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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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お次は“冥界の王”のダンジョンに挑みに掛かる件



 “浮遊大陸”の死霊軍の拠点のお城で、まさか2泊もする事になるなんて。世の中って(まま)ならないけど、目覚めは割と(さわ)やかではあった。

 いや、太陽を拝めないのでそうでもないってのはあるが、少なくとも昨日の疲れは取れているよう。それはペット達も同様みたいで、朝のチェックで万全みたいと姫香の言葉である。


 昨日の探索では、怪我をした者も少なからずいたのだけれど。上級ポーションと紗良の『回復』スキルは、探索者一家にはまさに必須(ひっす)の存在には違いない。

 そんな訳で、今日も頑張るよと朝から張り切る末妹の言葉に従って。朝食を食べ終わった面々は、雑談しながら探索の準備を始めるのだった。


「茶々丸の脚の様子だけど、本当に大丈夫なんだね、姫香? 今日のダンジョン探索も、恐らくハードになりそうな気配だからね。

 あまり無理をさせて、酷い後遺症が残ったら可哀想だからね」

「うん、そんな心配はいらない程には元気だよ、護人さん。ハスキー達も元気だね、逆にミケがちょっと不機嫌かも知れない。

 犬は人に付いて、猫は家に付くって言うもんねぇ」

「えっ、そうなのミケさんっ? 私やお姉ちゃん達がいれば、よそのお家でも全然寂しくなんて無いでしょうにっ!?

 そんなの贅沢だよっ、せっかくのお泊まりを楽しまないとっ!」


 そんな事を言ってミケに詰め寄る末妹は、ある意味いつも通りでとっても元気。こんな軟禁状態だと言うのに、その状況を楽しんでいさえするみたい。

 メイドゴーストのヘスティアとも、あっという間に仲良くなってお(しゃべ)りに興じている。コミュ強の末妹は、今は家から持って来た宝物庫の地図の場所特定に熱心な模様。メイドゴーストと一緒に、“浮遊大陸”の地図を開いて熱心に眺めている。


 どうやら今日のダンジョン探索が終わたら、その足で速攻で探しに行く予定らしい。そして見事見付けて宝物を回収したら、例の機神陣営の所にお邪魔すれば良い。

 それからルルンバちゃんの活躍をお喋りして、ゲートがあった筈なのでそれを借りてワープ装置で地上に戻るのだ。計画だけ聞けば、確かに完ぺきではある。


 ただし、そこまで話がうまく進むかは全くの未知数である。と言うより、そこまで楽観的にはなれない護人や姉達は、まずは今日の探索からでしょと気を引き締める素振り。

 昨日の1つ目のダンジョンも、かなり難易度が高くて大変だった。その分、確かに儲けはあったけど、そもそもの目的は失踪チームの救助なのだ。

 それなのに、自分達のチームも軟禁状態と言う笑えない現状。


「えっ、このマークの辺りは死霊軍の陣地じゃないのっ? それは困ったねぇ、前回も獣人軍とか、ちょっかい掛けが酷かった印象があるんだけど。

 何とか見付からずに、ここまで移動出来ないかな、ヘスティアちゃん?」

「アンタって子は本当に呑気だねっ……たった今、まずは今日の探索を頑張ろうって皆で言い合ったばかりじゃないのっ!

 欲ばっか()いてると、足元救われるわよっ?」


 だってせっかく宝の地図があるのにと、真っ当な正論を返す末妹は(ふく)れ顔。それを(なだ)めるように、メイドのヘスティアが宝探しは手伝ってあげるからとのフォロー。

 何なら、ウチの死霊軍団を貸してあげるよと、太っ腹なメイドの言葉に。笑顔で全力でお断りする姫香は、内心で慌てまくりで人類の敵には回りたくないって顔に書いてある。


 世間的に体裁(ていさい)の悪い事は、後でバレるとどんな批判を受けるか分からなくて怖い。来栖家は探索の風景を、ネット動画にアップしているので顔もそれなりに知られているのだ。

 そんな訳で、取り敢えずは今日の探索を万全な状態で終える事に集中するよとの姫香の声掛けに。お~っと元気に返事をする、香多奈と妖精ちゃんのコンビであった。


 今日のダンジョンもモロにA級仕様で、そこを査定しながら進まねばならないと来ている。何ともヘンテコな依頼だけど、ここを無事に出て行けるのならやるしかない。

 そんな表の感情は上手に隠して、まずは2体の死霊王たちとのご対面。今日の探索も、同伴するメイドの視点から楽しませて貰うぞと、彼らは揃って上機嫌みたい。


 その点は何よりである……昨日の得点発表も青いコインの交換も、“常闇王”ダァルは上機嫌で行なっていた。リッチ王に関しては、特に人間とのやり取りは不快ではないみたい。

 今日の相手の冥界の王“黒天”のミゲルは、その点はどうだろうか。顔は美麗だが、どこか酷薄な印象が(ぬぐ)えない護人は不安で顔が強張(こわば)りそう。

 朝から本当に、精神が(けず)られまくりの現状である。


 それでもお馴染みの地下のゲートから、2つ目のダンジョンへと案内される来栖家チームの面々。“冥界の王”ミゲルは自信たっぷりに、我が創造しダンジョンを楽しみたまえと口上を述べて来た。

 どうやら機嫌は悪くないらしい、それに対する末妹は審査は厳格に行いますと済ました表情。何故にそんな自信たっぷりなのか、育ての親の護人は訳が分からない。


「とにかく探索を始めよう……3日連続のダンジョン潜入は、チームでも初だったかな? とにかく怪我無く、みんなで無事に帰って来れるように頑張ろうか」

「は~いっ、今日も張り切って行くよ、ヘスティアちゃんっ!」


 お~っと腕を振り上げるメイドのゴーストは、すっかり来栖家のスタイルに染まった感じ。それを確認したハスキー達が、それじゃあ進むよと前進を開始する。

 それにはしっかりと、怪我から回復した茶々萌コンビも追従の構え。萌に関しても、相棒の仔ヤギの回復はとっても嬉しそう。


 そうしていつもの調子で潜入を果たす、“冥界の王”の創造したダンジョン探索の始まりである。それに(はしゃ)いでいるのは、いつものメンバーのみと言う。

 つまりは香多奈と妖精ちゃん、ついでにメイドのゴーストだろうか。




 驚いた事に、“冥界の王”のダンジョン内のモンスターは死霊では無かった。それに感動のコメントを発する香多奈は、本心で昨日でもう死霊の相手はこりごりと思っていたのだろう。

 他の家族も同じく、ハスキー達も嫌な臭いを嗅がなくて済むと知って嬉しそうな表情。そして早速出て来たヤモリ獣人を、武器やスキルで血祭りにあげている。


「本当に良かったよ、死霊相手はもうたくさんだからねっ……ハスキー達も嬉しそうだけど、何かいきなり分岐があってどっちに進もうか戸惑ってるね。

 あれっ、ここは遺跡型ダンジョンかと思ったけど、ひょっとして迷路型?」

「迷路型のダンジョンって、ありそうで今まで無かったよね、護人さん。そもそもダンジョンって、迷路の事を示すって紗良姉さんが昔言ってなかったっけ?」

「そうだねぇ、素朴な疑問だったんだけど……本来は地下牢とか、迷路状の構造物を指す言葉なんだよね、ダンジョンって。なのにフィールド型とか遺跡型とか、そんなのばっかり蔓延(はびこ)ってるからさ。

 ずっと不思議に思ってたけど、いざ迷路となると攻略は大変そうだねぇ」


 確かにそうだと護人も同意、ハスキー達は迷った末にあちこち移動して3度もドン詰まりを引き当てる破目に。それは仕方がないよと、イラついてるハスキー達を慰める後衛陣。

 しかし、ここまで本格的な迷路構造のダンジョンには、今までお目にかかった事のない来栖家チームである。紗良も動画情報でも、ほぼ聞いた事が無いと珍しがっている。


 今の所、遭遇した敵の強さは程々って感じでその点は有り(がた)い。ヤモリ獣人の他だが、イミテーターやシャドウ族が出て来て(おど)かし役を務めている。

 本来はコイツ等も、不意打ちがとっても怖い敵には違いない。ただこちらには優秀なツグミがいるので、そんなご無体(むたい)など許しはしないと言う。


 ミケも何故かイミテーターにだけは反応して、緩い電撃で(いじ)めるようにちょっかい掛け。それを面白がる香多奈とヘスティアは、すっかりニャンコのファンみたい。

 ミケも満更でも無いみたいで、ひょっとして来栖家チームの新たな仲間はゴーストの可能性も? そんな感じで浮かれている末妹と、冷や汗の止まらない護人である。


 それにしても、この遺跡型迷宮の大きさは並ではない模様。突入から既に30分が経過しているのに、未だに次の層のゲートどころか宝箱の1つも見付からない。

 想像主の“冥界の王” ミゲルの話では、このダンジョンでもコイン集めが可能らしい。その景品も凄いのを揃えたと、自身満々な美麗の死霊王であった。


 そんな現状だが、先行するハスキー達はイライラが隠せない模様。ツグミなど、最終手段の闇のトンネルを発動してショートカットを目論(もくろ)んだのだが。

 どうやらこのダンジョン、そんなズルを許してくれず不発に終わってしまった。闇のトンネルが向こう側に繋がって無いと知って、ツグミは相当なショックを受けている。


 それを慰める姫香は、3つ目の罠を発見して後衛陣に注意を呼び掛けている所。さすが遺跡型のA級ダンジョンである、罠の数も半端ではない。

 その罠も、実はツグミが発見していた奴なので、ツグミの存在は探索に欠かせないのは確か。その罠を、安全確保にとルルンバちゃんが踏み潰してくれる。


 それで罠が発動しても、それを喰らう魔導ボディには何の痛痒(つうよう)も無い。完璧な作戦だが、罠発動係のAIロボもちょっと楽しそう。

 例えれば、砂場に出来た砂のお城を破壊しちゃうぞみたいな感情なのだろうか。イケない事をしちゃった罪悪感を、皆に見られながらヤッちゃってる感じ。


 それはともかく、この迷宮迷子も40分を過ぎて段々と飽きて来た後衛陣。そこで、実はこんなモノがあるんだけどと、この前の探索で入手した『魔法の地図』を鞄から取り出す紗良である。

 それを見た香多奈は、そう言えばあったねぇと使うのに賛成派の模様。紗良からすれば、ズルにならないかなと心配してるみたいだけど、ヘスティアは何とも思っていない様子。


 ひょっとして、その眼を通じて観ている向こう側のギャラリーは異を唱えている可能性も。ただまぁ、これ以上迷子のシーンを演じるよりは、ずっといいよと末妹は使用に踏み切ってしまった。

 ちなみにこの『魔法の地図』だが、10枚(つづ)りで使い捨てアイテムである。鑑定の書と同じく、その周囲のマップを表示してそれで固定と言う感じ。


 ただし、その範囲はなかなかに広いみたいで、しかも宝箱らしきマークまで表示されている。ゲートの場所もバッチリ表示されており、これはとっても便利なアイテムかも。

 そう言って喜ぶ後衛陣と、行き先が分かってホッとした表情のハスキー軍団。護人も後で揉めなければ、こう言う便利なアイテムの使用に文句など無い。

 そんな訳で、この先は香多奈が行き先の指示出しをする流れに。


「そっちを右に行って、ハスキー達……突き当りに何か無いかな、多分これは宝箱か何かだと思うんだけどなぁ。あっ、さすがに罠の場所までは分かんないからね?

 それの発見は、引き続きツグミがやって頂戴ねっ!」

「何だか投げやりな指示だね、香多奈……まぁ、その用紙は10枚あるんだっけ? それならここのダンジョンを攻略するには、充分な量があるって事だね。

 でも念の為、管理は紗良姉さんがした方がいいかな」


 何でよと(いきどお)る末妹だが、その通りだなと護人も内心では賛成の構え。それでも案内に従って到達した迷路の突き当りには、宝箱が1つとそれを護るガーゴイル像が2体。

 それを『剛力』込みのコロ助のハンマーが、華麗に粉砕して呆気なく魔石へと変えて行った。1分も掛からない剛腕に、思わず見学しているヘスティアもビックリ顔。


 昨日はハスキー達が先行し過ぎていたために、じっくり前衛陣の戦闘シーンも見れなかったのかも。そう思うと、来栖家の探索方法もかなり変わっている気が。

 まずは宝箱を確保の一行だが、それには罠もしっかり掛かっていたようだ。ツグミの発した闇が箱を覆って、次の瞬間には開封されて事なきを得た感じ。

 その一連の作業は、何ともスムーズでさすがA級探索者である。





 ――もっとも、来栖家としては探索は楽しむモノって感じなのだけど。







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