無事に“廃墟都市”から戻って勝利を報告する件
「ダンジョンコアは触っちゃ駄目なんだっけ、約束したからそれは仕方無いよね。それじゃあ、宝箱を開けて退去用ゲートでさっさと脱出しようか、護人さん?」
「そうだな、ドロップ品はツグミとルルンバちゃんが回収してくれたみたいだし。まぁ、ここを出て寛げるかは微妙ではあるけどな」
「あっ、ヘスティアちゃんが傷付いた顔してるっ。叔父さんっ、あんまり女の子泣かしちゃダメなんだからねっ!」
小学生の末妹にそう注意された護人は、ここは素直にスマンと謝る。とは言え、その女の子認定のヘスティアも、実はゴーストだと言うオチ。
何ともカオスな現状ではあるが、今の所は自由と安全は保障されていると思いたい。そんな訳で、子供たちはいつもの作業をこなして探索終了を確定して行く。
紗良はペット達の体調チェックで、怪我がないかを調べてくれている。茶々丸などは特に心配だが、顔色に関してはそこまで酷くは無さそうで何より。
姫香と香多奈は、ゲートの横に湧いた宝箱の中身チェックを楽しそうに始めている。ちなみにドロップ品だが、大ボスのアビスドラゴンは魔玉(特大)とオーブ珠と奇妙な形の角をドロップしていた。
そして宝箱の中身だが、まずはスキル書が1枚に高価な薬品類が何本か。それからドラゴンの鱗や骨や皮素材が割とたくさん、ついでにお肉だが恐らく竜の肉だろう。
後は目立つのは、闇色のインゴットが5本ほどに青いコインが14枚ほど。最後の大量獲得に、姉妹はやったねと大喜びしている。
換金性の高い金銀財宝も結構入っていて、ついでに高価そうな宝石や装飾品の類いも多数。魔結晶も小中大サイズが揃い踏みで、それぞれ10個以上出て来てくれた。
魔法アイテムの類いは意外に少なかったが、虹色の果実や秘薬素材も入っているナと妖精ちゃん。今回は、そっち系の回収が意外と多かったようだ。
さすが不死の死霊王の創ったダンジョンである、まぁ来栖家のメンバーが不死を望むとは思わないけど。とにかく全て回収して、姉妹は終わったよと護人へと報告する。
そんな感じで、遠征先の1つ目のダンジョン探索は終了したのだった。
そして戻った先で、死霊王たちの労いを受ける来栖家は妙な気分。それでもやり遂げた感で満足そうな面々は、緊張から解放されてホッコリ顔。
リッチ王と冥界の王は、両者ともとても興奮したぞと満足気である。どうやら、しっかりとメイドゴースト視点の中継は楽しんで貰えたようで何より。
「さあっ、お待ちかねの青いコインの交換会だよっ! えっとね、ウチのチームでダンジョン内で、42枚のコインをゲットしたよっ!
さあっ、これで何を貰おうかなっ?」
「えっ、マジでこの城の宝物庫に案内して貰えるの……ひええっ、これって本格的な報酬の贈与じゃんっ!
これって、人類を裏切った事にならないよね、護人さんっ?」
「どうだろうな、まぁ……金銭的な品物はアレだから、なるべくスキル書や形に残らないモノを貰う事にしようか、みんな」
了解と返事をする末妹は、目を輝かせて宝物庫を見回っている。お供に付いて行く茶々丸や萌は、この部屋の価値を良く分かっていない模様。
ハスキー達も同じく……ただし、一仕事終えたけどモンスターが近くにいる現状は、レイジー達的にはストレスを感じているみたい。それは仕方無いと、明日まで我慢して貰うしか無いのが現状である。
ひょっとしてお泊まりが伸びるかも知れないが、何とか全員を無事に家に戻すのは護人とハスキー達の使命である。こればかりは譲れない、重要な役割と心に命じている。
そんな中、物欲に支配されている香多奈は、姉達と相談して何を貰おうかと熱心にお喋り中。結果、強力な宝珠とか良さげかもと姫香が提案する。
――宝珠なら良いモノがある、先ほどのダンジョンボスの特性を身につけられるぞ。それから儂は、その献身的な魔導ゴーレムが気に入った。
それが覚える用に、宝珠《並列思考》を譲ってやろう。
念話でそうリッチ王に話し掛けられ、これで2つ程貰う報酬は決定の運びに。1つをコイン15枚で譲ってくれるそうなので、残ったコイン数は12枚である。
その使い道を再び姉妹で話し合い、ヒバリ用に魔法アイテムを貰おうと言う話に。『巨大化』と《変化》を使えば、ヒバリも立派な戦闘員に数える事が出来るかも。
そう熱く語る香多奈は、リッチ王にこの2つの魔法アイテムはありますかと元気に質問する。あるぞと答えるリッチ王は、小振りな宝箱から装飾品を2つ取り出した。
その交換枚数は、合計で10枚との事でこれで交換会はお終い。厳密にはあと2枚残っているが、この枚数で交換可能な良品は無いそうで残念な限り。
それを適当に中級エリクサーや魔結晶(大)と交換して、交換会は本当に終了の運びに。そして明日は、“黒天”のミゲルの創ったダンジョン探索が待っている。
美麗な冥界王は、それが楽しみで仕方がない模様……ウキウキしながら、明日が待ち遠しいなどと呟いている。これは、間違っても約束をブッチなど出来そうもない。
この城のゲートの位置は分かったので、隙を見てのワープ装置での脱出は可能となった。ダンジョン探索の途中は、さすがに囚われのチームを置いて行くので無理ではあったけど。
今なら『チーム白狸』を引き連れて、こっそりこの“浮遊大陸”を去る事も出来そう。ただし、そんな事をすれば思い切り恨みの念が人類に向きそうで怖い。
それを思うと、人身御供ではないけれど大人しく死霊王たちの遊戯に付き合った方が良さげである。幸い、向こうは自作のダンジョンを攻略されても喜んでくれていた。
バッドエンドを望むのでなければ、こちらとしても探索に前向きになれると言うモノ。ついでに言うと、今回の探索で得た報酬も凄くて大満足である。
そう口にしながら、自室に戻った子供たちは早速ダンジョンでゲットしたアイテムの整理を始めていた。紗良はぶつぶつ言いながら、何とかあり合わせで家族の夕食の準備を始める素振り。
ハスキーやペット達は、同じ室内で思い思いの場所で寛ぎ始める。
【位の宝珠】使用効果:使用者はスキル《女王冠》を習得
【属性の宝珠】使用効果:使用者はスキル《アビスドーム》を習得
【心の宝珠】使用効果:使用者はスキル《並列思考》を習得
【漆黒の鎧】装備効果:器用&筋力&闇耐性up&着脱・中
【漆黒の短剣】装備効果:器用&筋力&闇耐性up・中
【腐敗のナイフ】装備効果:不折&腐敗付与・小
【アビスローブ】使用効果:奈落属性&重力操作・永続
【滅殺の魔剣】装備効果:闇属性&不折&滅殺・大
【首無し騎士の兜】装備効果:衝突緩和&全耐性up&体力回復&着脱・特大
【ラミアの骨】使用効果:魅了秘薬・秘薬素材×3
【不死の乾根】使用効果:不死秘薬・秘薬素材×2
【筋力増強の秘薬】使用効果:筋力増強秘薬・秘薬素材×3
【アビスドラゴンの角】使用効果:奈落属性&重力操作・永続
【闇鉱石のインゴット】使用効果:闇耐性&硬化付与・鉱石素材×5
【長寿の秘薬】使用効果:長寿秘薬・秘薬素材×3
その他:『強化の巻物』(耐性)×3、『強化の巻物』(防御)×2、『ダイヤの首飾り』(防御&魔法防御up)×1、『ルビーの指輪』(魔力&魔法防御up)×1、『サファイアの指輪』(魔力&耐性up)×1、『巨人のリング』(『巨大化』付与)×1、『変化のペンダント』(《変化》付与)×1、『奈落竜の鱗』×5、『奈落竜の爪』×4『奈落竜の皮』×2㎡
そして妖精ちゃんに手伝って貰って、魔法アイテムの選定を行った姫香と香多奈は満足そうな表情。“太古のダンジョン”では実入りは少なかったが、完全に盛り返す事が出来た。
まぁ、ガチャで相当に良い品もゲット出来たので、前日の探索も文句を言う程でもない。その景品で入手したダンジョン肉も、もうすぐなくなりそうと悲しそうな紗良である。
どうやらお昼のお弁当にも使ってしまって、そのせいでの悲劇らしい。食いしん坊のハスキー達も遠慮なくガッついて、消費速度は意外と早かったみたい。
結構あったのにねと呑気な香多奈と、何か狩って来ましょうかと提案するヘスティア。それを笑顔で辞退して、何とか夕食を工面する紗良であった。
「おかずが無くなったら、持って来てるカップ麺で全然良いからね、紗良お姉ちゃん。お握りとカップ麺でも、充分に御馳走だよっ。
計算だと、明日の探索が終わって……あっ、宝の地図の探索もあるんだった!」
「それだと、明日1日で全部を済ませるのはキツいね……私たちの探索が終わったら、お隣りの『チーム白狸』をワープ装置で先に地上に返すまでは確定でしょ?
それから私たちはもう1泊して、この“浮遊大陸”の地上探索かな?」
「それもまた大変そうだな……だがまぁ、仕方ないか……その辺の計画は、一応巻貝の通信機でギルドの人達に知らせておいてくれ、姫香」
了解っと明るい返事の姫香は、2日連続の探索にも疲れは感じていない様子。香多奈の方は、3つもある宝珠を眺めて誰がどれを覚えるのよと超楽しそう。
アンタは駄目だからねと、それでなくとも多芸な末妹に釘を刺しながら。姫香は《アビスドーム》はツグミに覚えさせたいなと、一応希望を護人に伝えている。
それから《並列思考》の宝珠は、ルルンバちゃん用だと確か死霊王が口にしていた。なので、こちらもAIロボへの使用は確定路線だろうか。
このスキルがあれば、例えば2台の魔導ゴーレムの機体を同時に動かせるようになったりするのかも。超便利で強力なスキルだが、扱いは大変そうな気もする。
あと気になるのは、2種のアビスモンスターがドロップした魔法アイテムだろうか。ついでに秘薬素材も幾つか入手出来て、不死の王たちは一体こちらに何を望んでるのだか。
思わずそんな邪推もしたくなるが、リリアラに渡せば研究は進めてくれるだろう。その結果に関しては、あまり知りたくない護人だったり。
とにかく今は、この良く分からない死霊軍の歓待を、何とか切り抜けて地元に戻るのに全力を尽くすのみ。そんな事を考えてると、そう言えばドラゴンの肉も入手したっけと思い出す姫香である。
そうだったと途端に元気になる長女と、美味しいお肉が食べれるのとその気配を察知するハスキー達。室内は急に活気づいて、それどころか何だかカオスな気配も。
ドラゴンと言っても深淵系の竜肉は、果たして食べても大丈夫なのだろうか。美味しいと良いけどねぇと、呑気な末妹は虹色の果実と一緒に鞄から取り出している。
こちらも既に慣れた、来栖家では一般的なサラダの彩りである。売れば恐らく数十万はするだろうに、考えてみれば何とも贅沢な食材たちには違いない。
ヘスティアも楽しそうに、紗良の調理する姿を眺めている。食の概念をとっくに失ったメイドには、その慣習は果たしてどんな風に映っているんだか。
その部屋の隅っこでは、香多奈がペット達を集めてスキル書の相性チェックを始めていた。今回はスキル書が4枚にオーブ珠が3個と7層攻略にしては豊作である。
それが全部空振りだったとしても、家族は既に宝珠を3個も所有しているのだ。新しいスキルを3つ覚えるのは確定済み、心に余裕があるって素晴らしい。
そんな事を考えながら、夕食前の時間はゆったりと過ぎて行く。
――その列には、ちゃっかりヒバリも紛れ込んでいるのだった。
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