新人ズの探索が意外な冴えを見せる件
さて3層だが、ここも造りは前の層と全く同じ感じみたい。周囲のアスファルト道路を歩いて回れば、恐らく獣人達と鉢合わせするだろう。
それを念頭に、とにかく囲まれないようにゆっくり移動を果たす新人チームである。各個撃破は、戦闘に置いては当然守るべきルールみたいなモノ。
その甲斐あってか、最初に遭遇したゴブ集団に先手で奇襲を掛ける新人ズ。具体的には、双子の『自在針』と『伸縮棒』が遠隔でヒットして行った。
それに気付いて騒ぎ立てる敵集団だが、時既に遅しで久遠が距離を縮めての追撃に成功。敵の中には弓兵もいたが、そいつの矢弾は久遠の盾に弾かれて反撃も終了。
そこから数分で、5匹いた敵集団は完全に魔石へと変わって行った。数をこなせば手法はスムーズになって行くが、それは戦闘も同じ事。
やったねとお互いの手腕を称える前衛陣は、段々と己の立ち位置もこなれて来た感がある。特に久遠が、双子の動き方を理解して合わせ始めたっぽい。
奇襲さえ成功したら、5匹程度の敵の群れは何でもないのは心強い限り。後衛陣からすれば、頼もしい事この上ない盾役たちの働き振りである。
それと同時に、自分たちも頑張らないと置いて行かれるって焦りもあるのかも。事実、素直に喜んでいる遼はともかくとして、茜は微妙な表情だったり。
「久遠君、あっちの通りにも群れがいるみたい……不意打ちするには、ちょっと距離があるかな。どうしよう、角っこで待ち伏せしてみる?」
「それは何匹の群れ? 数が少なかったら、遼の目潰し魔法でどうにかならないかな。せっかく夕方の訓練で練習してるんだから、試してみようよ」
「えっ、ボクの出番っ? 頑張るよっ!」
途端に大声を出す遼に、声のボリュームを抑えなさいと窘める茜である。この辺はリーダーと言うか、お姉ちゃん属性の茜は面倒見が良い。
その遼の声だが、残念ながら敵のゴブ集団にも聞き咎められてしまった。何事だとこちらに近付いて来る連中に、丁度いいやと奇襲の準備を始める前衛陣。
それからの戦いの応酬は、短いながらも熾烈であった。遼も闇の目潰し魔法を発動して、味方の有利になるよう戦況操作に励んでいる。
そうして何とか、先ほどの戦いに続いて勝利を収める事に成功した新人ズ。ホッと息を吐いて、引き続き周囲を見張る者とドロップ品を拾う者に別れての後処理。
こんな戦いが追加で2度ほどあって、アスファルト舗装の道路上の敵はほぼいなくなってくれた。後は庭に潜む敵に気を付けて、宝箱やゲートの捜索である。
この辺の流れも、3層目となると段々と慣れて来た新人ズのメンバーたち。さっきと同じく、魔導小型ゴーレム“ユフィ”の肩に乗って庭先を覗き込む遼である。
保護者達は、その作戦に何か言いたげだが、その行為を悪いと断じる事も難しい。何しろ効果も上げているし、遼だけが特別危ない目に遭っている訳でもないのだ。
そして今回も、良く分からない遼の目利きは何と言うか盗賊チック。これもどうやら、山の上に来るまでのストリートチルドレン生活に起因するのかも。
つまりは、遼が怪しいと言った場所には、必ず何かしらアイテムが隠されているのだ。例えば牛乳配達用の箱の中とか、玄関ドアの横のポストだとか。
いちいち開けて歩くのは、なかなかに大変で双子も普段はスルーである。ところが遼が確認してと言った箇所には、大抵は何か収められている不思議。
「うわぁ、遼ってばウチの香多奈より優秀なレーダー備えてないっ? ある意味隠しスキルだね、こう言うのって年齢に関係あったりするのかな?
私の感覚だと、チビッ子の方がスキル書以外から変な能力授かってる気がするよ」
「どうだろうな、“皇帝”甲斐谷もスキルが勝手に生えて来たクチだそうだが。だが確かに、遼は何か探査系の能力を隠し持っててもおかしくは無いな。
ただまぁ、ツグミみたいに闇スキルで探知してる可能性もあるんじゃないか?」
「なるほど、色々と考察するのも面白いな……おっと、今度はGの群れか。私は近付きたくないし、視界にも収めたくないぞ」
そう言って有言実行で明後日の方向を向く、潔い性格の陽菜であった。子供たちは、家の庭から出て来た大ゴキの群れを相手に奮闘中。
嫌そうに武器と踏みつけで敵を減らして行く久遠は、前回の探索からの学びはあった模様。双子に関しては、これも前衛の仕事と割り切って武器を振るっている。
向こうで固まっているのは茜のみで、遼はユフィに命じて討伐を手伝わせている。そんな感じで、パペット庭師やガーゴイルを粉砕しながら、次々と庭探索を続けて行く一行。
それから、遼の口にした牛乳箱やポストの確認作業……遼少年の見立ては百発百中で、チームは次々に牛乳瓶に入った薬品類や、鑑定の書や魔玉(風)をせしめて行く。
一見すると順調そうだが、最初に探索した列からはゲートは発見出来ず。お次の列に移って、もう一度駐車場と庭を覗き込んでの探索のやり直しである。
それを楽しそうにこなして行く、キッズ達新人ズであった。どうやら遼の宝物の発見率の高さに、チームの面々も味をしめている模様。
それは良いのだが、油断に繋がらないようにして欲しいのが保護者達の本音だったり。姫香などは、自分が体を動かした方が絶対楽だと内心で思っている筈。
とにかく、懸念だったユフィの運用も、今の所は上手くチームに嵌っていて何より。そうこうしている内に、魔導ゴーレムの上の遼がゲートを発見したよと報告して来た。
それを喜ぶ新人ズは、用心しながらその庭と玄関先の攻略を始める。敵が潜んでいるのは織り込み済みで、久遠と双子で先行して安全を確保して行く。
そうして小型のガーゴイルを片付けて、庭へと入って行く先行陣。その後に後衛陣が、庭に至る扉から続いて入って行くいつものパターン。
「おっと、新人チームがゲートを見付けて階層渡りをしたみたい。こっちのチームも、遅れずについて行かなくちゃだわっ。
もうすぐお昼だけど、昼休憩は5層攻略の区切りで取る予定なのかな?」
「そうだろうな、今はようやく探索も順調になって来たんだし、そのまま進んで行く方がいいと判断しているんだろう。その辺のペース配分も、経験で蓄積して行くべき事柄の1つだ。
そう言う意味じゃ、良い判断なんじゃ無いかな」
「子供ばかりのチームだから、疲労の度合いが心配だけどな。それにしても、あの魔導ゴーレムのユフィは掘り出し物だったな。
アイツこそ疲れ知らずだし、子供チームにフィットしているな」
多少動きが鈍いのは、この際ご愛敬との陽菜のコメントである。そんな彼女は、実際に探索で回収した魔導ゴーレムのいるチームを、動画で見た事があるらしい。
その感想に関しては、可もなく不可もなくって評価も微妙だったのだそう。確かに硬いし盾役としては最適だが、やはり鈍いし命令が無いと自発的には動かない。
更にはダンジョンまで運ぶ手間を考えると、ちょっと大変そうだなってコメントに。姫香もそこは素直に賛同して、魔導ゴーレムのボディは重いよねと口にする。
場所によっては入れない場合もあるし、決して万能では無いのはご指摘の通り。ただし来栖家のルルンバちゃんは、それをスキルを覚える事でカバーしている。
果たして他の自立型の魔導ゴーレムが、スキル書に反応するのかは全くの不明である。将来的には期待は大だが、その可能性はかなり低そう。
そんな事を考えながら、姫香達はキッズ達に引き続いて4層エリアへ。そこでは既に、キッズ達とゴブの集団が派手に戦いを繰り広げていた。
そしてツグミが、向こう側の通りに反応してどうしようと姫香に視線を送って来た。どうやら戦いの喧騒に釣られ、別の集団がこちらにやって来る途中らしい。
姫香はすぐ近くの外塀へと飛び乗り、その方向をチラッと確認する。するとツグミの指摘通りに、5匹からなる集団がこちらへと大股で進行中。
その中には、一際ガタイの良いホブゴブリンと弓持ちも1匹ずついて手強そう。キッズ達の戦いは、ようやく敵ゴブを1匹退治したばかり。
これは不味いと判断した姫香は、ツグミと共にその群れを駆逐する事に。無表情だが実は血気盛んな陽菜も、戦いかとこれに参加する。
ゴキ系が大の苦手な陽菜も、ゴブ獣人が相手だと完璧に無双が出来てしまえる。思えば市内の新人研修で会った時は、お互い右も左も分からないペーペーだった。
それを思えば、今や陽菜はB級で『ワープ装置』を所持して周囲の注目もかなり高い探索者に登り詰めた。姫香に至ってはA級で、西広島の超有名ギルドのサブマスである。
もっとも所属するチームは、ペットや魔導ゴーレムの割合が半分を占めとっても風変わり。ギルドにしても、異世界チームが所属していて変な目立ち方をしてしまっている。
まぁ、本人たちは全く気にしていないし、活動には支障もないので良いのだろう。その内に世間も、こんな些細な事象を気にしなくなる日が来る筈、きっと。
そんな事を考えていたら、目の前のゴブ集団は綺麗に消え去ってしまった。落ちた魔石はツグミが拾ってくれて、これでキッズ達の安全は取り敢えず確保出来た。
戦いに参加しなかった土屋女史が、向こうは順調に庭のチェックを始めたぞと報告して来た。こちらのフォローには気付いたかもだが、まぁ保護者同伴の時点でそんな事もある。
むしろこの“ニュータウンダンジョン”は、このエリアの狭さが意外と曲者なのだ。探索は短時間で済むが、敵が意外と密集していて間引きは大変。
戦いを道の真ん中で始めたら、高確率で道を徘徊する他の敵の集団に気付かれてしまう。連戦または挟み撃ちの確率が高まって、少人数のチームは怖い目に遭いそう。
それを思うと、ここはC級ランクとは言え侮れない気が。まぁ、魔素の高まったダンジョンは、多かれ少なかれそんな感じには違いない。
やはり安定して敵を狩るには、ある程度の人数は必要になって来るだろう。新人ズの後衛陣は、まだ魔法スキルを連続で使えないと言う不安定さを抱えている。
チームの安定には、やはりチーム人数を増やすべきか。
「姫香、キッズ達が次の層のゲートを見つけたぞ。今回の発見は早かったな、遼の勘は捨てたもんじっゃ無いって事か?
次は5層か、中ボスをやっつけてようやくお昼休憩だな」
「エリアの狭いダンジョンって話だったから、探索時間は短くて済むと予想してたけどさ。敵も意外と多くて、連戦になるとキッズ達にはちょっと辛いかもね?
次の層も、変に連戦になりそうだったら群れの1つは私達で間引こうか」
「了解っ、そうと決まれば私達もさっさと移動しよう」
保護者なのに置いてけぼりを喰らったら、いざと言う時にフォローに入れない。陽菜の言う通りだと、姫香達は慌ててキッズ達の通ったゲートへと進んで行く。
ツグミが脚力を活かして、真っ先にキッズ達の通ったゲートを潜って5層へと到達。それに続く保護者達は、そこで繰り広げられている光景を見てギョッとした表情に。
何と、キッズ達はオーク獣人の一団と派手に戦闘中だったのだ。オークも一応は獣人の中では雑魚とは言え、ゴブリンよりは確実にタフで体格もずっと良い。
しかも向こうの集団には、ちゃっかり魔術師も後ろに控えていた。
――半ダースのオークの群れに、果たしてキッズ達は勝利出来る?
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