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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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“アビス”探索にギルドで挑みに掛かる件



 日程を詰め込み過ぎな気もするけど、今日は朝から3日連続のダンジョン探索の予定のギルド『日馬割』の面々である。しかも“アビス”は、メインと言うか本番の探索と言って差し支えの無い場所。

 そこでリングとコインを大量に入手して、西広島と尾道の行き来をもっと楽にするのが第一目的である。それが出来れば、ギルドはもっと発展する筈。


 そんな目標をかかげて、まずは来栖家のキャンピングカーに全員が乗車。それから一行は、尾道の“千光寺公園ダンジョン”へと移動を果たす。

 そこはこの近辺で、唯一の入り口がゲートタイプのダンジョンなのだ。そこをワープ転移先の1つに登録して、それから“アビス”へと転移装置で移動する予定。


 そうすれば、帰りは安泰だし今後の尾道旅行はこのゲートから来れば良い。もっとも、キャンピングカーと言うベース基地も欲しいので、そこは考え処ではある。

 時間の短縮に関して言えば、ワープ転移での移動が圧倒的に早いのは当然の事。後は陽菜ひなかみっちゃんに、車で迎えに来て貰えば尾道での行動は可能となる訳だ。


 ただ、どちらかと言えば陽菜とみっちゃんが来栖家の敷地へと遊びに来る機会の方が増えそう。ついでに夕方の特訓に参加とか、ギルドでの交流方法は色々ある。

 そんな訳で、今回もチームを2つに分けての周回が良いかなとの護人の言葉に。宝の地図の回収に行かないんだと、香多奈はちょっぴり残念そう。


 それでも、尾道のギルド仲間が毎月遊びに来てくれるのは楽しいと思ったのか。頑張って交換品をゲットしようと、気持ちを切り替えて盛り上がっている。

 他のメンバーも朝から盛り上がっていて、再度の“アビス”探索にヤル気は充分。女子チームも以前に挑戦した事のあるダンジョンなので、既に勝手は分かっている。

 今回もガッツリ儲けるぞと、全員の意気はかなり高い。


「ザジ師匠と探索した時の事を思い出すな、あの時の教えはその後も随分と役に立ってくれた。今回はどうチーム分けするんだ、護人ギルマス?

 2チームに分けた方が、リングとコインの回収効率は断然いいから賛成だ」

「そうだね、今回も女子チームで活動させて貰おうか? ただし、茶々丸はヤンチャ過ぎて、うちのチームでは扱いづらいかなぁ?

 萌と、それから怜央奈れおなの護衛にムームーちゃんを貸して欲しいかな」

「ふむっ、それで構わないなら……こっちの後衛の護りは、俺とルルンバちゃんで充分だからね。ムームーちゃんなら《心話》で会話も可能だし、確かに茶々丸よりはいいかもな。

 後の問題は、挑戦する階層なんだが……」


 それに関しては、会議は紛糾してなかなか意見がまとまらず。護人は人数の少ない女子チームには、6層あたりから挑戦して欲しいそうなのだけど。

 ワープ登録している先は、16層なので10層分下がるには“アビスリング”が2個必要になって来る。それを嫌って、その層から挑むよと強気な姫香たちである。


 確かに前回も、女子チームで16層から挑んだ実績はあるとは言うモノの。その時のメンバーには、陽菜たちの他にザジと土屋女史と柊木が混じっていたのだ。

 それ抜きで同じく16層からとなると、かなり荷が重いのではと思ってしまう心配性の護人だったり。ただし妖精ちゃんは、この“アビス”の難易度は50層まではそう変わりはないゾと以前に言っていた記憶がある。


 とは言え、このダンジョンには水属性の厄介なエリアも存在して、全く気が抜けないのも確か。水耐性の魔法アイテムこそ揃えて来たが、それで万全かと問われたら疑問は残る。

 それでも結局、女子チームの熱意にほだされて2チーム揃っての16層からの突入にオッケーを出す護人であった。その辺は、何と言うか強くダメ出し出来ない性格がモロに出た感じ。


 そんな流れで、結局は2チーム同時に16層からの攻略となった次第。くれぐれも無理はしないようにと、護人は何度も姫香に言い含めての嘆願モード。

 任せておいてよとの、少女の根拠のない自信を末妹が毎度のようにツッコミつつ。前回の反省を元に、チーム分けされた女子チームは元気に頑張るぞと気勢を上げている。



 そうして“千光寺公園ダンジョン”の入り口ゲートを装置に設定後、ワープゲートを起動させる紗良。それで出来たゲート内に、次々と飛び込むギルド『日馬割』のメンバー達である。

 そして出現先の“アビス”の雰囲気に、瞬間的に身を縮める一同だったり。いきなり異界の空気に触れて、体が思わず拒否反応を示しているのかも。


 この“アビス”だが、来栖家チームの面々は3度目の挑戦となる。そして女子組の面々は、ゴールデンウイーク以来2度目の挑戦と言う事に。

 案外と時間は経ってない気もするが、メンバーは大幅に変わっている。あの時はメダルで魔法の鞄を交換に至ったのだが、今回は来栖家から予備の鞄までプレゼントして貰った。


 今回は、リング&コインの回収優先は一緒だが、目的はズバリ70枚で交換のワープ装置である。これを尾道チームで確保して、月に1度は来栖家に遊びに行けるようにする。

 来栖家チームで得たメダルも、今回はその目標に寄付する予定。


「2チームで回れば、メダル70枚は行けそうな気はするけど……さっき自販機を確認したら、コインとリングの交換レートが2:1になってたんだよね。

 だから自販機のお金として使えるコインの価値は上がったけど、ワープ用のエネルギーのリングは下がった感じ?

 要するに、高い交換品をゲットするの、難しくなったかも」

「そうなんだ、最初はサービス期間とかだったのかな? まぁ、どっちみちリングも移動エネルギー用にストックしとかなきゃだからねぇ。

 頑張って2チームで、コインだけで70枚を目指しましょ!」


 紗良の言葉に、女子チームは張り切ってお~っと拳を振り上げる仕草。その辺の結束力は素晴らしく、こんな仲良しギルドも珍しいかなと陽菜の呟き。

 彼女はあちこち、即席チームを組んでの探索を多くこなして来ている経歴がある。従って、他のチームやギルドの内情も良く知っているみたい。


 そもそも探索者は、同一チームで活動したがるので陽菜とみっちゃんもチーム編成は毎回苦労している。来栖家チームのように、戦力がこんな多いのも珍しい部類に入るかも?

 それはともかく、護人の言質げんちも貰ったし、突入する扉を選びに掛かる女子チームの面々。最後に紗良から、水耐性の装備と巻貝の通信機、それからお弁当の所持チェックをされてそれも見事にクリアした。

 そうして2チームでの“アビス”攻略は、いざ始まりを迎えたのだった。




「さあっ、みんな……護人さんに16層からの攻略を認めて貰って、私達の実力じゃやっぱり駄目でしたじゃ話にならないからねっ!

 頑張って向こうのペースに合わせて、ここから10層クリアするよっ!」

「もちろんだ、姫香……前回もザジ師匠と一緒に、ほぼ同じルートを攻略したからな。その頃から私たちも成長してるし、水属性の装備も貸して貰えてるからな。

 これで駄目でしたじゃ、話にならないから意地でも10層攻略するぞ」

「そうだねっ、みんなで力を合わせて頑張ろうっ! えっと、ムームーちゃんも一緒に頑張ろうね?」


 怜央奈の肩にかつがれているムームーちゃんは、よく知らないお姉さんの集団に人見知り中。どうやら茶々丸と交替のこの作戦、先行きはやや不安かも?

 まぁ、萌が働いてくれれば問題は無いのだし、ムームーちゃんに求められるのは怜央奈の警護である。その位なら平気でしょと、姫香は飽くまで楽観的。


 怜央奈にしても、紗良姉さんのミケを肩に乗せての探索シーンにほのかな憧れがあったようで。こんな軟体生物でも、ちょっと近付けたかなぁとか思っているみたい。

 軟体幼児の素晴らしい点は、その吸引力で乗り手が少々派手に動いても振り落とされない所である。魔法にしても炎系と水系が使えるし、何と既にレベルも15もある。


 これは虹色の果実を優先的に食べさせて貰えた結果だけど、護人もその件については容認していた。探索に連れて行くのなら、それなりの強さはつけてあげた方が良いとの配慮である。

 そんな今回の、見知らぬ女子チームとの探索はどうなる事やら?


 この辺の貸し出し要員だが、姫香にしても苦肉の策ではある。まずミケは、人見知りするから絶対にダメ。ルルンバちゃんは強力ユニットだけど、向こうのチームから探知能力持ちを2名も引き抜くのは許されない。

 ツグミがこっちに来ているだけで、向こうも罠や探知系の作業に相当支障をきたしている筈。紗良や香多奈がいるので、後衛の護りも向こうはとっても大事。


 姫香とツグミが抜けた穴で、護人かルルンバちゃんのどちらかが前衛に出張る必要も出て来るだろう。そう思うと、借りるならムームーちゃん一択と思われる。

 それがまさか、この軟体幼児も人見知りを発動するとは人生ってままならない。ただまぁ、ミケやハスキー達のような積極的な拒絶ではないので、探索中に上手く馴染んてくれる可能性も。


 特に怜央奈は、性格が柔らかくて誰からも愛される人柄である。ムームーちゃんとも、短時間で打ち解けてくれるんじゃないかとは姫香の甘い予測。

 後衛陣の不安要素はそんな感じだけど、前衛陣に関しては戦力は揃っている。ツグミがいるので、罠系の仕掛けも前もって知らせてくれるだろう。

 その点では、相棒に絶大な信頼を寄せる姫香である。


「そうだね、ツグミちゃんの探知能力は凄いって、この前の探索でもハッキリ分かったし。ウチらは信頼して、後ろをついて行けばオッケーだね!」

「そうだな……しかも上手い事、水エリアじゃない遺跡エリアを引けたしな。難易度に関してはまだ分からないけど、頑張って攻略して行こう」

「オッケー、それじゃあ最初はツグミと陽菜と私が前衛するね。中衛がみっちゃんと萌で、後衛が怜央奈とムームーちゃんね。

 お互いに、前後のサポートには気を付けて行こう!」


 了解と、元気な返答が各所から上がって行く。前回からの“水軍城ダンジョン”と“ともの浦ダンジョン”の攻略を通じて、このチームの練度は随分上がって来ているよう。

 姫香のリーダー振りも、随分と様になっていて心配は無さげ。それこそ前回のレア種と遭遇みたいな、イレギュラーが起きない限りは10層くらいは勢いで到達出来そう。

 そんな感じで、まずまずの船出をした女子チームなのであった――。




 一方の護人チームは、適当に香多奈が選んだ扉を入って、いきなり途方に暮れていた。つまりは外れと言うか、難易度の高い水エリアが目の前に広がっていたのだ。

 それの対策は一応して来たけど、動きが妨げられるのは致し方が無い。香多奈が水の精霊を呼ぼうかと問うて来るが、少女のMP問題もあるし悩ましい所。


 ハスキー達も、肝心の鼻が利かなくなるし思い切り嫌そうだ。特にレイジーは、炎の召喚技まで不可能になってしまった。これは物凄い痛手で、さて探査役は誰にやって貰うべき?

 目の前に広がる水エリアは海底仕様で、幸い日の光はあわくはあるけど届いていて助かった。地面は砂地で、ルルンバちゃんの床探知能力は果たして有効かどうか不明である。


 紗良も『遠見』の装備品付与のスキルを発動させて、不意打ちの事前発見に努めると言ってくれた。護人も《心眼》を使用して、何とか今ある対応力でこの探索を乗り切るべし。

 本当に、ツグミの能力と献身振りは頭の下がる思いで、今更ながら有り難味が良く分かる。姫香の存在も同様で、いなくなって初めて分かる事は本当に色々あったりして。


 それを体感する意味でも、このギルド合同探索は企画して良かったのかも。そんな事より、何とか配列を決めて探索をスタートさせないと。

 レイジーはこの際、完全アタッカーに戻って貰って、コロ助と茶々丸とで前衛に配置するとして。肝心の探査役だけど、取り敢えず護人とルルンバちゃんで交替で回す事に。

 取り敢えず、いない役目は出来る者で回して行くしかない。





 ――難易度の高い水エリアだが、頑張ってチームで攻略するべし。







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