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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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島内に存在する“ハワイダンジョン”にお邪魔する件



 昨日は夕食後に、温水プールに面したバーにも寄ってみた護人や呑兵衛(のんべえ)仲間の面々。ただし護人は、運転で疲れていた事もあって早々に割り当てられた部屋で就寝の運びに。

 子供たちも、夕食後にもうひと泳ぎなんて気力も無かった模様。ムッターシャとザジと、その生徒以外は昨夜は定時に床に就いた。


 そうして次の日は、習慣で早起きしてしまう来栖家の面々だったり。姫香はハスキー達を従えて、朝のジョギングにと海岸沿いへと出掛けて行った。

 一方の香多奈も、珍しく目覚めバッチリで朝から探索準備に余念がない。旅行も命懸けの今の現代、海外旅行の機会などまず巡って来ないのだ。


 それが無料でハワイの雰囲気を味わえるとなると、ご褒美でしかないのは自明の理。情報を収集している長女にくっ付いて、どんなダンジョンかなぁと話し合っている。

 とは言え、動画はあまり出回っていないようで、雰囲気や敵の強さは判然とせず。それでもB級ランクなら、まぁ力技で何とでもなりそう。


「だってウチはA級ランクだもんね……ハワイのお土産をゲットして、今回の旅行を締め切るよっ、みんなっ! ハスキー達も、海外旅行は初めてだもんね。

 楽しみだなぁ、南国の島へ出掛けるの」

「まぁ、ダンジョンだけどね……雰囲気は味わえるのかな、良く分からないけど。あんまり人気が無いのは、やっぱり恐竜型モンスターの強さのせいかな?

 あれって、バカみたいに大きな奴も普通に出没するもんねぇ」

「そうだな、因島のダンジョンでも苦労した覚えがあるしな。あの手の巨大恐竜が中ボスで控えてたら、階層渡りもかなり苦労するだろうね。

 まぁ、ウチは力尽くで行けちゃうからアレだけど」


 頑張ればペット達でも討伐可能ってのは、来栖家チームの大きな売りではある。と言うか、来栖家のダブルエースはどちらもペットと言う理不尽さ。

 その片割れのミケは、旅行先の見慣れぬ室内風景に多少苛立(いらだ)っている模様。護人の膝の上で、ムームーちゃんと一緒に丸まって自分のエリアを主張している。


 そんな来栖家は、既に朝食も食べ終わって一息ついている所。異世界+土屋チームや岩国チームとは、既に今日の計画をすり合わせて自由時間の許可を貰っている。

 ちなみに異世界チームは、元企業チームの『地獄への片道切符』の面々の鍛え直しに時間を割く予定らしい。それが依頼の1つと聞いて、真面目にそれを執行する心積もり。


 それは有り難いのだが、何となく相手チームの若い衆が気の毒でならない護人である。ムッターシャとザジの教えは、とにかくスパルタで容赦がない。

 そんな相手に鍛錬を丸投げするのは、例え依頼と言っても心が痛む。とは言え、こちらも家族サービスはとっても大事……特に今回は、末妹の誕生日のお祝いなのだ。

 それを手抜くなんて、後で何を言われるか分かったモノではない。


 そんな訳で、いつの間にやら午前の9時頃はいつもの探索に出掛けるムードの来栖家チームであった。キャンピングカーに乗り込むペット達は、探索に出掛けると知って嬉しそう。

 そして護人の運転で、大島大橋から近い『ハワイ移民資料館』の前へ。厳密にはその敷地内に生えて来た、“ハワイダンジョン”へと家族で探索に(おもむ)く。



 それは割と集落の側にあって、昨日の宿泊施設からも近い立地であった。探索に向かうには便利だか、周辺住民には恐らく悩みの種だろう。

 間引き業務も、B級ダンジョンともなるとかなり大変である。何しろB級ランクの探索者自体も、そこまで多くないのが実情なのだ。


「さあ、着いたよハスキー達っ……今回は、友達に配るお土産品のゲットが目的だからね。頑張ってたくさん宝箱を探すんだよ、みんなっ!」

「目的がはっきりしていて(いさぎよ)いわね、香多奈。まぁ、今回はアンタの誕生日のお祝い探索だから、護人さんも許してくれるでしょう。

 何なら、20層まで潜りたいって言ってもいいんだよ?」

「それはさすがに大変だよ、姫ちゃん……」


 やや呆れ口調の長女の言葉に、護人は内心で激しく同意の(うなづ)き。楽しむための旅行先で、そこまでハードワークなどしたくないのが本音である。

 もっとも、ペット達はそれを苦労とは思わないかも。ハスキー達は敵との戦闘を含め、ダンジョン探索を楽しいアトラクション程度にしか思ってない気が。


 そんな話をしながら、車を降りた一行は苦も無くダンジョンの入り口を捜し当てた。それは2メートル半の階段タイプで、情報では一応は中ボスの間に退去用の魔法陣は湧くとの話。

 それが確認出来れば、帰りの歩き時間を気にしなくて済むので有り難い。要するに、探索を5の倍数で区切れば帰りは問題なしって事である。


 それじゃあ10層か15層だねと、子供たちは無邪気にそんな事を口にする。元気で良いが、付き合う大人としてはこっそりため息をついてしまいそう。

 それから紗良の探索準備の完了の言葉を聞いて、姫香が出発の合図をハスキー達に出す。そしていつもの陣形で、元気に動き出す来栖家のメンバー達。


 紗良の肩の上のミケは、仕方無いなぁって表情であまり探索を歓迎していない様子。一方の護人の肩の上の軟体幼児は、探索デシねと楽しそうな雰囲気。

 香多奈に籠ごと(かつ)がれているヒバリは、やや興奮しているようでピィピィと忙しない。とは言え、朝の散歩からのガス抜きは完了しているし、問題は無いだろう。



 そして香多奈の期待した、“ハワイダンジョン”の第1層である。そこはしっかりと南国風で、陽のギラギラと輝くビーチ風エリアだった。

 おおっと感動の声を出す子供たち、周囲にはパームツリーの並木が窺えて、日本とはまるで違った(おもむき)だ。青い海と打ちつける白い波、ここがダンジョン内とはにわかには信じられない。


 ところがやはり、それをぶち壊すように出て来たモンスターの群れ。まずはビーチの砂がむくっと起き上がり、人型になって襲い掛かって来た。

 あれはサンドマンですと、予習をしていた紗良が核を壊してと前衛に指示を飛ばす。要するに、ゴーレムやパペット兵と造りは一緒の敵らしい。


 ハスキー達は、心得たとばかりに砂遊びを始める。いや、実際はサンドマンの砂を弾き飛ばして、核を()き出しにして破壊していた。

 ここでもコロ助が活躍して、ハンマーで核ごと潰す荒技を敢行。いい調子だよと、香多奈も皆に『応援』を飛ばして戦いを観戦している。


 前に出ようとしていた護人だが、敵は半ダースで前衛陣はそれ程苦戦もしていない。茶々萌コンビも、『突進』から砂のボディを崩して自分達のペースに持ち込んでいる。

 姫香も《豪風》を上手に使って、砂を風で吹き飛ばして核を探し出す作業。なかなかの頭脳プレーに、半ダースいた敵も数分でいなくなってしまった。


「ふうっ、口の中に砂が入っちゃったよ……浜辺は砂に足を取られて動き難いし、意外と厄介なエリアかもね。あの太陽は偽物だから、多分日焼けはしないだろうけど。

 あっ、ありがとうツグミ、魔石拾い助かるよっ!」

「ドロップ品も、砂に埋もれちゃって見付けにくいもんねぇ……ルルンバちゃんも嫌がってるね、細かい砂はお掃除の大敵だから」

「そうだねぇ、あっ……ヤシの木の方向から、また敵が近付いて来たよっ!」


 家に砂を持ち込む犯人は、大抵が末妹だと知っている紗良は敢えてそれを口にせず。まぁ、農家をやっていれば、誰もが野良仕事で土まみれになってしまうモノ。

 それはともかく、長女が新たに発見したのは大ヤシガニだった。凶悪な(はさみ)と青い甲殻のそいつ等は、全部で3体いて結構強そう。


 何より、1体がバランスボール並みに大きくて、そんな鋏に掴まれると洒落(しゃれ)では済まない。それでも、恐れを知らないハスキー達は、ご主人を守るべく前へと出て行く。

 茶々萌コンビも遅れじと続くが、さすがに姫香が注意を飛ばしてその動きは慎重。一方のハスキー達も、接近戦よりスキルメインの戦い方を行なっている。


 特にレイジーの炎のブレスで、明らかに(ひる)んだ様子の2匹の大ヤシガニ。その隙にコロ助の放った『牙突』は、残念ながら敵の硬い甲殻に阻まれてノーダメージ。

 ツグミの『土蜘蛛』も同じくで、さすがB級ランクに出て来る敵である。1層目からこの難易度、決して油断の出来る場所ではないって事だ。


 そんなハスキー軍団の戦いを見て、さすがのヤン茶々丸も考えを改めたみたい。少しは頭を(頭突き以外に)使おうと、敵との距離を取りながら模索している模様。

 姫香も2匹を足止めしているハスキー達と連携して、その後ろに回り込もうとしていた。茶々萌コンビの方は、後衛陣がフォローしてくれる筈。


 敵の威嚇(いかく)は凄まじく、鋏のかち合わせ音が周囲に半端なく響いている。それを耳にした後衛陣が、思わずひあっとビビり声をあげる程。

 茶々丸もアレでチョッキンされたら、さすがに不味いなって考えに至った模様。そこで『岩獄』での土の触手での封じ込めから、遠隔の《飛天槍角》を仕掛ける頭脳プレー。


 萌も炎のブレスでそれを支援して、このペアは戦いの幅も何気に広い。弱った所にルルンバちゃんの魔銃も飛んで来て、敵の自慢の甲殻も次第にヨレヨレに。

 最終的にはそこを狙っての、萌の槍の突きが決まってこの戦いは終焉に。やったぜと荒ぶる茶々丸と、敵の落とした魔石(小)を拾う冷静な萌の対比もアレである。


 もう一方のハスキー達&姫香サイドも、敵の攻撃を一度も受けずに完封に成功。それにしても、1層から魔石(小)を落とす敵が混じって来るとは全く(あなど)れない。

 そんな事を話し合いながら、再び海岸線を進み始める来栖家チーム。進む方向はハスキー達任せだが、後衛の香多奈もそっちの方向で合ってるよと太鼓判を押して来る。

 そんな少女の手の中には、すっかり定番の『魔法のコンパス』が。探索を月に何度もこなして来た来栖家チームは、既に自分達のスタイルを確立している感じ。


 そんな一行の前に、次に立ち(ふさ)がって来たのは海から出現した魚人の群れだった。次から次へと熱烈な歓迎は、ひょっとして魔素濃度が意外と高かったせいなのかも?

 入る前のチェックでは、確かに高いかなぁと紗良も口にしていた気も。最近はその手の前情報も、誰もたいして感銘(かんめい)を受けずにスルーされている次第。


「うわっ、この集団も10匹近くいるねぇ……装備もトライデント持ちと、それから後ろには魔法使いもいるかもっ?

 ハスキー達、魔法の支援に注意してっ!」

「こっちも支援するよっ、頑張れみんなっ……妖精ちゃんも、たまには戦闘に参加したら?」


 そう振られた小さな淑女の返事だが、ヤなこったと相変わらずの塩対応振り。こんな序盤に、まだ自分の出番は無いと大ボス気取りである。

 そんな呑気な会話中にも、魚人の群れの接近は続いていた。それから姫香の忠告通り、敵の後衛からは水の槍が4本ほど飛んで来た。


 それを《防御の陣》でブロックするコロ助、さっさと近付いて来いとその闘志は水を掛けた位では消えそうもない。その点は、他の前衛陣も全く一緒。

 今回は数の多さを踏まえて、後衛陣から援護射撃が派手に飛んで来る。護人の弓矢攻撃もそうだけど、ルルンバちゃんのレーザー砲が派手に水際に炸裂する。

 それをモロに受けて、吹き飛んで行く魚人の後衛陣。





 ――まだ1層目だと言うのに、派手な戦いはこの後も続きそう。







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