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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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廃墟の古城で中ボス戦へ挑みに掛かる件



 たっぷり10分以上、護人と姫香からお小言を貰ったせいで、時刻は既に12時を回ってしまっていた。とは言え、薄暗いエリアなのでお昼と言う感覚はとっても薄い。

 それでも、お腹が空いたとちっとも懲りない末妹の呟きに、諦め模様の護人は紗良に昼食の準備を頼む。そんな訳で、推定レア種の消えた安全な廃墟の一角でのランチタイム。


 念の為にハスキー達は見張りを買って出てくれるが、視線はみんなの食べてる物に注がれている。いつもの事なので、末妹のお裾分けも誰も(とが)めないと言う。

 ある意味平和なお昼ご飯は、そんな訳で何事もなく終了した。末妹の切り替えの早さが、明るい食事の要因なのは間違いは無さげ。


 怒られても叱られてもへこたれないその性格は、ある意味アッパレとも言えるかも。そんな末妹は、さっき推定レア種が倒された場所に湧いた、ドロップ品と宝箱にご満悦の表情。

 宝珠のドロップは確かに凄かったが、宝箱からも色々と豪華な品が入手出来た。まずは鑑定の書(上級)が8枚にオーブ珠が1個、それからポーション類が中級エリクサーや上級ポーションを含めて5種類ほど。


 魔結晶も大が8個に特大が3個、この2種だけで700万円以上の価値がある。それから強化の巻物が3本に、謎の漆黒の鎧と短剣が1つずつ。

 それから青いコインが7枚と、宝石系の装飾品が数点ほど。飾りは棚に飾る装飾品も、立派なのが数点入っていてとっても綺麗である。


 あの奇怪な敵だったアビスクイーンとは結び付かないが、宝箱の中身に文句は言えない。そんな訳で、子供たちは喜びながらそれらを回収したのだった。

 そして昼食を食べ終わって、改めて堂々と文句を並べ立ててみたり。


「それにしても、出来立てのダンジョンだって言ってた癖に、レア種が湧いてるなんて酷い仕掛けだよねっ! アレは減点対象じゃないの、香多奈っ?

 それより護人さん、午後からの探索に茶々丸はどうしよう?」

「うん、さすがに無理はさせられないから様子見させるかな……(りょう)穂積(ほづみ)の姿に変身して貰って、後衛と一緒に歩いてついて来て貰おうか。

 紗良、悪いけど手を繋いでいてやってくれ」

「分かりました、護人さん」


 この馬鹿妹も、しっかり首根っこを掴まえといてよねと、姉の姫香は香多奈に対して容赦がない。まぁ、危ない事をしたら叱られるのは当然なので、さすがに紗良もフォローは出来ない。

 憮然(ぶぜん)とした表情の香多奈だが、メイドのヘスティアも顔色があまり(よろ)しくない。ゴーストなので当然だが、あれは階層主ですとご主人のフォローに必死。


 まぁ、末妹的には宝珠がドロップしたから別に構わないみたい。それから一緒に拾ったローブだが、これも何かいわくありげな感じ。

 妖精ちゃんも、呪われてはいないけど“アビス”だナと意味ありげなコメント。確かに見方によっては、あの強敵の抜け殻に見えなくもない。


 取り敢えず回収はしたけど、詳しい分析は後回しである。それより休憩をこなした一行は、いよいよ5層の探索に向けて活動を再開する。

 張り切るハスキー達だが、茶々丸は約束通りに遼の姿で後衛組と一緒。紗良に手を繋がれて、香多奈と並んで最後尾を歩く破目に。


 半人半竜姿に戻った萌は、相棒が近くにいなくてちょっと寂しそう。そんな萌の現在位置は、姫香と並んで中衛の位置取りとなっている。

 当分は、と言うか今日いっぱいはこのフォーメーションで進む予定。護人の命令に渋々従う(りょう)姿の茶々丸は、不本意そうだが仕方がない。

 何しろすぐ治ったとは言え、脚を骨折した直後なのだ。


「今日はこのまま大人しくしてなさい、茶々丸っ……明日も探索あるんだから、我慢しないと明日はお城に置いてく事になるんだからねっ!

 それより、足が痛かったらすぐに言うんだよっ」

「えっと、茶々丸ちゃんが折ったのは前脚だから、今の姿だと左腕だね。まぁでも、仔ヤギの姿だと脚って事で合ってるよね。

 何かちょっと、ややこしい話だねぇ」


 ほのぼのとした後衛の会話はさて置いて、魔法のコンパスの示す方向へと来栖家チームは進んで行く。廃墟と化した街並みは相変わらず静かで、風が寂し気に通り過ぎるだけ。

 まぁ、今は来栖家チームの面々が賑やかに通り過ぎているのだけれど。そんな訳で、先行していたハスキー軍団が10分後に5層へのゲートを発見した。



 そしていよいよ、中ボスの間を捜す探索の開始である。ちなみに5層の景色だが、やっぱり廃墟でうらびれた街並みが広がっていた。

 一行が出た道は中世の洋風の城へと続いているようで、その城も半壊していた。元は立派な建物だったみたいだが、何とも(わび)しいモノである。


 魔法のコンパスは、案の定と言うかそのお城の方向を示しているみたい。それを聞いたハスキー達は、それじゃあ進むねとばかりにそちらへと探索を開始する。

 お城の中に中ボスの間があるのかなと、末妹は姉と呑気にこの先の展開を推測し合っている。間に挟まれた茶々丸は、出番も無くて暇そうな表情。


 先行しているハスキー達は、相変わらず出没するゾンビやスケルトン兵と戦いを繰り広げている。その数は相変わらずで、雑魚とは言えなかなかに大変そう。

 お陰で中衛の姫香と萌も、駆逐作業に参加してとっても楽しそう。実際は、姫香などはゾンビの腐臭に顔を歪めていて、決して楽しみは感じていなかったり。


 それでもちゃんと大人しくしている茶々丸は、紗良や香多奈に褒められて満更でも無い感じ。そんなやり取りをしながら、一行はいつしか城の正面入り口へ。

 そこの跳ね橋は辛うじて壊れていなかったが、これ見よがしの死体の陳列が酷いレベル。それはここを護って戦って死んでいった兵士かも知れないし、全く違う住民のモノかも。


 とにかく教育に悪い事この上ない場所に、護人も眉をひそめてさっさと進む事を選択する。とは言え、城門の跳ね橋のすぐ向こうが、どうやら中ボスの部屋っぽい感じ。

 跳ね橋の安全性も確保されてないし、先行して偵察が必要かも。そう言って、まずは護人が自ら城門の跳ね橋を渡ってみる事に。


 それに待ったをかける姫香は、自分も一緒に渡るよと先行偵察の同行を立候補する。そんな訳で、レイジーとツグミもそれならとお供する流れに。

 仕方無いなと言う感じで、護人は仕掛けに注意するようにと同行者達に注意を飛ばす。ついでに城の中庭の中ボスの動向も、気を付けて見張っていなければ。


「了解っ、そっちは私が見張っておくねっ……紗良お姉ちゃんは、橋の下からゴーストとかが襲って来ないか見ておいてね!

 茶々丸もお願いね、何かあったらすぐ知らせるんだよっ」

「了解、中ボス戦でも《浄化》スキルを先制で撃っちゃおうかなっ? あっ、護人さんと姫ちゃんは無事に跳ね橋を渡れたみた……えっ、うえっ!?」


 香多奈の言葉に元気に返事をしていた紗良だったけど、途中から素っ頓狂(とんきょう)な声に変わってしまった。その理由は、突然に掛けられていた跳ね橋が上がり始めたから。

 その端っこにいた後衛陣は、置いて行かれたら(たま)らないと慌てて橋へと飛び乗って行く。しかし、ルルンバちゃんの巨体が乗っても、その動きは止まらない。


 このままでは、橋が急斜面になって転げ落ちてしまうと、大慌ての紗良と香多奈はダッシュで橋を駆け抜ける。ルルンバちゃんなど、家族を自重で潰すまいと物凄く必死。

 その仕掛けを動かしている者など見当たらないので、恐らくは罠なのだろう。コロ助や萌は安全に渡り切ったけど、その他のメンバーは途中から滑り落ちる始末。


 何とか怪我無くお堀を渡り切れた一行だが、前衛陣は既に中ボスに絡まれていた。まず動いたのは4メートル級の骸骨と、それから死霊キメラもついでに襲い掛かって来ている。

 死霊キメラは、動物や獣人の死骸をベースにした、4メートル級の大物ゾンビだった。今は護人が対応しているが、コイツはシャベルの『掘削』を喰らっても平気な顔をしている。


 大穴を開けられても痛痒(つうよう)も感じない死霊キメラは、かなりタフなモンスターのようだ。レイジーがフォローに入って、炎のブレスで焼き殺そうとしている。

 その攻撃はさすがに嫌だったようで、死霊キメラは自身の(まと)った炎を消そうともがいている。そこに割って入ったのは、今まで動きの無かった3体目の中ボスだった。


 そいつは自分の生首を小脇に抱えた、甲冑姿の騎士だった。デュラハンが来たよと、ようやく態勢を整え直した後衛から末妹の注意が飛んで来る。

 それと同時に、紗良の《浄化》スキルが敵へと注がれた。炎に焼かれた上に弱点属性を喰らった死霊キメラは、既に虫の息で弱々しく暴れ回るのみ。



 一方の姫香と巨大スケルトン兵の戦いは、なかなかに白熱して膠着(こうちゃく)状態だった。さすがA級ダンジョンの中ボスである、ただのスケルトン兵だと思ったら大間違い。

 そいつは手にした剣と盾を器用に使って、まるで歴戦の兵士のような動きを示していた。姫香の『天使の執行杖』の大鎌モードは、当たれば死霊にも大ダメージなのだが、反面長引くと理力切れを起こす弊害も。


 そんな訳で、ツグミも何とか敵に隙を作らせようと、フォローに回るが上手く行かない。ツグミの《闇操》や『影縛』は、モロに闇属性なので向こうも耐性があるのだろう。

 しばらくは、敵に攻撃を盾で上手く受けられて向こうの反撃を姫香が器用に(かわ)しての攻防が続く。姫香も5層まで、フルではないけど戦って来た疲労は当然ある。


 ツグミも同じく、お昼休憩を終えたばかりとは言え、その前には数時間も働いているのだ。やはり連日での探索業務は、負担が無いと言えば噓になって来る。

 そこを根性でカバーするのが、元気少女の姫香である。巨大骸骨兵士の持つ剣は、相手は軽々と振るっているけど姫香からすれば巨大な大剣にしか見えない。


 そのせいで間合いが遠くなってしまって、こちらの撃ち込みに切れが無くなるのも仕方のない事。それらの攻撃は(ことごと)く盾て防がれて、姫香も我慢の限界に。

 つまりは、体力より先に精神的にプッツン来てしまった気の短い姫香である。中ボスの骸骨を相手に、剣術合戦をしていても仕方がないと思考を切り替えれるのも少女の利点かも。


 そんな訳で、技術で及ばないなら力技でねじ伏せる事に決めた姫香は《舞姫》を発動する。続いて《剣姫召喚》で分身を召喚して、強引に巨大骸骨の膝を粉砕に掛かる。

 さすがの骸骨剣士も、ツグミを含めて3方向からの同時攻撃には対処出来なかったようだ。姫香の目論見通りに、膝の骨を割られて片膝をつく破目に。


 それから姫香は、自分の纏う『白百合のマント』をせっついて薬品散布の能力を強要する。この能力はいざと言う時の切り札になるかなと、お昼に姉の紗良と相談していたのだ。

 そして実験的に、浄化ポーションを『白百合のマント』の空間収納に入れておいたのだが。それを効果的に使いなさいよとの無茶振りに、果たしてマントはしっかり応えてくれた。


 薬品散布は、本来は傷付いた着用者を護るためのオート回復機能だったりする。しかし、主人にやれと言われて出来ませんでしたでは、自我を有するマントとしてもプライドが傷つくのだろう。

 結果、かなり強引ではあったけど、マントを伝って放たれる白い浄化の霧の束。それは巨大骸骨の首筋に纏わり付いて行き、あろう事か盾を放り捨てて苦しみ出す中ボスであった。


 そこからは分身と共に骸骨の脳天をカチ割って、すんなりと勝利を勝ち取った姫香である。釈然としない表情なのは仕方無い、まさか浄化ポーション散布があんなに効果的だとは思わなかったのだ。

 とは言え、まだ中ボスの間の戦いは終わっていなかった。護人の方では、最初に絡んで来た死霊キメラの討伐は既に終わっていて問題無し。

 問題なのは、その後に接近して来た首無し甲冑騎士である。





 ――そのデュラハンは、今まさに護人と死闘を繰り広げていた。







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