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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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香多奈の誕生日が周防大島で開かれる件



 最後の宝箱の中身は割と豪華で、薬品類や木の実や魔玉(炎)や魔玉(光)など定番の品が半分ほど。一際(ひときわ)目を()いたのは、魔結晶(大)が8個とオーブ珠だろうか。

 他にも鑑定プレートや魔法の鞄も出て来て、敵も強かったがその分の報酬も凄いダンジョンではあった。その他の回収品としては、蜂蜜瓶やブルーのボトルのお酒など色々。


 再び恐竜のお肉も出て来たし、他にも雑貨としてアクセサリーや化粧品やソープも多数確認出来た。雑貨はどれも南国風の派手な色の品が多く、アクセサリーには魔法の品も混じっていそう。

 それを含めて楽しかったねと、大いに満足したっぽい末妹の表情である。当の“ハワイダンジョン”も、これだけ楽しんで貰えたらさぞ本望だろう。


 そんな事を考えながら、退出用の魔法陣で一気に外へと戻って行く来栖家チームの面々。ペット達も頑張ったぜと、意気揚々とした雰囲気でキャンピングカーに乗り込んで行く。

 それから、今から帰るねと巻貝の通信機で施設の居残り組に連絡を入れる末妹。お土産を期待しててねとの言葉に、ザジのそっちもニャとの良く分からない返事が。


「ザジはまだまだ日本語が迷う事があるよね、スキルの前に自分で覚えた影響なのかな? それより、砂浜歩いたり樹海の中を歩いたりで結構疲れたねぇ。

 今日はもう、このまま家に帰ってお終いなの、叔父さんっ?」

「いや、もう少し宿泊施設で休憩してから戻る予定だよ。さすがに俺も探索で疲れたし、長距離運転の前に一息入れたいからね。

 夕食も、こっちで食べてから戻ろうかなと思ってるよ」

「アンタはいつも、家族の陰の苦労を分かってないよね、香多奈っ。護人さんは、家族の面倒見たり車の運転をしたり、紗良姉さんだって食事の支度で大変なんだよっ。

 そう言う所を()み取って、発言はしなさいよねっ」


 まあまあと取り成す長女だが、その通りではあるので喧嘩にならない程度の(たしな)めである。末妹も今回は誕生日で、主役なんだからとその辺をアピール。

 姫香もそうだったわねと、怒りの矛先を一応は丸めてくれた。香多奈の方も、そう言えばと今回の旅行の目的を思い出した様子。


 ダンジョンからもお祝いして貰っちゃったと、上機嫌な末妹に姉達は生暖かい視線を注ぐ。そうして一行は、護人の運転で昨日から宿泊している施設へと戻って行く。

 そこでは今回の旅行での、最大のサプライズが待っていたのだった。




 戻って来た宿泊施設の食堂は、お誕生日会の飾りつけで様変わりしていた。驚く子供たちだが、ザジを中心とした面々は張り切ってお持て成しを開始する。

 ハッピーバースデーの歌を歌いながら、奥からヘンリーが巨大なケーキを持って出て来る。その後ろからは、娘のレニィが花束を持ってついて来た。


 どうやら近場なので、家族も遊びに来ていたらしい。そう言えば、朝は見掛けなかった人たちも、何人か食堂に集まって一緒に歌を歌っている。

 紗良が末妹の背中を押して、あらかじめ決めてあった席へと座らせる。他の家族は、このサプライズは前もって周知済みなので驚きも無し。


 ビックリ顔の香多奈は、為すがままで大きなケーキを眺めている。それから小っちゃなレニィにプレゼントを貰って、ありがとうと満面の笑顔に。

 歌は尚も続き、岩国チームの誰かがギターを弾きながらお祝いムードを(かも)し出している。その内に、テーブルの上には続々と料理が用意され始めた。


 レニィは大役を終えて、猫まっしぐらでミケを撫でに向かってしまった。無碍(むげ)にも出来ないニャンコは、仕方無いなって表情だが満更でも無さげ。

 食堂内はあちこちで盛り上がっているが、各所からもプレゼントの贈呈が騒がしい。最初は無邪気に喜んでいた末妹だが、その内に妙な使命に目覚めた模様。


「こっちもお返しをしなきゃ、来栖家的には良くないよねっ、叔父さんっ? 今日の探索でたくさんの品を色々と回収出来たでしょ。

 それをみんなに、お裾分(すそわ)けしていいかなっ?」

「ああ、そうだな……特にアロハシャツは、余裕で人数分が集まってる筈だから。みんなに似合いそうなのを、香多奈が選んであげなさい」

「それは良いねっ、護人さんっ……紗良姉さん、そこのスペース使わせて貰おうっ。選んで貰った人から着席して、夕食だかパーティを始めようよ。

 こっちもお腹空いてるし、早く食事にしたいよっ」


 そんな姫香の提案が採用されて、ぼちぼちパーティは開始されて行く事に。相変わらず騒がしい場内に、末妹の仕切る声が響き渡る。

 そして次々に人手に渡って行く、派手な(がら)のアロハシャツ。香多奈のセンスはとっても独特だが、今日が主役の少女に文句を言う者はおらず。


 そんな感じで、テーブルの席も埋まって行って食事を始める者もボチボチ。来栖家も異世界チームや土屋チームと一緒に、ようやく(くつろ)いで夕食タイムに突入。

 その内に岩国チームにも全て行き渡って、本格的にパーティは開始された。疲れ切った顔の『地獄への片道切符』チームの面々も、アロハシャツを羽織ってテーブルについていた。


 夕食はなかなか手が込んでおり、さすが高級施設の料理人である。紗良もこのレシピ欲しいなぁとか呟きながら、隣に座るレニィのお世話もこなしている。

 姫香も同じく、後で中庭のハスキー達にお肉でも差し入れてあげようと口にしている。ちなみに、ハスキー達の夕食や探索後のお世話は、建物に入る前に終了済み。


 ペット達も、建物内で突然に始まったバカ騒ぎには驚いている事だろう。とは言え、妖精ちゃんは美味しそうなものを、紗良に見繕(みつくろ)って貰っての食事中。

 ムームーちゃんは、探索疲れか護人の膝の上でウトウトしてとっても大人しい。ヒバリも似たようなモノで、この騒ぎの中籠の巣で就寝している。


 場はなおも盛り上がって、お誕生日会としては最高の部類ではなかろうか。そうして皆が食事を終える頃、デザートにとケーキが配られて行く。

 その一部が、既に妖精ちゃんによって食い荒らされているのはご愛敬。それから再び全員で、ハッピーバースデーの歌を歌って最後の盛り上がり。


 ありがとうと口にする香多奈は、本当にとっても嬉しそう。隣に座って祝っているザジも、まるで自分が主役のような喜びようで微笑ましい限り。

 そんな誕生日会だが、やがて時刻は夕方を大きく過ぎてそろそろ終焉(しゅうえん)の時刻。何しろ明日は平日で、末妹は小学校の授業が待っているのだ。


「それじゃあ、最初の計画通りに来栖家はゲートを使って帰るって事で。来栖家のキャンピングカーについては、責任をもって岩国チームが日馬桜町にお届けするよ。

 明日の午後には確実に、ついでに新人チームも夕方の特訓に間に合うように連れて行こう。そして来週末には、みんなで“アビス”探索って事で良いかな?」

「そうだね、それでこちらも構わないよ……それで、丁度良いゲート型のダンジョンが、この近場にあるのかな?

 今後も岩国にお邪魔する際に、拠点となるなら市内に近い方がいいね」

「“米軍基地ダンジョン”もゲート型だけど、あそこはさすがに場所か不味いからね。この周防(すおう)大島から橋を渡って、市内へと行く途中に“岩国ミクロ生物館ダンジョン”って所があるんだ。

 主要道路に面してるし、そこをワープ拠点にすればと思うんだが」


 鈴木が護人に地図を手渡しながら、丁寧にそう説明してくれた。岩国周辺のその地図は、しっかりとダンジョンの位置やランクも書き込み済みだ。

 それによると、例の“岩国ミクロ生物館ダンジョン”は、B級ランクでなかなかの難物らしい。最終攻略階層は13層との記述もあって、それ以上深いのは確定済みとの事。


 ちなみに先ほど来栖家で潜った“ハワイダンジョン”は、同じくB級で最終攻略階層は7層との記述だった。しかも前回の探索は6ヶ月前と、随分と放置がされていた模様。

 これはさすがに、ダンジョンも久々の集客に浮かれたのかも知れない。それともこの分布マップが、ランクに関しては不正確の可能性も捨て切れない。

 そんな事を思う護人だが、当然本心は口には出さず。




 そうして意外と長尺となった、香多奈のお誕生日会は終了の運びに。2日も外泊をした来栖家の週末ドライブ旅行だったが、後は1ヵ所ワープ拠点を設定するのみ。

 帰りの支度を整えて、満腹になった面々はキャンピングカーに順次乗り込んで行く。ペット達も、お家に帰れると知ってテンションは上がり気味。


 そうして島を出るキャンピングカーの一団も、岩国チームのを含めて凄い台数に。(はた)から見たら、かなり物々しい一団に見えるかも知れない。

 ところがその車内では、今回心に残った旅行のポイントを子供たちが発表し合うホンワカ空間。その発表会は、旅行の前半と後半の探索で大きく票が割れる結果に。


 もちろん香多奈は、“ハワイダンジョン”での探索が1番の思い出だったと口にする。魔石(大)の敵が7体も出て来たダンジョンは、さすがに記憶にないよねと興奮している。

 確かに南国のビーチや、火山の活発な無人島など記憶に残るシーンは多かった。とは言え、前半の観光を無碍(むげ)にされたら、頑張って運転した護人も悲しいモノが。


「アンタはいつもそうだよね、せっかく旅行を企画してくれた護人さんの頑張りをマルっと無視してさ! 家族サービスも大変なんだよ、それなのに前半の観光は全然記憶にないみたいな言い方しちゃって。

 今回の主役だからって、程度ってモノがあるんだからね!」

「別に前半は楽しくなかったって、一言も言って無いじゃん……津和野の観光も楽しかったよ、ただ刺激的だったのは後半のダンジョン探索だよって話しただけじゃん。

 ねえっ、茶々丸っ……萌だってそうだったわよね?」

「まぁ、今回はワープ拠点の開通のついでみたいなルートだったからね。仕事半分みたいな旅程だったから、香多奈には申し訳ないと思ってたんだよ。

 だから楽しんで貰えて、最後の誕生会をしっかり(もよお)せただけで俺は満足だよ」


 アレはとっても楽しかったよと、お誕生日会の企画はどうやら心から楽しんで貰えたようだ。紗良が帰ってからも、お隣さんを招いてもう1回お祝いしようねと末妹と約束している。

 今回の探索で、カニ肉やら恐竜の肉やらと変わった素材も入手出来た。お酒も最後に入手出来たし、さぞかし楽しいお誕生日会になるだろう。


 そう言うと、姫香もあんまり主役を(いじ)めちゃ駄目だと思ったのだろう。突っ掛かるのを止めにして、今後の予定をどうするのか護人に尋ねて来た。

 この後に関しては、岩国チームの案内で“岩国ミクロ生物館ダンジョン”に寄ってワープ拠点を開通する。そして『ワープ装置』で敷地へと戻って、長かった旅行はこれにてお終い。


 そしてキャンピングカーを運んでくれた岩国チームの面々と、来週末は“アビス”探索に行く予定。岩国チームの目的は、もちろんコインを貯めての『ワープ装置』のゲットである。

 そこまでの平日は、異世界チームのムッターシャやザジが、岩国チームの新人を鍛え直す依頼を遂行するとの話である。とは言え、敷地内に大人数の岩国チームを招く余裕はさすがに無い。


 その辺は向こうでどうにかして貰って、会うのは毎日の特訓の時だけって感じになる筈。そう考えると、敷地の離れの集会所の建設はなるべく早く着手したいかも。

 何しろ今なら、リリアラの伝手(つて)でノームの施工(せこう)屋を雇えちゃうのだ。





 ――そんな訳で、車内の話のネタは尽きる事が無いのであった。







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