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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件
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割と難関ルートを来栖家チームが割り当てられる件



 無事にダンジョン入りを果たした、今回のレイド戦に携わる精鋭12チームである。その半数以上は、実はこの“比婆山ひばやまダンジョン”は初の挑戦と言う。

 もちろん来栖家チームも、その隣の異世界+星羅(せいら)チームも初の探索場所である。岩国2チームも、こんな県北に訪れたこと自体が恐らく初だろう。


 それはともかく、この場でもレイド戦を仕切る甲斐谷の説明は続くよう。この入り口付近は、どうやら周囲の山々に囲まれた麓の部分らしい。

 その各山々を登った地点に、次の層へのゲートが湧くそうなのだが。そこまで進むルートを、この麓付近の設置ボックスから入手が可能らしい。


 そしてオリエンテーリング形式で、チェックポイントを通過しながらゲートへと向かって行くそうな。そんな風変わりな“比婆山ダンジョン”は、山登りメインの割とハードモードな探索が売りなのだとか。

 今はレイドリーダーの甲斐谷が、どのチームがどの山へ向かうか割り振りを決めてる。自身の『反逆同盟』は、地元のB級チームを従えて『比婆山御陵(ごりょう)』へと向かうそう。


 次に危なそうな『竜王山』は、異世界+星羅チームがになうとザジの堂々とした宣言。来栖家チームは『立烏帽子(たてえぼし)山』を言い渡され、オッケーと軽い末妹の返答が。

 その他は『烏帽子(えぼし)山』や『毛無山』、『伊良谷山』や『牛曳山』など、ボックスから回収したオリエンテーリング用の用紙の行き先はそんな感じ。

 12チームを8に編成し直して、これで登山ルートを登る算段はついた格好に。


「あっ、ウチのチームは雪山探索に便利なアイテム持ってるよ~! 欲しい人がいれば配るから、手を挙げてちょうだいっ♪」

「ああっ、『温保石』は雪山に挑むには便利ですよ……ステータス高くても、寒暖差で風邪ひいたり体調崩すのは抑えられませんからね。

 たくさんあるので、遠慮せずに持って行って下さい」


 末妹の言葉に、リーダーの護人も周囲のチームに『温保石』を勧める素振り。異世界のダンジョンで40個以上ゲットしたので、皆に振る舞う程度は余裕である。

 身体がポカポカして温かいよと、末妹のセールス文句にかれたのか。それじゃあ貰おうかなと、パラパラと周囲の探索者が寄って来る。


 それを配る長女の紗良の魅力に、追加で何人か若い男性の探索者が寄って来た。山の上のお隣さんチームには、昨日の時点で配ってあるので問題は無し。

 岩国2チームも寄って来て、香多奈から通称ホッカイロを貰い受ける。それと交換に、護人は甲斐谷から用紙とコンパスを手渡された。


 それには確かに、目的地が『立烏帽子(たてえぼし)山』ゲートと書かれていた。どうやらその山を登りながら、チェックポイントを通過して行く仕様らしい。

 変わったルールのダンジョンだけど、雪山の中をゲートを捜して彷徨さまよい歩くよりは数倍マシかも。このダンジョン、入って確認したら8割が雪山である。


 そこを探索して山道を歩き回るのは、戦闘以上に大変なミッションかも。それを含めてA級ランク指定の、広域ダンジョンなのかも知れない。

 来栖家チームが割り当てられた『立烏帽子山』方面も、文字通りの雪原エリア仕立てだった。これは先行きは大変そうだと、護人のコメントに大丈夫でしょと安請け合いの子供達の返事。


「いやしかし、紗良の前情報じゃ1層の平均クリア時間は、最短でも40分程度って話だったしなぁ。戻るのはどの層からも、山を下れば良いから楽みたいだけど。

 それ以外は、ほぼ山登りルートみたいだぞ?」

「まぁ、それは仕方が無いよね……確か“三段峡ダンジョン”もそんな感じじゃなかったっけ? そこをクリア出来たんだし、今回も行けるでしょ。

 ルルンバちゃんの修理は間に合わなかったけど、いざとなればこの機体でも2人は乗っけれるよねっ」

「そうだね、そんな訳で頼りにしてるよっ、ルルンバちゃん!」


 そんな末妹のお気楽な声掛けに、任せておいてと張り切りポーズのAIロボである。護人はこの機体に、排土板みたいな除雪機能をつけて貰うべきだったかなと早くも後悔。

 いや、雪山ルートと言っても恐らく登山道は付いている筈だし、オリエンテーリングの道順もそこを大きく外れないと信じたい。そこまでサバイバルな規則は無いと、前情報の動画データからも判明している。


 どちらにせよここまで来たし、遠征レイドは既に始まっている。進むしか道は無いので、こんな所で問答をするのも時間の無駄ではある。

 そんな訳で、勝手に進み始めようとするハスキー達を制して、子供達は渡された地図とコンパスを手に話し合いなど。そして最初のポイントはあっちだねと、姫香の指差しに。


 やっと進めるぜと、ハスキー軍団&茶々萌コンビが勢いよく先行を始める。他の探索チームも、荷物を背負って四方八方へと散らばり始める。

 その姿は、探索者と言うより登山者の群れに見えるのは仕方のない事か。護人としても、気分的には似たような感じ。雪山登山など、ほぼ経験が無いのに本当に厄介なダンジョンだ。


 それでもハスキー達の適応力は、まず1つ光明には違いない。それに対して、子供達の元気がいつまで続くのかはかなり未知数で心配。

 姫香の言う通り、疲労が見えて来たらルルンバちゃんに騎乗して運んで貰うのが良いだろう。今回は小型化した機体なので、運搬力に関しては少々心許(こころもと)ないが仕方がない。


 その代わり、いざと言う時はドローンを飛ばしてチェックポイントを捜すって手も使えそう。何かと便利なAIロボも、そう言う点では2つ目の光明とも。

 後は、このダンジョン特有の異質なエリアにぶつからないよう祈るのみ。




 紗良の地図の読解力はなかなかのモノで、等高線やら規定ルートやらはバッチリ把握済みみたい。そしてまず最初に出現したのは、『立烏帽子(たてえぼし)山 登山道入り口』の木製看板。

 なかなか大きくて立派で、ここから登山道がスタートするみたい。元の世界の登山ルートとは完全に別物らしく、そっちの地理勘は全く当てにならないと聞いている。


 どっちにしても、元からそんなモノは無い来栖家チームの面々は呑気な表情。そして先行するハスキー達も、何を捜せば良いか完全に把握しているようで頼りになる。

 既に敵は何種か出現していて、一行の行く手を立ち塞いで来ていた。そんな1層に出現するのは、雪兎とか雪狐とかまだまだ雑魚認定の連中ばかり。


 厄介なのはスノーゴーレムと言うか、そんな感じの待ち伏せタイプの敵である。積雪だと思って近付くと、突然動き出してこちらの窒息死を狙って来るのだ。

 或いは凍死なのかも、キンキンに冷えた連中の抱き付き攻撃は悪意しかない感じ。ツグミもそいつ等を完全に察知するのは、なかなか骨が折れるみたいで後衛も何度か襲われる始末。


 その次に厄介なのは、やはり積もった雪と山道だろうか。登山道と言っても整備されたルートは無く、しかもずっと上り坂ばかりなのだ。

 まだまだ急な坂は出て来ないけど、進むごとにどうなるかは不明である。それから音もなく滑空して来る、雪フクロウの隠密攻撃もかなりの脅威度。

 襲われそうになった紗良と香多奈は、直前まで気付かず仕舞い。


「わっ、ビックリしたっ……えっ、スノーマンじゃなくて、空から何か飛んで来たのっ? ミケさんが気付いてくれたんだ、ありがとうっ!

 叔父さん、正体はなんだったか分かる?」

「いや、何か白い飛行物体だとしか分からなかったな……ひょっとしてフクロウ型のモンスターかもな、羽音が全くしなかったし」

「ああっ、森の忍者ですか……狩りの時には、ほとんど音を立てないそうですね。ミケちゃん、良く気付いたねぇ、ありがとう!」


 褒められたミケは、別にって表情でツンデレと言うかやや不機嫌そう。こんな寒いダンジョンを探索するなんて、聞いてないぞとお怒りなのかも。

 ミケさんにもカイロ石あげようかと、末妹はその不機嫌な様子にカイロと言うか賄賂わいろの提案を行う。本人はプイっと横を向いて、そんなモノ必要無いわとのイケず振り。


 ミケはお年寄り扱いされるのが嫌いで、服やかぶり物を着せられると爪を立てて反抗するのだ。ミケランジェロの名に相応しく、彼女の中の美的センスに抵触するらしい。

 とにかく不意の襲撃に、一行が肝を冷やしたのは本当。さすがA級ダンジョンだねと、気を引き締め直して再出発を図る来栖家チームである。


 それよりそろそろ1キロ進んだかなと、紗良がチームの面々に注意喚起を飛ばし始めた。要するに、最初のチェックポイントが近くにある筈との発言みたい。

 護人がそれを聞いて、チェックポイントを捜すぞとチームに号令をかける。その合図に、ハスキー達を含めた全員が自分が見つけてやると張り切り始める。

 待ち伏せタイプの敵もいるのに、この騒がしさはやはり来栖家チームの持ち味か。





 ――そして最初のポイントを発見したのは、リーダー犬のレイジーだった。







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