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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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“アビス”のコイン集めも徐々にペースが掴めて来る件



 22層の探索も、来栖家チームは順調に進めて既に遺跡エリアは半分以上を踏破していた。派手な色合いのカサゴ獣人も、既に1ダース以上倒している。

 半分水没した場所も2つ程通り過ぎ、特に事故もなく移動をこなす事が出来ている。後衛陣も、その点は安心して自分達の出来栄えを褒め(たた)える素振り。


 その位は許されるはず、何しろここは“アビス”ダンジョンなのだ。100層を超えると噂の難関ダンジョン、探索者も訪れる者は限られて来る。

 そんな場所に、来栖家チームは既に3度目だか4度目だかの挑戦なのだ。そして今回は、30階層以上に潜ろうと目論んでいる次第。


 もっともそれは、宝の地図の宝物庫を探しての挑戦である。上手く行けば良いけど、その点は全くの不透明で謎解きも必要になって来るかも。

 とにかく、この22階層は波乱もなく踏破出来そう。


「あっ、次の層へのゲートを発見したよ、みんなっ! ここもほぼ1本道だったね、そんで、支道には宝箱も置かれてなかったと。

 なかなかコインもリングも回収出来ないね、まぁ仕方無いけど」

「他のチームの状況も気になるけど、通信は5層区切りにしておこうか。取り敢えず、少し休憩をして次の層へと挑むよ、みんな」

「は~い、よいしょっと……ヒバリが元気過ぎて、もう自分で歩かせた方が手っ取り早いまであるよっ。

 ねえっ、叔父さんっ……この子どうしたらいいかなっ?」


 すっかりヤンチャ盛りの仔グリフォンのヒバリは、籠の中に押し込められてるなんてやなこったと暴れまくり。ぬくぬくとした巣を飛び出して、自分の脚で自由を欲する構え。

 それをダメとも言えない護人は、好きにさせてあげなさいと言うしかない。とは言えダンジョンは、敵も出れば危ない仕掛けも存在する場所である。


 そんな場所で自由を与えるのは、ちょっと不味い気もする。生態に詳しい妖精ちゃんに尋ねると、自由にさせりゃいいじゃんと突き放した言い方。

 案外と、来栖家の過保護な方針に呆れ果てているのかも。ミケやムームーちゃんみたいに、家族の肩に留まってくれれば何の問題も無いのだが。


 既にミケより大きくなったヒバリは、護人の肩でもちょっと難しい気がする。まぁ、護人は結構動き回るので、その肩に留まるのは難しいかも知れない。

 それこそムームーちゃんの粘着力辺りがないと、簡単に振り落とされてしまいそう。そもそもグリフォンは騎乗するモノであって、肩に乗っけるのは何か違う気が。


 そんな事を話し合う後衛陣は、ヒバリの動きに合わせて気もそぞろ。その内に、紗良がハスキー用のリードを取り出して、この問題は解決の運びに。

 香多奈がそれを手にして、これで一応の安全マージンは得られた格好に。そして来栖家チームも、23層へと進出して探索を開始するのであった。



 そんな23層も、水没した遺跡が続いてちょっと湿気が強いエリアだった。ちなみに香多奈の《精霊召喚》からの水の精霊の召喚は、MPコストを考えて自粛している次第。

 チームの考え方としては、どうせ1回は厄介な水エリアを引くだろうと。それ用にキープしておいてと、護人は末妹の扱いもさすがに上手である。


 つまりは、奥の手として期待しているよと、香多奈をヨイショしつつ操っている感じ。それを知ってか知らずか、超ご機嫌に探索にくっ付いて来ている末妹だったり。

 そんな23層も、出て来るのはカサゴ獣人や大量の大フナ虫がメイン。仕掛けが厄介な水没エリアも、大ゴカイや大ヒトデが配置されている程度。


 ……とか思っていたら、このエリアにはもっと手強い仕掛けが(ほどこ)されていた。何と爆散大ウニが水溜まりに潜んでいて、そいつが飛ばした針に引っ掛かってしまったのだ。

 知らずに踏んだ茶々萌コンビと、近くにいた姫香は割と酷い目に。ツグミの『探知』をすり抜けたそいつは、かなりの隠形の使い手だったとみえる。


「うわっ、針が飛んで来たっ……茶々丸っ、さっさと水から上がって! 何か砂の中に潜んでいたよっ、後衛陣もストップしてっ!」

「うおっ、これはウニか何かかっ? 茶々丸っ、前に進むんじゃなく戻っておいで。ルルンバちゃん、済まないが茶々丸の救助と砂地のチェックを頼む。

 姫香、左手にも1匹いるみたいだぞっ!」


 護人も《心眼》を発動して、砂地に隠れている大ウニの存在を知らせる。その途端、姫香の近くにいた大ウニも爆散して、大量の針をとばして来た。

 それを咄嗟(とっさ)に『圧縮』防御で防ぐ姫香、それを見たツグミが怒り心頭で舞い戻っての攻撃を加える。どうやら敵に気付かなかったのが、プライドをいたく傷付けたらしい。


 その手の隠形使いは、とにかく厄介でスキルや知覚でも見つけるのは至難の(わざ)だ。それでもその役割を(にな)っている者からしたら、腹が立つには違いない。

 結果、防御はからきしの大ウニは簡単に潰されてお亡くなりに。他の隠れていた奴らも、どうやらルルンバちゃん相手に無駄に爆散して場所は全て知れ渡る流れに。


 そこからのハスキー達の容赦ない襲撃は、恥をかかされた恨みも存分に(こも)っていた。何しろ先行していたのは彼女達で、危機を見抜けなかったのだ。

 それからようやくひと段落がついて、姫香と茶々萌の治療も無事に終了。幸いにも、どちらも怪我は軽くて済んで何よりであった。


 それから落ち込むハスキー達を(なぐさ)めて、先に進むよと号令を掛ける姫香。ちなみに、大ウニはウニの身と魔石(小)とリングを4個ドロップした。

 初のアビスリングのゲットに、浮かれる子供たちはさっきの危機もどこへやら。落ち込んでないで次に行くよと、香多奈はやはり来栖家のムードメーカーである。



 そんな感じで、23層も突破してその後は順調に24層へ。分岐の少ない遺跡タイプは、罠系の設置は多いけど迷わず進めてリズムは良い。

 まぁ、そのリズムを大きく崩すのが罠の存在なのだが。宝箱にも出会わないのが、1つの要因にはある。それをようやく崩す、宝箱を24層の支道で発見した。


「おおっ、でかしたよツグミっ……うわっ、編み籠かと思ったらこれ海草で出来てるよ、紗良姉さんっ。あっ、でも中身は薬品瓶とか属性石とか普通かなっ?

 あっ、とか思ってたら海産物も多めだね」

「水着とかも入ってるね、それから……やった、リングとコイン入ってた! さっきの回収から、ようやく運が巡って来たねっ!」

「そうだねぇ、これはお洒落……なのかな、海草で出来た編み籠って。取り敢えず、籠ごと全部回収しちゃうね。

 お手柄だったね、ナイスだよツグミちゃん」


 先ほどの失敗を払拭(ふっしょく)させようと、気遣う子供たちはとってもペット思い。とにかくこれで、リングとコインの両方を回収に至った。

 後はこのまま、個数を増やして行けば万々歳である。そんな調子で本道に戻って、歩く事5分余りで問題の水没エリアに到達。


 今回は25メートルプール並みに、幅広く水没エリアが広がっていた。濡れずに進めるのは、両端の幅の細い道と飛び石みたいに崩れた石の瓦礫(がれき)が少々。

 まぁ、瓦礫を飛んで行こうと思ったら、驚異的な跳躍力が必要になってくる。ルルンバちゃんなどは橋のルートは細すぎて無理、素直に水没エリアへと入って行く。


 そんな水没エリアでまず目につくのが、各所に配置された大イソギンだった。そいつらは触手をうねらせながら、近付いて来た敵に水弾を飛ばして来る。

 そいつ等が、端っこのルートを進む子供達に向けて攻撃を仕掛けて来た。それを上手にブロックするAIロボは、魔銃での反撃も絶好調。


 先行するハスキー達も、負けるもんかと遠隔スキルで目に付く敵を攻撃し始める。水没エリアは、途端に遠隔攻撃の飛ばし合いで派手に(いろど)られて行く。

 今回は、潜んでいた爆散ウニも魔導ゴーレムのボディに傷をつけられない。そんな連中を踏み潰しながら、AIロボは歩く要塞(ようさい)気取り。


 この水没エリア、敵は大ウニとイソギンの2種類かなと、護人も後衛を護衛しながら戦況を見定める。すると、どうやら砂場に大ヒトデも潜んでいた模様。

 と言うか、突然に砂中から姿を現した巨大ヒトデは、何とルルンバちゃんより一回り大きいサイズ感。砂どころか水も撥ね飛ばして、驚きの階層ボス登場ってな勢い。


 もちろん来栖家の面々は、その演出に驚いて立ち止まる。ところが護衛役のルルンバちゃんは、自分より大きな敵に全く(ひる)む様子も見せずに反撃。

 同時に、その巨大ヒトデに飛び乗る影が1つ……『歩脚術』を使ったレイジーが、敵の頭(?)の上に乗って、思い切り『可変ソード』を突き立てた。


 そもそもヒトデの口は、裏側にあるので触手に気をつければなんて事の無い敵である。AIロボのレーザー砲に焼かれ、伸縮自在の剣に体を裂かれて巨大ヒトデは一瞬でお亡くなりに。

 末妹からも、出オチじゃんと批難を貰った敵だがそれは仕方ない。遠隔イソギン部隊も、ハスキー達の手によってあっという間に倒されて行く破目に。


 ちなみに、巨大ヒトデは魔石(中)とコイン5枚をドロップしてくれた。そして難関の水没エリアも、10分少々掛かったけど何とか踏破に成功。

 ホッと息をつく後衛陣だが、後は普通の石畳の続くエリアで問題は無さそう。カサゴ獣人の襲撃に注意しつつ、次のゲートを発見すればクリアは確定である。


「ふうっ、みんなお疲れ……ルルンバちゃんも、水中でナイスファイトだったね。見事に盾役をこなしてくれたけど、戻ったらメンテが大変だな。

 まぁ、魔導ゴーレムは海水に(つか)ったからって、壊れる繊細さは無いけど」

「そうだね、水を使っての丸洗いで大丈夫かな。この時期は寒いから、露天風呂の残り湯でも平気だよね?

 問題はハスキー達だけど、こっちも一緒に露天風呂に入れば良いかな」

「コロ助とか嫌がりそう、茶々丸は案外と平気なのにねっ。ウチらの探索着も、意外とメンテが大変だよねぇ、紗良姉さん?」


 姫香のその問いに、大変だけど長持ちさせるには大切だからねと模範解答の長女である。道具系のメンテに関しては、家長の護人がとにかくしっかりしている来栖家の事情だったり。

 農家と言うのは、意外と季節限定で扱う器具があれこれと多い。その時に使いっ放しで放置すると、また来年使う際にとっても苦労するのだ。


 結果、過去の自分を(うら)むと言う、実りの無いサイクルを回避するにはメンテはとっても大事。子供たちも、幸いにもそれはしっかり受け継いでくれて何より。

 お陰で来栖家の敷地や納屋などは、綺麗に保たれている次第である。



 そんな帰ってからする事を話し合いながら、24層の残りは無事に踏破完了。その間に出て来たのは、案の定のカサゴ獣人と大フナ虫の群れのみだった。

 そしてゲート前で小休憩して、次は中ボスの控える25層目だねとの確認作業。ここまで約2時間で、いつもの探索とペース的には一緒である。


 お昼休憩を取るなら、中ボスの間を突破して“アビス”の回廊が良いかも知れない。あそこは暗くて殺風景ではあるが、異世界チームと時間が合えば一緒に昼ごはんが食べれる。

 そんな計画を話し合いながら、いざ25層目へと潜入を果たす一行。このペースを維持出来れば、午後は本当に宝物庫の地図の場所に辿り着けるかも。

 それが叶ったら、子供たちの計画は完璧である。





 ――すっかり慣れた“アビス”探索も、過去最高に盛り上がる筈!







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