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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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風光明媚な“鞆の浦ダンジョン”を攻略する件



 去年潜った尾道の“猫の細道ダンジョン”も、町中の探索みたいで面白かったけれど。この“(とも)の浦ダンジョン”も似たような感じで、とっても風光明媚で観光気分を満喫するにはピッタリ。

 そんな説明を聞いて興奮する香多奈だが、実際に探索するとなると明らかに人数が多過ぎる。前衛にしてもそうで、これでは最後まで戦闘に参加出来ない人も出て来そう。


 そんな訳で突入前に話し合う面々、ハスキー達に待機を命じれば話は早いのだけれど。そうすると向こうも、ストレスが溜まって不満に思うかも知れない。

 いや、明らかに話し合ってる最中にも、そんなご無体なって表情でこちらに抗議して来るハスキー達。茶々丸などは、まず命令無視して前衛に出張って来るだろう。


 完全に、ペット達の仕事を奪うのも可哀想と言う意見も香多奈から出て。結局は、女子チームと1層ごとに交替で前衛をする流れに。

 それは良いねと張り切り始める陽菜ひなとみっちゃんは、負けないぞとハスキー達にライバル心を燃やしている。対するレイジー達は、仕事を与えられてとっても嬉し気である。


 そんな陣形決めで盛り上がる子供達を、奇妙な生き物を見る目で眺める宮藤と荒里だった。彼らは念の為、地元の協会からも助っ人と言う形で協力をつのる予定みたい。

 電話を入れて、暇をしている探索者をよこして貰うと護人に告げていたのを見ると。どうやら地元福山の協会は、完全に“あっち側”と言う訳では無いみたい。


「ああ、その辺はね……調査は万全で、福山の協会に闇企業の手が回っていないのは確認済みですよ。買収する気配も今の所は無いですね、何と言うか孤立した特殊部隊に絶対の自信を持っている感じなんですかね?

 そちらの育成に金を掛けて、他は特に政治的な買収を仕掛けたりはしてないようです」

「それはまぁ、こっちも地元の探索者を信頼出来て良かったね。まぁ、金で繋ぎ合わせた関係が続くのは、渡し続けている間だけろうし不経済だろうからね。

 政治的な駆け引きにまで巻き込まれず、良かったと言うべきなのかな?」


 そう返す護人だけど、宮藤は全く気楽に構えている様子は窺えず。どうやら『哭翼』と名乗る連中は、笑って済ませられるレベルの実力ではない模様。

 2人では心許ないから、宮藤も追加の人員を身銭を切って雇うつもりなのだろう。しかも最近はそのチームに混じって、異界の冒険者の姿も何度か確認されているそうな。


 それに対する情報も、揃い次第に共有してくれるそうな。確かに敵にムッターシャチーム級の冒険者が混じるとなると、洒落では済ま無さそう。

 どうも護人の、地元を荒して敵の動向を探る作戦は、そんな訳で歓迎は全くされなかったみたい。宮藤の表情からそれを読み取る護人だが、こっちだって待ちの状態を続けるのは精神安定上(よろ)しくない。


 それはいつ襲われるかと、ビクビクしながら敵の襲撃を待つ状態を指しているに他ならない。そんなのは御免だと護人は目で語りながら、宮藤に巻貝の通信機を手渡す。

 最短で4時には戻るよと、通達していざギルド『日馬割』は探索へ。ぞろぞろとまるで遠足の引率のような風景に、呆気にとられる宮藤と荒里である。

 それはペット達も含め、とってもお行儀の良い行列だった。




 そして大人数で突入した“鞆の浦ダンジョン”は、チームの半数が観光気分と言う。最初に探索任務を貰ったハスキー達は、ヤル気モードでいつものように先行している。

 このダンジョンはフィールド型とは言え、正規の道からは大きく離れられない仕様となっている。そして古き良き時代の街並みの小路は、海に沿って続いている。


 ここはC級ランクで、それほど強い敵も出て来ないとの話。入る前に測った魔素濃度も、それほど高くなくてまずは安心である。

 何しろ女子チームは、昨日レア種との遭遇なんてアクシデントを引いたばかり。そんなイレギュラーに連続で出遭うのは、勘弁して欲しいと思うのは当然だ。


 そんな半分は観光目的で組んだこの“鞆の浦ダンジョン”だが、福山市との因縁で話は妙な方向へ。妙な緊張感を感じるのは、或いはリーダーの護人だけかも知れない。

 具体的には長居は不味いかなと、チームでそんな共通認識での今日のギルド活動である。そんな訳で、少し速度上げて行くよとのリーダーの激励が飛ぶ。


 それには~いと、元気に返事をする子供たち。ハスキーもその辺は心得たモノで、いつもの調子で一行を先導してくれる。つまり、後衛陣には割とハイペースな進行具合で、敵を倒して進んで行くその手腕はさすが。

 出て来る敵は、水属性のサハギン獣人やトビウオ型の奴等がボチボチ。強さもC級に準ずる感じで、ハスキー達にとっては敵ではない。


 ダンジョンの本道は、情緒ある街並みに沿って続いていて支道もたまにあるようだ。チームの斥候役を真面目にこなすツグミと、前衛に出て活き活きと敵を倒すコロ助。

 茶々萌コンビもそれをお手伝いして、レイジーが総指揮をとっている感じだろうか。この辺は適材適所、すっかり慣れた探索行である。


 後衛陣も、古風な街並みを見学しながらハスキー達に続いて進んで行く。賑やかなのは仕方ないけど、全員がしっかり周囲に気を配っているのは偉いかも。

 地元の“猫の細道ダンジョン”に慣れている陽菜は、支道もチェックしなきゃと助言を飛ばしている。そしてその役目を、自らみっちゃんと共に買って出た。

 そして宣言通り、支道を見付けては宝物が無いかの確認を勤勉にになう。


「真面目だね、陽菜にみっちゃん……でもこんな1層目から、さすがに宝箱とか置かれてないでしょ?

 さっきまでは、観光気分って言ってた癖に」

「まぁな、でもハスキー達があんなに真面目なんだ。こっちも探索中は気を抜かず、全力で挑むべきじゃないか、姫香?

 ザジ師匠に、以前私たちはそう教わったからな」

「そうっスね、明日は“アビス”探索も控えているし……気を抜いたまま挑むのは、さすがに失礼ってもんスよ! 私達も、一応はギルド『日馬割』のメンバーですからね。

 それなりの実力には達してないと、師匠に怒られますからっ!」


 そんな事を話しながら確認する支道の突き当りは、案の定のゴミ捨て場とか開かないどこかのお宅の玄関とかばかり。それでも気配察知スキル張りの警戒をしながら、探索を進める陽菜とみっちゃんである。

 前衛能力は昨日見て貰ったので、今度は探索者としての力量を披露しようって思いなのかも。ハスキー達に張り合っている感があるのが、何となく微笑ましい。


 それでも来栖家チームのハスキー軍団と言えば、今やA級チームの代名詞でもある。それに劣らぬ力量を示す事が出来れば、それは立派な讃辞に他ならない。

 そんな事をしていたら、いつの間にか第1層の探索は終了していた。ハスキー達は見事に次の層への階段を捜し当て、後衛陣が追い付くのを待ってくれていた。


 この層は15分も掛からず踏破をして、宝箱の類いは1つも無しの結果に。そして次の2層目は、陽菜とみっちゃんが前衛を担う番となった。

 ハスキー達は支道の探索ねと、仕切り役は相変わらず姫香の模様。そしてついて行くだけの立場の後衛は、強い敵が出て来るまでは暇を持て余しそう。


「ミケさんってば、いつもこんな気分だったのかな……本当にする事もないや、応援すら必要無いままに前衛のみんなはサクサク進んで行くしさ。

 これはちょっと暇すぎだよねぇ、叔父さんっ!」

「まぁ、そうだな……でもまぁ、後衛は暇なくらいが丁度いいんだよ」

「香多奈ちゃん、暇なら動画でも噂の《精霊召喚》見せてよっ! 最近は随分、呼び出せる成功率も上がって来たんでしょ?

 スゴイよね、多分広島で最年少探索者だよっ!」

「ええっ、ウチの地元には双子とかもいるから最年少って言われてもなぁ……でもまぁリクエスト受けたし、ちょっとやってみるね」


 そんな感じで、暇な後衛陣はお互いのスキルの見せ合いっこを始める始末。まずは怜央奈れおなに促された香多奈が、杖を手に《精霊召喚》で光の精霊を呼び出しに掛かる。

 すっかりマブダチ認定された末妹の求めに応じて、いつもの光の精霊がピヨッと出て来てくれた。ヤッホーとか挨拶し合って、今回も感度は良好な様子。


 それを感心しながら眺める怜央奈、うらやましいなぁと本音が口から洩れている。その間にも、前衛陣は順調に先行して敵の排除に余念がない。

 それに遅れずついて行く後衛陣も、護人が何とかぎょして慌しい。たまに大ツバメとか、大カモメ型のモンスターも飛来して来るので、決して油断は出来ないのだ。


 大抵は護人かルルンバちゃんが撃ち落とすけど、今回は光の精霊が真っ先に反応してくれた。その指差す方向へと、怜央奈は躊躇ためらわずに新魔法スキルの『光弾』を撃ち込む。

 それは見事に多段ヒットして、光の精霊が近くにいたためか威力も上々。思わず舞い上がって喜ぶ怜央奈に、香多奈も凄いじゃんと褒めそやしてみたり。

 何しろ過去の記憶では、怜央奈に魔法使いの印象など皆無だったのだ。


 光の精霊も満足そう、花を持たせてあげたのよみたいな表情はアレだけど。この子も案外、呼び出した召喚主を含めて人間を下に見ている腹黒さんなのかも。

 それはともかくとして、後衛も働き始めると殲滅速度は否応なしに上昇してしまう。そんな訳で、2層目もたった15分で階段を見付けてクリアの運びに。


「やっぱり、随分とハイペースになっちゃうね……まぁ、この人数で手古摺てこずる方が変ではあるけど。とにかくお昼まで、行ける所まで進もうか。

 護人さん、そんな感じでいいかな?」

「構わないよ、こっちも半分は観光気分だから。もう少しペースを落としても良いくらいだよ、まぁハスキー達はいつものペースで攻略しちゃうだろうけど」

「そうだね、支道の潰しもメッチャ速かったし……今回は突き当りにも敵が潜んでたのかな、ツグミが魔石を拾って来たみたい」


 どうやら支道には、敵が待ち伏せている王道パターンもあるみたい。だからと言って、このペースが乱れる事も無いだろう。

 雑魚しか出て来ない……と言うか、来栖家チームにとっては格下認定の“鞆の浦ダンジョン”ではある。古き良き街並みを散策している気分が味わえて、護人も気に入っている様子。


 そうして順調に3層の探索もスタート、そろそろ宝箱とか出て来ないかなぁと後衛陣は相変わらずかしましい。怜央奈やルルンバちゃんは、一応空からの襲撃に備えて監視を続行中。

 交替で前衛を担ったハスキー達は、相変わらずのペースで攻略を楽しんでいる。陽菜とみっちゃんは、何か無いかなと勤勉に支道のチェックを怠らない。


 結果、本道の敵はハスキー達が何事もなく全て撃破しての階段の確保となった。支道に関しては、待ち伏せの敵が2度程と待望の宝箱が1つと言う結果に。

 宝箱と言っても、突き当りの家の郵便受けに鑑定の書や木の実や魔玉が入っていただけ。何気なくみっちゃんが牛乳瓶入れを開けると、そこにはポーション類も入っていた。


 抜かりなくそれらを発見出来て、女子チームの気合いは爆上がり中。一応突き当りの玄関扉もチェックするも、案の定そこが開く事は無かった。

 それでもハスキー達には負けないと、妙なライバル意識で燃え上がる陽菜である。みっちゃんも同じく、師匠の教えでここまでたくましくなりましたと感極まっている。


 ザジとの探索は、どうやらこの2人に良い刺激を与えたようだ。次回までに、腕を磨いておけと言われた陽菜とみっちゃんは、大真面目にそれを遂行していたよう。

 その成果は、昨日探索に同伴した姫香にもバッチリ窺えた。





 ――これなら明日の本番アビスも、2チーム編成で充分かも?







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