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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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何とか仕掛けを理解して次の層を目指す件



「本当に酷い仕掛けだよね、急に重さが変わったらそりゃ腰にも悪いよっ! 若くってもギックリ腰にはなるし、1度なると完治はしないんだから。

 本当に体調には気をつけてよね、護人さんはウチの大黒柱なんだから」

「いや、こっちも自分の身体は大切にしたいのは山々なんだがな……あんな仕掛けは、予測しておかないと本当に腰をやっちゃうよ」

「叔父さんが怪我しても、紗良お姉ちゃんが治してくれるから平気でしょ。それよりこの宝箱、罠が設置してあったみたいだねっ。

 ルルンバちゃんが解除してくれたけど、意地悪だなぁ」


 確かに出現型の宝箱に、罠が設置してあるとは意地悪かも。それでも中身に関しては、さすがの末妹も文句を言えないレベルだった。中級エリクサーに始まって、強化の巻物や魔結晶(中)が7個とか。

 他にも鑑定の書や木の実や、魔玉(風)など定番のアイテムに加えて。鉄アレイやハンドグリップ、トレーニングチューブなどが結構な量入っていた。


 金目の物も少々、古い金貨や宝石なども小さな袋にまとまって入っていた。タオルや運動用の衣類も割と入っていて、まるで汗を掻くのをうながされているかのよう。

 それらを全て回収して、来栖家チームは奥の扉のチェックへと向かう。何かの拍子で再び扉が閉まったら嫌なので、確保の意味合いを兼ねての移動である。


 結局、何事もなく奥の小部屋で2層へのゲートと対面を果たす。そこでMP回復の休憩をしてから、皆で揃って次の層へと向かう流れに。

 色々あって1層に1時間近く掛かったのは、最近では無かったかも? 文句を並べ立てる子供達だけど、まぁ近場の敷地内ダンジョンだしそれほど深刻ではない。


 あまり時間が掛かるようなら、扉1つか2つだけも全然アリだ。紗良は相変わらず、お弁当を用意してお昼の対応もバッチリ。

 根を詰めての探索も、本番を控えているチームにはマイナスだ。その辺は、リーダーの護人がしっかりと見極めて行く所存である。



 そんな感じで、苦労して辿り着いた第2層目である。その見た目だが、1層と同じ構造みたい。つまりは体育館みたいな広大なスペースに、床から細長く伸びた装置が幾つか存在する感じ。

 器具は棒状の上の部分に、レバーみたいなのが付いているだけのシンプルさ。触れば何かが起きるんだよねと、一行はその取り扱いには慎重だ。


 ハスキー達に関しては、早く敵を頂戴とそのヤル気は一向に衰えていない。いつの間にか装置を作動させる役になった姫香は、どれから行こうかと家族に相談する。

 取り敢えず近くから行こうよと、香多奈が進行の音頭を取るのもいつもの事。それじゃあこれからねと、姫香が触った装置は例のモンスター召喚装置だった。


 出て来たカニ型パペットは、割と強そうだけどハスキー達は構わずに襲い掛かって行く。10体余り湧いた敵を相手に、勇ましく武器やスキルで立ち向かっての派手な大立ち回り。

 結果、絡繰からくり仕立てのパペットを全て破壊しての完全勝利。途中から参戦した姫香やルルンバちゃんも、見せ場は充分あったし何となく満足気かも。


 そして転がっている魔石が小サイズなのに、やっぱりねと言う表情に。カニ型パペットの両手の鋏は、かなり凶悪で挟まれたら大変な事になっていた筈。

 甲羅タイプの外殻も硬くて、パペットの癖に動きもしなやかで倒すのも大変だった。そんな姫香の感想に、2層でこれは凄いスパルタだねぇと同意する末妹。

 そして見回すも、他にこのフロアの変化は全く無しと言う残念なお知らせ。


「仕方ないね、当たりが出るまで全部の装置を試して行くしか……比較的楽そうな仕掛けは、やっぱりロープ登攀くらいかな?

 あれが出たら良いけど、扉が開いたのは別の仕掛けだったっけ?」

「そうだな、鉄球の仕掛けをズルなしでクリアしたタイミングだったかな? アレも微妙だな、確実にそれがクリアの条件だって確証も無かったわけだから。

 案外別の条件だったのかも、その辺も試しながら行こうか」

「オッケー、どっちみち色々と試して行かなきゃなんでしょ? ここは宝箱も結構用意されてるし、どんどん装置を作動させて行こうよ、お姉ちゃんっ!」


 飽くまで方針のブレない香多奈は、そんな感じで連続戦闘もいとわない構え。ムームーちゃんと戦闘ドールの経験値稼ぎはスッパリと諦め、今回は金策に絞るその潔さ。

 そんな末妹の気迫に押されて、姫香が2つ目の装置に触れる。すると家族の目の前に、見慣れない運動器具が出現した。


 ベルトコンベアかなと、その形状を眺めて首を傾げる姫香に対して。それを知ってた護人が、これはルームランナーと言う室内走行器具だねと子供達に説明する。

 それって何が楽しいのと、室内でマラソンを行う事に懐疑的な姫香と香多奈の問いに。マラソンは外を走ればタダじゃんと、姉妹揃って理解不能の顔付きである。


「でもほらっ、雨とか降った時用のモノなのかも知れないし……完全に無駄と言う訳じゃ無いでしょ、多分だけど。

 それよりこれ、どうすればクリアなんでしょうね?」

「取り敢えず、動かしてみないと分からないな。誰か乗って……いやいや、茶々丸は駄目だぞ?」


 油断も隙も無い仔ヤギの横入りに、護人は慌ててそれを制止しようとする。しかし時既に遅しで、平らな板のような器具に茶々丸が乗っかるのは造作もない事だった。

 そして駆け出すヤン茶々丸だが、それは特に自分の意思では無かった。乗っかった板が急に動き出したので、仔ヤギは仕方なく足を動かしただけ。


 そして始まる、終わりのない疾走と周囲からの激励と叱咤しったの嵐。茶々丸が乗った途端に、隣のパネルに走破割合が表示されたのだ。その結果、この仕掛けのクリア条件を皆が知る事に。

 つまりはこの装置を休みなく走り続け、この割合を100にすれば良いらしい。失敗したらやり直しなのか、それともペナルティがあるのかは不明。

 周囲からは、失敗したら承知しないからねとの厳しいお言葉が。


「茶々丸っ、作動させたからにはしっかり完走しなさいよっ! 今が23%だから、あと4倍の時間を走れば良いだけだからねっ!」

「ほんと、おバカなお調子者ね……ハスキー達に任せれば良かったのに、自ら苦境に立つとは哀れな子だわ。

 茶々丸っ、失敗したらご飯抜きだからねっ!」


 哀れな仔ヤギは、半泣きで勝手に動く板切れの上を10分余り疾走し続ける。そして見事100%を達成して、ようやくの事お役御免に。

 紗良には良くやったねと褒めて貰えたが、哀愁の漂う達成後の茶々丸である。とにかくクリアと同時に、小さな宝箱が出現してくれて香多奈も大喜び。


 中身は木の実とか魔玉(風)が5個とか、大した事は無かったのだけど。一緒にポカリのペットボトルも入っていて、至れり尽くせりな感じ。

 もっとも、茶々丸はポカリは欲しがらなかった。普通のお水を紗良に支給して貰って、ハスキー達と一緒に仲良く飲んでの一時休憩をこなす。



 その後、末妹が何となく選んだ3つ目の装置は、今度は自転車型の健康器具を出現させた。おおっと楽しそうな声をあげる香多奈だが、それに触ろうとはしない。

 そすがに今度は、ペット達には操作出来ないエアロバイクの運動器具に。仕方が無いなぁと、またがってペダルをぎ始める男らしさの塊の姫香である。

 ついでに一言、この際並行で別の装置もクリアしておいてとの事。


「ああっ、確かに姫香お姉ちゃん以外は、今の状態では暇だもんね。今度走る装置が出て来たら、コロ助にでも走らせれば良いもんねっ。

 それじゃ、次はそっちの装置を動かすね、叔父さんっ!」


 ちょっと落ち着きなさいと護人が言う前に、その決定はすでに為されてしまった。そして召喚されたガーゴイルの群れに、周囲を包囲される来栖家チーム。

 それはエアロバイクを必死で漕いでいる姫香も同様で、ツグミが主人を守ろうと懸命なポジショニング。それに萌も加わって、敵を避ける事の出来ない姫香を必死にサポートし始める。


 もっとも、ガーゴイルは1層でも何度も戦った事があるので、対応にそれ程の戸惑いも無い両者。姫香も悲鳴をあげながら、漕ぐ足を止めない辺りはさすがの度胸だ。

 現在45%だよと、実況もしっかりこなす余裕もあったり。


 新生ルルンバちゃんも、近接戦闘に段々と慣れて来たようだ。それ用にと新しく作って貰った、腕状のアームをぶん回して敵を粉砕して回っている。

 その姿はさっきのパペットや、ましてやゴーレムとも違ってモノ凄く滑らか。元がお掃除ロボとは到底思えないその動きは、今後も洗練されて行く事だろう。


 そんなルルンバちゃんの活躍もあって、ガーゴイル10体は順調に撃破に成功した。そのドロップ品を香多奈が拾っている間に、姫香も目標の数値を見事に達成。

 100%になるのに10分程度、なかなか大変な仕掛けには違いない。ただし今回も宝箱は出現してくれて、中には魔結晶(中)が4個にエーテルや初級エリクサーなどの薬品類が入っていた。


 さすがに疲れた様子の姫香だが、水分を補給してしばらく休めば平気だと口にする。これで4つの装置をクリアしたけど、奥の扉は全くの無反応の結果に。

 やっぱり一筋縄じゃ行かないねと、姫香は大きく息を注ぎながら呟く。


「今回はズルしてないから、そろそろ奥の扉は開いてくれてもいいのにね? まぁ、1層でもこの倍は装置を触ったから、そのくらいの努力は必要かな?」

「そうだな、姫香はそのまま少し休んでなさい……次からは俺が装置に触ろう、どれを選ぼうか、香多奈?」

「そっちの右端の奴かな、何か当たりそうな気がするよっ!」


 香多奈の予感が当たっているのかは、今の所はまだ不明。ただし敵の召喚装置では無かったようで、出て来たのは物凄く重そうな鉄ダンベルが2つだった。

 それが地面に転がっていて、その近くにそれを乗せる台のようなモノが同じく2つ。何となく指示の内容は把握出来るけど、果たして乗せるタイミングは同じにするべきか。


 1つずつ別々で良いのなら、ルルンバちゃんに頼めばそれで事足りる。一緒に乗せるのが条件の場合は、護人が参加する必要が出て来る。

 『身体強化』スキル持ちの姫香に頼めば話は早いけど、休んでいろと言った手前そうも行かない。そんな訳で香多奈と相談した結果、護人も『応援』を貰って一緒に参加する事に。


 幸いルルンバちゃんは、新パーツのお陰で重いモノを持ち上げる動作もへっちゃらだ。護人とタイミングを合わせて貰って、この筋力重視の仕掛けも割と楽にクリアの運びに。

 そして毎度の宝箱の出現と同時に、奥の扉の開閉音が鳴り響いた。ようやく引き当てたクリアに、家族全員で大喜びする一同だったり。

 もっとも、ハスキー達はもう少し出番を欲しがっていたけど。


 何にせよ、この先も戦闘は待ち構えている筈だし、ハスキー達の見せ場が無いなんて事はないだろう。それよりも、思ったより時間と体力の消耗の激しい仕掛けは何とかならないだろうか。

 そう思う護人だけど、若い姫香は既に回復したのか元気に次に向かうよと気勢を上げている。鬼の用意したダンジョンの特性的に、3層クリアなら何とかなるかも?


 ただし5層とかそれ以上の構造だと、切りの良いところで引き返す算段もつけないと。何しろ2層で既に消耗も激しくて、こんなのは例の“アスレダンジョン”以来かも知れない。

 癖の強いのは、やはり鬼のダンジョンの特性なのだろうか。先が思いやられるけど、良い方に考えれば経験値を稼ぐのには適しているのだろう。


 もっとも、護人としては既に帰りたい気持ちでいっぱい。良い報酬で釣られてる子供達と、探索大好きハスキー達とは感性が違うのだから仕方が無い。

 そんな護人は、この後も妙な仕掛けで消耗しないよう願うだけ。





 ――まぁ、そんな願いに限って裏切られるのがオチなのだけど。









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