来栖邸ではまだまだバイヤーとの攻防戦が続く件
姫香は秘かに、最後に『太陽のネックレス』をドンと出して驚かせようと画策していたのに残念な限り。コイツは効果(大)の魔法アイテムで、光耐性&体力アップ効果がえげつないのだ。
ただし、太陽を模したデザインは、棘がチクチクして宜しくない。そんな悲しい事情で、お蔵入りしてしまった逸品だったり。
そんな商談だが、妖精ちゃんも寄って来てこれはお勧めだと、何故かウンチクを語り始めて場は更にカオスに。ミケが護人の膝の上にいるので、そこを避ければ安全だと判断した模様。
恐らくだが、このパフォーマンスはお客に出された和菓子目当ての行為だろう。それを悟った紗良が、お客とは別に小さな淑女の為の席を用意してあげている。
毎度の事なので、その辺はソツのない長女である。ついでにお手伝いの怜央奈だが、電卓をハジきながら来栖家に損が無いよう目を光らせてくれている。
効果の程は不明だが、これだけの量なので手抜かりがあってはいけないとの判断なのだろう。とにかく2人目のバイヤーは、300万円を吐き出して終了の運びに。
憔悴している相手を見た姫香は、オマケにと『土竜のネックレス』をつけてあげる事に。ちなみに最初のバイヤーも、600万円と少しで、何とか商談は成立していた。
それでもさすがに、ダマスカス鋼の剣やアダマン製の武器、オリハル製の長剣は断念されてしまった。こちらも来栖家としては誤算で、どうやらミスリル装備が意外と高値で取引されているらしい。
その分、重オーグ鉄製の武具は金額が伸びなかったが、アレも錆びにくく普通の品よりは良品である。どうやらここの企業は、それらを魔法加工して売りに出すそう。
そんな技術と言うか、ひょっとして錬金術師でも抱え込んでいるのかも。ちょっと楽しそうだが、こちらともぜひ長期の取引をお願いしたいモノ。
ちなみに、在庫に『ヒヒイロカネインゴット』や各属性のインゴットがあるよと姫香が口にした途端。バイヤー達はしんと静まり返って、まるで道の角で妖怪と出くわしたかのようなリアクション。
どうやらこれらも、とっても値が付きにくい品々みたいで残念な限り。引き続き箪笥の肥やしになるか、隠れ里の工房に持って行くしかなさそう。
そう言えば、忙しさにかまけて最近は隠れ里に全然行けていない。面白そうな素材はたくさんあるし、ルルンバちゃんの魔導ボディのメンテナンスもすべきなのに。
その辺は、次に控えるレイド遠征の後になりそう。香多奈も冬休みに入るし、農閑期なので他は特段にやる事もない。
ついでに、ノームの職人達にお礼の品を持って行くのも良いかも。
来栖邸のリビングは、そんな感じで一旦の休憩を挟んで3人目のバイヤーが出て来た所。チビ妖精も、用意された席で大いに食欲を満たして満足そう。
今度も紗良とみっちゃんが仕切って、言い渡された品を纏めて来てくれた。その数は膨大で、品質チェックのバイヤーさんもとっても忙しそう。
取り敢えず貴金属は、全部本物みたいでその点はダンジョン産のクオリティの高さが窺える。これで紛い物が混じっていたら、さすがの来栖家も不信感が芽生えてしまうかも。
その品揃えだが、まずは軽く甲羅素材や皮素材などの素材系が少々。これらは地元の企業も、割と新商品開発の為にと買い取ってくれるので在庫は少ない。
その為に割とすぐに終わって、お次はお待たせの金銀財宝系である。金貨や銀貨から始まって、砂金の詰まった袋などが大量に魔法の鞄から出て来る始末。
それを用意するみっちゃんは、目の奥が$マークに。
「うわっ、金ってめっちゃ重いんスねぇ……うわっ、金の延べ棒のこのサイズ、初めて見たっスよ! 金の彫像まであるんスか、来栖家ってばどんだけ貯め込んでるんスか!
えっ、こっちの袋には宝石がじゃらじゃらっ!?」
「今までは、全く換金が出来なかったからねぇ……“浮遊大陸”や“アビス”の宝物庫でも、随分と稼がせて貰ったんだけどさ。
今の時代じゃ、魔石や薬品の方が喜ばれるし現金化がしやすいのよねぇ」
「確かにそうだね……ウチのチームも金の延べ棒より、魔結晶(大)や中級エリクサー瓶の方がみんなテンション上がるもんね。
陽菜の所だってそうでしょ、多分どこのチームも今はそうじゃない?」
確かになと頷く陽菜は現実的で、夢見るみっちゃんや怜央奈とは経済観念が違うのだろう。そんな中、紗良が今度は宝石の入った袋を机に並べて行く。
それはもう、こちらは色合いからして派手で、夢見る女性陣はほおっという表情に。真珠や瑠璃やメノウや琥珀、他にもダイヤやそれらを使った指輪やアクセサリー各種。
それらが袋から無造作に出て来て、逆に気持ち悪い程である。お金持ちの金庫から強奪した品々だとしても、これ程大量には集まらないかも。
そんな事を話し合う女性陣は、貴金属店に強盗に入ったらこの品揃えはアリかもと物騒な事を口にしている。そんな言葉を聞きながら、冷や汗を掻きつつ鑑定を進めるバイヤーさん。
こちらも時間が掛かりそうなので、同時に協会との商談も進めて行く事に。市内の本部から来たこの職員、来栖家とは初対面の人物である。
それでもリアクションは上々で、仁志支部長や江川と同様に今は顔色もあまり宜しくない。それでも容赦せず、姫香と陽菜は商談にと言われた品を別の机に並べて行く。
「えっと、まずは魔法の鞄は最近は高騰して、企業も買い取りを渋って無駄に増えてます。それから『巻貝の通信機』や『鑑定プレート』も、最近はギルドでもダブついて来たので売ってもいい感じかな?
後は『海鉱石のインゴット』だけど、こっちは現在7本在庫があるよ」
「ほうっ、これは意外と随分……ええっと、こっちの予算と照らし合わせて、既に全部の買い取りは無理ですね。
非常に残念です、こんなお宝を目にして持ち帰れないとは」
「同感です、もう少し支度金を持って来ていれば……あの、来年にでも第2回を開催して貰えると嬉しいのですが」
それは是非と、護人も出された提案に即座に乗っかる構え。そんな主の膝の上では、ミケとムームーちゃんが丸まって身動きが難しい状況である。
その代わりにと、テキパキと動き回る娘さん達は揃って良い笑顔。こんな商談を目にする機会は、滅多に無いのだから陽菜も良い勉強になるなって顔をしている。
それはともかく、協会のバイヤーは魔法の鞄の買い取りを3つに留める模様。その代わり、『巻貝の通信機』と『鑑定プレート』(薬品専用)&(木の実専用)は買い取るとの事。
更には資金が覚束ないとの理由で、『海鉱石のインゴット』は潔く諦めて出来合いの魔法アイテムを買い取るとの申し出。そんな訳で、姫香と陽菜は鞄からアクセサリー類を順次取り出して行く。
まずは『蛙のブローチ』や『珊瑚の首飾り』で、これらは最初は家族で使っていた品である。それが段々と良品が揃って来て、使うのを止めた効果(小)の品々だ。
『蟹のイヤリング』や『魚人のペンダント』も、同様に効果が低いので買い取り値段も当然低い。『ヒトデの腕輪』なども、追加で魔法防御アップとか付いてるけど効果は(小)である。
この辺は問題無く買い取られて行って、さて次はグレードが上がって効果(中)の商品たちだ。まずは『海月のブローチ』や『水滴のイヤリング』、それから『河豚のイヤリング』と追加の効果付きの品々が並べられて行く。
これ以上の品となると、さすがに家族で使っているので用意は無理。ただし、武器とか素材系だと『海神の長槍』は効果(大)だし、『海龍の鱗』や『海龍の牙』なんてレア素材も一応は用意出来る。
用意は出来るし、売って下さいと言われれば吝かでない護人ではあるモノの。向こうの資金が追い付かず、これ以上は無理となってしまった。
さすがに効果(中)の買い取り金額が、平均で40万円なのでその辺は仕方がない。ちなみに効果(大)だと80~100万円とオーブ珠級に、効果(特大)だと300万円以上で宝珠とだいたい同じ値段となるみたい。
滅多に見掛けないって点では、確かにその位の値段はしても良いかも。ただまぁ、買い取りのバイヤーとしては頭の痛い所ではある。
何しろ、準備して来た支度金が一気に消え去るのだから。
そんな訳で、協会のバイヤーは500万円以上を吐き出した時点で終了の運びに。紗良と姫香は、相談した結果『魔法の水鉄砲』をオマケにつけてあげる事に。
それから頑張って、800万円もの買い取りをした貴金属のバイヤーには、ゴツい宝石の原石をオマケする。こちらもダンジョン産なので、外れって事もないだろう。
そんな感じで、2時間近くに渡った来栖邸での商談も、何とか終了に漕ぎつけた。ヤレヤレと、肩の荷が下りた護人と仁志は、顔を見合わせてお互いを労い合う。
それにしても、噂の『封印の鉱石』の買い取りの話は全く出なかった。それには仁志も不思議顔、上層部はスキルを悪用した者の確保後の対処に、これが使えるかもと食い付いていた筈なのに。
そう話す仁志は、これも金銭的なダメ出しが出たのかなと思案顔に。つまりは、そんな悪者に対して、多額の資金は出せないと横槍が入った可能性が。
何とも世知辛いが、協会内にも派閥争い的なモノがあるみたい。組織も大きくなれば、ヒビが入ったり形が歪になるのは仕方のない事か。
野菜と同じだ、育ち過ぎても等級は落ちてしまう悲しい定め。
その後、お客さんを送り出した来栖邸の面々は、儲かったねぇと総じてホクホク顔。4人のバイヤーが、短時間で結構な額を支払ってついでに倉庫もスッキリ。
完璧に在庫一掃とはならなかったが、少なくともこれで片付ける気力が湧く位には落ち着いた。魔法アイテムの装備品が1つも売れなかったのは残念だが、まぁ次回もある。
「次は魔法アイテムが売れるといいねぇ、護人さん。溜まっていく一方で、性能の良い奴もあるのに勿体無いよっ。ギルドで流通も限界があるし、誰か大量に買い取ってくれないかなっ?
まぁ、その辺は本当に次回に期待だねっ!」
「そうだな、 さて……そろそろ小学生達を迎えに行く時間だな、平日なのに忙しいったらないよ。姫香たちは、済まないが新築の集会所の片付けを引き続き頼むよ。
夜にはこけら落としで、ご近所総出であそこで宴会をやろう」
「おおっ、それは楽しみだなっ……私達も手伝うぞ、次は何を運び込めばいい、姫香?」
護人のその言葉で、紗良や姫香も一気にお仕事モードへと思考が切り替わって行く。紗良と怜央奈は、いつものメンバーで台所を使えるようにして宴会の準備に取り掛かる所存。
姫香は陽菜とみっちゃんを従えて、納屋で眠っていた平机や座布団を運び込む予定。既に“浮遊大陸”でゲットした、『冷凍保安装置(魔)』と『虫よけ装置(魔)』は運び込んで設置済み。
他にも過去にゲットした魔法アイテムで、なるべく居心地の良い空間を作り出す予定である。そうして夜は宴会場に、お昼は子供たちの塾として使えれば最高だ。
ノームへの支払いは、金のインゴットと魔石で既に済ませてある護人である。向こうも気前の良い施主に、また何かあれば作ってやると上機嫌だった。
来栖家としては、本当に良い縁を異世界と結べたなって思い。
――そう言う意味では、探索業もそれ程に悪くは無いかも?
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