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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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密林エリアの恐竜が段々と狂暴化して行く件



 その後一行は、2層を普通に突破して現在は3層の探索中である。懸念されていた2チームでの共同探索は、今の所は何事もなく進んでいる。

 ただし宝箱の類いは全く無くて、香多奈はちょっとつまらなそう。ただしハスキー達の拾って来る魔石に関しては、魔石(極小)に対して魔石(小)の数も3割以上混じっていた。


 つまり、伊達にA級ランクじゃ無いなって感じで全く油断は出来ない。とは言え、今のフォーメーションは上手く作動しているのでいじる予定も無さげ。

 『シャドウ』の面々からも不満は出てないし、むしろこの探索速度に戸惑っている感も。こんな見通しの悪い密林を、この速度で進むのは常識なのかなって感じ。

 そんな視線に、敢えて無視して何事も無いかのような表情の護人である。


「さて、お昼までに5層の中ボスを倒してしまいたいな。他の2チームも順調みたいだし、こちらも足並みは揃えて行かないと。

 ハスキー達もまだまだ元気そうだし、大物が出るまではこのペースで行こうか」

「大物が出るのは確定なんですね、護人リーダー……犬達はともかく、人間には酷な速度だと思うんですが。そもそも『ヘブンズドア』と『グレイス』は、障害物の無い米軍基地の敷地エリアの探索ですよ。

 そちらと歩調を合わせるのは、もともと無理があるような」

「でもあっちのエリアの敵は、銃とか持っててそれなりに大変なんでしょ? それなら進む速度も負けていられないよっ、もちろん宝箱を見付けた数もねっ!

 なのにこっちは、まだ1個も見付かって無いって最悪っ!」


 そういきどおる少女に、汚い言葉を使うんじゃありませんとリーダーの突っ込みが。議論する場所はそこでは無いと思うのだけど、本当に良く分からないチームである。

 三笠と笹野は、今は再び来栖家チームの後衛陣と合流しての探索中である。さっき鬼島&舞戻のペアをサポートしようと前掛かりになって、そのせいで酷い目に遭ったのだ。


 すかさず護人とルルンバちゃんに救助されて、一応は無事に危機を乗り越えられたのだが。話し合った結果、位置取りは元に戻して進行する事に。

 それを受けて、鬼島&舞戻のペアもやや中段の位置に修正する事に。元々、この茂みだらけの密林を、ハスキー達の速度でついて行くのは相当な苦行である。


 ペット達はその点、茂みなど全く苦にせず移動が可能。姫香とツグミのペアは、ツグミが《闇操》の能力で邪魔な茂みを排除してくれており。

 後衛陣に至っては、ルルンバちゃんが草刈り能力で、率先して道づくりをしてくれる優秀さ。下半身を魔導ゴーレムのパーツに替えた現在も、彼は草刈り&吸引能力は手放したくなかったよう。


 《合体》能力を駆使して、魔導ゴーレムの空いたスペースにそれらを取り入れている次第である。しかも駆動エネルギーは魔石頼りなので、意外と静かで目立たない。

 これなら、騒がしくして敵を招く事態も抑えられるって寸法だ。


「便利だねぇ、ルルンバちゃん……いつも家の敷地内の、草刈りのお手伝いしてるから手馴れてるし。これで密林の移動も、随分楽になってるよっ!

 本当に助かってるよね、叔父さんっ」

「そうだな、敷地内の草刈りもルルンバちゃんのお陰で、効率が随分アップしてるしな。今度また、ダンジョンの隠れ里にメンテに連れて行ってあげなきゃな。

 働くだけじゃなくて、機能の充実も進めてあげなきゃ」


 これ以上強くなるとどうなるのかなと、楽しみで仕方なさそうな末妹はともかくとして。前衛の3組は時折戦闘を織り交ぜながらも順調に密林を進んで行く。

 そしてしばらく後に、レイジー組が密林に侵食された遺跡の跡地を発見したと報告に来た。壁や天井は半分以上が崩壊していて、石造りの名残りだけの場所も多い。


 それは一応、元は建物だったと分かる程度には面影は残していた。ただし、踏み込むにはちょっと勇気がいりそう。何故なら、強そうな獣人が遺跡の周囲にたむろっているのだ。

 そいつらは体格もコボルトやオーク兵よりずっと良くて、しかも顔が恐竜のそれと言う。恐竜タイプの獣人は、この“岩国基地ダンジョン”の名物モンスターらしい。


 そんなやからが、遺跡内にグループを作ってうろついているのだ。しかも大抵は良さそうな装備を着込んで、手にはハンマーや蛮刀を持っている。

 それを見た来栖家チームの反応は様々、変な所に出ちゃったなと慎重になる前衛の姫香はまだマシ。レイジー組は、問答無用でその連中にさっそく喧嘩を売っていた。

 それに釣られて、あちこちから敵の影が出現して来た。


 ここはお宝の匂いがするよと、喜んでいた香多奈も大慌てで『応援』を飛ばし始める。つまりは前衛と後衛の距離は、この新エリアを前に結構詰まっていて。

 レイジー組をフォローしようと、右翼の鬼島と舞戻も戦闘に突入。こちらも恐竜タイプの獣人2体とのマッチングで、体格の差は傍から見ても歴然としている。


 それに少々遅れて、姫香とツグミのペアもラプトルの群れとの遭遇戦を開始。その数の多さに、咄嗟とっさに萌をフォローに向かわせる護人。

 ところが遺跡内からも、例の獣人が新たに出現して護人も前へと出向く事に。大わらわの状況だけれど、残された紗良や香多奈に焦りは無い。

 むしろ、末妹はルルンバちゃんによじのぼっての迷指揮振り?


「紗良お姉ちゃん、空からも翼竜が来てるから魔法で撃ち落としてっ! ルルンバちゃんは、波動砲と魔銃でこの位置からのサポートを頑張って!

 萌も頑張れっ、相手はすばしっこいよっ」

「香多奈ちゃん、そんなに興奮したら危ないよっ? でもルルンバちゃんに乗ってるのはいいかも、危なくなったら素早く逃げれるからね。

 護人さんも前衛のフォローに出ちゃったから、私とルルンバちゃんで香多奈ちゃんを守らなくちゃね!」


 何とか一撃で翼竜を撃退した紗良は、そんな感じでルルンバちゃんに語り掛ける。それに上機嫌で応じるAIロボは、時折魔銃の弾の補充をせがみながら敵の駆逐に余念がない。

 『シャドウ』の前衛陣も、後衛のサポートを得て前線を維持出来ている様子。そこに新手の大蛇モンスターを始末した護人が駆けつけ、事態は徐々に収束に向かい始める。


 そして数分後には、モンスター達の波状攻撃は完全に終焉してくれた。荒い息を継ぎながら、それを確認した鬼島と舞戻のペアはその場にへたり込む。

 ハスキー達はまだまだ元気で、修練が足らないなって表情で落ちた魔石を拾っている。それを手伝う護人も、ご苦労様と若いペアにねぎらいの言葉を掛ける。

 それから、休憩の支度を後衛陣へと指示出し。


「護人さんっ、遺跡の奥の崩れかけた部屋に次の層への階段があったよ! ついでに宝箱も見付けたから、こっちで回収しておくね。

 萌は後衛と合流してていいよ、戦闘ご苦労さまだったね」

「あっ、宝箱あったんなら私も見に行くっ、姫香お姉ちゃんっ!」

「もうっ、香多奈ちゃん……仕方ないからついて行ってあげて、ルルンバちゃん」


 休憩を告げられたと言うのに、何故かドタバタしている後衛陣は通常運転。タオルや飲み物を用意しながら、あわただしい紗良はそれでも心配こころくばりを忘れない。

 護人もそれには、敢えて何も触れず……ハスキー達も気を抜かず周辺警護をしてくれているし、まぁ問題は無いだろう。それより、同行している『シャドウ』の面々のケアもしなければ。


 確かに彼らは若くて戦闘力もあるけど、探索に必要な持久力は少し物足りないかも。まぁ、その辺は経験だし、来栖家チームだって最初の頃は半日の稼働が精々だった。

 5層の攻略もやっとだったし、それが数をこなすにつれて徐々に体力もついて来た。或いはレベルアップによる恩恵かもだが、今では数時間の探索でも疲れ知らず。


 ただし、瞬間的なパワーの放出を何度もこなすと、どうしても疲労は大きくなって来る。子供達に関しては、後半は集中力が持たないのも護人は知っている。

 これも何度も探索してのデータで知り得た情報、そうやってチームは強化されて行くのだ。『シャドウ』にしても、場数を踏めば良いチームになる筈。


 とは言え、それには周囲のフォローや生き残る運が必要なのも大いなる事実。護人も責任の一端を感じながら、立ったまま周囲に気を配っている。

 姫香と香多奈は、宝箱の中身を嬉々としてチェックしながらの回収作業中。そんな宝箱の中身は、鑑定の書やポーション類、それから木の実や魔玉(火)などのありふれた品ばかり。


 それに混じって、重オーグ鉄製の斧や久々の虹色の果実が2個と当たりも少々。後は良く分からない骨素材や、化石の類いが幾つか入っていた。

 ツグミとルルンバちゃんが見守る中、それらを鞄へと回収して行く姫香。そんな姉に、今日はずっと2チームで廻るから、たくさん宝箱を回収しないとねとまくし立てている末妹である。

 つまりは、いつもの2倍は見付けないとダメな計算みたい。


「アンタね、そんなの無理に決まってんじゃん……人数増えても、殲滅時間が極端にはやまる訳でも無いし。ガメつい事言ってないで、2チームで潜る練習だって割り切らなきゃ。

 そうだよねぇ、護人さんっ?」

「そうだな……ぶっちゃけ“喰らうモノ”ダンジョンの再挑戦の際には、ウチのチームだけじゃ不測の事態に対応出来ない可能性もあるからね。

 協会や岩国チームとも話し合って、適性判断の側面もある事は間違い無いよ」


 そうだったんだと、何となく感心した返事の末妹はともかくとして。協会からそんな話も聞いていた『シャドウ』の面々は、このチームについて行けるかなとかなり不安そう。

 最初の頃にあった若さゆえの自信は、戦闘速度を比較されるにつれてどんどん喪失して行き。この化け物染みたペット軍団は何なんだと、理不尽な恐れも抱き始めている始末。


 その規格外のペット軍団は、子供の香多奈の言う事をきちんと聞いて従順ではある。ただまぁ、人の言葉を完全に理解しているのが逆に空恐ろしく感じてしまう。

 彼らが反逆を起こせば、人間など軽く蹂躙されてしまうのではなかろうか。ところが来栖家の人たちは、そんな感情を毛ほども見せない豪胆ごうたん振り。


 いや、そんな事になるなんて夢にも思っていないのだろう。ペット達は完全に来栖家の一員で、そこには種族の垣根など存在していないのだ。

 今もハスキー達は完璧なフォーメーションで、休憩中の家族の護衛に勤しんでいる。猫のミケだけは、紗良の肩の上でのんびりくつろいでいるけれど。

 それもまた、ある種信頼の証なのかも知れない。




 そして休憩後、変則的な2チームでの探索は4層へと活躍の場を移す。通信の結果、岩国2チームとは少し遅れているけど一応は順調な進み具合いである。

 お昼までには5層の中ボスを撃破したいねと、子供達は呑気に盛り上がっている。今回の恐竜エリアは、果たしてどんな中ボスが待ち構えているのやら。


 チーム『シャドウ』の面々も、この密林エリアの中ボス戦は実は初らしい。地元のダンジョンとは言え、何も好んで面倒なエリアに向かう事は無い。

 だからここの中ボスと対するのは、恐ろしくもあるし怖いモノ見たさの感情も少しだけある。とは言え、大型恐竜は剣や銃器でどうにかなる体格差では無いのも事実。


 どうするのかなと考えていたら、4層は普通に突破してしまっていた。まぁ今回も、ラプトルと恐竜タイプの獣人がわんさか出て来て大変ではあった。

 それでも後衛の術者1人(紗良)1匹(ミケ)が戦闘参加すると、あっという間に範囲攻撃で敵が魔石へと変わって行く。来栖家チームが温存している戦力は、いざと言う時にとっても効果的。

 確かにこれなら、中ボスの大型恐竜も怖くないかも?


 今回も崩れかけた遺跡を少しだけ彷徨さまよって、次の層への階段を発見出来た。いよいよ中ボスの待つ5層に挑戦だと、香多奈の浮かれた叫び声が響く。

 そしてやっぱり張り切るハスキー達を先頭に、次々と階層を降りて次の層へ。それから早速、中ボスの間を探して元気に歩き始めるレイジー達であった。


 そして20分後には、何とかそれらしき遺跡の門を発見。この層も遭遇戦は割と過酷で、1度なと恐竜タイプの獣人がラプトルに騎乗して襲い掛かって来た。

 この機動力に対抗するのは、人間の身ではとっても大変。ハスキー達が頑張ってラプトルから倒してくれたので、とっても助かった次第である。


 翼竜タイプの敵も、密林の中だと言うのにしつこい位に襲撃して来た。ついでに蟲型の古代モンスターの数も多くて、距離を進むのが大変だった。

 お陰で魔石はたんまり稼げたので、その点は嬉しかったねと素直な香多奈の感想に。『シャドウ』チームの面々は、いっそ殺してくれと言う疲れ切った顔付きで返事もない有り様。

 正直、A級ランクの探索者の戦闘ペースを舐めていた。





 ――そもそも、ペット達の速度と張り合おうとするのが無謀なのかも?







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