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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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宝の地図を読み解いて宝物庫探索へ挑む件



「えっ、何でこの扉なのっ、妖精ちゃ……ええっ、扉が光ってる!? あっ、宝の地図も光ってる、そんな単純な答え合わせなのっ!?」

「あっ、本当だ……つまりは、この宝の地図が案内役の役割も果たしてたんだぁ。なるほどっ、それなら迷わなくても済むし合理的だねっ!」


 思わずそんな言葉を口にする香多奈と紗良、妖精ちゃんはいつもの大威張りモードで宙を漂っている。護人と姫香もその仕掛けに感心しつつ、確かにこれなら迷わないねと同意の素振り。

 その扉は一行が通りかかる前までは、他と変わらず何の変哲もない重厚な石の扉だった。ところが、宝の地図を持った香多奈が近付いた途端に発光をし始めた。


 確かにこれなら、宝の地図を持って突入場所を探しうろつき回る事態は避けれそう。合点した来栖家チームは、それじゃあここに入るよと行動を開始する。

 いつものように姫香が扉を押すと、それは音もなく開き始めた。開いた扉の奥はゲートとなっていて、その奥がどんなエリアかは全く窺えないと来ている。


 連続の水エリアは避けたい所だが、この奥に宝物庫があるのなら他の選択肢はない。そんな訳で元気に突入して行くハスキー達、それに続く家族はやや夢見心地。

 目的地は34層、そこへ向かって突き進む来栖家チームであった。




 入ったエリアは薄暗くて、一瞬さっきの深海エリアかなと錯覚する一行。ただし、例の息苦しさは感じられず空気はちゃんと存在するみたい。

 各自が光源を用意して、周囲を確認するとそこは洞窟タイプのフロアだった。天井は意外と高くて、暴れ回るには不便は無さそう。


 しかし、この“アビス”ダンジョンで洞窟エリアは初めてかも。そんな事を話し合う子供たち、香多奈は撮影に忙しそうであちこちに視線を向けてコメント中。

 ハスキー達も多少は戸惑っていたが、すぐに周囲の安全チェックを始めてくれた。姫香が進むべき方向を末妹に訊くと、すぐに洞窟の奥だよとの返答が。


「あっ、こっち側はすぐに行き止まりになってるね、姫香ちゃん。暗くて気付かなかったけど、だとしたらほぼ一方方向の洞窟エリアかな?

 迷わなくて楽だけど、この“アビス”だとどうだろう」

「そうだな、ハスキー達は迷いは無さそうで良かったけど。“アビス”の洞窟エリアのデータは全く無いから、気を付けて進まないとな。

 それじゃ、いつもの布陣で進んで行こうか」


 それを聞いて、は~いと返事する子供達……そしてヒバリと妖精ちゃんのコンビも、洞窟の右端へとスタンバイ。それを見て、ムームーちゃんもオートマタ鎧を用意してと護人にせがみ始める。

 さっきの探索終わりで脱いで、これでブームが去ってくれればと願っていた護人だがそれも叶わず。軟体幼児は、どうやらこの鎧の操作がそこまで苦ではないみたい。


 そんな大変そうな護人に気付いたルルンバちゃんが、自分が面倒見るよと立候補してくれた。確かにオートマタ鎧と魔導ゴーレムのペアは、見た目的にも美しいかも。

 それじゃ頼むよと、護人は今回は真ん中で全体に気を配る役目を(にな)う事に。それはそれで大変だが、スライム幼児のお世話をずっとするよりは建設的ではある。


 そうこうしている内に、前衛陣は先に進んで最初の戦闘を始めていた。相手はサハギン獣人らしく、背の低い魚人のシルエットは印象的。

 コイツ等は、前衛の能力は実は大したことは無い連中ばかり。何しろ、魚のボディに無理やり人型の手足をくっ付けたような獣人なのだ。

 これで素早く動こうと思うのが、そもそもの間違い。


 ところが術者や奏者(?)が混じると、途端に厄介で周囲は一転して水エリア仕様に塗り替えられてしまう。そう言う能力持ちが群れに潜んでいると、向こうのペースになりがちなのだ。

 それでも百戦錬磨のハスキー達は、鋭い嗅覚でそんな厄介な術者から倒す(すべ)を心得ている。この戦いも、そんな訳でさほど苦労もせず敵の全滅に至った。


 お手伝いの茶々萌コンビも、何とかキル数を稼いで満足そう。姫香は皆を褒めながら、ツグミの拾ってくれた魔石を礼を言って受け取っている。

 それから後ろを振り向いて、再び出発の合図。


 最近は後衛との距離問題も、すっかり解消して姫香の中衛ポジションも板について来た。何だかんだで、チームの指揮を執っているのはこの少女だったりする。

 今回は1本道の洞窟エリアなので、ルート選定にも気を使わなくて済んでいる。その点で言えば、さっきの海底渓谷と似たような感覚かも。


 もっとも向こうは水エリアだったし、地面も隆起や陥没(かんぼつ)が酷くて歩き難かった。今回の洞窟エリアは、地面もほぼ平らで歩きやすくて大助かり。

 その分、他の仕掛けがあるかもなので注意は必要には違いない。先行するハスキー達は、今の所はそんな難所を見つけ出してはいない模様。

 その代わり、今度はカサゴ獣人の群れと遭遇して戦闘に突入した。


「わっ、また敵が出たね……ここは移動は楽だけど、敵が多いエリアなのかなっ? 両側の壁に関しては、さっきみたいに待ち伏せの敵は1匹もいなくて平和だよねっ。

 それに飽きが来て、ちびっ子達が前衛に行くって言い出さなきゃいいけど」

「勘弁してくれ、それなら多少の敵が出てくれた方が……おっ、ヒバリが何かに反応してるな。敵を見つけ出す能力は、さすが肉食獣だけあって優れてるね」

「そうだね、頑張れヒバリッ……あっ、そいつは毒持ちスライムだよっ、気を付けて! うわっ、妖精ちゃんは(いさぎよ)く逃げ出したっ!」


 小さな淑女の毎度の持ち場放棄はともかくとして、兎の戦闘ドールはそれなりの活躍を見せた。結果、鮮やかな緑色のスライムは、仔グリフォンの活躍で倒されて魔石へと変わって行く。

 それを確認して、勝利の舞いを踊り始めるヒバリはお茶目さん。スライムを倒してやったぜと、ムームーちゃんを挑発しているのは気のせいだと思いたい。


 そして大人しくしなさいと、受けた毒の治療を始める紗良と香多奈である。軟体幼児は悔しそう、オートマタ鎧を見事に駆使してダンダンと地面を片足で蹴っている。

 温和な性格だと思っていたスライム幼児だが、熱い部分も持ち合わせているらしい。護人は何となく感心しながら、頑張れとただ見守るのみ。


 お付きに回ったルルンバちゃんも、さすがに幼児の子守は経験がない。そんなAIロボが開発されたら、お掃除ロボット以上に重宝されていたかも。

 それはともかく、洞窟内の探索は順調に続いて行く。そして結局、ムームーちゃんの子守役は再び護人が担う流れに。これもムームーちゃんの我が(まま)で、見守り役は絶対的に父ちゃんが良かった模様。


 任務をこなせず落ち込むルルンバちゃんに、ドンマイと軽く口にする香多奈であった。お兄ちゃんと父ちゃんは全然違うポジションだからねと、良く分からない慰め。

 そんな中、前衛陣は今度はサメ獣人と戦いを繰り広げていた。そいつ等は2メートルを超す巨漢の前衛陣と、小柄な後衛陣でタイプが違うよう。


 タイプと言うかサメの種類も違うようで、まぁ後衛のシュモクザメは恐らく術者だろう。独特のハンマーヘッドの魔法使いは、水魔法でハスキー達を翻弄している。

 それを見た香多奈は、前衛に『応援』を飛ばしながらAIロボに出番だよと(うなが)す構え。出番を与えられたルルンバちゃんは、魔銃を構えて前線へと加勢する。


「それにしても、確かに敵との戦闘の多いエリアだな……まだ10分ちょっとしか歩いてないのに、大きな群れと遭遇し過ぎじゃないか?

 感覚的には、まだ半分もエリアを探索出来てないだろうに」

「本当だよね、入り口からまだそんなにエリアを進んだ気はしないもんね。それより気付いた、叔父さんっ?

 少し進んだ洞窟の先に、派手な珊瑚のエリアがあるよっ!」

「あっ、本当だ……何かあっちの向こう側、変な感じがするねぇ? アレはどういった現象なのかな、妖精ちゃん?」


 問われた小さな淑女は、飛び上がって戦闘の行なわれている向こうを透かして見る仕草。それから、あっち側は水エリアになってるナと、エリアの途中変更をあっさりと口にする。

 何と、31層から洞窟エリアだと思っていたら、途中から仕様が変わるとの話。その知らせに、ええっと驚きを隠せない紗良と香多奈である。


 末妹が発見したエリアだが、円形の洞窟に沿って全ての壁や天井に珊瑚が密集している不思議空間だった。まさかその正体が、嫌な仕掛けの水エリアだったとは。

 苦情の1つも言いたくなるが、ダンジョンに文句を言っても始まらない。ところでサメ獣人との戦闘は、ルルンバちゃんの加勢もあって恙無(つつがな)く終了の運びに。


 そして魔石(小)に混じってフカヒレが落ちてるよと、姫香が楽しそうに報告して来る。それ所じゃないよと、香多奈がこの先のエリアの仕様変更を姉に告げている。

 それを聞いた姫香は、変わったエリアだねぇと感心した物言い。


「まぁ、仕方無いって言えばそれしか無いじゃん……香多奈、アンタの出番が増えたんだから頑張りなさい。水の妖精を召喚して、ここからまた仕切り直しだねっ。

 ハスキー達も、また厄介なエリア攻略だよっ!」

「ええっ、MP持つかなぁ……そうだっ、茶々丸に頼めばいいんだっ! 茶々丸っ、MPタンクのプカプカ出して頂戴っ!」


 呼ばれた茶々丸は萌を乗せたまま、末妹の周囲をぴょんぴょんと跳ねていたと思ったら。ようやく言われた事を理解したのか、《マナプール》を発動してくれた。

 ヤンチャな仔ヤギだが、こんな時には素直で便利である。そんな訳で、香多奈は本日2度目の《精霊召喚》スキルの使用に踏み切る。


 呼び出された水の精霊は、またお前かってな呆れた表情。それでも言われた仕事はこなしてくれて、その過程で香多奈のMPは大きく吸い取られる破目に。

 それを茶々丸の《マナプール》で(おぎな)って、今回の作戦は大成功となった。そうして追加で水属性の加護を貰った来栖家チームは、意気揚々と珊瑚のエリアへと突入を果たす。



 本日2度目と言う事と、水の精霊の加護のお陰で水エリアの違和感はそんなに感じなかった一行。ただまぁ、上下左右に派手な色合いの珊瑚が広がるこのエリアは壮観だ。

 それらに目を奪われながらも、死角が多いから注意しての護人の呼びかけに。さっそくあちこちで、待ち伏せのクマノミやカサゴの襲撃が起きた。


 それらに立ち向かう、ヒバリとムームーちゃんはある意味立派ではある。今回は数が多いので、護人や後衛陣も手を貸しているが混乱は前衛陣にも波及していた。

 向こうが戦っているのは、どうやらホオジロザメの集団らしかった。洞窟を棲み()としているのか、意外と数が多い集団が泳ぎながら向かって来ている。


 ルルンバちゃんが先制でレーザー砲を放つが、水エリアは案の定エネルギーの伝播率がいまいち。ショックを受けるAIロボに、再びドンマイと香多奈の慰めが。

 ハスキー達は、それぞれ工夫して巨体のサメ集団を駆逐して行く。姫香も愛用の『天使の執行杖』を大鎌モードにして、まさに水中エリアを泳ぐように敵とまみえている。


 そんな中で、やはり1番の活躍を見せているのはレイジーだった。『可変ソード』を自在に操って、伸びた刃は敵を一気に複数匹(ほふ)ってしまう威力。

 コロ助もタゲ取りを頑張って、後衛の安全を図っている。ツグミもそのフォローにと、気配を殺して敵の死角からの必殺の一撃を見舞っている。

 あとは茶々萌コンビだが、こちらもまぁ足手(まと)いにはなっていない感じ。





 ――そんな感じで、今回も水エリアは相当に苦労しそう?







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