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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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山の上の住人総出で夏キャンを楽しむ件



 異界への大遠征から帰宅後、来栖家はあっという間に通常の生活スタイルへ。家畜の世話や、田んぼや畑を抱える身としてはその辺は仕方が無い。

 香多奈や和香わか穂積ほづみの小学生組も、実は週に3日のゼミ生塾通いは行われていたりして。何しろ熊爺家の子供達は、夏休みも関係なく熱心に週3日通いを崩して無いのだ。


 自然と塾は開催されて、それなら皆も一緒にと午前中の涼しい時間は勉強に充てられる流れに。それが物凄く納得いかないけど、勉強熱心な熊爺家の子供達に文句を言う訳にも行かない。

 悶々(もんもん)とした日々を過ごす末妹だが、お陰で学力はついて行ってるようで何より。そもそもレイド作戦に同行して、1学期はズル休みも目立った身である。


 そこを突かれるととっても弱い香多奈、それでもやはりバランスは大事だよねと。これだけ勉強を頑張っているなら、ご褒美として遊びの計画も欲しいとの必死の家長へのおねだり攻撃。

 そんな訳で、夏休み後半の家族での尾道旅行の前に、お隣さん一家を巻き込んでの夏のキャンプ計画が立ち上がった。それを練る子供達は、ザジから良い場所があるよと聞き及んで嬉しそう。


 あの破天荒な猫娘が加わると、何だか突飛な事態を招きそうでちょっと怖い。その前にと、護人と子供達は精霊の苗2本の移植に踏み切ったのだった。

 こちらは妖精ちゃんの指導のもとに、上手く行く事を願いつつの作業である。とは言っても、苗をダンジョンの入り口に植え付けると言う、時間にして数分程度の簡単なお仕事。


 その後に、妖精ちゃんが何やら苗に言い聞かせていたのは見なかった事に。それがどんな効能を発揮するのか、てんで分からないままその場はお開きとなった。

 後は経過を見守るだけだが、駅前の苗は特に慎重さが必要ではある。聞くところによると、自警団員や協会の職員が1時間おきに見回りに訪れているそうだ。


「そんで、結局はどうなるのかなぁ……ちゃんと結果が出てくれると良いけど。そう言えば、駅前のダンジョンはもうコア破壊したんだっけ?」

「異世界チームと星羅チームが、新造の“闘技場ダンジョン”の方は潰したらしいよ。元の“駅前ダンジョン”は、深過ぎて放置状態だそうだけど」

「ウチの“裏庭ダンジョン”も、再起動の度にコアは破壊してるよね。でもやっぱり、家から見える範囲にダンジョンの入り口がある生活は嫌だよ。

 本当に、妖精ちゃんの作戦が上手く行ってくれるのを願うばかりだね」


 そんな事を話す子供達は、明日のキャンプ準備に忙しそう。どうやら今回は、ザジと星羅たちが大まかなキャンプ計画をくわだててくれる模様。

 来栖家チームや凛香チームは、今回はお招きされる立場で存分に出発から現地までを楽しめば良い。護人も途中で異世界の集落に寄ると聞いて、そちらの準備を進める事に。


 と言うのも、お盆過ぎの尾道旅行では、どうも“アビス”探索の計画が決まっているらしく。それなら水耐性の装備品を、追加でドワーフの親方に作って貰おうと思い立ったのだ。

 何しろ家には、水耐性の付いた素材が幾つか放置されている状態。それを使って、ペット達や尾道チームのアクセサリーを作ってあげたい。


 他にも家には『三又の長槍』など、水属性の装備品が結構転がっている。そちらの準備もこなしつつ、夏のお盆前キャンプの支度を進める山の上メンバー達。

 もちろんその主役は子供達だが、仕事に追われる大人にとっても良いバカンスになれば良い。そんな目論見もくろみは、もちろん計画するザジや星羅には毛ほども思い浮かんでなどいない。

 とにかく、自分達が楽しむぞって思いが百パーセント?




 そんな感じで開催された、山の上メンバーが全員参加の異世界キャンプである。取り敢えず、朝の通常業務の家畜の世話などは全て済ませた朝の8時過ぎ。

 朝食は皆で集まって、来栖家の庭先で食べると言う賑やかな形式に。しぼりたての牛乳やら、回収したての卵やらの何とも豪華な朝食は、仕事を頑張った甲斐があったと言うモノ。


 凛香りんかや隼人たちも、今回のお出掛けにはワクワクしているようで何よりだ。反対にムッターシャやリリアラは引率気分で、若い子たちの面倒を見る保護者のような眼差し。

 遥かに年上の小島博士が、子供のようにはしゃいでいるのはちょっとアレだけど。毎度の事なので、その処理は美登利みどりや大地に任せる事に。


 今回は、全員で“鼠ダンジョン”に潜って異界に出掛けるとの通達に。やや緊張している面々だけど、ザジや星羅せいらは張り切って一行を引率する気構え。

 まぁ、戦闘に関してはズブガジやルルンバちゃんに任せておけば心配はない。ペット達もいるし、人間は探索着に着替えないでも大丈夫な気もする。


 ザジの「道のりは安全だから気にするニャ」発言はともかく、この大人数はちょっと気掛かりである。子供が迷子になる心配とか、思わずしてしまう大人たち。

 そんな訳で、子供達には巻貝の通信機を渡して単独行動をしないように注意しておく。万一迷っても、全員で迷ってくれれば何とかなるって寸法だ。

 そしてコロ助と茶々丸にも、べったり護衛についておくように厳命する。


 これで安全かはともかくとして、周囲に大人も大勢いるから平気だと思いたい。そんな感じで山の上の住人全員でのお出掛けは、実は初めての試みかも。

 留守番に関しては、何と岩国の『シャドウ』チームが買って出てくれた。実はあの駅前騒動の一件以来、岩国チームは町中に例の闇企業の影が無いかを熱心に偵察してくれており。


 来栖家の身辺警護も、割と熱心に行ってくれているのだ。あの会合での協力しますの言葉は、嘘偽うそいつわりのない事を身をもって知らしめてくれるその態度は称賛に値する。

 護人にしても、感謝しか無くてキャンプに誘えないのが心苦しい限りである。


「いえいえ、隣家&家族サービスは大事ですよ、護人さん。ついでに自身も、存分に楽しんで来てください。こちらは留守中に、変な連中が来ないかしっかり見張っておきますから。

 安心して、キャンプで羽を伸ばして来て下さいね」

「ありがとうね、三笠さん……鬼島さんに朱里あかりさんも、留守番お願いします。あと、金髪の人もついでにお仕事頑張ってね。

 家畜の世話もちゃんとお願い、今回のキャンプはお泊りだから」

「明日のお昼過ぎには戻って来るね、食べ物は冷蔵庫の中身何でも使っていいから。朱里ちゃんが料理出来るんだっけ、とれたての牛乳も飲んで良いからねっ!」


 そんな来栖家の子供達の言葉に、『シャドウ』の面々は笑顔で手を振って送り出す素振り。ただし金髪赤眼鏡の笹野は、やや表情が引きっていた。

 とにかく大人数のメンバー達は、賑やかにダンジョンの入り口へと歩いて行く。知らない人が見たら、まるで集団自殺じゃないかと思う所業かも。


 そこはズブガジとルルンバちゃんが先頭に立っての、ハスキー軍団のお株を奪うようなエスコート振り。やはり動物(?)は群れを成すと、行動力も積極的になるのかも。

 先頭を取られたハスキー達だが、今回は遊びの旅行だとさとされて集団の護衛に尽力する事にしたようだ。子供の護衛を言い渡されたコロ助と茶々丸も、その役割を頑張っている。


 そうして総勢20名以上の一団は、ワイワイと騒ぎながら“鼠ダンジョン”へ。そこから3層のゲートを潜って、ほぼ全員が初の隠れ里へとお邪魔した。

 興奮する小島博士だが、その相手は美登利と大地に任せて来栖家はドワーフ親方工房へとお邪魔する。好奇心からついて来た凛香チームの面々は、初ドワーフとの対面にビックリ仰天。


 そして武器や防具の工房に、興味津々であちこち一緒に見て回っている。熱気のもる工房内だが、そんな事も全く気にならないようだ。

 そうして護人の水耐性の装備品を作って欲しいとの依頼も、スンナリ受けて貰えてまずは一安心。こうなると、すっかりお馴染みさんと化してしまった来栖家である。


「凄いな、この工房……俺たちも、何か専用の装備作って貰いたくなっちゃうな。護人のおっちゃん、ここのお金って何を使えばいいんだ?」

「魔石がお金代わりになるし、宝石類を売ってお金にも出来るよ。武器や防具のメンテもして貰えるし、親方の腕前はお墨付きだよ。

 何なら、持ってる武器を預けてみたらどうだい、隼人?」


 通訳とお金の代払いを買って出る護人に、隼人も思わず依頼をする模様。出会い当初の頃には、大人なんて信頼しない的な感情の強かった隼人だが、今では護人を兄のようにしたっている。

 農業に関しては、すっかり師弟関係が出来上がっている2人である。来栖家の子供は女性ばかりなので、そんな要因も関わっているのかも知れない。


 そんな訳で、ドワーフ親方に『海鉱石のインゴット』と『水蛇の鱗』を“アビス”探索用に。それから“喰らうモノ”ダンジョンで回収した『腐敗竜の爪』と『腐敗竜の骨』を、隼人の装備の強化用に預ける。

 その前金代わりにと、“鬼の報酬ダンジョン”で得たチーズの塊やワイン瓶や香辛料を置いて行く事に。これはお弟子さん達にも喜ばれて、向こうの作業もはかどりそう。


 とにかくそんな寄り道を30分少々、異世界チームも集落で色々と買い物を楽しんでいたようだ。それから換金とか色々、それには星羅チームがついて回っていたみたい。

 それからザジが再集合を掛けて、これからとっておきのポイントに出発するニャと号令を発した。今日と明日を過ごすキャンプ場に、余程自信がある様子である。


 そして隠れ里の端っこから、再び全員でのゲート移動を果たす。そこから色々とあって、たっぷり30分以上は異界の長閑な川辺の原っぱを歩いただろうか。

 やがて高い崖に突き当たり、そこは見事なふちと緑のコントラストが。


「おおっ、崖があって滝があって淵では泳げそうだし、キャンプにはとてもいい場所だな、ザジ。近くに小さな森もあるし、適度に木陰もあって過ごしやすそうだ」

「本当っ、凄く良い景色だねっ……あそこの突き出た岩から飛び込みも出来そう、あの滝壺の辺りはどれくらい水深があるのかなぁ?」

「飛び込んでも怪我はしない程度には深さはあるぞ……ここは周囲に強いモンスターもいないし、1泊するには悪くはない場所には違いないな。

 ただまぁ、この人数ではさすがに目立ち過ぎるだろうけど」


 確かにムッターシャの言う通り、人数が増えればどうしても目立つのは仕方がない。そこはペット達も警護してくれるし、大丈夫だと思いたいけど。心配性な護人は、自身も一応見回りはするつもり。

 他の面々に関しては、早速泳ごうとする者やベースキャンプを決めに掛かる者など様々。案内役のザジも、役目を果たして既にお遊びモード全開である。


 そんな訳で猫娘は、香多奈や和香や穂積を従えて、速攻で水遊びへと向かって行ってしまった。理性のある大人は、それを尻目にベースキャンプを作り始めている。

 紗良も昼食の準備をと、いつもの美登利や小鳩と楽しくお喋りをしながら働いている。彼女達にとっては、それもいこいの時間なのかも。


 ゼミ生達も、各々に仕事を見付けてキャンプ仕事を手伝っている。小島博士だけは、早々に椅子を用意して貰って休憩モードなのは通常通り。

 すっかり見慣れた面々は、その辺はいつも通りと気にもかけていない。人手は充分に足りているし、戦力となり得ない者は大人しくしておいて貰う方が有り難い。


 その点、勤勉さではピカ一のハスキー達は、周辺に脅威が潜んでないかの見回りに出掛けた様子。当然のように茶々丸と萌もついて行って、護人としては本当に助かる思い。

 何しろ、今回のレジャー計画の立案者としての立場もある。出来れば怪我人もなく、厄介事も起こさずにこの1泊2日のキャンプを終わらせたい。


 異世界チームもいるので、滅多な事は起きないだろうし、もっと言えば紗良に星羅と言う超強力な治療役もいる。考えてみれば、こんなメンバーが山の上に集まったのは奇跡に近いかも。

 そして一緒にレジャーに興じる仲になったなどと、誰が信じようか。





 ――まぁ、誰も信じなくても、事実は頑としてここにあるのだけれど。







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