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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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牢屋エリアを抜けて2つ目の泉を目指す件



 5階層目の探索は、姫香の装備する白百合のマントの特殊能力を得て、割と順調に進んで行く。何よりこっそり潜んでいる敵が、我慢し切れずに飛び出してくる点が楽で良い。

 そんな敵を返り討ちにしながら、牢屋エリアを彷徨さまよう事15分以上。そろそろ中ボスの間が見えて来てもいいよねと、呑気に口にする後衛の香多奈である。


 他の面々も全く同意見で、分岐もほとんど潰せたと思われる。その分、潜んでいた闇系のモンスターも残らず魔石に変えて、実りのある道のりではあった。

 突入からはもうすぐ2時間、そろそろお腹も空く時間。


「あっ、あれが中ボスの間じゃ無いかな……扉があるし、多分だけど中に中ボスがいるよ。闇系の敵なのは間違いないかな、このダンジョンの特性的に」

「それじゃあ、中ボス倒したらお昼ご飯にしようか? さっきの泉のエリアですれば良かったね……まぁ、あそこには管理者の白竜がいたからアレだったけど」

「そうですね、汚したら怒られそうだったし、中ボス戦が終わったらその場を浄化してそこで食べましょうか。

 みんな、あともうひと頑張りお願いねっ!」


 紗良の言葉に、元気に尻尾を振って応えるハスキー達である。とは言え、この中ボス戦の初手は、紗良の《浄化》スキルの発動と決まってしまっている。

 それで戦闘が完了するとは限らないけど、しないとも限らない訳で。敵の属性の決め打ちは外れると大変だけど、まぁそこは変な信頼と言うか。


 ここまでの途中の牢屋にも、闇属性の敵しか出て来なかった。子供達も妙な確信で、決め打ちしての紗良の《浄化》の先制打を決定した模様。

 そしてそれは、見事に功を奏して中で待ち伏せしていた中ボスとその部下たちはてんやわんや。思い切りダメージを受けて、広い牢屋内で苦しんでいる。


 中ボスの部屋に入った一行は、遅ればせながら中の様子を確認する。《浄化》スキルにダメージを受けて慌てているのは、看守の制服を着込んだゴーストだった。

 雑魚と言うか、手下のゴーストは紗良の先制魔法に全て魔石に昇華されていた。それから看守ゴーストのペット枠なのか、明らかに闇属性のキメラが1匹。


 体はそこまで大きくないけど、ハイエナやコウモリ、ヤギのパーツが混在したそいつは結構強そう。ただし、《浄化》スキルでこのキメラも相当なダメージを受けていた。

 そして、ハスキー達にボコられてあっという間にお亡くなりに。


 中ボスの看守ゴーストも、虫の息だった所を白百合のマントの噴射攻撃で呆気無くダウン。どうやら姫香は、突入前に『浄化ポーション』を『清浄のポーション』に交換して、白百合のマントへ渡していたらしい。

 このポーションは、量は少ないけど浄化パワーは数段強い事が分かっている。どっちにしても、装備品の呪い解除の役には立たなかったので、勿体もったいぶらずにここで使い切る事にしたらしい。


 その効果を体感して、これ凄いかもと護人へと報告する姫香である。これって確か、地元の“神社ダンジョン”で回収した奴だっけと末妹の質問に。

 ここでも回収出来るかもねと、浄化の泉パワーを当てにする姫香の返しである。浄化のパワーにもランクがあるのは確認出来たし、それなら強力なポーションを回収して帰る気満々の姫香だったり。


 なるほどと納得する香多奈だが、今は宝箱の回収に興味を持って行かれている。ちなみに中ボスは、見事に魔石(中)とスキル書を落としてくれた。

 そして宝箱からは、鑑定の書が4枚に薬品が数種類、中には中級エリクサーも混じってて当たりの部類である。それから、浄化ポーションやエリクサーも入っていたので補充もバッチリ。


 他にも木の実が5個に魔結晶(小)が7個、それから綺麗な水晶が幾つか。妖精ちゃんが寄って来て、その水晶は全部魔法アイテムだなと教えてくれた。

 その報告に、子供達のテンションは一気にアップ。何しろ、この道中で1個も宝箱が見付からなかったのだ。異界のダンジョンは渋いねぇと、さっきまではそんな感想だったのだけど。


 ここに来て、意外と美味しいかもと意見は180度反転を見せる始末。そう言えば、呪い解除した剣も凄く豪華そうだったねとか言い始める末妹である。

 アレは依頼品で、自分達のモノにはならないよと言い含める護人。しかし家から持ち出した呪いの品の2つが、どんな風に化けるのかは未知数である。


 アレは処分したくても呪われてると聞かされて、怖くて出来なかった品々である。それ程は期待していなかったのだが、何だか子供達はウキウキ模様。

 早く次へ行こうよと、急かす有り様なのは如何いかがなモノか。


「次は何層目に、あの浄化の泉があるのかな……それより、どっちから呪い解除して貰おうか、紗良お姉ちゃんっ?

 縫いぐるみと、鎖に巻かれた装備品とあるけどさ」

「そうだねぇ、やっぱり兎の縫いぐるみが先かなっ? 呪われたままなのは、ちょっと可哀想だもんね」

「取り敢えず、先に昼食休憩に入ろうか……紗良、済まないが用意を頼むよ。姫香は、一応周りに結界装置を作動させておいてくれ」


 護人のうながしに、は~いと支度を始める子供たち。ハスキー達も家族の元へと集まって来て、護衛をしながらお昼の輪に入ろうと待ち構えている。

 香多奈は保護した軟体生物も、食事をするのかなと興味津々に構い始める。萌やルルンバちゃんもそれに参加して、良く分からない場が形成されていた。


 そこに紗良が用意してあったお重を拡げて行き、まるで小学校の運動会のような昼食風景が出現。いつもの事なのだけど、ここがダンジョン内だと思えない華やかなムードに。

 ハスキー達も、モノは言わないけど無言の圧力を食事に注いでいる。そのお肉欲しいなって視線と、子供達がそれを口に放り込むたびに悲しそうな表情の繰り返し。


 それに根負けするのは、大抵は末妹の香多奈が最初である。結局は、紗良も姫香もあげるので、不公平は無くみんなに行き渡る感じ。

 ミケに限っては、堂々と護人に強請ねだってお握りのおかかを貰っている。ある意味平和な食事風景が、探索の途中に挟まれるのも既に日常だったり。




 それから昼休憩を終え、すっかり元気を取り戻した来栖家チームの面々。異界のダンジョンに長居も不味いと、せっせと探索を再開する事に。

 そんな訳で、6層への潜入から周囲の確認を行ってみるも。何故か壊れかけた塔内の風景に戻っていて、どうやら出て来る敵もエリア環境もほぼ同じみたい。


 考える事が減ったのは嬉しいが、敵は進む程に強くなるのがダンジョンである。ハスキー達に油断は無いけど、心して掛からねば怪我では済まされない事態も起こり得る。

 そしてこの層からは、姫香が白百合のマントで瘴気溜まりをお掃除する作戦に。浄化されまいと出て来る敵に対しては、萌が護衛について退治のお手伝い。


 萌は予備の水鉄砲も持っているし、破邪の付与された予備武器も持っている。例え実体のないゴーストが出て来ても、討伐はそんなに苦ではない。

 そもそも、清浄のポーションのパワーは凄まじく、よどみに隠れていた闇属性のモンスターは軒並みヘロヘロ状態。それを狩る作業は、萌にとっては朝飯前。


 この仔竜も、与えられた《経験値up》スキルの恩恵か、成長著しいのは間違いない。毎日の夕方の特訓にも真面目に参加しているし、規則正しい生活もこなしている。

 ただまぁ、竜の成長がどんなと訊ねられても、本人にさえ分からないだろう。今はただ、戦闘経験値を糧に家族チームに上手くフィットするよう頑張るのみ。

 それに関しては、割かし上手く行っている気も。


「相変わらず、ゴキとかネズミとかのでっかいのが出没するエリアみたいだね、ここって。ハスキー達が直接咬み付いて、病気にならないよう忠告しておかないと。

 まぁ、あの子たちは賢いし、ちゃんと武器も使ってるから平気かな」

「そうだね、レイジーなんかバッチい敵を見付けたら全部丸焼きにしてるし。でも念の為に、探索が終わったら中級エリクサーを全員に飲ませるのがいいかも?」

「えっ、あれはお高い薬品なのに……でもまぁ、変な病気にかかるよりはいいか」


 大きな病気をした事の無い末妹には、病気の怖さはいまいち伝わらなかったみたい。それでも、高価な薬より家族の安泰を願うその心意気は、アッパレと言う他ない。

 ハスキー達に関しては、病気など気にせず6層を攻略し終えた所。今は7層目の探索に入って、ますます順調である。茶々丸も含めて、チームに先行して厄介なモンスターを率先して駆逐して回ってくれている。


 この毎度の献身的な働きによって、15分後には7層の安全もほぼ確保出来てしまった。念の為にと控えていた、護人や紗良は出番なしの前衛陣の頑張りである。

 それに感謝しつつ、香多奈はルルンバちゃんと一緒に魔石やドロップ品を集めて回る。それから次の層へと繋がる、ゲートを求めて石造りの階段を上って行く。


 心配された攻略時間だけど、今の所は順調に進んでいる気が。宝箱の回収こそまだ1つと少ないけど、空気の悪い場所に長居しないのは原則である。

 サクサク進めているのは、悪い事では無いと先を急ぐ来栖家チーム。階段の上で発見したゲートに飛び込み、さて次は第8層の探索開始。

 ここも崩れかけた遺跡の塔エリア、残念ながら泉は見当たらず。


「うわっ、段々と崩壊してる場所が増えて来てないかな……歩いてて、壁とか崩れて来たら怖いね。蔦とかも伸び放題だし、足を取られないよう注意しなよ、香多奈。

 ハスキー達も、建物とか壁の崩落には注意してね」

「出て来るモンスターも、ちょっと変化があるかも? 牙の凄そうなコウモリが飛んでるね、みんな注意してっ!」


 地形と出現モンスターの変化に、すかさず仲間に警告を発する姉妹である。確かにこの変化には、細心の注意を払うべきかなと護人も思う。

 ついでに取り出した弓矢で、飛んでるコウモリの群れを撃ち落としながら。ハロ化したAIロボと一緒に、安全エリアの確保をお手伝い。


 姫香はストックの薬品が無くなるまで、マントの薬品散布作戦は続けるみたい。紗良の負担を考えて、それからようやく出番の巡って来た白百合のマントにも配慮しているのかも。

 相変わらず、護人の薔薇のマントは同族の活躍に腹を立てているみたい。それをなだめる労力も込みで、護人のリーダー業はとっても大変。


 その点、自発的に先行して敵をほふってくれるレイジー達の何と頼もしい事か。彼女は間違っても、アイツよりもっと活躍させてと暴れないし、変な生物を拾ってペットにしたいと妙なおねだりもしない。

 ヤン茶々丸の制御も見事にこなしてくれるし、本当にレイジーには頭が上がらない。そんなハスキー達の活躍もあって、この8層も割とあっさりクリア。


 そしてやっぱり、隠された宝箱などは見当たらず。その辺は、姫香が危ないから歩き回るなと釘を刺した事も要因の1つかも。

 香多奈も下手に歯向かって、崩落に巻き込まれるのは得策では無いと思っている様子。案外と素直に、後衛陣の近くに離れずついて来てくれている。


 いつもこんなに素直なら、どんなに良いかと護人の内心に。何か失礼な事を考えてないと、不意打ちでの末妹の鋭いツッコミが。これは果たして、スキルの恩恵なのか女の勘なのか定かでは無いけど。

 それを誤魔化しつつ、次の層には宝箱が設置されていると良いねと護人の話題転換に。何故か抱っこされているムームーちゃんが、張り切って応じてくれると言う。


 良く分からないけど、この子も群れに溶け込もうと努力をしているのかも。さっきの昼食でも、差し出された卵焼きを体内に取り込んで美味しそうに消化していた。

 スライムと違うと妖精ちゃんは言っていたけど、その辺の構造に関してはかなり似通っている気がする。香多奈もその辺は、ゼミ生の秘密の飼育で割と生態を把握しており。

 ムームーちゃんに関しても、立派に育てられると確信している模様。





 ――思わぬ形で夢が叶いそうで、上機嫌な香多奈であった。









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