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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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“巫女姫”の冬の予知内容が割とぶっ飛んでいた件



 さて、広島市内からの客人を上手く持て成した来栖家は、懐がとってもホクホク状態に。さすが協会本部である、買い取りの軍資金もかなり豊富だった。

 まずはメインの『ワープ魔方陣記憶装置』と、それに伴うアビスリングとメダルが50枚ずつ。これだけで、500万円以上の値段がついてしまった。


 それから『鑑定プレート』系を3つと、魔法の鞄もついでに2つ程購入。後は水耐性の『蛙のネックレス』や『水蛇のイヤリング』、『海賊ベスト』を購入してくれてこれも合計500万円以上。

 『海鉱石のインゴット』もついでに3本購入して、こちらも1本100万円の値がついてしまった。太っ腹の葛西(かさい)本部長だが、子供たちはその値段提示に目を回している始末。


 ついでのように『反逆同盟』チームも、『海鉱石のインゴット』や『ヒヒイロカネインゴット』の購入を希望する。これはA級ダンジョンを攻略しても、運が良くなければ入手は無理な品みたい。

 そんな訳で、こちらも破格の値段を提示されて舞い上がる末妹である。後は『巻貝の通信機』やら、雷耐性&耐麻痺アップの『電気ウナギの指輪』を購入したいとの申し出。


 それならと、紗良が『振電石のインゴット』を勧めると、こちらも2本買い取ってくれた。そんな訳で、甲斐谷チームの支払いも1000万円を超える流れに。

 向こうも儲かっているようで、その位の支払いは問題は無いらしい。


 ただし、その後に“巫女姫”八神に聞かされた予知内容は、割とぶっ飛んでいた。最初の2つは、よくあるダンジョンのオーバーフロー騒動の予知に間違いは無さそう。

 場所は広島の北の安芸大田(あきおおた)町と、もっと北の島根県の津和野(つわの)だとの話である。津和野は観光名所で、蒸気機関車のD51などで有名な場所。


 それに反して、安芸太田町はド田舎で観光名所も無い山の中である。三段峡が県境に存在しており、そう言う意味では来栖家チームも過去に間引きに訪れた事はある。

 あれは確か真冬の事で、雪が深く積もっていて車での移動に難儀した覚えが。そんな訳で、八神の予知を聞いて思わず尻込みする護人である。


 この内の地区のどちらかが、新生ダンジョン誕生からのオーバーフロー騒動となるらしい。単なるダンジョンの魔素の高まりなら、事前に間引きをすれば済む話で話は簡単。

 ところが新造ダンジョンとなると、場所がピンポイントで特定出来ないと完全に後手に回ってしまう。そう言う意味では、更なる今後の情報提供に期待かも。


 ちなみに残りの2つは、何と言うか西広島エリアらしく近場ではある模様。その予知内容が、天狗がダンジョンを創造するってのと、異界からの迷子が騒ぎを起こすとの事だった。

 どちらも話がぶっ飛んでいて、何と言うかどう対処すれば良いのやら。ちなみに天狗とは、どうやら来栖家とも面識のあるあの天狗らしい。


 紗良もマメ知識で言っていたように、この創造行為は完全に向こうの好意である模様。「君たち、頑張って鍛錬して強くなってくれよなっ!」「おっと、その為には経験値を稼げる場所がなくっちゃな!」ってな思考回路での所業(しょぎょう)みたい。

 だから完全に無碍(むげ)にする訳には行かないし、鬼からも同じような贈り物を受けている来栖家チームである。だからと言って、何も日馬桜(ひまさくら)町の近場に造らなくてもって思う。

 何しろ、この町はただでさえダンジョン数が段違いで多いのだ。


「本当に困った話だよね、鬼と張り合ってダンジョンを造ってくれるなんてさ。今から断れないかな、まぁあれ以来ウチらとの接触はないけど。

 香多奈っ、アンタひょっとして秘かに会って話とかしてないわよねっ?」

「してないよっ、何でも私のせいにして失礼しちゃうよねっ、本当に! それより、迷子って誰がどこでなるのかなぁ?

 私はそっちの予知の方が、凄く気になるんだけど」

「今年の冬も、何だか西広島の周辺は(せわ)しないみたいだな。山の方は雪が降ると、移動が大変だから間引きや探索どころじゃなくなるんだが。

 何かいい解決方法は無いかな、みんな」


 それは確かに大変だねぇと、思案する子供たちだが積雪を止める手段など思い浮かばない。そこで長女の紗良が提案したのは、雪が降る前にワープ装置で拠点を各所に作っておくと言う作戦だった。

 それは良いねぇと、晩秋の山間ドライブの予感に賛成票を投じる末妹。姫香も楽しそうと、安芸太田町から島根県の津和野(つわの)へ抜けるルートを地図で探し始める。


 それより大事なのは、その両方の町にゲート型のダンジョンがあるかどうか。これが無いと、せっかく訪れたのにドライブ損って事になってしまう。

 いや、家族での探索抜きの秋のドライブは、損って事もないけれど。天候さえ良ければ、早めに企画したいねと子供たちは揃って乗り気である。


 そんな感じで、昨日の来客騒ぎを話し合う来栖家は3時のおやつを食べ終わった所。香多奈を麓に迎えに行った際に、植松のお婆におはぎを持たせて貰ったのだ。

 それを家族で楽しみながら、昨日の広島市からの来客について話し合っていた次第。昨日は随分と儲かったし、それから“巫女姫”の予知もしっかりと聞けた。


 その対処要員として、来栖家チームもしっかり戦力として期待された訳だ。その為の話し合いは、しかし簡潔に片が付いてしまっていた。

 元が縄張りの西広島周辺の予知に関しては、来栖家も積極的に対応して行く予定。特に天狗案件については、何と言うか他の探索者に任せておけない事情も。


 しかし、そんな協力的な来栖家も、異界からの迷子が騒ぎを起こすって予知は意味不明。どこでどうやって対応すべきかも分からず、途方に暮れるのみであった。

 そんな感じで、田舎の冬はもう目の前まで迫っていた――




 そんな平日の日々も、夕方の特訓は普通に行われて近所から賑やかに住民が集まって来る。特に、午前中を塾で過ごした子供たちは元気いっぱい。

 ずっと座っていたストレスを発散しようと、早くもアスレチック遊具で体を動かしている。それらに混じって、ペット達も子供たちの周囲を駆け回っている。


「それじゃあ、結局は《竜化》の取得希望者は誰もいないのか……勿体(もったい)無い気もするけど、まぁ仕方ないか。変化系のスキルは、感情を持って行かれて危険だってムッターシャも言ってたしな。

 強力だけど、反動も大きいって聞くとやっぱり使用も躊躇(ためら)っちゃうな」

「そんな感じで、ウチでは使わないし人に勧めるのも怖い感じかな? だからしばらくは、鞄の肥やしになっちゃう気がするね」


 そんな話をしている凛香(りんか)と姫香は、子供たちが怪我しないよう揃って監視中。そして来栖家チームの回収して来た、各アイテムの使い道を話し合っていた。

 その脇では、ヒバリが前回の探索で獲得した《変化》と《巨大化》と『飛翔』の特訓中。前の2つは魔法アイテムで、ヒバリのためにと交換して貰ったモノである。


 『飛翔』に関しては、うっかりスキルの相性チェックで覚えて感度は良好な筈。その証拠に、翼を羽ばたかせるとちょびっとだけ体が浮いてるヒバリである。

 アスレを終えた子供たちが寄って来て、それを見ながら頑張れと励ましている。お互いに励まし合っての訓練は、この厩舎裏では既に恒例行事だ。


 ちなみに他のアイテムで言うと、機神兵の砦で貰った『防御特化ゴーレム』はルルンバちゃんが獲得。現在は、《並列思考》が使えるように訓練中である。

 それから宝物庫で見付けた『水神オートマタの鎧』は、ムームーちゃんが忍び込んで動ける事が確認出来た。それを喜ぶ軟体幼児、何しろ鎧を着込めは移動速度が数倍に上昇するのだ。


 将来的には、この鎧で前線参加なども可能になって来るかも。そんな未来を夢見て、ムームーちゃんは鎧とのシンクロ率を上げる訓練を頑張っている最中である。

 他の魔法アイテムで言うと、『アビスローブ』をツグミが貰って遠隔で動かせないかを試行中。あのレア種は相当に強かったので、味方で蘇らせようって計画みたい。


 その企みには、主の姫香も案を出したりと積極的に参入を図っている。ただし、ツグミが新しく覚えた《アビスドーム》の重力スキルを、まだうまく扱えない問題もある。

 そんな訳で、この新戦力の実戦投入もずっと先になる見通し。それから妖精ちゃんの宝珠から覚えた《女王冠》と、ミケの覚えた《猫パンチ》は未だ誰も見た事がない。


 それが上手く使えない為なのか、ただ単に気分じゃないのかも誰も分からないと言う。それはまぁ仕方がない、両者とも自由気ままと言うか唯我独尊(ゆいがどくそん)なのだから。

 そんな彼女達が、並び立たないのもある意味当然なのかも――




 その夜には、週に何度かある来栖家でのご飯会が盛大に(もよお)された。一応の呼びかけとしては、“浮遊大陸”で獲得したお肉と穀物の消費会だとの紗良の説明である。

 それに大昔のワインやお酒が出るとあっては、異世界組や小島博士が参戦するのは当然の事。その代わり、ワーム肉も出すよとはお手伝いの美登利(みどり)小鳩(こばと)の弁。


「後はドラゴン肉の残りと、それから虹色の果実のサラダも食べてね! 後半のゲーム大会の景品は、魔石と『強化の巻物』のセットとなってま~す♪

 上手くおだてれば、妖精ちゃんが錬金で強化してくれるよっ!」

「随分と盛大な食事会だな……しかもメインのワインも、熟成されてて随分と旨そうだ。こっちの人達は、ワーム肉を食べる習慣がないのか。

 アレはこってりしてて、酒の摘まみに丁度いいんだぞ」

「それじゃ、責任持って処理してよね、ムッターシャ……まぁ、余ったらハスキー達が喜んで食べてくれるけど。

 酒飲み組は、せめて自分で歩いて帰れるくらいの意識は保っておいてよね」


 香多奈の良く分からない進行と、それから姫香の容赦のない飲酒組への当たりは毎度の事。相変わらず騒がしい夕食会は、あちこちで様々な会話が飛び交っている。

 キッズ達は見た事のないお肉を前に、ドラゴンとワーム肉の食べ較べを皆で行なって楽しそう。新入りの(りょう)久遠(くおん)も、まずまず解け込んで騒いでいる。


 お姉ちゃんの(あかね)の方は、紗良や美登利や小鳩などの女性陣と固まってそれなりに忙しそう。皆の配膳をこなしたり、お酒を持って行ったりと役目もそれなりに多い。

 そんな仕事があった方が、かえって助かる場合もあったりする。お喋りが苦手だったり、大人数の食事に慣れてないと特にそうだ。


 そんな女性陣にお(しゃく)をして貰いながら、護人は周囲の面々と世間話に興じていた。例えば小島博士とは、麓の町に新しく出来る中学校の話とか。

 こちらは、昔の日馬桜町にはあったので、復活すると言い換えて良いのかも。香多奈はこの話のお陰で、姫香の時みたいに電車で通わなくて済むようになりそう。


 その改築などの資金に関しては、来栖家も随分と寄付したりと貢献した。探索で儲けたお金があったので、まぁ丁度良いって話ではある。

 とにかく、これで日馬桜町も小中学校がコンプされてより発展する形に。それでも山の上の塾は、春以降も続けて行くとの小島博士の言葉である。


 それは良かったと、護人も新しく敷地内に建物を建てようかと安請け合い。或いはこの辺で、結構な酔いが回っていたのかも知れない。

 それでも、話を聞いていた紗良や姫香などは、良いねとその案には賛成の模様である。紗良はついでに台所も付けて、新たな集会場形式を提案する。

 そうすれば、こんなすし詰め状態での食事風景ともおサラバだ。





 ――山の上の環境も、冬以降には良い感じに改善される可能性も?







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