表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
866/874

ドライブ旅行から戻って来て次の探索に備える件



 岩国チームの推移だが、来栖家が最初に出会った頃は1チームだけだった。当初は『ヘブンズドア』だったチームに、“大熊”ヘンリーや“魔弾製造機”伊澤が所属していた訳だ。

 その頃から米軍基地の生き残りの兵士が多数いて、銃使用の探索は彼らのチームカラーであった。それが2つに別れて、新たにチーム『グレイス』が誕生。


 『グレイス』の方は伊澤をリーダーに、“赤鬼”ギルや古参2人に新人2人を迎えて6人組で編成。一方の『ヘブンズドア』は、“氷の射手”鈴木をリーダーに同じく古参と新隊員でチームを維持していた。

 ヘンリーもその頃は『ヘブンズドア』に残っていて、新人を教育したりと6人チームを盛り立てていた。軍隊的な動きでのダンジョン探索は、意外とフィットして順調に育成は進む事に。


 そしてB級まで上り詰めて、古参の二つ名持ち達は既にA級手前である。広島や山口のレイド作戦にも積極的に参加して、岩国の汚名もようやく払拭する事が出来た。

 そうして今回、“大熊”ヘンリーをリーダーに3チーム目を結成する計画が動き出した。そのメインの戦力を、企業チームから譲り受けた『地獄への片道切符』が担う事に。そこで今回の鍛錬依頼が来栖家に届いたのは、まぁ一種の顔(つな)ぎだと思われる。


 『シャドウ』チームの時もそうだったし、何しろ岩国と西広島の護人の地元はお隣さんである。仲良くして連携を図るのは、当然と言うか合理的な考え方に他ならない。

 ちなみに『シャドウ』は探索特化にはならず、やはり未だに情報収集や裏の仕事が半分はあるみたい。リーダーの三笠(みかさ)は月に2度は来栖家に訪れるし、それも恐らく情報収集の一環なのだろう。


 そんな岩国チームが来栖家の敷地に訪れたのは、旅行の翌日のお昼過ぎの事だった。その目的だが、来栖家と異世界チームのキャンピングカーの返却と、岩国チームの夕方の特訓の参加申し込みである。

 そして久々に敷地に訪れた面々は、その変化に驚き顔。


「おおっ、アスレ器具とか訓練道具が増えてないかい、護人さん? メインに使うのが子供達って聞いてたけど、確かに訓練官が異世界チームの面々って凄い贅沢だよ!

 いや、これはウチらのチームも見習うべきだなぁ」

「それより見ろよ、鈴木……露天風呂が進化してるぞっ! ひょっとして、男風呂も増えたのかい、モリトッ!?」

「ああ、さすがに女性陣が入り終わるのを待ってたら、待ってる男衆の汗が完全に引いちゃうからね。最近は異界の施工屋さんと渡りがついて、色々と敷地内の工事をお願いしてるんだ。

 入り口の新築もそうだし、通路の綺麗なタイルもそうだよ。後は子供たちが授業を受けたり、皆で夕食を食べる事が可能な集会所を作って貰う予定かな」

「それは凄い……って、異世界の施工屋さん?」


 一緒について来ていた三笠は、何だそれはとハテナ顔に。情報収集のエキスパートとしては、知らない事象には敏感にならざるを得ないのだろう。

 ノームの技術者達だよと、何でもない事のように言い放つ護人は随分と異世界にかぶれている気も。そんな事に興味のないギルやヘンリーは、露天風呂は入れるのかと問うて来た。


 いやそれは、やはり訓練後に入るべきと鈴木や三笠が巨体2人を何とか止める。彼らにとっては、高級な島の宿泊施設よりこの山の上の手造り訓練所の方が、価値が高く映っている模様。

 護人としては嬉しいリアクションだが、今週末までの夕方の訓練は相当に騒がしくなりそう。向こうはさすがに、訓練の参加は8人程度と迷惑にならないよう配慮しているみたい。


 とは言え、麓で全員が週末までキャンピングカーで寝泊まりするとの事で、その辺の気配りもすべきだろう。例えば夕食に誘うとか、何か差し入れするとか。

 岩国チームからは、新人たちの鍛錬代としてお金を払う意向を示されている。後は週末の『ワープ装置』使用代と、コネとお仕事を見事に切り分けている手腕はさすが。


 金銭が発生しているとなると、来栖家としても無碍(むげ)には出来ない。まぁ、お人好しの護人はどちらにしろ気を配ってしまうのだけど。

 寒さもだんだん厳しくなり始める、そんな11月の中旬だった。




 そんなドライブ旅行帰りの来栖家だが、すぐに元の生活に戻ってみんな忙しく働き回っている。もっとも本業は農閑期で、護人も秋植えの野菜の管理をする程度。

 香多奈や年少組は、小学校に出掛けていて敷地内は割と静か。護人も1日くらいはゆっくりしたいけど、今週末には“アビス”探索が計画されている。


 そんな訳で紗良と妖精ちゃんには、魔法アイテムや販売魔石の選り分けを頼む事に。護人と姫香は、探索で使った用具のメンテナンスなど。

 妖精ちゃんの仕分けによると、今回の“ハワイダンジョン”で回収した魔法アイテムはそこまで多くは無かった。とは言え、お土産品やお肉類は多くて家計的には大助かり。


 魔石も同じで、ただし販売分はちょっと微妙かも。何しろ肝心の魔石(大)は、家のストックとして売りに出す予定は無いからだ。

 それでも耐性装備は、各属性が集まってまずまずの品揃えとなっていた。



【魚人のペンダント】装備効果:水耐性&魔法防御up・小×2

【炎の大斧】装備効果:炎属性&破壊&筋力up・中

【焚火のブローチ】装備効果:炎耐性&筋力up・中×2

【水滴のイヤリング】装備効果:水耐性&魔力up・中

【太陽のネックレス】装備効果:光耐性&筋力&体力up・大


その他:『強化の巻物』(攻撃)×2、『鑑定プレート』(木の実専用)×1、『魔法の鞄』(空間収納)×1




 炎耐性に水耐性、一番高性能なのは光耐性で体力&筋力アップの性能付き。特に水耐性のアクセサリーは、一緒に“アビス”に挑む岩国チームが飛びつきそう。

 それらを確認後、魔石の換金と動画の編集依頼の為にいざ麓の協会へ。仁志(にし)支部長と能見さんに出迎えられて、いつものように江川に換金を頼んでブースで一息つく。


 これが終われば、植松の爺婆の家にいる香多奈や小学生ズを拾う予定。多少バタついているのは、午後に岩国チームと合同訓練を行う予定があるからだ。

 それからつい昨日約束した、地元での香多奈のお誕生日会を行う計画のせいもある。カニ肉や恐竜肉や、一緒に入手した蜂蜜などもあるので食材には困らない。


「あらっ、香多奈ちゃんの誕生日だったんですね……えっと、それじゃあ協会からは、この新しい魔石収納ポーチをプレゼントに渡してあげてください。

 それにしても、旅行先でダンジョン探索ですか」

「いや、言いたい事は分かりますが、誕生日の権限を持つ子供の我が(まま)ですからね。それにしても、手強い敵ばかりで大変な目に遭いましたよ」

「本当ですね、動画を見た限りではA級ランクに認定した方が良さげではありますよね。まぁ、来栖家チームは関係なく出て来た敵は簡単に返り討ちにしてますけど」


 簡単じゃ無かったよと、それには抗議模様の姫香である。紗良もウンウンと頷いて、ミケちゃんも何度か加勢してくれたんですよと口を挟む。

 来栖家的には、守護神のミケが動くのはかなりの大ゴトとの認定である。そんな事態の多かった“ハワイダンジョン”の魔石販売だが、今回は270万円とやや少なめだった。


 いや、魔石(小)の数はかなり多かったし、魔石(大)や魔結晶(大)を売ればもっと行く筈。それよりそろそろ動画も観終わって、恒例の来栖家のお土産贈与が行われる。

 今回はTシャツやアロハシャツ、それからチョコやクッキーなど種類も豊富だ。これらの品は、山の上のお隣さん達にもとっても好評ではあった。


 何しろ2日も家を空けて、家畜や敷地内の畑の世話を頼んだのだ。それ位はさせて貰うし、今夜のお誕生日会と称した宴会にも当然みんなを招く予定。

 岩国チームの面々も招くとなると、家のスペース的にはかなり苦しいかも。本当にノームの施工屋さんに、早い所大集会場を敷地内に造って欲しいモノである。

 そんな感じで、取り敢えず午後の雑事は終了の運びに。




 それから元気な小学生達を拾って、来栖家の白バンは再び山の上へ。香多奈は、植松の爺婆の家でも誕生日のお祝いをして貰ったようで、この上なく機嫌が良さそう。

 そして例の(ごと)く、爺婆にもお土産を渡したようで見送りの両者は派手なアロハを羽織(はお)っていた。この冬の始まりの季節に、山の上の周辺はアロハシャツがプチ流行中。


 それより、戻ってからの来栖家は大忙しでこの後の準備に奔走する。具体的には、紗良やお隣の美登利(みどり)小鳩(こばと)は夕食のパーティ準備に取り掛かる。

 一方の姫香は、夕方の特訓の準備と岩国チームの受け入れに忙しい。その隣では、呑気にキッズ達がペット達と一緒にアスレをしたりと駆け回っている。


「あっ、ムッターシャ師匠とザジ師匠が来たよっ、姫香お姉ちゃん。凛香チームもボチボチ来るかな、それから岩国チームは車で向かって来てる最中かなっ?」

「どうたろう、周防(すおう)大島で(しご)かれた新人さん達は、師匠たちには会いたくないでしょうね。ムッターシャやザジは気に入ってるっぽいから、まぁ週末まで覚悟は必要かな?

 それでも、岩国チームが強くなるなら良い事だよね」


 そんな事を話し合う子供たち、そうこうしている内に厩舎裏の特訓場には探索者が集合し始める。岩国チームも、新人さん4名と鈴木やヘンリー4名での参加らしい。

 この辺は、あまり大人数で詰めかけても迷惑だとの配慮なのだろう。実際、夕食くらいは振る舞えても、8名を来栖邸にお泊まりさせるのは無理。


 麓にそう言う宿泊施設があれば良いのだが、そちらも田舎町だけあって利便性には程遠い。それでもまぁ、何だかんだで人の行き来が激しい山の上である。

 今日も同じく、来客を迎えて賑やかに始まる夕方の特訓である。子供たちはワイワイと楽しそうにやっているけど、一部では激しい撃ち合いが行われていた。


 『地獄への片道切符』チームは、今日も限界まで(しぼ)られそうな気配。逆に活き活きと新人をシバき回す、異世界チームの師匠2人である。

 そんな地獄の時間も、1時間が過ぎる頃には幕引きとなって、各々が露天風呂を楽しみ始める。上機嫌のヘンリーとギルの影に、しょぼくれた小鉄と戸谷の可哀想な姿が。


 やり過ぎではと(かば)う姿勢の護人だが、岩国チームは天狗の鼻を折ってくれたと意に介さずな態度。ムッターシャも、若い奴はまだまだ伸びると手心を加えるつもりは無さげ。

 せめて風呂と夕食は楽しんでと、護人の心配りに泣きそうな若者2人である。聞けばまだ21歳との事、自己流でここまでやって来たプライドもあっただろうに。


 いつしかそんな境遇を聞く事になる護人は、まるで2人の保護者のよう。それは宴会になっても続いており、思わずカニやお肉を配膳して世話を焼く護人であった。

 酒も入る頃には、泣きじゃくり始める小鉄に往生(おうじょう)しつつも。地元開催の誕生日会も、何とか盛況で乗り越えていけそう。

 ただし、やっぱり来栖邸の宴会スペースは本当にギリギリ。





 ――これは敷地内の集会場、なるべく早く依頼を出すべきか。







『ブックマークに追加』をしてくれたら、ムームーちゃんが肩に乗ってくれます♪

『リアクション』をポチッてくれれば、萌が巨大化して背中に乗っけてくれるかも!?

『☆ポイント』で応援しないと、ヒバリに嘴でつつかれちゃうぞ!w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ