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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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倉庫の種類を堪能しながら15層の中ボス部屋を目指す件



 12層の初っぱなに出た倉庫は、それなりに広いけど大棚がたくさん置かれていて視界は良くなかった。そんな大棚の一部には、商品と思わしき品々が整然と置かれている模様。

 どうやら物流倉庫に突き当たったらしく、その事実に歓喜する子供たち。ある意味では宝物庫である、とは言えそこまで品揃えも多くは無さそう。


 それでも、途端に張り切り始める紗良の号令の下、トイレットペーパーやティッシュペーパー、即席麵の箱や調味料や味噌のケースを回収し始める子供たち。

 ルルンバちゃんや萌も手伝って、とにかく空間収納に入るだけ詰め込もうと意地汚く回収を行なう。こんなボーナスステージを逃すのは、それはそれで背徳行為である。


 そんな山賊行為を行う事5分余り、ようやく落ち着いた子供達であった。ハスキー達は倉庫を見回って、隠れていた大ゴキブリやシャドウ族を討伐し終える。

 丁度良い塩梅あんばいだったのかもで、ずっと見守っていた護人もホッと一息。そして移動を再開して、物資倉庫エリアを後にする面々であった。


 次の倉庫はジメッとしていて、がらんとした空間が目立つばかり。その隅っこに置かれている資材は、シートで覆われていて用途不明の機械が大半だった。

 そして天井からは、大ヤモリに騎乗したヤモリ獣人の襲来が。忍者タイプも混じっていて、大カエルを召喚された時にはかなり驚く一行。


 ただしそいつは、想像したより強くは無かったようだ。コロ助が持ってたハンマーで、即粉砕してしまって戦いは呆気なく終了の運びに。

 そんな感じで、対応力も出て来たハスキー軍団である。


「うわっ、また待ち伏せだよっ……せわしないよね、ハスキー達が対応出来てるからいいけどさ。さっきのコロ助も、咄嗟の判断なかなか凄かったよっ。

 おいでっ、ご褒美にジャーキーあげる!」

「そう言う事言うと……ほらっ、ハスキー全員来ちゃったよっ。茶々丸は止めときなさい、アンタは草食でしょうに。

 代わりに撫でてあげるから、こっちにおいで」

「茶々丸ちゃんの非常食出そうか、姫香ちゃん? あんまり食べ過ぎると、お腹が重たくなって戦闘に支障をきたすよねぇ?」


 かと言って仲間外れは可哀想だし、末妹の一言のせいで忙しない戦闘の合間休憩である。食事に無縁のルルンバちゃんは、萌と一緒に次の倉庫の状況を少しだけ確認してくれていた。

 それからすぐに戻って来て、異常なしと護人に報告して来ている。なかなか探索慣れしたその動きは、頼もしくもあるしちょっと可愛いかも。


 そうこうしている内に、12層の探索も順調に進んで13層へと到達出来た。時刻はまだ3時にもなっておらず、ここまでは予定通り。

 そして13層だけど、今まで以上に大きな倉庫に一同ビックリ。どうやら飛行機の収納庫だったみたいで、プロペラ機が倉庫内に整然と並んでいる。


 それを見て、格好良いねと思わずテンションアップの香多奈である。撮影役の目線で、このエリアは絵になるねと思わず飛行機に近寄ろうとした途端。

 宙を割いての飛行物体の襲来に、護衛の面々が慌ててフォローに入る破目に。燕型のモンスターが、どうやら倉庫内に巣を作っていたらしい。


 最初は1匹だけだったその高速飛翔物は、敵の接近を知っていつの間にか半ダースほどに増えて行った。護人が咄嗟に1匹斬り落とすも、敵の勢いは止まらず。

 攻撃をかわされた萌が、腹立ちまぎれにブレスを放っての範囲攻撃に切り替える。レイジーも『針衝撃』で、ピンポイントで地上すれすれを飛ぶ燕を撃ち落とす器用さを発揮する。

 そんな各自の反撃で、厄介なスピードスター軍団は退場のき目に。


「やっと全部倒せたかな、やれやれだったな……まぁ、銃弾よりは断然遅いし、そこまで慌てる程でもなかったけど。

 後衛に被害が出そうになると、さすがにそうも言ってられないしな」

「ちょっと怖かったかも……でもミケさんが、ちゃんと私にぶつかる前に1匹処理してくれたみたい。さすが守りネコだねっ、頼りになるよ。

 ルルンバちゃんの方は、あたふたしてるだけだったなぁ」

「得意とか不得意があるから、それは仕方が無いよねぇ。大丈夫、ルルンバちゃんは頑張ってくれているよ……スピードのある敵は、ちょっと苦手なのかな?」


 そう取り成す紗良は、落ち込んでるルルンバちゃんをなぐさめるのに必死。姫香は口を滑らした末妹を叱って、チームの雰囲気を盛り上げて再出発をうながす構え。

 そして隣の倉庫のでっかい地球儀を発見して、しばし唖然とする一行であった。何の目的かは定かでは無いけど、海路や航空路がしっかりと書き込まれている。


 今はどちらも半壊状態なので、“大変動”以前の遺物なのだろう。それを感心しながら眺める末妹と、出て来たパペット兵をサクッと片付ける前衛陣。

 その部屋の端っこには、ついでのように14層へのゲートがあった。ちなみにさっきの倉庫には、壁の上にツバメの巣らしきものがくっ付いていた。


 ルルンバちゃんに確認して貰った所、巣の中には何もアイテムは入っておらず。もしかして食材かもと騒ぐ末妹だったけど、紗良もさすがにツバメの巣の調理方法など知らない。

 そんな訳で、巣と地球儀をスルーして、いざ14層へと到達する。


「さっきの飛行機は動かなかったけど、この前の車型の中ボスみたいに変形して動く敵もいるのかな? そしたら面白いし、良い映像が撮れそうだよねっ」

「戦う身になってみたら、ちっとも面白くなんてないわよ、香多奈。魔導ゴーレムタイプは、強くて頑丈なのが多いんだからねっ。

 ルルンバちゃんを相手にすると思ってごらんよ、大変でしょうが」


 それは大変だねぇと、何とも他人事の返答な末妹に対して。隣の護人は、あまり変な事を口走ってくれるなと気が気でない素振り。何しろ香多奈の『天啓』は、どのタイミングで未来を引き寄せるか分からないのだ。

 そんな今回だが、その効果は速攻で現れた模様……パペットを倒して次に向かった倉庫は、何と軍の武器庫だったよう。そこには強そうな戦車が、3台ほど格納されていたのだ。


 これはヤバいと、ハスキー達も動き出すのを前提に戦闘態勢へと移行する。姫香も警戒をチームに呼び掛けながら、『圧縮』防御の準備をしつつ前へと出る。

 そして案の定、キュラキュラと動き始める3台の戦車。幸いと言うか、どうも年代物らしく型は相当に古くて動きも滑らかとは程遠い戦車たち。


 そう言えば、今いる倉庫も古くて時代を感じさせる感じ。とは言え、あんな現代の破壊兵器と、面と向かって殴り合いなどしたくはない。

 姫香とハスキー達は、強敵を前にヤル気は満々のよう。護人は困った時のミケ頼りをするべきかと悩んでいたら、それより先に薔薇のマントが反応した。

 こっちだって砲撃出来るんじゃあと、筒状に変化して砲弾のぶっ放しを敢行。


 その弾は見事に敵の一台に命中、キャタピラが吹き飛んで中破する敵の戦車。反撃の砲撃音に、驚き飛び上がる茶々丸と萌であった。

 ハスキー達は豪胆にもそれを無視、口に咥えた魔剣やハンマーで群れとなって戦車の1台に襲い掛かっている。呆れた事に、その戦車は砲身を斬られて、半分地面に埋まった状態となってしまった。


 ツグミの《闇操》で自由に動く事も出来ぬ間に、レイジーの魔剣で致命打を喰らったらしい。止めとばかりにコロ助のハンマーでボコられて、哀れな戦車は魔石に変わって行った。

 そして薔薇のマントが中途半端に破壊した奴は、姫香が『旋回』からのくわの一撃で破壊に成功。残りの1台は、ミケの雷落としで呆気なくお亡くなりになっていた。


 どうやら砲弾での、騒がしい撃ち合いが気に入らなかったらしい。薔薇のマントにじっとりとした視線を送る老猫ミケは、時には味方のしつけにも容赦がないのだ。

 冷や汗を掻く護人だが、向こうの砲撃もミケの《魔眼》が防いでくれて後衛陣に被害も無かった。皆怪我が無くて良かったなと、護人は明るく振る舞ってミケの追従を有耶無耶うやむやに。


 それに末妹も乗っかって、さすがミケさんだねとタイミング良くヨイショ。それから倉庫の端っこに何かあるねと、ルルンバちゃんを連れて確認に飛んで行く。

 そこには武器が満載の木箱が2つ、中身は砲弾や自動小銃や予備マガジンか割とたくさん。ついでに魔結晶(小)や、スキル書や薬品が入った袋も見付かった。

 それを見て、やったと大喜びする子供達である。


 そしてちゃっかり、砲弾の補充をする薔薇のマントと言う。自分で空間収納を持っているアドバンテージは、何とも強力で護人も打つ手がなかったり。

 武器関係には興味のない子供達だが、これらの回収も岩国の協会から仰せつかっており。良い値で引き取ってくれるそうなので、取り敢えず回収は忘れずに。




 それから休憩後、残った14層の探索をこなす来栖家チームの面々。まだまだ元気なハスキー達に前衛を任せて、見事に次の層へのゲートを捜し当てる。

 そして今日の最終予定の15層へと突入、外はそろそろ夕方かなって時刻だ。倉庫内は相変わらず薄暗くて、時間の概念は乏しい空間である。


 朝の速い時間からの探索なので、そろそろ切り上げて明日以降に備えないと。そんな訳で、サクッと中ボス部屋を踏破してしまいたい所。

 そこまでの道中も、さすがに戦車倉庫が2度目とか、くどい事にはならずに済んで何より。パペット兵士や大コウモリや、ゴキ的な蟲型モンスターの群れを撃破しつつ進む一行。


 暗がりから奇襲するシャドウ族は、茶々丸がいち早く見つけて退治してくれるので大助かり。ツグミのフォローも完璧で、ヤン茶々丸も大怪我せずに活躍出来ている。

 まぁ、フォローが無いとまだまだ心配なレベルの仔ヤギではある。それから萌の前衛も、まずまず慣れて来たかなって感じで及第点を上げられそう。


 萌の場合は、性格的に積極的に敵に突っ込んで行く事などまずしない。なので茶々丸に騎乗させるとか、姫香とペアを組ませるかしないと運用が難しい面が。

 せっかく《経験値up》なんてレアスキルを取得したのに、何ともままならないモノである。とは言え来栖家的には、そこまで深刻には誰も考えておらず。

 それぞれ自分のペースがあるもんねと、萌の評価は実は割と高かったり。


 むしろ、無茶な暴走を繰り返す茶々丸の方が問題児には違いない。今はレイジーに扱いを一任して、少しだけその症状が治まってホッとしている所である。

 そんなチーム事情をはらみながら、いつものペースで探索は続いて行く。ただし後衛の口数は、ここに来てさすがに少なくなって来た。


 最年少の香多奈は、やっぱり長時間の探索の同行は辛かったみたい。護人の配慮で、ルルンバちゃんの予備座席に座らせて貰っての同行に切り替わっている。

 そしてようやく行き着いた、15層の中ボスの間であった。両開きの扉が倉庫の壁にしつらえてあって、他に通路も無いので見間違えようもない。


 それに手を掛ける姫香も、末妹の茶々が入らないので少し拍子抜けしているみたい。さっさと終わらせるねと、しかし闘志の炎は衰えてはいない様子だ。

 それはハスキー軍団も同じ事……何しろ、来栖家チームの中ボス戦は速攻戦術が多くて、彼女たちの出番が無い事が多いのだ。事前の作戦会議が無い事に、ハスキー達はヤル気満々。


 或いは護人も、長時間の探索で集中力が途切れていたのかも。そんな感じでの中ボス最終戦だけど、広い倉庫に待ち構えていたのはまたもや見慣れたフォルムの現代兵器だった。

 また戦車が出たよと、姫香の報告に身構える後衛陣。まずはそのお付きのパペット兵士の群れの掃討に、手を割かれてしまうハスキー達&茶々丸の前衛陣。

 そして肝心の中ボス戦車だが、何だか様子がヘン。


「あっ、コイツってば……ひょっとして、変形するタイプの魔導ゴーレムかな? 戦車の形をしてるって珍しいよね、護人さん。

 変形が終わるまで、やっぱり待つべきかな」

「撮影してるから待ってあげて、お姉ちゃんっ。ハスキー達も手出ししちゃダメだよっ、相手がちゃんと立ち上がるまで待てだからねっ!」

「いや、まぁそれはいいとして……あの戦車の砲塔はどうなってんだ、てっきり変形後も武器として使うのかと思ったんだが。

 身体の後ろ側に移動して、あれじゃまるで尻尾だな」


 本当だねぇと、紗良もその変テコな敵の変形後フォルムに戸惑っている様子。ロボの形を取るのを優先した結果、中ボスの戦力は何故かダウンしてしまったようだ。

 喜んで良いのか不明だが、香多奈は満足してカッコ良いねを連発している。そしてハンマー持ちのコロ助が、容赦なく敵に得意武器を振り下ろして行った。


 そこから先は、いつか見たようなシーンでの討伐への単調な道のりに。変形タイプの魔導ゴーレムはそれなりに強敵なのだが、何故か微妙な性能の敵が多い気も。

 とにかく無事に討伐出来て、これにて15層もクリアに至って何より。目論見通りに退出用の魔方陣も用意されていたし、中ボスのドロップ品も宝箱もしっかり配置されていた。


 それらを回収に向かう子供達は、今日は良く働いたねぇとさすがに疲労の色は濃い。それでもやり遂げた感のお陰か、揃って晴れやかな笑顔である。

 周囲のハスキー達も、ご機嫌に護衛任務に余念がない。





 ――かくして噂の複合ダンジョンも、無事攻略に至った来栖家チームだった。







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