、久遠に早期復活をするよう声を掛けている。
それを受け、慌てて濡れタオルで弟の顔を拭く茜と、ユフィに指示を飛ばす遼である。どうやら完全に、ここは死霊しか出ないと決め込んでいたみたい。
そんな騒ぎも、何とか怪我人を出さずにクリアに至ったのは本当に良かった。各々の咄嗟の対応も、段々とこなれて来て新人ズの成長も垣間見える。
この層も、バーベキューセットや大物だと自転車が回収出来て報酬的にはまずまず。素直に喜ぶ遼や双子は、本当はまだまだ遊び盛りのお子様だったり。
それが何の因果か、命懸けの探索業をチームを組んでこなしていると言う。それでも性格が捻じれずに育ってくれて、保護者チームも揃って温かい眼差し。
「良かったね、大物ゲット出来て……後で山分けで揉めないようにね、みんなっ。どうしても欲しい人が複数いたら、土屋のお姉ちゃんが追加で買ってあげるから。
まぁ、自転車は山の上で乗るのは割と厳しいけど」
「おっ、おうっ……自転車くらいなら、子供たち全員に買ってやるぞ! 山の上に住む子供たちは、峠坂の上り下りがハード過ぎてすぐ嫌になるだろうがな」
「あの峠道は、車に乗っててもハードに感じるぞ。来栖家のご先祖は、よくあんな山の上に住居を構えようと思ったモノだな」
そんな陽菜の言葉に、ほっといてよと田舎弄りに敏感な反応を見せる姫香である。一方の土屋は、住めばいい場所だぞと真面目顔で何となくのフォロー。
キッズチームに関しては、保護者達のお喋りには構わずに探索を続けている。年少組の方がよっぽど真面目なのは、茜の性格が大いに関係しているのかも。
それはともかく、お隣の庭では工具箱の中から魔結晶(小)や木の実や魔玉のゲットに成功。真面目に探索していれば、良い事も起きるって事だろう。
それに続いて、次の層のゲートも10分余りで発見に至った。意気上がる新人ズは、その勢いのままに8層へと進行する。
そして恒例の、アスファルト道路を徘徊する敵の殲滅作業を10分程度。今回はスケルトンに弓兵が混じっていて、ちょっとヒヤッとしたが何とかなった。
弓兵の数が少なかったと言うのもあるけど、的となった久遠が『盾術士』だったと言う理由も大きい。飛んで来た矢弾を盾で弾いて、そいつを龍星が『木の実爆弾』で撃破する。
流れるようなその作業は、上手く連携が取れていて超クール。思わず見学の土屋女史も、拳を握ってガッツポーズをするコンビプレーだった。
後衛の遼も興奮して、やったねと燥いだ声をあげている。何気ない戦闘シーンだが、盾役がタゲを取ってのアタッカーが無傷で倒す流れは何度見ても気持ちが良い。
久遠は元のチームでも、盾役を専門にやってたのでその辺の動きはかなり上手。龍星も段々とアタッカーの動きが分かって、盾役の久遠との連携がこなれて来た。
探索の初めの頃も良かったが、今は無駄が無くなってまるで双子の連携を見ているよう。天馬と久遠の連携もこなれて来たら、このキッズチームは最強かも。
まぁ、後衛の成長も課題なので、そこまで手放しで褒められる段階では無いのは確か。とか思っていたら、庭の死角からゴーストが奇襲を仕掛けて来た。
大慌てでそれに対処するキッズ達、ワタワタしている子供たちを見ると保護者たちも何となくホッコリする。まぁそんな感情も、無事に切り抜けられると信頼しているから。
実際、遼の水鉄砲で中年風のゴーストは霧と消えて行った。そいつは魔石(小)を残してくれて、仕留めた遼は無邪気に喜んでいる。
腰を抜かした茜は何とか取り繕って、それじゃゲートを探すよと済まし顔。
そして8層だが、他には特に波乱もなくゲートを発見に至った。庭のチェックも3つで済んで、回収は板素材や庭に置いてあったゴルフ用具などをゲット。
そして9層に到着した新人ズだが、C級に上がりたてのチームだと言うのにこれが最深層でないと言う。驚きの成果だが、ギルドのスパルタ振りが窺える。
それはともかく、9層のアスファルト道路もゾンビとスケルトンのお出迎えが。それに混じって、ゾンビ犬が集団に混じって久遠の足元にじゃれついて来た。
いや、牙は残っているので咬まれたら割と大ゴトになりそう。そいつ等も、双子が特に苦も無く撃破して後衛の遼はああっというガッカリ顔に。
しかも、アスファルト道路の敵の討伐後に、庭先の探索で奇妙な猫に一行は遭遇。ソイツも何とモンスターで、怖い顔の化け猫に変化して襲い掛かって来た。
しっかり用心していた久遠は、これもちょっと驚いただけで撃破に成功する。そしてやっぱり、遼少年は無類の動物好きみたいで悲しそうな表情。
茜が慰めているが、アレはモンスターだからねとの言葉では納得出来ない模様。そんな9層のゲート捜しも、門番役のガーゴイルが待ち伏せてたりと難易度は高かった。
それでも、追加の鉢植えやお庭用品をゲットして、牛乳瓶入れからはポーションも発見した。今回の探索は、回収品に関しては過去一番かも。
そう喜ぶキッズ達だが、ゲートを発見して次はいよいよ最終予定の10層である。もちろん中ボスは手強いだろうし、気を引き締めて行きたい所。
5層の中ボス戦を覚えていた前衛陣は、突入後も油断しないように示し合わせている。確かにあの時は、絡まれたと思ったらそれが中ボス戦で大変だった。
ところが今回は、見回したアスファルト道路にいる敵は毎度の死霊軍ばかり。これは違うよねと言いながら、双子はなおも周囲を見回す。
その間に久遠がタゲを取って、それから殲滅戦へと移行するいつもの流れ。それも数分で終わって、次なる敵を求めて斥候役の双子が他の道路もチェックする。
それから彷徨っていたゾンビとスケルトン、追加で1体のゴーストを討伐して外廻りの掃除は終了。安全となった道路で、さて次は何をするべき?
そう話し合うキッズ達だが、やる事はもちろん決まっている。このエリアの中ボス部屋を探し出し、そいつを倒してさっさとこのダンジョンを出て行くのだ。
「でもパッと見た限りでは、中ボスらしき敵もゲートも見当たらないね。やっぱり、中庭チェックして歩くのが発見の近道かな?」
「じゃあ、遼とユフィに例の方法で探して貰う感じで良いかな? 遼、落ち込んでないで中ボスの部屋探しを頼んだわよっ!」
「分かった、頑張る……」
敵とは言え、ワンニャンに裏切られた気分の遼は、それでも茜の言葉にユフィへとよじ登っての探索開始。そして4つほど家屋の庭と駐車場を確認して、この列には何も無いと報告して来た。
それなら奥の列に移動するか、手前の川の方へとズレるしか無い。その話し合いの最中に、あの建物が怪しいんじゃないかと双子の天馬が奥の目立つ家屋を指差した。
それは2階部分のステンドグラスが綺麗な、洋風の四角い建物だった。その入り口だが、庭玄関も建物の両開きの扉も、何故か両方大きく開き放たれていた。
その様は、どうぞ中に入って下さいと言わんばかり……いかにも怪しくて、ここまで登って来てこんな歓迎は初である。それを見た遼は、アレが中ボスの部屋かなと呑気な発言。
「あっ、あの中に中ボスがいるのっ、遼? そっか、今までずっと外で戦ってたから、建物の中に敵がいるってパターンに戸惑っちゃったよ。
そっか、別に建物の中にボスがいても不自然では無いもんねっ」
「だとしたら、狭い場所での戦いになりそうだね……待ち伏せもいるかもだし、その辺も注意して行こうか。
後衛陣は、安全が確保出来てから入って来てね、姉さん」
了解と、短く作戦会議は終了して歩き出す一行。中ボスが死霊だった時用に、水鉄砲や木の実爆弾の準備も確認済み。その姿を、ハラハラしながら見守る保護者チーム。
確かにここに来てのパターンの変化は、何というか厭らしさを感じてしまって怖いかも。それでもこれをこなせば、今日の探索は晴れて終了である。
気を付けてと言葉を掛けそうになるのを、ぐっと堪える土屋女史は本当の保護者気分。少し前を歩くツグミも、恐らくそんな思いを噛みしめているのだろう。
そんな後ろの存在など、すっぽり忘れる程に集中している新人ズは無事に建物内へ。最後の戦いに向けて、後衛陣も攻撃魔法を解禁して臨む構え。
そんな室内は、広い玄関を抜けるとすぐに広いリビングとなっていた。ソファや机などの応接セットはあるが、他に目立った家具は置かれていない。
モロに、ここで存分に戦ってとの気配り空間に、前衛陣も中ボスを探すのだが見当たらない。双子も協力して室内を探すけど、敵影は全くどこにもいない不思議。
アレッと気を抜いている後衛陣だが、久遠は気を抜かず部屋の隅から確認作業を続ける。そして大きな姿見を発見、そしてそこに映る自分の姿に違和感を覚えて二度見する。
それは焦点を微妙に結んでおらず、歪んでいるかのように思われた。ところが急に少年の姿に焦点が合わさり、それから邪悪にニヤッと笑って鏡から出て来るご無体振り。
ドッペルゲンガーの仕掛けに、敵が出たよと大声で知らせる久遠は真面目な子。それが自分の姿を模しているにも関わらず、勇ましく『王者の剣』で切りつける。
ドッペル中ボスはそれを盾でブロック、コイツが《勇者》のスキルをコピーしていたら強敵になる予感が。しかしドッペルと光系の職業の相性が悪いのか、敵は盾しか使って来ない。
「うわっ、久遠兄ちゃんのコピーが鏡から出て来たぞっ……良く分からないけど、コイツ倒していいのっ!?」
「この敵は、鏡から生まれるドッペルゲンガーって闇系の敵だよ、みんなっ! 今は久遠の能力をコピーしてるから、盾の使い方が異様に上手いかもっ?」
「了解っ、そしたら確実にコイツが中ボスだねっ……龍星っ、ちゃっちゃとやっつけるよ!」
ようやく出現した中ボスに、双子は張り切って攻撃を加え始める。影のような久遠の分身は、顔までぼやけていてあまり強さは感じない。
そのお陰で、仲間を模写されての背徳感で、殴るのが躊躇われる感も全く無い残念さ。コピーする相手を間違ったドッペルは、倒すのも楽な雑魚に成り下がってしまった。
結果、10層の中ボス戦は5分も掛からずに終了の運びに。喜ぶ子供たちは、やり遂げた満足感を発散させながら宝箱のチェックへと向かう。
それを見守っていた保護者達も、ホッと安堵のため息をついて無事な探索の終了を祝っていた。最後に難敵が出て冷や冷やしていたのだが、案外と楽に討伐出来て良かった。
この辺も、子供たちの運の良さが作用した結果なのかも。
――とにかく、これで無事に“ニュータウンダンジョン”の間引きは終了。
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