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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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軟体ペットの教育が粛々と行われて行く件



 そんな訳で、ムームーちゃんの一般常識教育計画は主に護人が担当する流れに。末妹の香多奈は、平日は夕方まで小学校なのでこの任務に適していない。

 紗良と姫香も、まぁやろうと思えば可能ではある。ただし家畜やペットを含めて、これまで一番生き物のお世話に携わって来たのは家族の中では断トツに護人なのだ。


 もしこの軟体生物が、誤ってスキルを暴走させても、護人なら防御系のスキルを持っている。一番、被害を少なく抑え込む事が可能な点も見逃せない。

 リリアラによれば、このネビィ種と言うのは温厚で、他種族と争うよりも身を隠す方法を選ぶのだそう。滅多に目撃されない希少性も、そんな所に由来するのだろう。


 そんなスライムモドキを紹介されても、植松の爺婆は特に驚いた風もなく接してくれた。妖精ちゃんやら何やらな存在で、既に慣れっこになっているようだ。

 朝の子供達の送迎終わりに、ちょっと寄っての新しい家族の紹介のつもりが。そんな事より、結婚相手はまだ見つからないのかと余計な世間話が始まる始末。


 護人は仕方なく、ムームーちゃんをレイジーに預けて爺婆の相手をこなす事に。こうやっていろんな場所に連れ歩くのも、社会経験を積ませる大事なイベントである。

 そこで色んな人々や景色に触れて、主人との関係や何やらを覚え込む。自分に害のある者と、そうでない者の見分けをこなして自分の立ち位置も見分ける。

 もちろん、飼い主が一番の良好な保護者なのは大前提である。


「今日は午後から、企業の買い取りトラックが何台かこの辺を通る予定だけど。気にしなくていいよ、ウチの探索での回収品を買い取りに来たお客さんだから。

 紗良と姫香は、今頃は家で売る品の整頓をしてくれてるよ」

「それはええけど、子供達には余所よそでいなげ(ヘン)なモン拾って帰るなっちゅうて言うときぃや。拾った動物が、変な病気持っとったらコトやけぇな」

「爺さん、そんな事言うても今更もう遅いでよ。護人、ついでに嫁さんも拾うて帰って来てみんさい。それより帰りに、カナちゃんらに家で作った水ようかん持たせようか?」


 植松の爺は、どうやらムームーちゃんに得体の知れなさを感じ取っていたようだ。婆に関しては、子供達のおやつと護人の嫁さんの方が切実な問題らしい。

 企業の買い取りトラックに関しては、今回は3社が揃い踏みでやって来るとの話。薬品関係と資材関係を、今回は別々の企業が引き取ってくれるそう。


 これで買い取り側の資金不足問題は、多少は緩和されるかも。これでも青空市でのやり取りは多少あって、企業の方からもアプローチはされていたのだ。

 ただし青空市の日には、さすがにゴタゴタしていて後日に伺うとの逃げ口上に。企業同士の縄張り争い的な駆け引きもあって、何故か各社が同じ日程を指定したと言う経緯が。


 来栖家としても、突発的に探索も入って多少バタバタしてしまった感じ。うっかり忘れてた訳でもないのだが、アイテム整頓がずれ込んでしまい。

 取り敢えず、紗良と姫香にそっちを頼んで、協会(もう)でには護人が向かう事に。


 そんな訳で、そろそろ協会も開いた時間だしと、護人はムームーちゃんに声を掛けて植松家を後にする。従順な性格の軟体生物は、今の所は異界への順応も悪くはなさげ。

 そして訪れた協会でも、おおむね好意的に受け入れられたムームーちゃんである。その相手側のリアクションは、来栖家のやる事に一々驚いていられないよって感じでもあった。


 能見さんの興味は、いつもは騒がしい子供達が今日はいない事に尽きたよう。江川も同じく、換金物を受け取りながらどこのダンジョンに行って来たのかと不思議そう。

 説明については、異界に出掛けてこの子を拾ったのだと簡単に済んでしまう。それを聞いた江川は、突っ込みませんよとさっさと奥へ引っ込んで行ってしまった。


「いやまぁ、しかし……このスライムっぽいのが、実は知的生命体ですか。異界って、こっちの常識が全く通用しませんね。

 ちなみにこの生物、戦闘能力はあるんですか?」

「諸事情によって、色々と厄介なスキルを覚えてしまって……そんな訳で、この子に常識を教え込もうと連れ歩いてる次第ですよ。

 見ますか、これがムームーちゃんのステータスですけど」



【Name】ムームー/Age 01/Lv 04


HP 10/10  MP 12/12  SP 16/19

体力 E‐ 魔力 D  器用 E  俊敏 F

攻撃 F‐ 防御 E+  魔攻 D‐  魔防 E

理力 E‐ 適合 E  魔素 D  幸運 D+


【skill】『擬態』

【S.Skill】《ドレイン》《心話》《心頭滅却》《炎心》

【Title】《異界の迷い子》




 レベルが上がっているのは、どうやら夜のハスキー達の特訓に同行させられた結果らしい。この数日で、ペット勢にも気に掛けられているのは良い事なのだろう。

 ただまぁ、護人としてはこの異界の幼子を来栖家チームの戦闘要員へと招く事は全く考えていない。ただ覚えたスキルで、周囲に迷惑を掛けてくれるなと願うのみ。


 その為には、社会性とこちらの常識をなるべく早く覚えさせないと。ハスキー達の連れ回しも、護人は社会性を学ぶ良い機会だと思う事にした次第。

 もっとも、妖精ちゃんには大いに注意を払った方が良さげだ。彼女は呪いを解除した兎の戦闘ドールを(勝手に)入手して、この軟体幼児と一大勢力を築こうと画策しているらしい。


 それもこれも、暴虐ぼうぎゃく魔人のミケにいつかやり返す日を夢見ての事らしく。少し可哀想な気もするけど、来栖家のヒエラルキーはミケがトップで成り立っているのだ。

 それを、チビ妖精に引っ繰り返される訳には行かないのが実情。


 取り敢えず今回は、録画チェックに護人と仁志と能見さんと言うメンバーで挑んだ。その途中で換金が終わったと、江川が現金を持って来てくれた。

 鑑定の書と薬品を含めて、今回の魔石の売り上げは240万円とパッとせず。ただまぁ、宝箱の回収品がほぼ無かったし、ドロップ魔石だけでここまで伸びたのは逆に凄いかも。


 それもこれもゴーストのお陰だけど、動画でもその威力は凄まじい。主に能見さんが、時折ひえっとリアクションをとってくれて、彼らも驚かし役冥利(みょうり)に尽きるだろう。

 それから動画の最後に映っていた、ルルンバちゃんの新形態には皆でホッコリ。『錬金レシピ本』が浄化関連で新たに発見された報告には、江川も耳をびくつかせていた。


 更に言うと、呪い解除品の報告には完全に耳ダンボ状態に。広島の協会本部にも持ち込まれた品は割とあるようで、死蔵したままの状態のモノが多いらしいのだ。

 だからと言って、異世界のダンジョンにまで解呪に行くのも途方もないリスクには違いない。来栖家の解呪した2つのアイテムは、両方当たり性能でまだ元が取れたとも言える。


 そうでなかった場合、呪いの品と一緒に心中する破目に陥る可能性も。そんな訳で、当分の間“浄化の泉”は有効活用の機会はなさそうだ。

 まぁ、護人としてはどちらでも良い話。


「それより、愛媛の『坊ちゃんズ』の到着がもうしばらく遅れるそうなんですよ。間の悪い時期に、間の悪い場所でオーバーフロー騒動が起きたみたいで。

 地元案件なので、そちらを優先して処理して貰っていますけど。恐らくそれが片付けば、来週にはこの町に来て貰える筈ですので。

 そうすれば、A級チームがこの町に揃い踏みですね!」

「それじゃあ、島根チームにはもう少し待って貰う事になりそうですね。まぁ、連中はキャンピングカー生活をそれ程苦にしないみたいですけど。

 取り敢えずは、よろしく面倒見てやって下さい」


 護人の言葉に、苦笑いを浮かべる正直な性格の能見さんである。恐らく女好きの彼らの、怒涛の攻撃をほぼ毎日食らっているのだろう。

 星羅チームの女子3名も、顔合わせと称して色々と面倒を見てやったと報告が上がっていた。近接戦での実力的には、全然負けてなかったと誇らしげなコメントも。


 護人も夕方の厩舎裏の訓練で、直接土屋女史から話を聞いたのだった。その場にいたムッターシャも、恐らく師匠として鼻が高かっただろう。

 何せ、向こうは押しも押されぬA級ランカーである。土屋女史の適性が、元から近接アタッカー寄りだった事を差し引いても凄い事である。


 護人も同じギルド員として誇らしいが、彼らも“喰らうモノ”ダンジョン攻略では仲間なのだ。あまりへこまされると困るので、程々にしておいてくれと願いつつ。

 協会に来たついでに、例の件も報告しておく事に。


「あっ、そう言えばウチの“敷地内ダンジョン”ですが……どうやら2つ目も、鬼の仕業で“ダンジョン内ダンジョン”が発生しまして。

 鬼によると報酬のつもりらしいですけど、一応協会にも報告を」




 怒涛の午前中の用件も片付いて、お昼過ぎには敷地内に停車する企業の買い取りトラックの列。なかなか壮観な景色ではあるけど、利用するのは来栖家のみなのが寂しい所。

 今回来てくれたのは、いつもの『四葉ワークス』の森田とその護衛の探索者達に加え。『眞知田オート広島』と『不磨キラー薬品』からも、薬品類その他を買い取るべく鑑定人が来てくれた。


 それぞれ欲しい品は違うだろうから、喧嘩にはならないと思う。そもそも来栖家の回収品も、定期的に売る場が青空市だけなので結構貯まって来ている。

 青空市の企業の買い取りにしても、予算オーバーの品は買い取りを断られる始末。そんな感じで、向こうがどうしても欲しい物だけを売りさばいた結果。


 随分とかたよった在庫になってしまって、青空市で甲斐谷に相談した結果。それならと、彼と協会の伝手で今回の大出張買取となった訳だ。

 ちなみに平日なのは、香多奈にバレない様に取り計らった結果である。大金が動くので、チームとは言え小学生には目の毒だろうと姫香の発案だったり。


 護人も全く同じ意見、何しろ溜まっているアイテム数は膨大に上る。既に紗良が、上級ポーションや中級エリクサーの余剰分を、薬品会社の買い取り人に手渡し始めている。

 薬品のチェックや査定も、相当掛かるだろうから挨拶している暇も惜しいのは良く分かる。そして上級ポーションが5リットルを超えた辺りで、査定人の表情に案の定の変化が。


 まぁ、協会買い取り額が100mlで10万円の薬品なので、その気持ちは良く分かる。ただし、その後には中級エリクサーが3リットルほど控えている。ちなみにこれは、100mlで30万円の薬品だ。

 来栖家としては、飽くまで余剰品なのでギルド用のキープは万全だ。他にも“秋吉台ダンジョン”でゲットした、『鑑定プレート』(木の実専用)も向こうは喜んで買い取ってくれるだろう。

 秘薬のレア素材なんかも、紗良が許せば全然売っても良い。


 それから『眞知田オート広島』は、鉱石やインゴット系が欲しいそう。それならと、丁度“美川ムーダンジョン”で入手した、鉱石やインゴット系を売り渡す事に。

 そちらは姫香が担当する予定で、仕分けを午前中に頑張ってくれていた。そんな姫香は、ウチには必要無いから全部買い取ってねと圧が割と凄いと言うか酷い。


 ついでに宝石や貴金属類も売り払おうとしたが、そちらは断られてしまった。それでも『オリハル鋼インゴット』やモンスターの甲殻素材には、割と食い付いてくれた模様で何より。

 恐竜の骨素材や、重オーグ製の武器や装備品も溶かせば使えるからと欲しがって来る始末。それに気を良くして、収納からそっち系をどんどん取り出す姫香である。


 気がつけば、こちらも鑑定に時間が掛かりそうで少々怖い。それからいつもの『四葉ワークス』は、護人の担当で話が進んでいた。

 こちらは装備品やら素材系を中心に、今回は向こうの資金が尽きるまで買い取って貰う所存。今回は、一番金になりそうな宝石や貴金属を買い取ってくれる当てが無いのが残念な所。

 そちらはまた今度、知り合いに良い買い取り人を紹介して貰う所から。


「今回はよろしくお願いしますよ、本当にお手柔らかに……」

「いえいえ……これだけの大企業が、一緒に買い取りに訪れてくれる機会なんて滅多に無いですからね。まずはこの、『ラクダの仮面』から行きましょうか。

 鑑定の書はこちらになります、他にも装備品は山のようにありますよ」





 ――かくして来栖家VS買い取り人の闘いは、来栖家の圧勝に終わりそうな気配。








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― 新着の感想 ―
買い取れば買い取るだけ儲かるのがわかってるだけに現状の資金が消えていくわけだねwww
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