新人ズの4回目の探索が意外と好調な件
この“ニュータウンダンジョン”の構造だが、まずフィールド型であるのに間違いはない。そのパーツだが、アスファルトの歩道と区画分けされた建物に分けられる。
そしてニュータウン内の歩道を歩き回った結果、次の層へのゲートは発見出来ず。橋も渡れなかったので、意外と探索可能なエリアは少ないみたい。
そんな感じで動き回った結果、ゴブリンの群れと追加で2度ほど戦闘になった。これらの戦いも前衛陣で始末して、出だしは順調な新人ズ達である。
そうして話し合った結果、ゲートはどうやら建物のどれかに隠されているらしいとの結論が。それは自警団からの情報にもあったが、改めて現場で確認するのも大事。
「うわっ、面倒くさいな……全部で何軒あるんだよ、ここっ。1軒ずつ確認しなきゃいけないとしたら、凄い時間かかっちゃうよ。
カナちゃんに、『魔法のコンパス』借りておくんだったな」
「ぶつくさ言わないの、龍星……私達みたいな新人は、楽を覚えた瞬間からどんどん怠惰になって行くんだからね」
「おおっ、天馬ちゃんって意外とオトナ……」
妙な所で感心する茜に、双子の姉の天馬は照れたように別にとの反論。同じく後衛の遼は、頑張って探し出そうと元気にアピールしている。
それから庭先の駐車場とかに、よくゲートがあるよと予習の成果を発表する。そうだったねと、一緒に予習をしてたリーダーの茜は、周囲を窺って駐車場の位置の特定に忙しい。
近場の庭先を眺めていた久遠は、それじゃあ奥の家の駐車場から確認して行こうかと提案する。それに釣られて動き出す一行に、小型ゴーレムのユフィも続く。
魔導ゴーレムのこの子は、幸いにも鈍重な感じは今の所見受けられない。戦闘にこそまだ参加していないが、戦ってもそこそこ強いと思われる。
意志の確立こそまだ弱いが、主に遼が命令すればちゃんと従って動いてくれる。そろそろ戦闘もさせてみたいねとは、リーダーの茜の弁である。
でないと、本当の性能も分かりづらい。
その機会はすぐに巡って来て、何とチームの移動中に庭先から不意打ちを受ける破目に。敵は園芸パペット兵で、枝切りバサミとエプロン装備で強そうではない。
とは言え、不意打ちを喰らった新人ズは大慌て……周囲の敵はすっかり駆逐したと思い込んでいたのだ。そこにユフィのブロックからの、仕込み武器の金棒での反撃が見舞われる。
「おおっ、ユフィってば命令も受けてないのに敵に対応して凄いよっ! いいよっ、そのまま殴ってやっつけちゃえ。
あっ、奥にもまだいるよ、久遠兄ちゃんっ!」
「りょ、了解……敵が垣根を超えて来るのを、取り敢えず待ち伏せするよっ」
オッケーと後衛も危険エリアから下がりつつ、慌しくも態勢を立て直す。前線は現在魔導ゴーレムのユフィのみで、前衛陣はそれをサポート中。
枝切りバサミで突き掛かって来るパペット兵だが、魔導ゴーレムは構わずパワーで抑え込む。その隙をついて、龍星が『伸縮棒』で華麗に止めを刺して行く。
その隙に庭塀を上っていた天馬は、敵の後続はいないよとチームに通達する。了解と返事する茜は、そのまま庭の確認も行うよう指示を出す。
後衛待機のまま、前衛陣は普通っぽい1軒屋の庭の探索へと潜入する。しばらく待っていたら、確かに車の停まっていない駐車場があるねと龍星が報告して来た。
庭は意外と広くて、建物の入り口はしっかり施錠されていて入れない。遼が『鍵開け』しようかと明るく問うて来るが、茜はそれを制止。
それから、まずは庭を確認して行こうかとチームに提案する。
了解と垣根を飛び越えた久遠と龍星だが、双子に関しては斥候役の才能も持ち合わせている気が。身のこなしが軽いし、周囲の気の配り方が並ではない。
遼もこのルートを進めば、意外と汎用性の高い探索者になれる予感がする。そんな事を考える保護者枠の土屋は、キッズ達の無限の可能性に胸アツ状態。
茜に関しては、後衛での育成しか思い浮かばないし、リーダー業も外した方が良いかも。久遠に頼り甲斐が出てくれば、弟の方が適任な気もするがどうだろう。
そう思っている間にも、双子の斥候役は2つ目の隣の庭をチェックして早くも3つ目へ。2つ目は敵も何もおらず、3つ目にはパペット庭師が1体いて、束の間激しい戦闘へ。
それに勝利して戻って来た前衛陣は、駐車場にゲートがあったよと報告してくれた。3つ目で見つかったそれは、頑張れば子供たちでも家の前から確認は可能っぽい位置にあった。
そもそも駐車場は家の前の道に面しているので、道から覗き込んで確認するのはアリだ。キッズチームだけに小柄な者が多いが、何とか頑張って欲しい。
そんな感じで秘かに応援する保護者達も、ゲートを潜って次の層に向かった新人ズに続く。そしてようやくの2層だが、これで向こうも攻略のテンポは把握した筈。
ただし、死角も多い建築エリアなので、宝箱やらゲートの捜索は相変わらず手間かも。攻略に関しては過去イチ大変だが、出て来る敵はそんなに強くない印象。
「よっし、1層はやや手間取ったけど、これでパターンは理解したしテンポも上がるかな? ちょっと癖の強いダンジョンだけど、まぁ予定通りに10層までが目標ね。
さすがに5層じゃ、キッズ達も不完全燃焼でしょ」
「姫香は相変わらずスパルタだな、まぁ向こうも完全に慣れちゃってるだろうからいいけど。ただ、垣根や塀を乗り越える作業が続くと、事故やスタミナ切れが心配だな」
「確かにそうだな……遼が鍵開けスキルを持っているけど、それを使わせるべきかは悩み処だな。まぁ、その辺は向こうのチームに任せてみようか」
現に2層の住宅街の道路で、集合したキッズ達は探索の方法をチームで話し合っていた。結果、どうやら小型ゴーレムのユフィを有効活用する模様。
しかも遼との合体技で、小柄な少年がこの魔導ゴーレムの肩に乗っかるようだ。こうして視界を高くして、庭の異物を積極的に発見して行こうって作戦らしい。
それには保護者達も感心した素振り、遼少年は後衛なのでゴーレムの肩の上からも敵への攻撃は可能だ。ただし、悪目立ちして敵に狙われないかなど不安は残る。
まぁ、立場的には肩を貸しているユフィの防御機能を信じるしかない。あれこれダメ出ししていては、子供たちも自分で考える事を放棄してしまう。
そんな感じで後に続く保護者達は、割と呑気に構えながら見守り続ける構え。少年の師匠のツグミも、やや心配そうな表情だが黙って追随している。
そうこうしている内に、新人ズはこの層での最初の戦闘を始めていた。相手はゴブリン集団で、このダンジョン安定のモブである。
ただし今回は弓兵も混じっていて、案の定狙われる後衛の遼である。それを器用に、闇の触手でブロックする遼はなかなかの成長具合かも。
さすが、毎日ツグミを師匠と仰いでスキルの練習を行なっているだけある。動体視力も素晴らしい遼は、後衛にいながら盾役もこなす秀逸振り。
「遼っ、危ないと思ったらすぐにユフィの影に隠れるんだよっ! 本当に、男の子はヤンチャで困っちゃうよっ……怪我したら、痛いじゃ済まないんだからね」
「確かにそうだが、意外と上手くスキルを操っているな……先月に比べて、影の操り方が段違いじゃないか?
相当に練習をしたんだな、それだけは褒めてあげないと」
「ああ、だが子供だけに褒めると調子に乗る恐れがあるから。探索が終わって、反省会の時にちょこっと褒める位で良いかも知れないな」
そう冷静に分析する土屋女史は、さすが新人ズをずっと見ているだけあって性格の把握もバッチリ。子供ってそんなモノだよと、姫香もその意見には賛成の素振り。
それを聞いた陽菜は、そうなのかと納得したような腑に落ちないような表情。弟も妹もいないので、陽菜はその辺の事情がピンと来ない模様。
そうこうしている間に、久遠と龍星の前衛陣がゴブリンの集団を見事に駆逐してくれた。小柄な獣人相手だと、体格のハンデも感じなくて良い調子だ。
それからドロップを拾って、ついでにニュータウン内を敵を求めて彷徨う計画らしい。先に敵を殲滅してから、ゆっくりゲートを探す手筈みたい。
そんな感じで、追加で2つのゴブ集団を潰し終わったのは約10分後の事。これでタウン内の通路に、動く敵影は全ていなくなってくれた。
それを確認した茜は、明らかにホッとした表情に。やはりリーダーの重責は、彼女の肩に重く圧し掛かっているよう。それもある意味仕方のない事、何しろチーム員が子供ばかりなのだ。
土屋としては、今後は大人とチームを組ませる事も視野に入れている。それこそ土屋チームと新人ズで探索して、それで経験を積むのもアリかなとも思う次第。
桃井姉弟に関しては、そっちの方が案外と良いのかも知れない。姫香はキッズチームの方が気兼ねが無いだろうと思っているかもだが、大人の存在が安らぎになる子供も確実にいる。
もちろんずっと同じチームではなく、桃井姉弟が心に落ち着きを取り戻すまでだ。それから遼に関しては、彼はどこでも誰とでもやっていける性格の持ち主。
その人懐っこさは、ある意味所持スキルより重要かも。
今回の新人ズのゲート探索だが、遼の肩車作戦は案外と上手く行っていた。驚きの作戦だったけど、これが子供特有の頭の柔らかさなのかも。
遼はユフィの肩の上から、並ぶ建物の庭先を眺めてそれをチームに報告して行く。結果、探し出したのはパペット庭師が2体と大ネズミが3体、それから大ゴキが4匹だった。
いや、他にも庭に置かれたコンテナ箱とか、最終的には駐車場のゲートも発見してくれた。何より素晴らしいのは、こちらが先に敵に先制攻撃を与えられる点である。
これによって、久遠と双子の動きも随分余裕が出て来て何より。そんな感じで追加の魔石をゲットして、ついでにコンテナ箱の中からは各種アイテムをゲット。
具体的には鑑定の書に木の実、魔玉(炎)や魔結晶(小)などが数点ずつ。それから縄跳びや園芸用品、盆栽などがこれまた数点ずつ。
おおっと感動するキッズ達だが、盆栽に関しては誰もコメントせず。これって高いのかなと、遼が一応呟いたけど答えられる者はその場にはいなかった。
「ま、まぁ一応持って帰ろうか……青空市で売れなかったら、熊爺かおはぎのお婆ちゃんにあげればいいよ。
喜ぶ人も、捜せばいるんじゃないかな?」
「そうだね、熊爺の家にもそう言えば似たようなのがあった気がする……そう考えたら、何か凄い値打ちモノに思えて来たね、龍星?」
「う~ん、まぁそうかも……」
歯切れの悪い龍星だが、お土産を持って帰って喜ぶ相手がいるってのは良い事だ。そう思って内心で喜びつつ、さて後はゲートを潜るだけ。
次は3層で、まだまだ探索は半分にも満たないので頑張らないと。そうして兄たちにも、喜ばれそうなお土産を持って帰れたら何よりである。
縄跳びは正直微妙、もっと良いのが出てくれば良いけど。
――それが探索のモチベーションの、熊爺家の双子なのであった。
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