広島市内からの来客に家族で対応する件
山の上の来栖家の敷地では、月末に向けて慌しいやり取りが行われていた。その1つに、そろそろ尾道組がお泊まりに来るとの報せが。
その連絡役を主に担っている姫香は、ラインでのやり取りに忙しない。ついでに言うと、護人の方にも広島の協会本部から客人が来る日時の確認があった。
宮島から戻って以降、岩国から『シャドウ』チーム、吉和からはギルト『羅漢』が訪れて慌しいったらない有り様。その止めとして、広島の協会本部長の葛西の来訪である。
来栖家の面々も、何かと時間を見繕って“太古のダンジョン”から“浮遊大陸”の2つのダンジョン探索の換金は終える事が出来た。宝物庫のお宝に関しては、家族で話し合った結果、全て企業に流す事に。
さすがに全部を協会で換金すると、能見さんに怒られてしまう可能性がある。前もっての連絡だと、協会本部も来栖家から直接アイテムなどを仕入れたいとの話。
それに対応しつつ、“浮遊大陸”の死霊軍との出来事を詳しく話す感じだろうか。甲斐谷チームも一緒に来るそうで、向こうも情報とアイテム両方を欲しがっている感じ。
その宝物庫の仕分けだが、ようやくの事片が付いた。妖精ちゃんもよく頑張ってくれて、結構な数の魔法アイテムを探し出してくれた。
その結果がこんな感じで、問題の品も割と多数と言う結果に。
【冷凍保安装置(魔)】使用効果:時間遅延&冷凍&状態保存・大×2
【虫よけ装置(魔)】使用効果:虫除け&カビ避け&状態保存・大×2
【不食の秘薬】使用効果:生存秘薬・秘薬素材×3
【魔彩のクモ糸】使用効果:魔法耐性&物理防御up・布素材×8玉
【不可侵の絹布】使用効果:魔法耐性&物理防御up・布素材×5
【浮遊石】使用効果:魔法耐性&浮遊属性・鉱石素材×3
【美振の魔ハープ】使用効果:調律不要&魅了・中
【美振の魔琴】使用効果:調律不要&魅了・中
【異界動物図鑑】使用効果:状態保存・異界の動物図鑑
【異界植物図鑑】使用効果:状態保存・異界の植物図鑑
【聖なる全身鎧】装備効果:魔法防御&知力up&着脱&聖属性・大
【賢人の全身鎧】装備効果:魔法防御&知力up&着脱&セット効果・大
【賢人のハルバード】装備効果:不折&物理破壊&知力up・中
【賢人のレイピア】装備効果:不折&物理破壊&知力up・中
【水神オートマタの鎧】装備効果:水エリア能力up&着脱&自律・特大
【変化の宝珠】使用効果:使用者はスキル《竜化》を習得
【招福の呼び鈴】使用効果:宝物発見・大
その他:『マンドラの根』(秘薬素材) ×4、『ガマの油』(秘薬素材) ×1.5ℓ、『海鉱石のインゴット』(水耐性) ×3、『地塊石のインゴット』(土耐性) ×4、『錬金レシピ書』(シェルター) ×1、『魔法の鞄』(空間収納) ×5、『鑑定プレート』(薬品) ×1、『鑑定プレート』(人物) ×1、『ミスリルの斧』×6、『ミスリルナイフ』×15、『ダマスカス鋼の槍』×4、『重オーグ鉄の長剣』×4、『重オーグ鉄の小剣』×11、『ルビーの指輪』(魔力&魔法防御up) ×4、『ダイヤの首飾り』(防御&魔法防御up) ×5『魔導ゴーレム』(魔導ゴーレムの本体)×1
これの他に、魔石や魔結晶の中~大サイズも数十個ほど回収していて、装備品に関しては価値の低い奴は未回収である。それでも多大な数の回収品に、魔法の鞄は大活躍だった。
取り敢えず素材系は紗良やリリアラに任せるとして、『冷凍保安装置(魔)』や『虫よけ装置(魔)』の設置場所は考え物。冥界の王に貰った『魔法の収納容器』にしてもそうだが、自分たちの家族だけで使うのは勿体無さ過ぎる。
そう言う意味では、回収した図鑑係や楽器にしても同じく。魔法アイテムの『美振の魔ハープ』や『美振の魔琴』は、魔石をセットしなかったらただの楽器である。
使いたい子供達用に開放してあげたいが、生憎と良い感じの置く場所が見当たらない。塾として使っている小島博士の家屋だが、普段は教授とゼミ生の生活空間なのだ。
その辺の建物増設も今後の課題だが、もっと重大な魔法アイテムがこの回収品の中に紛れ込んでいた。例えば宝珠|《竜化》だが、何と誰も使いたがる者がチーム内に存在せず。
お調子者の香多奈でさえ嫌がって、ペットへの使用も躊躇われる感じ。チーム内には既に本物(?)の子竜もいるし、くどいよって感想の子供たちである。
唯一、ルルンバちゃんが使ったらどうなるのかと言う興味が、家族内で議論されたのだが。宝珠は間違っても遊びで使用する品では無いし、検証は諦めた次第。
その代わりと言ってはアレだが、4日間勤務で溜まったスキル書とオーブ珠の相性チェックでは、追加で2匹のスキル取得が確認出来た。まずはミケが、オーブ珠から幾つ目かの特殊スキル《猫パンチ》をゲット。
その威力だが、夕方の特訓に不参加のミケなので、誰も確認が取れないと言う。そして2匹目の取得は、何と仔グリフォンのヒバリだった。
念願の取得は『飛翔』と言う名のスキルで、これはまぁ翼ではなくスキルで飛べるようになったって事だろうか。とは言え、本人が扱いに慣れてないため、残念ながら未だヒバリの飛翔は誰も確認が出来ていない。
それは良いのだが、残りの2つの大物も来栖家チーム的には色々と物議を醸す結果に。まず1つ目の『水神オートマタの鎧』だが、どうやら水エリアで能力アップ可能な鎧らしい。
しかも自律も出来て、オート着脱も付いている魔法の鎧と来ている。何とも意味不明なこの鎧、要するに装着可能なゴーレムと言うかオートマタらしい。
ギミックも豊富で、素手でもそれなりに強いのは姫香が試してみて判明した。ただし、サポートしようと鎧が勝手に動く事があるので、彼女のお気には召さなかった。
代わりに興味を示したのは、何とスライム幼児のムームーちゃんだった。どうやら来栖家の探索の同行で、護人の肩の上にずっと乗ってるのも飽きが来るよう。
それならば、鎧を着込んで自由に動き回りたいとの軟体幼児のお気楽な発想である。それをダメと言えない護人は、仕方なく敷地内での練習を許可する流れに。
それからもう1つ、機神兵団との交渉で末妹の香多奈が何気にゲットしていた品物が。ルルンバちゃんが《並列思考》スキルを覚える前提で、もう1機魔導ゴーレムが欲しいと考えた少女は領主パペットにおねだりしていたのだ。
その結果、やや小柄だが巨大な盾が翼のように4枚装備されている『防御特化ゴーレム』を譲り受ける事に。こちらはAIロボの所有にスンナリ決まり、今の所は並列操作の特訓中。
それが出来るようになれば、ルルンバちゃん本体は前衛で、防御特化ゴーレムは後衛の守りにって布陣も可能。そうすれば、チームの戦力も2割増しの計算である。
とは言え、こちらもスキルの使用に手間取って、そう簡単には同時操作は出来そうもない。こちらも特訓の日々で、AIロボの趣味の敷地内清掃も滞ってしまう程。
まぁ、それはツグミが覚えた《アビスドーム》にしても同様で、単純にチーム力が増したとはお世辞にも言えない現状である。今後のチームの飛躍は、そんなペット達の頑張りが握っていると思われる。
そんな来栖邸の周辺は、今日も朝から賑やかで何より――
そんなある平日の昼下がり、高級で頑丈そうな装甲車2台が来栖家の敷地へとやって来た。ペット達は敷地内を巡回したり、スキルの訓練をしたりと時間を過ごしている。
一方の来栖家の面々は、お偉いさんのお持て成しの用意に大忙しで動き回っていた。ただしそれは紗良のみで、姫香に至っては呑気なモノ。
護人もあらかじめ売って欲しい物リストを手に、そのチェックに余念がない。結構なお金も動くので、不手際があってはさすがに申し訳ない。
そんな訳で、ミケの相手をしていた姫香がお客さんを客間へと案内する流れに。姫香の肩の上で客人を見定める愛猫は、まるで冥界の番人のよう。
不埒な真似をしたらタダじゃおかねぇぞ的な視線は、S級の甲斐谷や八神でさえ委縮してしまう。そんな『反逆同盟』の2人は、今回は単なる付き添いと言う訳でもない。
まぁ、建前としては広島探索協会の本部長である、葛西とその秘書の護衛役ではある。それから “巫女姫”八神の、冬から春にかけての予知内容の報告も一応兼ねてるみたい。
要するに、県内でも数少ないA級チームを、遊ばせておくほどの余裕は無いって事なのだろう。そんな感じの打ち合わせは、主に青空市で行われるのが常だったり。
それを今回は、希少な品を来栖家が売ってくれると言うので、葛西について来た甲斐谷と八神である。S級と評される彼らだが、さすがに異界や“浮遊大陸”に遠征に行った事は無い。
「いや、時間を取らせてしまって申し訳ない……“浮遊大陸”の情勢はかなり貴重で他に漏らしたくないので、直に聞いた方が良いと思ってね。
それから、アビスリングや『ワープ装置』を追加で売ってくれるって話だったし」
「こっちは4日連続でダンジョン探索をさせられて、魔法アイテムも使い切れないほどには溜まってますからね。
適正価格を払ってくれるなら、喜んでお譲りしますよ」
「まずはどちらからしましょうか、4日間の録画データも渡せるように準備してますよ。それからもちろん、前もって買い取り希望の品も準備しています。
まぁ、まずはお掛け下さい……お茶の準備も整ってますので」
そこからは簡潔な挨拶からの、情報のやり取りや“浮遊大陸”での出来事を割と根掘り葉掘り。特に4つの勢力の潜在的な脅威に関して、1時間以上話し合う事に。
死霊軍に関しては、護人も異世界チームのムッターシャと同じ見解を口にする。つまりは、下手に刺激して敵対してしまうと最悪の事態を招きかねないと。
獣人軍とホムンクルス軍は、その兵力数が単純に厄介だと思われる。それから将軍級の個の強さも、A級ランクかそれ以上なのは戦ってみて判明した。
こちらも基本的にアンタッチャブルで、基本は両軍で潰し合って貰えばこちらとしては平和である。向こうが“浮遊大陸”から出て来れない限り、それで済ませてしまえる話だ。
葛西や甲斐谷も、時折考え込む素振りを見せつつ動画を視聴している。画面に映し出されているのは、4日目の来栖家が宝物庫を目指している場面。
特にホムンクルス軍の大将格との戦いは、まさに手に汗握る熱戦となっていた。その敵将の強さは、確かに本部長の葛西も呆れるレベル。
ミケが頑張ってくれたからねと、姫香は自分の膝の上に丸まっている愛猫を指し示す。そんな来栖家のエースを、本部長はビックリ箱でも眺めるかのような表情で凝視している。
それから話し合いは、ムッターシャを交えたり途中で香多奈が学校から帰ってきたりと、多少の波乱はあったモノの。概ね来客側も満足の行く形で、魔法アイテム販売まで移行して行った。
そこで掛かった時間は約30分少々、末妹が参戦した事で騒がしさが倍加したのは仕方がない。護人はムームーちゃんを肩に乗せて、進行を子供たちに丸渡し。
元々がアイテム管理は紗良の仕事だし、交渉事は姫香や香多奈の方が上手である。そんな訳で、来栖家の余剰アイテムはなかなかのお値段で買い取られて行く事に。
「ふうっ、額が凄いから感覚が麻痺しそうだね……これって普通の会社員じゃ、とても1日で稼げる額じゃないわよね」
「普通の探索者でも、なかなか無理だと思うわよ……それにしても魔法アイテムはある程度捌けたけど、貴金属類は全然買い手がついてないんだよねぇ。
こりゃまた、企業販売車に来て貰うしか無いかな、護人さん?」
「それより、次は予知の内容についてのお話いいかしら? 今年の冬から来年の春にかけて、広島県内で起きる厄介事を私達で予防して行きたいのよ。
それが高ランク探索者の、何と言うか課された義務ですものね」
そう口にする“巫女姫”八神は、厄介なスキルを預かったモノだと心底辛そうな表情。義務と責任まで背負わされて、確かに1人で処理するには大変かも。
それを察知した子供たちは、任せておいてといつもの安請け合いを発動する。
――そうして来栖家の面々は、初めて予知の内容を知る流れに。
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