表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
808/860

秋も深まる山の上に来客が頻繁に訪れる件



 さて、来栖家の協会での換金&動画編集依頼に関しては、昨日の内に無事に終わらせる事が出来た。その結果だが、能見さんを怒らせない様にと(つつ)ましやか。

 それも魔石(大)以上は、錬金や異界の隠れ里での支払いに取っておく作戦の賜物(たまもの)である。そんな訳で、“太古のダンジョン”の換金額は170万円だった。


 C級ダンジョンを10層にしては意外と多かったのは、ひとえにガチャで魔結晶などが当たったため。今思えば、ハズレのカプセルにしては意外と儲けは大きかった。

 その後に死霊軍の執事にお招きされたせいで、余りのコインは完全に消滅しまっていた。それを悔しがる末妹も、昨日の協会(もう)でには参加した次第。


 そして動画チェックを、毎度の能見さんと盛り上がってこなしていた。しかもダンジョン探索×3本と、それから“浮遊大陸”の宝の地図案件である。

 さすがに全部は、2倍速でも見切れなかったので要点だけのチェックで終わってしまった。それでも失踪チームを捜す依頼から、大冒険に転じた顛末は分かって貰えた模様。


 こちらの故意ではなく、完全な巻き込まれで仕方がなかったんだよと熱弁する子供たち。その割には、ノリノリで探索する姿が動画には映っていたりして。

 ちなみに、“廃墟都市ダンジョン”の魔石販売は370万、それから“死霊迷宮のダンジョン”は270万円だった。合計すると余裕で500万円を超えていて、そこはまぁ仕方がない。


 翌月の振り込みでとの言葉にオッケーを出して、それから各種報告を仁志(にし)支部長から受ける護人。その大半は、既に聞いた事の再確認で特筆すべき事は無し。

 例えば広島の本部長がこちらに来るとか、その際に来栖家チームの貯め込んでいる魔法アイテムの買い取りを希望しているとか。後は、甲斐谷チームも一緒に来るかも知れないとか。


 “巫女姫”八神の予知だが、今年の冬から来年の春にかけて、新たな予知を発表したそうだ。とは言え、前回ほどの奇想天外な内容ではなく、その点は安心みたい。

 それに対するA級チームの動きなどを、あらかじめ話し合っておきたいのかも。仁志はそう言いながら、お手数ですがよろしくお願いしますと頭を下げる。


 この手厚い対応は、仁志に言わせればA級チーム相手なら当然らしい。護人としては、相変わらず地元の自治会では最年少で、こき使われているのでピンと来ない。

 田舎になると、それこそ60歳を過ぎても上がそれ以上なので若造扱いである。護人も同じく、この先何十年も若造扱いは既に覚悟している次第。


「それでは今週末の協会本部長の案件、よろしくお願いします。会合場所を来栖邸にして貰って、本当に良かったですよ。

 何しろこの支部、狭過ぎて応接室すらない有り様で」

「まぁ、それは仕方ないですね……それより向こうが買いたい魔法アイテム、詳しく分かればすぐに取り出せるようにしておきますので。

 どの鞄に何が仕舞われてるか、紗良ですら曖昧なモノで」

「定期的に片付けはしてるんですけどね、それでも1回の探索でドンッとアイテムが増えて行くので……でも、今回の探索で魔法の収納が増えたから、今後はもう少し楽になりそうです。

 あっ、そう言えば今回のお土産を渡しておきますね!」


 そう言って紗良が取り出したのは、宝物庫から回収したハムやチーズ類だった。ワイン瓶(数百年物?)なども持って来ており、この差し入れには職員さん達も大喜び。

 口々にお礼を言いながら、探索の成功を祝ってくれる。来栖家としても、この程度のお裾分(すそわ)けでお付き合いがスムーズに済むなら安いモノだ。


 その後も、動画視聴のキリの良い所まで行なった面々は、能見さんの驚きのリアクションを存分に堪能した。それから編集を4回に分けてお願いしてから、協会を後にするのだった。

 そして戻ってからは、残りの宝物庫の回収品の整頓など、真面目な紗良は姉妹で頑張ろうと発破をかける。我関せずなペット達は、キャンピングカーの窓から散りゆく紅葉を眺めて呑気そう。

 山の上は、そんな訳でもうすぐ冬の気配である。




 週末にイベントを控えた山の上の来栖邸だが、それより先に来客イベントが発生した。どうやら昨日アップされた動画を観て、岩国の『シャドウ』が心配して駆けつけてくれた模様。

 その反応は当然で、尾道の陽菜や因島(いんのしま)のみっちゃんからも姫香や紗良に直電があった。まぁ、元々フットワークの軽い『シャドウ』の面々は、青空市以外にもよく遊びに来る。


 遊びにと言うか、夕方までいて特訓に参加して露天風呂に入って去って行く感じ。今回もそうみたいで、午後からリーダーの三笠(みかさ)舞戻(まいもど)のコンビが。

 朱里(あかり)に関しては、さっそく新参者のヒバリを撫で回してモフモフ具合を堪能している。情報担当の三笠は、あの動画の真意を訊きたくて仕方がない様子。


 そんな訳で、編集前の動画データをくれないかと来栖家と三笠の密談が少々。この辺はいつもの事なので、流出しない事を条件にコピーを許す護人である。

 その隣では、舞戻(まいもど)と女性陣が(かしま)しくお喋りに夢中。


「それでね、メイドゴーストのヘスティアちゃんって娘と仲良くなってさ。まぁ、香多奈とかあんな調子だから、誰とでもすぐ仲良くなるんだけど。

 一時期は、一緒に地上について来るんじゃって護人さんとか心配してたみたい」

「姫ちゃんも、大概(たいがい)コミュ強お化けだけどね……取り敢えず、宮島の上に浮かぶ“浮遊大陸”の脅威からは、死霊軍団と機神兵団は(はぶ)いても大丈夫って感じかなぁ?

 まぁ、獣人軍とホムンクルス軍に関しては相変わらずだけどね」

「なるほど、そんな感じなのね……ただまぁ、連中も“太古のダンジョン”を通じても、ゲートの繋がってる宮島には乗り込めていないみたいだね。

 その点に関しては、ひとまず安心はしていいのかな?」


 恐らくは、この前の三原の軍隊派遣みたいな大規模な騒ぎは、現状で起こらない感じがする。そんな推測を述べる紗良と姫香は、根拠は無いけどねと注釈を追加。

 実際に“浮遊大陸”をうろつき回った感触だと、両軍とも人類に対する執着は依然と強かった。それでも手出しをして来ないのは、手段がないからに他ならないのだろう。


 朱里(あかり)とその手の話をしながら、夕ご飯を食べて行くかと問う紗良である。それなら夕方の特訓に参加して、ついでに露天風呂も入って行きなよと姫香も追加のお誘い文句。

 かくして、情報交換はスムーズに行われて行く。ちなみに『シャドウ』のお土産の甘味は、妖精ちゃんが勝手に食い散らかして満足そう。


 そのお返しだが、余っていたコカ肉とかワイバーン肉、それから『海鉱石のインゴット』もお土産に持たせる事に。それから適当に、余剰気味の薬品も詰め合わせ。

 最近は紗良の作成する果汁ポーションも軌道に乗って、他の探索者チームからも好評を頂いている次第。朱里(あかり)にも喜ばれて、向こうも夕飯までいるとの事。


「それにしても、今回の動画は本当に各所で物議を(かも)したね……岩国の協会も、宮島口までは2号線で約30分の距離だし、全くの他人ごとではないからね。

 異世界種族の認識の改めを含めて、対策を練らないとって話している所」

「それは大事だね、まぁ私たちのチームも香多奈がいなかったら、あんなに死霊軍のトップと仲良くなれてたかは怪しいけど。

 とにかくそれが縁で、今後も付き合いは出来ちゃうかも」

「それに関して、広島の協会の偉い人も家に来るって話だったよね、姫ちゃん。ギルド『羅漢』の人も来てたかな、護人さんと長々とお話しして行った筈だよ。

 西広島の平和に直結する情報だもんね、向こうも気になったんだと思う」


 それは岩国在住の『シャドウ』の面々も同じ、是非とも情報は濃い密度で欲しい所。それからそのくさび役の、来栖家のパワーアップもこの目で確かめておきたい。

 そんな目論見の舞戻(まいもど)は、夕方から夜にかけてのお誘いを快く承諾する。それから末妹の姿が見えないけどと、お昼過ぎの意外と静かな敷地内を見渡す素振り。


 香多奈はまだ学校だよと、姫香は当然でしょと言わんばかりの返答。あの子も来年には小学校を卒業だよと、多少は感慨深げな姉の心情の吐露(とろ)である。

 それに対して、月日が経つのは早いよねぇと紗良も同じく感慨深げ。あのヤンチャな末妹が、来年からは中学生である。スカート制服姿で学校に通う姿が、あまり想像出来ないのは致し方なし。


 年末も差し迫って来て、山の上の来栖家の敷地も随分と寒くなって来た。初めてこの地の冬を経験する者達は、心して乗り越えて欲しいモノだ。

 その辺の準備は、もちろん来栖家の者も手伝うが凛香(りんか)チームの子供たちも丁寧に指導に当たってくれている。去年の教訓をそのまま話せばいいので、その辺はお気楽である。


 町への大規模買い物も既に済ませて、異世界チームは自分達専用のコタツをかなり気に入っている模様。冬支度イベントを着々とこなして、身内で盛り上がっている。

 護人も田舎住まいの(たしな)みとして、(まき)ストーブとか持ちたいけど薪の用意など色々と大変だ。それでも住人が増えて来た手前、皆の集まれる集会所みたいな場所はぜひ欲しい。


 何しろ、子供たちの塾の教室は小島博士の自宅スペースだし、全員集まっての来栖邸での食事会もすっかり手狭で大変なのだ。そこを解決出来る建物が、敷地内にあれば言う事なし。

 最近はリリアラと隠れ里の伝手も出来て、ノームの作業員に建築を依頼してしまえるのが嬉しい。いつの間にか敷地を横断する道路も、すっかり舗装が終わっている始末。


 素人仕事で途中までこなした配管工事も、プロ集団が完璧に仕上げてくれていた。これも実は、お湯が配管に溜まったままの放置だと、凍って配管が破裂する可能性が出て来るのた。

 何でも自分達でこなす田舎生活だが、実は失敗ややり直しも多かったりする。それを込みでの自分達で何でもこなす精神、それが田舎で生きるって事である。


 例えば軒下にスズメバチが巣を作ろうとも、業者に頼まず自分達で駆除するのだ。今年の梅雨明けも、そっち系の戦いは実は結構白熱したのだった。

 こればかりは、ハスキー達の敷地内のバトーロールの範囲外。この作業も、レイジーの火炎は論外だが、ツグミの闇系スキルでの駆除は今や鉄板である。


 そう言う意味では、ルルンバちゃんやツグミは今や敷地内の作業に無くてはならない存在だ。AIロボの自走草刈り機とか高所のドローン作業は、まさに3人前くらいの働き振り。

 そんな話をしていると、ようやく小学生たちが帰って来た。


 護人の運転する送迎車に、真っ先に駆け寄って行ったのはハスキー達と(りょう)少年だった。最年少のキッズ達は、とにかく仲が良くていつも一緒に遊んでいる印象。

 車から降り立ったコロ助と萌も、遼に歓迎されてちょっと嬉しそう。それからお客さんの存在を知って、やや緊張した顔付きで匂いを嗅ぐ仕草。


 そんなコロ助に、舞戻はすかさず近付いて挨拶代わりのモフり行為など。何しろ他のハスキー達は、愛想など無く触らせてもくれないのだ。

 猫のミケも同じく、人見知りと言うか家族以外の人間には全く気を許さない徹底振り。例外的に触れるのは、山の上の住人でも遼だけなのだとか。


 そんな遼と桃井弟の意外なスキル所持は、『シャドウ』としても実は把握している。ある時に子供たちがポロッと口外してしまって、それはまぁ良いのだが。

 リーダーの三笠が上に報告をあげたが、その反応は至って冷静だった。要するに、厄介事が1ヵ所に集中している分には対応も楽って事みたい。


 その渦中に位置する来栖家チームだが、ゴーストをスカウトせずに戻って来た事実に逆に驚きの三笠であった。とは言え、他にも注目する点は幾らでもある山の上の拠点には違いない。

 これからも長い付き合いになる予感もするし、是非とも良き関係を築いておきたい。そのためには、夕方の特訓に参加するくらいお安い御用だ。

 恐らくだが、他に関わりのある探索者チームも似たような思考だろう。





 ――そんな諸々の焦点の山の上の敷地は、見た目は(おおむ)ね平和だった。







『ブックマークに追加』をしてくれたら、香多奈が歓喜のダンスを踊ります♪

『リアクション』をポチッてくれれば、姫香がサムズアップしてくれます!

『☆ポイント』で応援すると、紗良が投げキッスしてくれるかも?w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ