表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
868/877

何度目かの“アビス”探索に張り切って赴く件



 ワープ魔法陣で、21階の回廊へと移動を果たした来栖家チームと異世界+土屋チームの面々。探索前にアビスリングを消費してしまったけど、それはこの先でまた稼げば良い話。

 向こうのチームの面々も張り切っているが、星羅(せいら)(ルナ)だけはやや顔色が優れない。どうやら過去のうっかり罠発動を、脳内で思い出しているのかも。


 それでもお互い頑張ろうねと、末妹の激励に頑張るニャとのザジの返し。場は明るいままで、“アビス”回廊の不気味さも吹っ飛んで行く気さえする。

 それからお互い別れての、突入する扉の選定作業をこなし始める。来栖家ではこれは末妹の役目だが、妖精ちゃんも横から口を挟んでここでも騒がしい限り。


 結局は、出た先の広場からそれ程離れていない扉を選ぶ両者であった。恐らくそれには深い根拠もなく、何となくの選択ではあるのだろう。

 それは仕方がない、何しろどの扉も(はた)から見たら全く変わり映えがしないのだから。宝物庫の地図で示された34階層だが、果たして見極められるのかも今の所は不明である。


 それでも子供たちは明るいと言うか能天気で、ジャンジャン進んでコインを稼ぐよと意気も高い。何しろ今回は、レイド作戦並みに突入チームが多いのだ。

 ライバル意識もちょこっと湧いて、姫香や香多奈は負けるもんかと内心で思っているのかも。まぁ、何をもって勝ち負けを決めるのかも全くの不明ではある。


 決めるとしたら、クリアした階層数とか集まったコインやリングの数だろうか。回収した魔石の数を数えれば、モンスターの討伐数も分かるかも知れない。

 ただまぁ、それにそれ程意味があるとは護人は思わない。


「張り切るのは良いけど、浮かれ過ぎて怪我したりしないようにな、みんな。せっかく前衛と後衛の距離感も良くなって来たし、水耐性の装備も集まってるんだ。

 安全に確実に、余裕をもって探索に励む事」

「そうだね、護人さんの言う通り……今から入るのは、“アビス”の21階層なんだから。癖の強いダンジョンなのは、何度か通ってハスキー達も理解してるよね?

 水属性の強いエリアなんだから、レイジーの炎系の技も効きにくいからね」

「あっ、そうだった……それから宝物庫に辿り着けるかどうかは、宝の地図の謎を解くかどうか次第だもんねっ!

 紗良お姉ちゃんに期待だけど、私達も謎解きには参加しなきゃね」


 突然頼られてますとフリを貰った紗良は、ええっと言う表情で途端に自信のない顔付きに。半面、レイジーは心得た様子で既に『可変ソード』を咥えて準備万端。

 ペット達も準備が出来たのを確認して、姫香は21階層の扉を開け放つ。その先はゲート仕様で、奥のエリアは見渡せずで残念な限り。


 せめてこの時点で見極めがついたら、厄介な水エリアを回避出来るのだろうに。それを確認するには、皆でゲートを潜るしか手は無いという。

 更にはご丁寧な事に、チームが潜り終えたら扉の姿は(つゆ)と消えて退出は不可能という仕様。考えてみたら、その時点で難易度は相当に高い“アビス”ダンジョンではある。



 幸いな事に、出た先のエリアは遺跡タイプで、水エリアを回避出来て何より。ガッツポーズの末妹だが、エリア内の湿気は凄くて少し肌寒い感じも受ける。

 遺跡は天井も壁もしっかりしているが、床は半壊していて水が()み出している仕様らしい。いや、染み出すというより半分水没している場所も見受けられる。


 これは移動が大変そうと、早くもゲンナリしている後衛陣である。特に紗良は、アスレ系の飛んだり跳ねたりがあまり得意ではない。

 それを元気づける、末妹と肩の上のミケは割と呑気な表情。その反面、張り切って移動を始める前衛のハスキー達はいつものように元気満々。


「さあ、取り敢えず最初の5層で、“アビス”探索の勘を取り戻そうか。ここは魚系の敵が多いし、待ち伏せ系の敵も割といた筈だったね。

 例えばエイとか、穴から急襲するウツボとか」

「ああっ、前の探索でも見掛けたよね……どうしよう、ルルンバちゃんに前衛に出て貰おうか。そのフォーメーションも、何回かやってるし大丈夫だとは思うけど」

「う~ん、まだ平気じゃ無いかな? 先は長いんだし、まずはハスキー達に任せてみたら、お姉ちゃん?」


 そんな香多奈の提案で、ルルンバちゃんは切り札として取っておく事に。疲れ知らずのAIロボだけに、後半に出番はきっと回って来る筈。

 そんな末妹の助言に、それもそうだねと最初はこの陣形で進む流れに。そして中衛は、姫香と茶々萌コンビが(にな)ういつものパターンに決定。


 そうして進み始める、水没した遺跡エリアの21階層である。張り切るハスキー達は、さっそく出て来た大量の大フナ虫を相手に殲滅戦を繰り広げている。

 コイツ等は炎でも大丈夫とみたレイジーが、炎のブレスで範囲攻撃を繰り広げている。それを見た後詰めの萌も、色違いのブレスで反対サイドから包み込みを敢行。


 その結果、20匹以上いた筈の大フナ虫はあっという間に数を減らす事に。見事過ぎる連係プレイに、初戦はほんの数分で終了の運びに。

 姫香など、1匹も始末出来ずにただ見ているだけと言う有り様。それでもハスキー達と萌を褒めてやって、次に進むよと声掛けの役目は譲れない。

 心得たハスキー軍団は、よっしゃとエリアの奥へと進み始める。


 そして次に遭遇したのは、カサゴ獣人の群れが半ダースだった。鮮やかな色と派手なヒレを持つこの魚人、ヒレの棘には毒を持っていて小柄だが(あなど)れない。

 ハスキー達は、そんなの関係ないぜと一斉に襲い掛かって行く。遅れて茶々丸のチャージ、萌も槍を手に敵兵に狙いを定めている。


 やっぱり一拍遅れた姫香だが、無理にペット達の速度には合わせない。周囲の警戒をしながら、飽くまで自分のペースで戦況を見つめるのが彼女の役目。

 この接近戦で、一番目を()くのはやはりレイジーだろうか。犬なのに何て刀捌(かたなさば)き振り、長さが変わる『可変ソード』を自在に操っている。


 それから巨大化したコロ助も、白木のハンマーを咥えて盾役って感じの動き。もっと性能の良いハンマーも渡してあるのだが、本人はこの武器が一番しっくり来るみたい。

 ツグミはその逆で、敵のタゲも取らないし2匹のサポート役を陰ながら務めている。それでも繰り出す『八双自在鞭』の威力は、2匹に決して劣るものではない。


 そんな感じで、後衛陣の応援を受けての第2戦も5分も掛からず終焉を迎えた。ドロップは、魔石(微小)と珊瑚の欠片っぽい素材のみ。

 残念ながら、リングやコインはドロップの中には見当たらず。


「う~ん、なかなか出て来ないねぇ……まぁ、まだ探索始めたばかりだし、そこは仕方がないよね。ウチはコイン交換、今回は何を貰うか決めてるの、叔父さん?」

「いや、今回は岩国チームのお付き合いだからなぁ。そのついでに、いい加減宝の地図を捜しに行こうって感じだから決めてないな。

 だからまぁ、欲しい物があれば子供たちで決めればいいよ」

「そう言われても困っちゃうよね……『ワープ装置』は2台もいらないし、魔法の鞄や鑑定プレートはもう充分に揃ってるし。紗良姉さんは、何か欲しい物ある?

 確か、レア素材とか変わった薬品系も、交換品にあったよね?」

「う~ん、確かにあった気はするけど……どうしても欲しいかって言えば、別にそんな事も無いかなぁ?

 まずは岩国チームに融通で、余りそうだったらみんなで決めようか?」


 心優しい長女は、そんな言葉でその場を仕切るのだった。それに対して末妹は、今回は宝の地図で宝物庫も見付けちゃうもんねと鼻息も荒い。

 要するに、コイン交換以外でもお宝はざっくざくと言いたいらしい。そうなると良いけどねと、茶化す姫香だがもちろん彼女もその未来を望んでいる。


 そんな21階層の探索だが、途中の水没エリアの移動に苦労しつつも何とか距離を稼ぐ事が出来た。元々水耐性の装備があるので、少々濡れてもへっちゃらなのが大きい。

 紗良もそれに気付いて、後は水の中の待ち伏せモンスターに注意すれば良いだけ。そんな今回の脅かし役は、砂地に潜んでいた大ゴカイだった。


 ミミズに似て非なるモノのそいつは、大きいと一際見た目が気持ち悪い。しかも水の中なので、こちらの攻撃が届き難くて厄介と言う。

 ハスキー達が水中戦に苦労している中、大きくキル数を稼いだのは萌だった。と言うか、『黒雷の長槍』の雷効果で水の中の大ゴカイを始末して行っている。


 コロ助など、一緒に(しび)れちゃっているけどそこはご愛敬。姫香がすかさず『圧縮』スキルで、空気の土台を作ってハスキー達を避難させている。

 これもまた連携、相性を見て敵の討伐を任せるのも戦略の1つである。こうして最初の21層は、30分も掛からずに踏破に至った。


 ゲートを見付けた一行は、ほぼ1本道だったねとご満悦な表情。分岐は幾つかあったけど、支道はすぐに行き止まりで迷う程の難しさは無かったのだ。

 遺跡型のダンジョンには、やたらと分岐の多い所も幾つか存在する。ただしこんな感じで、本道は敵が多く出てルートが単純な場合も多い。


 かと言って、分岐もちゃんと見ておかないと、そこに宝箱が設置されている可能性もある。今回は何も無かったけど、取り敢えずこのエリアの感覚は掴めたかも。

 そんな事を話し合いながら、同じ陣形で進む22階層である。来栖家チームとしては、まだまだ大した難易度では無いとの判断。


 このままの勢いで、中ボスの部屋まで一気に進んで問題は無さげ。ハスキー達も心得たモノで、敵と遭遇するまではペースは早めをキープ。

 そしてこの層も、最初に遭遇したのは大フナ虫の群れだった。ただし、その中には大ヒトデも混じっていて、そいつは魔法で水の槍を飛ばして来た。


 そんな敵が合計で3匹、大フナ虫に至ってはやはり20匹以上はいそう。そんな奴らが、遺跡の壁の隙間からぞろぞろと出て来るのはそれなりにシュール。

 みっちゃんは平気かもだが、陽菜辺りは苦手な部類かも……そう思いながら、姫香は割とへっちゃらで茶々萌コンビと並走して前線に出張って行く。


 後衛からも、護人とルルンバちゃんの遠隔攻撃が参加し始めて来た。どうやら砲台役の大ヒトデを、さっさと退場願おうって作戦みたい。

 確かに魔法を使う敵は厄介、後衛を的にされるとそれは尚更なので早めの討伐が望ましい。とか思っていたら、味方の遠隔攻撃で早くも大ヒトデ2匹が魔石に変わって行った。


 そして茶々丸の踏み潰しで、更に1匹が退治用の憂き目に。最後の1匹は、忍犬ツグミが『土蜘蛛』スキルで上手いこと倒してくれた。

 見事な連係プレーと内心で味方を褒める姫香だが、今回もあまり出番は無さそう。20階層以上の探索と気張っていたが、敵の強さはそこまででもないみたい。


 これはしばらく、ハスキー無双が続きそう……それはそれで、こちらは体力を温存して後半に備えれば良い話。それか中ボスを譲って貰う、いつものパターンとかやり方は色々だ。

 後衛陣はもっと呑気で、敵は弱っちいねとモロにその点を指摘している。他の突入チームも、こんな感じで順調に探索を進めてくれていれば良いのだが。

 水エリアを引き当てた運の無いチームも、確率的に半分はいる筈。





 ――それは仕方ない、来栖家チームも次の選択では幸運は続かないかも?







『ブックマークに追加』をしてくれたら、香多奈が歓喜のダンスを踊ります♪

『リアクション』をポチッてくれれば、姫香がサムズアップしてくれます!

『☆ポイント』で応援すると、紗良が投げキッスしてくれるかも?w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ